[DC] UTMBの結果・フランスの25歳、グザビエ・テベナールが優勝、女子はローリー・ボジオが総合7位・#UTMB 2013 The North Face® Ultra-Trail du Mont-Blanc®

【追記:動画、インタビューなどへのリンク集を随時追加しています。】

【追記:解説記事と各種記事・写真集へのリンクを追加しました。Javier Dominguezの名前の表記を「ジャビエ」から「ハビエ」に改めました。】

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若い才能が美しい景色の中に輝きました。8月30日(金)午後4時30分(日本時間同日午後11時30分)にフランス・シャモニーをスタートしたUTMB/The North Face® Ultra-Trail du Mont-Blanc®。今年のUTMBを制したのはフランスの25歳、グザビエ・テベナール/Xavier Thevenard。女子ではアメリカのローリー・ボジオ/が大会記録を大幅に更新、総合順位で7位に入る快挙で優勝しました。

レースの展開

UTMBは2010年から昨年2012年までの3年に渡って大会当日の天候に恵まれず、大会の中止や大幅なコースの変更・短縮が続いていました。しかし、今年2013年は快晴で見事な天候に恵まれ、水曜日のTDSのスタートに始まり、日曜日のUTMBのフィニッシュに至るまで、コース全体に渡って天候に恵まれました。

序盤 慎重な上位選手

レース序盤はジュリアン・ショリエ/Julien Chorier/フランス)がリード、多くの欧州のランナーが続き、レース前から有力視されていた選手たちはその後のグループに続く形でレースが展開。44km地点のCol du Bonhomme(ボンノム峠)ではジュリアン、グザビエ・テベナール/Xavier Thevenard(Asics/フランス)、エマニュエル・ゴール/Emmanuel Gault(Asics/フランス)がトップ集団で通過。しかし、ジュリアンは少しずつ遅れを取り始め、その後の49km地点のChapieux(シャピュー)ではハビエ・ドミンゲス/Javier Dominguez Ledo(スペイン)とグザビエ、ミゲル・ヘラス/Miguel Heras(Salomon/スペイン)が上位集団を形成してレースをリードしました。

中盤 トニー・クルピチカがリード

上位の3人に続くグループの中で走っていたアメリカ人ランナーは、慎重に序盤を抑えた後に中盤から徐々に加速。アントン(トニー)・クルピチカ/Anton (Tony) Krupicka(New Balance/アメリカ)が68km地点のArete du Mont-Favre(アレーテ・モンファーブル)でジュリアン、ミゲルとともにトップに。その後、トニーはレースをリードし、グザビエ、ジュリアン、ミゲルがあとに続く展開でコース上の大きなエイドステーション、77kmのCourmayeur(クールマイヨール)を通過、コース最高地点(2537m)のGrand Col Ferret(グラン・コル・フェレ)に到着します。

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31kmのLes Contaminesに入るアントン(トニー)・クルピチカ。

その後、108kmのLa Fouly(ラ・フーリー)に至る長い下りでグザビエがトニーからリードを奪います。La Foulyでトップのグザビエから5分差と聞いたトニーは驚いた表情。トニーの8分後にジュリアンとミゲルが一緒にLa Foulyに到着。その後、ミゲルが先行する2位のトニーをとらえます。122km地点のChampex-Lac(シャンペ湖)ではトップはグザビエ、10分差でトニーとミゲルが続きます。4位のジュリアンは疲労した様子で足取りに力がない状態。この後にハビエ、ティモシー・オルソン/Timothy Olson(The North Face/アメリカ)が続くもののトップとの差は広がります。

終盤 トニー・クルピチカがリタイア、グザビエのスパート

終盤に入り、Champex-Lacをスタートしたトニーの脚に異変が。ハムストリングスとアキレス腱の痛みを感じ始め、徐々にペースを落とします。139km地点のTrient(トリアン)はトップにグザビエ、12分差で二位にミゲル。ハビエ、ジュリアンがトニーを抜いて3位、4位に。トニーは結局Trientでリタイア。

149kmのVallorcine(バルローシン)からはいよいよ最終盤に。グザビエはスパートをかけ始めて続くミゲルを引き離します。続いていたジュリアンはアメリカのティモシーとマイケル・フート/Michael Foote(The North Face/アメリカ)に抜かれます。

そして168km地点のシャモニーのフィニッシュ地点に到着したのはグザビエ・テベナール/Xavier Thevenard(Asics/フランス)でタイムは20時間34分。2011年(天候不順による変更コース)のキリアンの20時間36分を上回る記録となりました。

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優勝したグザビエ/Xavier Thevenard(Asics / フランス)

