[DC] フランチェスカ・カネパから反論・失格騒ぎとなったトル・デ・ジアン/Tor des Geants 2014

イタリアのヴァッレ・ダオスタ自治州で開催中のトレイルランニングレース、トルデジアン/Tor des Géantsはイタリアのフランコ・コレ/Franco Colle)とエミリー・ルコント/Emilie Lecomte(フランス)がそれぞれ男女で優勝、小野雅弘/Masahiro Ono(HOKA/Montura)が5位でフィニッシュ。まだ多くのランナーがコースを進んでいるこのレースの模様は追って紹介します。

一方、二日目にはフランチェスカ・カネパ/Francesca Canepa(イタリア)が「クルマでコースをショートカットした」との情報が広がり、結局コース上のチェックポイントを通過していない、として失格になるという事件がありました。これについて、カネパから反論があり、ルールに違反の疑いは全て否定し、大会に対する法的な対抗策も辞さないとの姿勢です。

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この記事ではカネパのインタビューの動画とその主な内容をお伝えします。

フランチェスカ・カネパ/Francesca Canepa

フランチェスカ・カネパ/Francesca Canepa

カネパは自身のFacebookページで次のようなコメントを発表しています。

この数日間は私の人生で最も困難に満ち、また馬鹿げた日々です。私の考えの全てを理解していただけることを期待しています。私がしてもいないこと、他の誰かがするとも思えないことについて弁明しなければならないなどということは、私には受け入れがたいことです。

このスポーツにおいて、そしてアスリートとしての生き方において、不正をすることには何の意義もありません。もしショートカットする必要があるならば、もっと簡単なルートを選んで当然ではないかと思います。

私にはショートカットなど必要なく、これまでもしたことがありませんし、いついかなる時もしようとは思いません。

二つのインタビューで話したことは、私の側の言い分ではなく、事実そのままです。私が沈黙を守っていたことを罪を受け入れた証拠だという方は、私のことをご存じないのだと思います。私はどう思われようと気にしません。

私は常に頭を高くして歩き、しっかりと目の前の人々に向き合うつもりです。それは誰にでもできることではないと思います。

メッセージや言葉、自分の思いを伝えてくださった方々、そして私を信じてくださる方々に感謝します。

失格事件に対するフランチェスカ・カネパ/Francesca Canepaのインタビュー

事件後に、カネパにインタビューしたのはスペインのトレイルランニング・メディアであるCarrerasdemontana.com。ここでは、同メディアが英語で行った以下のインタビューをIan Corless氏のブログ、Talk Ultraの紹介に基づいて、日本語で紹介します。

Donnasに到着してから失格を告げられるまでの経緯

  • 13時ごろ、Donnasのエイドに到着。そこでコーチのRenato Jorioz氏から「早朝から『(Canepaが)Cogneでクルマで移動した』という噂が飛び交っている。選手の誰かがそう申告したらしくて、失格になるかもしれない」と聞いた。そう聞いて、思わず感情が高ぶり号泣してしまった。ことの推移を見極めるためにエイドにとどまることにした。
  • 2時間後、大会側から「調査を開始し、失格とするかどうか決める手続きに入った。調査が完了し次第、責任者が決定を下す」とのリリースが公表された。コースを進んでからそこでレースを止めることになるのを避けるため、大会側の発表を待つことにした。
  • 18時過ぎに大会側から発表。「大会スタッフから集めたチェックポイントでの通過チェックに関する資料を確かめた結果、大会審判団はCanepaがCogneの(近くにある)Les Goillesのチェックポイントを通過していないと判断した。このことについてCanepaは「大会側は私に何も話しを聞かないでなぜそんな判断ができるのか分からない。電話をしたけれど誰も出なかった。」とのこと。
今回の失格騒動が起こったコースのマップ。大会ウェブサイトより。

今回の失格騒動が起こったコースのマップ。大会ウェブサイトより。

Cogneのエイドから先で起こったことの経緯

  • 午前3時ごろCogneのエイドステーションにトップの選手が到着し、それから1時間の間にTrivel、Collé、Perez、Guillon、Rossi、Hollon、Le Sauxがそれぞれエイドに到着・出発。女子トップのCanepaは午前4時23分にCogneに到着。補給と休養ののち、午前4時57分にエイドを出発。Hollonはその5分前に出発。Rossiは5分後に出発。
  • Cogneの次のチップによる通過チェックはBerdzé小屋だが、その手前のLes Goillesで(大会スタッフの視認による)チェックポイントがおかれている。Canepaは「いつものようにLes Goillesにいったが、そこには誰もいなかった。そこにお茶がおかれていたので、それを飲んでそのままコースを進んだ」とのこと。
  • Dondena小屋(Berdzé小屋からさらに先に進んだところ)でCanepaが子供たちにサインをせがまれて立ち止まっていたところ、後ろからRossiがやってきた。自分の方がCanepaより先にCogneを出て抜かれていないと考えていたRossiはCanepaに『CogneからLillaz(Cogneから数キロ先の地点)までクルマで行っただろう?』と声をかけた。憤慨したCanepaは『文句があるなら大会本部にいえばいいじゃない』と応えた。口論が人に伝わるうち、Rossiの思い込みが疑惑として広まっていった。
  • 実際にはCanepaはCogneのエイドをRossiよりも先に出ていて、後から出たRossiを追い抜くことはなかった。おそらくRossiはCanepaがCogneを出るのを見ておらず、エイドの駐車場からCanepaのコーチの車が出るのを見たのだろう。
  • Canepaのコーチによれば、「もう一人(医師のMarco Patacchini)と二人で車に乗って山小屋に向けて私道を進んだ。途中で森林局のスタッフにも車を止められている。車に乗っていたのは二人(コーチと医師)だけだ。」
  • Rossiは大会への通報はしなかったが、大会側は独自に調査をしてCanepaを失格とすることになった。

当サイトの感想

以上の説明はCanepa自身によるもので、客観的な検証を経ているものではありません。しかし彼女の説明には正しいかどうか検証可能な要素が多くあることから、客観的な事情の説明と考えることができる可能性は高いように思えます。

Canepaの説明が正しいとすれば、いろいろ不幸な要素が絡まり合っていることが伺えます。Rossiが思い込みでCanepaにかけた言葉が無礼に過ぎたようにも思えます。周りの噂になるほどの口論となってしまったのはCanepaが感情的な反論をしてしまったからなのかもしれません。また、大会側が失格の理由としたLes Goillesのチェックポイントにはなぜ誰もいなかったのか。無論長時間のレースで人の視認によるチェックには人的なエラーによるチェック漏れがあるはずで、チェック漏れだけで失格にはならないはずなのに、なぜ大会側はそのことを理由に失格としてしまったのか。

でコースのショートカットで選手が失格となる騒動は毎回のように起きており、特に2011年にトップでフィニッシュした選手が直前のコースをショートカットしたとして優勝が取り消しになったのは話題になりました。限られた情報と時間の中で公正な大会運営をすることは容易ではないでしょうが、可能な限り公正な運営に加えて誤った判断を後で正すことを期待したいところです。また、アスリートの側では無礼な態度を控え、トラブルにも冷静に対処する落ち着きが求められるでしょう。

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