[DC] 原良和さん自身によるレポート ウルトラトレイル・マウントフジ Yoshikazu Hara on Ultra Trail Mt. Fuji 2013 #report #UTMF

[Editor’s note: Following report by 2013 Ultra Trail Mt. Fuji winner Yoshikazu Hara, exclusive for DogsorCaravan.com, is posted in ENGLISH as well.  See below for English.
[DC] Exclusive / Yoshikazu Hara on Ultra Trail Mt. Fuji 2013 #report #UTMF | DogsorCaravan.com]

[当サイトより:先週末の4月26日(金)ー28日(日)に開催されたウルトラトレイル・マウントフジ/ULTRA-TRAIL Mt.FUJI。昨年優勝のジュリアン/Julien ChorierやUTMB2位のセバスチャン/Sebastien Chaigneauを抑えて見事優勝した原良和さんにレースレポートを寄稿していただきました。

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ロードのウルトラマラソンの第一人者である原さんがトレイルの100マイルを走るに至る経緯、レースの展開、ランナーの皆様に向けたメッセージが綴られています。

当サイトの原さんに関する記事もご覧ください。]

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私の転機になったレース

UTMF_logo_small2012年5月の星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソンでした。

4月の100km世界大会(IAU100キロワールドチャンピオンシップ2012<イタリア・セレーニョ>)で途中棄権に終わり、失意の中トレーニングを行い望んだレースです。アップダウンがきついことは皆さんご存じでしょうが、この厳しいコースでどこまで走れるか自分に挑戦しました。

結果は大会記録を25分以上更新でき、またウルトラで頑張ろうという気持ちになれました。またひょっとしたらアップダウンが厳しい方が向いているかもしれないと思いました。そう、あのUTMBに出たらどうなるだろう、ひょっとしたら上位争い出来るかもしれないと漠然と考えました。

しかし、エントリー条件が厳しいのですね。半年足らずでどうやって7ポイントも集めるのか。

まず、OSJおんたけウルトラトレイル100kmにエントリーしました。完走できれば3ポイント。本当は100マイルに出たかったのですが参加資格がありませんでした。大雨のレースでしたが平澤賢市さんとの競り合いを制して無事優勝でき3ポイントゲット。クリック競争に勝利して信越五岳トレイルランニングレースにエントリーします。その信越も灼熱地獄のなか終盤逆転でき優勝、3ポイントゲット。

ハセツネもなんとかエントリー。しかしハセツネはガレ場のアップダウンに恐怖心を感じて第一関門(浅間峠)敗退。失意のなかUTMBをあきらめかけました。

しかしまだ八ヶ岳のトレイルレースがあるではないですか。主催者に掛け合い、60kmに出場、優勝という形で2ポイントゲット。計8ポイントでようやくUTMBの抽選に申し込み、当選して出場権を得ました。

ただ、24時間近いレースは経験できていません。2012年12月に台湾の東呉大学24時間走(Soochow International Ultra-Marathon)で13時間までは経験しましたがオーバーペースで12時間以降失速しています。平地と山ではまったく違うでしょう。UTMBの前にトレイルの100マイルを経験しておく必要性を感じました。時期的に最適だったのがUTMFです。

エイドで繰り返したこと

「日本人が上位争いをしないと盛り上がらない。」

大げさかもしれませんが関西人として、関西代表としてUTMFに来ました。

鏑木さんをはじめ主催者はあれだけの選手に海外から来てもらうために大変な努力をされたと思います。日本人選手の誰かが上位争いをして応えないといけない。私としては海外に行かなくても自分の力試しが出来る絶好の機会と考えました。

12月中旬から2月中旬まで左ふくらはぎの張りがとれず、左膝の故障を抱えていました。それで別府大分毎日マラソンびわ湖毎日マラソンは完走がやっとの状態です。UTMFに向け本格的に練習を開始出来たのは3月9日からです。

