UTMB:Reprise UTMB、「やり直し」UTMBを走る(その2)

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前半部分はかなり調子よくぶっ飛ばしてきたのだが、果たして後半は?

(Praz de Fortを経て、Champex-Lacへ)
シャンペへの登りはよく踏まれたハイキングコースといった感じ。樹林帯の中を進む。この辺りまでは比較的気持ちよく飛ばして行くことができた。たぶん、NHK「激走モンブラン」で鏑木さんが3位になったところもこの辺りだろう。

シャンペのエイドステーションにも声援に支えられて気持ちよく飛び込む。しかし、ここまででかなり脚を使ってしまった。怪我や痛みがある訳ではないが、両脚の腿の裏側、ハムストリングスがひどく張っている。胃腸の調子は悪くないが、お腹がすいた感じがするのに食欲がわかない。パンとサラミ、チーズ、チョコレート、クラッカーなどを少しずつつまむ。パスタ入りのスープも塩味が嬉しい。パスタと思えば不味いが、吸い物に浮かぶ麩みたいなものだと思えばこれもあり。温かいコーヒーや紅茶が用意されており、これが嬉しい。ジェルをフラスクに詰め直す。

ここで今回ご一緒しているHosakaさんに会う。安定したペースを維持されたようでこの後もトリアン辺りまでは背中が見えたが、その後、追いつけなくなった。

結局20分近くエイドで休んでから午後5時半ごろ出発。シャンペ湖の湖岸を少し走るのだが、すぐに風邪でも引いたかと思うほどガタガタ震えるほど寒くなる。ベンチに腰掛けてダウンジャケットを着込み、非常用と思っていたウィンドパンツを履く。ドロドロのシューズをはいたまま。しばらく走ってようやく体が温まった。しかし、行動を止めたら一気に動けなくなるかもしれない。ちょっと緊張を感じた。

(Bovineを経てTrientへ)
シャンペからはいよいよ後半に連続する3回の大きな登りが始まる。まずはボビーヌへの標高差約600mの登り。

かなり脚を使ってしまった感じで、登るのが辛い。ここの登りは岩が露出した不規則なステップが続く、日本の登りのトレイルに近い、登りにくいトレイル。しばらく進むと後ろから、日本の女性実力派ランナーjunさんがフランス人の若い男性ランナー2人の先に立って登ってこられたので、後ろにつかせてもらう。この時の自分にはかなりのハイペースで何度も脱落しそうになったが、何とか食らいついていく。

標高1950m位までたどり着くと数キロは斜面をトラバースするトレイルを進む。牧場にはカウベルをつけた牛がカラコロとベルを鳴らしながら応援してくれる。遠くの峰に夕日が輝いているのが見える。しかし、この位の高度になってくるととても寒く、小雨もぱらついてくる。

必死の思いでボビーヌの給水ポイントに到着。しかし、体を止めた途端にまた悪寒のような寒気が襲ってくるので、まずはダウンジャケットを着込む。温かい紅茶を飲んでも震えが収まらないがこのままここにいる訳にもいかない。先に進むjunさんに引っ張ってもらった礼を言って見送ってから、ダウンジャケットをきたまま出発。

トリアンへの下りは特に何も難しいことはない。ただ標高差700mをひたすら下ることだけ。しかし、すでに使い果たした脚ではいつものように調子よく駆け下りるのは辛い。同じ位のスピードで降りる3人の後ろについて降りるが、後ろからはどんどん抜かれていく。

トリアンのエイドステーションの少し手前で再びjunさんに追いつき、エイドの手前だけ声援で元気を貰って駆け込む。

エイドではかなり疲弊していて何をしたかよく覚えていない。確か少しハイドレーションバッグに給水をした。少しベンチに座ってぼんやりした。寒さと立ち止まると悪寒で震える身体の状況で、途中でのリタイアも少し考えた。

