[DC] 堪能、敬意、救済。キリアン/Kilian Jornetの心境の進化を感じる映画「Déjame Vivir」(自由に生きる)レビュー #SummitsofMyLife

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堪能(regale)、敬意(respect)、救済(redemption)。山を楽しむ誰にとっても美しさを楽しめて、スカイランニングの先人や仲間に思いを馳せ、爽快さも辛さも寒さもすべてを笑顔で受け入れる。世界最強のトレイルランナーであり、2014年のAdventurer of the Yearを受賞したキリアン・ジョルネ/Kilian Jornetは2012年から自らの限界にチャレンジする山岳プロジェクト、Summits of my lifeに取り組んでいます。そして昨年2013年の活動を振り返る形で作られた映画作品、Déjame Vivir(自由に生きる)が3月27日に公開されました。

映画・Déjame Vivirは昨年公開されたA Fine Line(当サイトの紹介はこちら)に続き、監督はSébastien Montaz。61分。

映画はSummits of my lifeのウェブサイトから英語字幕付きダウンロード版が9.95€、さらに約17分の特典映像のついたダウンロード板が12.95€、DVD版が19.95€で販売されています。

Déjame Vivir Official Trailer – Summits of My Life from Summits of My Life on Vimeo.

あらすじ

ストーリーは概ね、キリアンの2013年中に取り組んだ山岳プロジェクトを追って進みます。まず、最初に登場するのは6月にシャモニーで開催されたVertical Kilometerのレースの模様。そして通常であればアルパインクライミングの対象と考えられるような山岳ルートを一気に駆け巡るスカイランニングの歴史についての紹介。そして、世界トップレベルの山岳スキーヤー(SkiMo)ながらあどけない童顔のマテオ/Mathéo Jacquemoudをパートナーにして挑むシャモニーからモンブラン山頂までの往復ルートのタイムトライアル。続いてはフランスからはるばる50時間のドライブで向かうロシアのElbrus Race。最後は昨年8月にイタリア側からマッターホルン(チェルビーノ)山頂への往復記録に挑戦し、2時間52分という驚異的なタイムで最速記録を更新するまでを追います。

堪能(regale)

この映画をみて、誰もが圧倒されるのはその美しい山の風景でしょう。朝焼けのモンブラン、巨大な氷河とそこに口を開いた底抜けのクレバス。キリアンが身につけたウェアラブルカメラがとらえた躍動する画像を見ていると、自分が切立った岩の尾根についた雪の上を駆けているような気持ちになります。そしてUTMBのコースでもおなじみのフェレ谷の美しい草原。エルブラス山の荒々しい吹雪。そしてまさに垂直の岩の壁を軽々とで登り下りするキリアン。何もいわずとも、これらの映像をみているだけで満たされた気持ちになると同時に、自分も次はどの山へいこうかと意欲を刺激されるでしょう。

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朝焼けのモンブラン 映画『』より

また、映像という観点からは果たしてどんな方法でこういう映像を撮ったのだろうか、と驚くようなシーンが数多く現れます。GoProのようなウェアラブルカメラ、リモコン操作のドローンといった技術の進歩が貢献していることは間違いありませんが、世界レベルのアスリートを追って走ったり滑り降りたりしながら撮影している生身のカメラマンがいるからこそ撮影できたシーンも多数。一般の人がスマートフォンやコンパクトカメラでとったと思われる動画も取り入れられており、荒々しくぶれた画面がリアルさを感じさせます。 また、映画の中には80年代から90年代半ばまでのスカイレースの様子をとらえた映像が挿入されていますが、そうした映像の解像度の低さからも映像技術の進歩を実感します。

敬意(respect)

もう少しじっくりとこの映画をみるならば、この映画はキリアンが取り組んでいるスカイランニングの歴史を知る上で貴重な情報に満ちていることに気づくでしょう。

往年のマウンテンランナーで現在はISFのトップとしてスカイランニングを成長させているマリノ・ジャコメッティ/Marino Giacomettiがアルバムをひもときながら90年代の前半、ブルーノ・ブルーノ/が無敵の山岳ランナーとして活躍していたこと、その姿に憧れたキリアンが16歳からこの世界に飛び込んできたことを語ります。マッターホルンのタイムトライアルでは1995年に最速記録を作ったブルーノ・ブルーノが、当時は山岳ランナーという存在は誰にも認識されず、当時の自分は山を走っている大工だとしか思われていなかったこと、などを振り返りながら、キリアンと世代を超えてマッターホルンの登頂ルートについて語り合います。

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テクニカルなマッターホルンの岩稜を駆け下りるキリアン 映画『Déjame Vivir』より

そしてチャーミングな人物にも目を引かれます。童顔のマテオ/Mathéo Jacquemoudはキリアンとペアで挑戦したモンブラン最速記録へのチャレンジの途中で転倒。とっさの判断でMathéoを置いて一人でシャモニーを目指すことにしたキリアンが一瞬立ち止まってMathéoの肩を抱くシーンに二人の友情と互いへの信頼を感じます。そのMathéoのお祖母さんは毎朝のように早朝からモンブランに登る孫が「散歩」から帰ってきて一緒にランチをとるのを楽しみにしています。エルブラスでははにかんだ笑顔を浮かべるベラルーシの強いランナーと競います。そしてマッターホルンでは女子で世界トップのスカイランナー、エミリー/Emelie Forsbergと一緒にマッターホルンを登ります。

救済(redemption)

このDéjame Vivirをみると何かほっとした気持ちになれるのは、キリアンがどんなシーンでも楽しげに笑顔を浮かべているからでしょう。尊敬するブルーノの一緒に昔の写真アルバムをめくる時も、フェレ谷の光と緑があふれるトレイルを飛び跳ねながら走る時も、エメリーと一緒にいる時も、そして悪天候でエルブラス登頂を諦めて引き返す時も。

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光あふれるフェレ谷を飛び跳ねながら走るキリアン 映画『Déjame Vivir』より

前作のA Fine Lineがキリアンの山に生きること、リスクをとって挑戦することへの悲壮なまでの決意表明だったことに比べると、キリアンが自らのチャレンジを楽しんでいる様子に彼の心境の変化や充実感を感じます。

トレイルランニングレースでのキリアンといえば、大きな歓声に迎えられて笑顔で愛嬌を振りまきながらフィニッシュする姿が思い浮かびます。しかし、マッターホルンのタイムトライアルを終えて麓の町に戻ってきたキリアンは両手を膝について大きく肩で息をして、全てを出し尽くしたといった感じです。映画全体の雰囲気は前作から少し変わりましたが、キリアンが燃え尽きるまで走る姿は彼の山への情熱は全く変わらないことを伝えています。

キリアンのSummits of my lifeの3年目となる2014年は南米最高峰のアコンカグア(アルゼンチン)、北米最高峰のデナリへと続き、2015年のエベレストの最速登頂記録挑戦へと続きます。

参考

Jarabe De Palo – Dejame Vivir – YouTube

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