[race] Speedgoat 50k・ショートカットしたKilianは失格としないが賞金を与えず。競技とコミュニティの間を取った判断

7月28日にアメリカ・ユタ州で開催されたSpeedgoat 50k。50キロのトレイルレースだが累積高度は11,000ftD+(3,353mD+)に達するハードな山岳レース。今年はISF(International Skyrunning Federation)ののUltra SkyMarathon® Seriesの一戦となり、世界中から有力選手が集結して熱いレースが繰り広げられた。

Speedgoat 50k 2012 | Official Site of Karl Meltzer | World Class Endurance Runner | Coaching Services

2012 Speedgoat 50k Results / iRunfar.com

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2012 Speedgoat 50k Results / iRunfar.com

このレースの結果はKilian Jornetが5:14:10で一位、続いて5:18:27 でRicky Gates、5:23:10 でMax King、5:23:36 でAnton Krupickaが続いた。しかし、Kilianはコース途中でスイッチバックでのショートカット(つづら折りの急斜面の下りでトレイルを無視して真っ直ぐに降下)を繰り返していたことがレース中から報告されていた。このことを受けて、Kilianを失格とはしないが賞金は与えない、という判断が下された。

この一件には次のようなことが背景にあった。

・SkyRunningの本場である欧州では、レースでスイッチバックを無視してショートカットすることは禁止されていない。一方、米国では自然保護の観点からトレイルを踏み外すことは認められていない。

・Speedgoat 50kの公式ルールにはトレイルを踏み外すことは禁止であるとは明文ではかかれていなかった。

今回の判断を下したRDのKarl Meltzer(Hardrockで過去5回優勝し、今年も7位でフィニッシュしているトレイルランナー)のインタビューがiRunfar.comで紹介されている。興味深い内容なので、Karlの説明のポイントを以下にまとめてみたい。

Karl Meltzer Talks About His 2012 Speedgoat 50k Decision / iRunfar.com

・折り返し地点への下りでトップを走るKilianがショートカットしているのを自分が目撃した。その後もコースの随所でKilianがショートカットしているのをボランティアスタッフが何度も目撃している。

・20マイル地点でKilianにショートカットは認められていないと伝えたが、その後も最後までショートカットを続けた。

・フィニッシュ地点でKilianに「ショートカットしたから失格にするかもしれない」と話したところ、彼はおとなしく「わかったよ。それでいい。」と答えた。

・その後10-20人の関係者と協議したが、その際に2008年のPikes Peak Marathon(コロラド州で8月下旬に行われる山岳レース)で欧州の選手が同様にショートカットした時には失格にはしなかったが賞金は与えなかった、という話を聞いた。その処分が今回も適当だろうと思った。

・正直に言って、こういう処分をするのは嫌いだ。今回の自分の判断を批判する人もいるだろう。しかし「失格だ。以上。来年も出場禁止だ。」などということはしたくなかった。このレースをSkyRunning Seriesのレースとして続けたいし、Kilianにもシリーズ戦を続けてほしい。Kilianを除け者にはしたくなかった。

・Kilianはいい奴だ。(2位になった)Rickyもそう思っている。コースを外さなかったRickyはコース新記録を作って賞金を得た。今回の判断にKilianも納得してくれると思う。

・来年はスイッチバックのショートカットは禁止であることを競技規則に明記するつもり。そしてショートカットをしたら即失格にするつもり。

純粋に競技としてみれば、Kilianは失格にすべきかもしれない。ショートカットの禁止は明記されていなかったとはいえ、自然の中で行う競技では常識だということもできただろう。少なくとも失格ではないが賞金は与えない、というのは矛盾した判断に思える。

しかし、Karlの言い分もよくわかる気がする。トレイル/ウルトラランニングは、純粋にスピードを競う競技という側面以外に、ランナーは皆仲間でありレースとはいえそこには大きなイベントを皆で楽しむことが大前提となっている。そんな考えがランナーのコミュニティの間で共有されている。そんな中ではKilianを仲間から除外するようなことはしたくない、という気持ちはよくわかる気がする。

些細な一件のようにみえるが、アメリカのトレイルランニングのカルチャーについてうかがえる話だと思った。おそらく日本や欧州では同じような結論は出ないのではないだろうか。

*ちなみに欧州に本拠を置くISF(International Skyrunning Federation)は今回のSpeedgoat 50kでのKarlの判断を追認し、シリーズ戦におけるKilianの成績に3分のペナルティを課すことを発表している。

The International Skyrunning Federation’s Response to the Speedgoat 50k Ruling / iRunfar.com

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