PETZL Mio RXPを頭に装着して明かりを用意してエイドを出たのは特に強い決意などなく、惰性だったような気がする。

(Catogneを経てVallorcineへ)
トリアンのエイドにいたのも20分ちょっと位か。ヘッドライトを点けて出発したのは8時すぎだったと思う。ここからはカトーニュの最高地点まで標高差700mの登り。暗くて風景などはよくわからない。ただ上を見上げるとポツポツと明かりが見えるのでその辺りを登るのだとわかる。

ここからは夜で寒くなるのでダウンジャケットとウィンドパンツを終始着込んだまま進む。ちょっと格好はよくないが、背に腹は変えられない。来年は寒いときにもうちょっと様になる装備にしよう。

トリアンから先は、無理にスピードを上げることは諦め、安定したペースで歩くことにする。心拍数で130位を上限に考える。するとやはり後ろからは元気なランナーが追い越してくる。

標高1900mを越えてくると、かなり霧が濃い。前後に人が少なくなるところもあり、コースをロストしないように慎重に進む。なお、このレースは全般にコースをガイドしてくれる人が立っていることは少なく(それでも夜はところどころにスタッフらしき人がいた)日本のトレイルレースに慣れた身には心細いかもしれない。それでもマーカーはきちんと設置してあるので意識して進めば迷うことはないだろうと思った。

ピークが近づくと例によって稜線の辺りを進む。前方に先行するランナーの明かりが見える。カトーニュでは焚き火をして待ってくれているスタッフがいたが、特に補給などはないので通過。再び標高差800mの下りへ。何度も何度もつづらおりの下りを降りていくと夜の暗さもあって距離感が失われる。GARMINの距離と高度の表示だけが頼り。随所に水が流れ泥が広がっているのを避けきれない。

高度表示だけで次のエイド、ヴァルロシーヌが近いことを知り、スキー場の斜面のような平坦なところを降りていく。11時半ごろヴァルロシーヌに到着。

(モンテ峠、La tete aux Ventsを経てLa Flegereへ)

ヴァルロシーヌからはフランス国内に入っている。ここのエイドステーションでは少し意識して長めに休むことにした。iPhoneで到着した事をtweetした。


ここでは、今回ご一緒しているSeriさんをはじめ、何人かの日本人ランナーとも会い、先行して行くのを見守った。当方はエイドのスナックを少しずつつまむがやはり力が満ちてくる感じはしない。しばしため息をつきながらぼんやりとベンチに座り込む。フランス人のランナーたちも元気な人ばかりではなく、家族に応援されながらも両手で顔を覆ってテーブルに膝をついている人もいる。

しばらくぼんやりしているうち
に、タ・テーノさんがやってきた。今年のトレイルレースでいつも最後のキツイところで彼に追い抜かれていたが、今回もとうとうやってきた。泥にまみれながら走ったこと、途中でのハイドレーションバッグが壊れて、エイドで見ず知らずのフランス人の家族に手伝ってもらってコーラのペットボトルをハイドレーションバッグに仕立てて走っていることなどを聞いた。話しているうちに、ここで停滞していても仕方ない、先へ進もうという気持ちになった。午前0時ごろ、エイドを出て先に進む。

しばらくは線路沿いを進む。この辺り、「激走モンブラン」でキリアン選手が子供達と走っていたところであり、今回我々がマルティニ経由の鉄道でシャモニーに入ったとき、車窓から試走している人達を見て興奮したところだ。線路沿い、川沿い、人家の前など人の雰囲気を感じる。もうこの辺りは歩きだけで進んでいる。夜の散歩なら悪くない雰囲気だ。

2-3キロ歩くとこの気持ちよい散歩の終わりであるモンテ峠に到着。深夜なのにあるいは深夜だからなのか、笛や太鼓の鳴り物入りで声援を送ってくれている人たちがいる。峠で横切る車道を通る車からは声援がわりのクラクション。そんな応援を受けて、最後の標高差700mの登りを開始。

少しずつつづらおりの急な登りを淡々と、リズムを一定にして登るのはいつも通りだが、少しペースはゆっくり。結果として、一緒に上がる人でペースが合う人の後ろにつくことになる。時折振り返ると、街の夜景が遠くに見える。空は曇りだが、雲の向こうに月が輝いている。