女子ではアメリカの29歳、ローリー・ボジオ/Rory Bosio(The North Face/アメリカ)が上記の男子選手の攻防のすぐ後に続く見事な走りをみせました。終盤に順位を上げ、総合で7位となる順位で女子優勝。優勝タイムの22時間37分は2009年のクリッシー・メール/Krissy Moehlの大会記録、24時間56分を大幅に更新するタイムで、総合順位でトップテンに女子が入るのはUTMBでは初めてのこととなりました。

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女子優勝で大会記録を大幅に更新、総合7位の活躍をみせたローリー/Rory Bosio(The North Face/アメリカ)。

女子で2位に続いたのは欧州のスカイレースで活躍するヌリア・ピカス/Nuria Picas(Buff/スペイン)。初めての100マイルレースを手堅く抑え、24時間32分で2位に入りました。

一方、100マイルのレースとなれば、有力選手といえどもリタイアを余儀なくされます。セバスチャン/Seb Chaigneauは31kmのLes Contamines(コンタミン)で。ゲイリー・ロビンス/Gary Robbinsも体調不良でContaminesで。マイク・ウルフ/Mike Wolfeはクールマイヨールで。昨年2位のヨナス/Jonas BuudはChampexで。日本からの参加で注目されていた、今年2013年UTMF優勝のYoshikazu Hara/原良和さんはContaminesで腰の痛みを訴えてリタイアしています。

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リザルト

  • 男子
    1. グザビエ・テベナール/Xavier Thevenard (ASICS/フランス) 20:34:57 (大会新記録)
    2. ミゲル・ヘラス/Miguel Heras (Salomon/スペイン) 20:54:08
    3. ハビエ・ドミンゲス/Javier Dominguez (スペイン) 21:17:38
    4. ティモシー・オルソン/Timothy Olson (The North Face/アメリカ) 21:38:23
    5. マイケル・フート/Michael Foote (The North Face/アメリカ) 21:53:19
    6. ジュリアン・ショリエ/Julien Chorier (Salomon/フランス) 22:08:11
    7. ベルトラン・コロン−パトン/Bertrand Collomb-Patton (フランス) 23:14:16
    8. アルノー・レジューン/Arnaud Lejeune (Hoka One One/フランス) 23:18:05
    9. ジョン・ティッド/John Tidd (スペイン) 23:18:27
    10. ジェズ・ブラッグ/Jez Bragg (The North Face/イギリス) 23:50:01
  • 女子
    1. ローリー・ボジオ/Rory Bosio (The North Face/アメリカ) 22:37:26 (大会新記録、総合7位)
    2. ヌリア・ピカス/Nuria Picas (Buff/スペイン) 24:32:20
    3. エンマ・ロカ/Emma Roca (Hoka One One/スペイン) 24:48:14
    4. カティア・フォリ/Katia Fori (TECNICA/イタリア) 27:48:45
    5. シルビア・トリゲロス/Silvia Trigueros (スペイン) 28:13:12
    6. Gill Fowler (La Sportiva/オーストラリア) 28:50:30
    7. Maria Semerjian (フランス) 29:34:30
    8. Manuela Vilaseca (ブラジル) 30:17:02
    9. Juliette Blanchet (/フランス) 30:24:08
    10. Audrey Meyer (フランス) 30:50:47

日本人選手

日本から参加の有力選手にとってはそれぞれのレースとなりました。/Hiroaki Matsunaga(The North Face)さんは経験を活かして手堅くコースを進み、28時間36分でフィニッシュ。

奥宮俊祐/(Montail/Mountain Hardwear)さんは序盤から徐々に調子を崩し始め、大幅にペースを落とします。その後は完走を目指すことに目標を切り替え、40時間41分でのフィニッシュとなりました。

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日本からのランナーで一番先にフィニッシュしたのは古田茂さんで27時間52分で総合59位でした。

女子ではさんが37時間12分、女子30位(総合505位)で初めての100マイルレースをフィニッシュしました.

一方リタイアの選手は上記の原良和さんのほか、横山峰弘さん(古傷の痛みでContamines/31kmで)、武藤尚一郎さん(脚の痛みでChampex/121kmで)、平澤賢市さん(Courmayeur/77km)がリタイアしています。

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一言でいえば、トレイルランニングは世界規模で多くの人を巻き込みながら競技の質を高めている。そのことがはっきりしたのが今回のUTMBだといえる。

昨年までの3年間、UTMBはレース中止と90キロの短縮コース(2010年)、コースの一部変更(2011年)、コースの大幅変更で100kmへの短縮(2012年)と天候不順に翻弄されてきた。そのため、レースの結果については「本来のUTMBとは比較はできない」という注釈付きで考えるほかなかった。