とにかく六甲山を走り込みます。週末ごとに山練習を繰り返しました。平地も少しは練習しないと不安ですので3月23日に大阪城4時間走を走りました。結果は4時間で62km。同じ4時間走を過去4回走っていますがいずれも61kmでした。ようやく過去の記録を更新出来、平地の走力も戻っている手応えをつかみました。

4月14日は最終調整として第39回大阪府チャレンジ登山大会に出場しました。
3時間21分6秒で大杉哲也選手には負けましたが、昨年の自己記録を4分更新して自信を持ちました。

UTMFに向け、あとは疲労を抜いて、装備をそろえるだけでした。

いよいよ当日、装備と準備

4月25日は仕事を早めに切り上げて午後9時頃「いやしの宿 湖岳荘」入り。あの山屋光司さんらと同じ宿でビックリしました。延長料金を支払い、翌日も昼までゆっくりさせて頂きました。

装備:

朝食はコンビニのおにぎり5個+カップうどん2個+プリン2個。午前10時頃からゆっくり食べました。12時半頃チェックアウトし歩いて受付会場へ。

予報は晴れでしたが、寒気が入った影響で曇り、にわか雨という天気でした。会場ではに数人の方に声をかけられスタートまで楽しく過ごせました。あまり人の視線も気になりませんでした。

スタートの格好でじっとしていると体が冷えたので上下とも羽織って待ちます。開会式が始まり、海外からの有力選手もスタート地点に集まります。あまり情報を集めていなかったのでジュリアンセバスチャンしか顔と名前が一致しませんでした。

試走なし、レーススタートからは冷静に周囲を観察

体調は絶好調という期待、しかし100マイルレースは初めてという不安の中スタート。序盤からジュリアンを先頭として数人が飛び出すのがわかりました。私は冷静に日本人先頭集団に身をゆだねました。トレイルの知り合いは少ないですが、野本哲晃さん、山屋さんらと談笑し楽しく走れました。しかし先頭を追おうという日本人選手はいないなとわかりました。

コースはマップを見ていたのと、ネットで試走の情報を集めた程度。注目はやはりA3西富士中学校(55km)~A4こどもの国(79km)。大きなアップダウンなく走りやすそうな地形です。そこでいかにタイムを稼ぐか、上位に上がれるか、がポイントと分析していました。

A2本栖湖(24km)で上位と既に10分ほど差があるとの情報を頂き、エイドの時間を最小限にして前を追い始めます。

A2本栖湖からの登りで1人外国人をかわします。しかしどこまでも続きそうな登り、よじ登るところもあり完走できるのかという不安に駆られます。

1人1人とかわしていきますが、天子ヶ岳の手前で最初のトラブル発生。なんと水切れ。聞くと次のエイドまで8㎞以上あるではないですか。あとは下り基調も、転倒すると気持ちが折れるのは必至なのでペースを落として安全策をとります。

かなりのどの渇きを感じ脱水状態でしたが、A3西富士中学校でサポートの嫁の顔を見て一安心。真っ先にお茶を800ml一気に飲み干しすぐに復活!

A3西富士中学校〜A4こどもの国で勝負、とうとうトップへ

そこからなだらかな区間突入。自分の気持ちの良いペースまでアップ。マップでは不思議なくらい直線コースでしたが、走ってみて納得でした。送電線の真下でした。それでほぼ一定間隔で登り下りがあり、しかも同じようなアップダウン、リズムよく走れます。

その区間の序盤で1人の外国人(編者注・今回9位だったシリル・コワントル/Cyril Cointre<HOKA, FRA>)に追いつき併走しました。引き離そうとペースアップしますが相手もさるもの、なかなか離れません。オーバーペース覚悟でピッチをあげました。併走2㎞はしたでしょうか、気づいたら1人でした。

W2粟倉(64km)はおそらく2位で通過。W2粟倉からは林道とアスファルトばかりでじりじり登るが、さらに気持ちいいリズムで行けました。その区間の中間あたり?でついにゼッケン1が見えました。そうジュリアンです。