この登りはピークが近づくにつれ岩が増えてきて、ついにはガレ場となる。しかも、上の方はガスが濃い。ヘッドライトが先をうまく照らすことができないので、視界が狭くなる。慎重に前方の人の気配とコースを示すマーカーを確認しながら進む。ところどころは手で岩をつかんで安全を確保しながら進む(とはいうものの日本でいう鎖場のような危険な箇所はない)。

La tete aux Ventsがどこなのかはっきりしなかったが、高度からすると、岩場が一旦広場のようになり、石が積まれた小さなケルンが合ったところがそうなのだろう。この先で、スタッフの方による通過チェックも行われていた。

ここからはLa Flegereまで、岩場の合間に泥や水が流れている箇所が続く。ガスも一層濃くなり、ますます歩きづらい。更にヘッドライトの電池残量が少ないことを示すサインが出た。慌てて怪我をしないように、疲弊しつつも集中して下りに取り組む。

午前2時50分くらいにLa Flegereの小エイドに到着。これで登りは終わった。あと7キロ、標高差800mを下ればシャモニーにたどり着く。

(La FlegereからFloriaを経て、Chamonixへ)

残りはわずか。コーラと水を口にして、椅子に座って一息つく。ヘッドライトを旧型のTikka Plusに替える。交換用の電池は持っていたが、もはや走ってはおらず、電池交換も面倒。リチウム電池は照度全開で7時間ほど保った。ここでまたタ・テーノさんがやってきた。言葉を交わして、熊鈴を鳴らしながら降りていくのを聞きながら、少し遅れて出発。

ここからは、シャモニーにきてから歩きにきた箇所なので多少雰囲気はわかっている。車道、冬はクロスカントリースキーのフィールドになりそうなだだっ広い砂利道の下り。後述する@n2n2nori さんが派手に転んでケガをしたのはこの辺り。知らず知らず緊張が緩んで、ケガをしがちな場所なので慎重に降りる。

やがて普通のトレイルの下りに入るが、ガスが濃く、先が見にくい。ここで後ろからきたフランス人が英語で話しかけてきてくれたので、一緒に下りながら少し話す。このエマニュエルというランナーからCCCに昨年も参加したこと、フランスのランナーの間でも鏑木さんの活躍が知られていること、今年のレユニオン島での制限時間64時間という途方もない100マイルレースに出るという話を聞く。

話しながら進んでいると、とうとう車道に出る。フィニッシュまではあと少し。深夜なので人は少ないが、歩く人はBravo!と声援を送ってくれる。ここで、ブログをいつも拝見しているsuuさんが深夜なのに声援を送ってくださっていた。写真もとってもらった(ブログからいただきました)。


シャモニーの凱旋コースをたどってとうとうフィニッシュ。午前3時50分ごろ。17時間30分ちょっと、92キロの旅が終わった。腕につけていたリボンをスタッフが切って通過チェック用のチップを回収。デポジットの20ユーロを受け取る。更に完走者が受け取れるベストをもらう。

少し先にフィニッシュしていた、Seriさん、タ・テーノさんと握手。先ほど話しながらおりてきたエマニュエルともようやく明るいところで顔を確認して握手。その他にも名前はわからないが、長い道のりで前後して歩いたりエイドで言葉を交わした人達から声をかけられた。

こうして長い長い旅は終わった。距離でいうならもっと長いレースを走ったことはある。しかしこの苦しさは一体なんだろうか。166キロのUTMBを走ろうなどというのは自分には身の程知らずなことなのかもしれないとこのときは思った。

今回ご一緒した中ではだんまさん、のりさんがまだフィニッシュしていない。フィニッシュを見届けたいがいつ頃になるかわからないので、ドロップバッグを受け取ってホテルに一旦戻る。シャワーを浴び、ベッドに横になったのは午前5時ごろだっただろうか。

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