通常コースでの開催となった今年のUTMBで優勝したのはフランスの25歳のグザビエ・テベナール。ランナーとしては2010年の(UTMBの姉妹レースで100キロのコース)、2011年のEndurance Trail des Templiers(106km)で優勝するなど力のある選手であることは間違いないが、100kmまでの短いレースに強いという印象で100マイルレースは今回が初めての挑戦だった。しかも昨年2012年はケガのためレースからも遠ざかっていた。フランスのメディア関係者の話でも、今回のグザビエの活躍を予想した人はいなかったという。グザビエの住むフランスのジュラ県(ジュネーブの北側)は山岳地帯として知られ、冬季の気候は厳しい。グザビエもクロスカントリースキーの選手として頭角を現したランナーだ。今回のUTMBのタイムも2011年のキリアンのコースレコードを更新している。2011年はコースが変更となり、距離がやや伸びたコースで行われたという事情はあるものの、グザビエの実力が非常に高いレベルにあることは間違いないことがわかる。

3位のハビエ・ドミンゲスはスペイン・バスク地方在住。昨年の100kmのUTMBで12位だったが、その他は地元のローカルなレースを中心に走っているランナーだ。今回のUTMBでも上位選手が所属チームの仲間などからエイドステーションでのプライベートサポートを受けるのが普通なのに対し、彼は最初から最後まで、プライベートサポートなしで走っていたという。みる限りでは特定のブランドからサポートを受けているわけでもなさそうだ。当方が話したところでは、製薬会社の研究者物理学の研究者【追記・訂正しました】としてフルタイムの仕事を持っているとのこと。

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UTMBで3位のハビエ/Javier Dominguez(スペイン)

このように、まだヨーロッパ以外のトレイルランニングファンの目には留まらないところで、実力のあるランナーがゴロゴロしているというのがヨーロッパなのだ。

一方、今年はトレイルランニングのもう一つの中心であるアメリカから多くのランナーが参加し、結果を残した。最も注目されるべきは女子のローリー・ボジオだ。カリフォルニア在住の29歳でWestern Statesでの活躍(2010年に女子4位、2011年に女子5位、2012年に女子2位、2013年に女子5位)しているが、大きなレースでの優勝はまだ経験していない。今回の22時間37分で総合10位以内というという記録は、今後もUTMBの歴史に残る成果に違いない。ローリーにとっては今回のUTMBがランナーとしてのキャリアに大きな弾みを付けることになるだろう。

その他、途中でリタイアすることにはなったがトニー(アントン・クルピチカ)の活躍も強く印象に残った。中盤から120kmのChampexまでトップをリードした姿を現地でみた鏑木毅さんによれば、「トニーの軽快な走りは安定していて、このままフィニッシュまでリードし続けるだろうと思った」という。とかく個性的なライフスタイルが「ロックスター」のように注目されるトニーだが、その実力の高さはこのUTMBで客観的になった。また、4位のティモシー・オルソン、5位のマイク・フートも抑えた序盤(本人たちに聞いたところではレース開始直後から体調がよくなくて抑えざるを得なかったとのこと)から後半に追い上げていくという100マイルレースの王道をいく展開で、スマートさを見せつけた。

2011年にUTMBを走った北米の有力ランナーの多くが不完全燃焼に終わった時には、北米と欧州の選手のレベルや競技の性質の違いについて多くの議論が巻き起こったが、今回は北米のランナーも欧州と同様であることがはっきりした。

一方で日本のランナーについてみれば、今回のUTMBの結果をみるなら誰も世界に伍した結果を残せなかった、といわざるを得ない。その理由は様々に違いなく、この結果だけで日本のトレイルランニングと世界とのレベルの差をはかることはできない。今回のUTMBで上記のように欧州や北米の選手が大いに活躍していることから日本のランナーも刺激を受けるだろう。彼らのランニングへの接し方に関心を持ち、日本に住んでいても世界のランナーと同じスポーツを愛し、同じようにこのスポーツを極めたいと願うならば、自ずと日本のランナーも世界の強豪と肩を並べるようになるに違いない。

また、欧州、北米、日本とくれば、アジア・パシフックのランナーは今回のUTMBで活躍した。総合12位のネパールのAite Tamang、総合17位の香港のStone Tsang、女子では6位で惜しくも入賞を逃したジル・フォウラー/Gill Fowler(オーストラリア)はそれぞれの地域のレースで活躍するランナーで、その実力が世界レベルに届いていることを示した。アジア・パシフィックでのトレイルランニングの熱気の高まりを感じたのも今回のUTMBだった。

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ネパールのAite Tamang。Dawa Sherpaとともに。

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