A4こどもの国(79km)にトップで到着。

自分が併走してもいいの?という気持ちになりつつ、併走して相手の余裕度を確認。息づかいは普通で余力はまだまだありそう。夜も更けてきて高度も上がってくるので気温が下がってきます。ジュリアンは薄手のブレーカーを羽織っていました。私はスタートの格好のまま!体温調整はジップの上げ下げや袖をまくったり伸ばしたりだけでした。

彼はトレイルが得意なのか、ロードのペースは早くないので自然と自分が前に出てしまう。ロードでは負けない自信もあったのでこちらから仕掛けます。ジュリアンも無理には着いてこないのでさらに自分はペースアップ!そこからは最後まで一人旅。差が開いたり詰まったりを繰り返しました。

A6御殿場口太郎坊(96km)で補給。

振り返ってよかったのは靴に泥よけ小石よけのゲイターを装着していたこと。A7すばしり(105km)までの区間も気持ちよく下り、飛ばせました。その区間トップ!

早朝のA8山中湖(122km)に到着した時は後続へのリードを拡大。

しかし何らかのトラブルがあるのがロングレースというもの。A10富士小学校(143km)からの最終区間はなんと山頂を過ぎてハニースティンガーを摂ろうとするも刺激で嘔吐2,3回。ジェルを摂れなくなってしまいます。脱水にはならないように時間をあけてドリンクだけを少しずつ飲み、下りに入ります。歩くと追いつかれるのは必至なのでつらい足を無理に動かします。

A10富士小学校(143km)。勝利がみえてきたがこのあとの最後の登りのあとで胃にトラブル。

林道からアスファルトに出たあたりでビデオ撮影の方に後続との差5分!と聞き
ようやく優勝を確信。最後まで出し切って歓喜のゴールへ。

レースディレクターの鏑木毅さんに迎えられてフィッシュ。19時間39分48秒で優勝。

道迷いは2回ありました。A4こどもの国を出た後方向がわからず、MTBでビデオカメラ撮影のお兄さんに誘導してもらいました。(体感的に30秒ロス)明るくなって山中湖のエイドを出て山に向かうまで市街地を走りますが、交差点で方向がわからず1分ロス(大声を出して誘導員の方に来て頂きました。夜だと遠くのマーキングも反射して見えるますが明るくなると逆にわかりません)。いずれも無理に先を急がず、立ち止まって待ったのが良かったと思います。

トレイルとロード、トレーニングの量

私はトレイルでもロードでも特に分けて考える必要はないと考えています。トレイルのほうがロードより必要な装備が多いくらいでしょうか。両方やることで楽しみも2倍になると思っています。

得意不得意は確かにあると思います。ただ不得意なところを鍛えることでパフォーマンスがさらに伸びる可能性があります。私はフルマラソン2時間30分を少し切る程度の走力です。月間走行距離も600~700km程度。平日は往復の通勤ランのみで20~25km/日。週末は平地なら30km走、山練習なら六甲山に登ります。インターバルトレーニングはあまりやりません。

市民ランナーでもフルマラソンで私より早い人は100~200人くらいいます。それでも100kmやそれ以上の距離になるとスピードより持久力、精神力がものをいいます。

今回の結果は体調、タイミング、気候いずれもうまくかみあいました。私の結果をみて、一人でも多くのウルトラランナー、トレイルランナーの皆さんの刺激になり
活躍されることを期待します。

プロフィール:原 良和(はらよしかず)

Yoshikazu_Hara_Face1972年8月13日生まれ。大学から走り始め京都大学では陸上部に所属。卒業後も医師として働きながらランニングは継続。トレイル初レースは2010年ハセツネ32km28位。2012年サロマ湖100kmウルトラマラソン6時間33分32秒は同年世界ランキング3位。2012年12月東呉大学24時間走の途中経過、12時間走161.074kmはアジア記録。

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