[DC] 世界的なレースで女子総合9位の快挙・丹羽薫さんのトランスバルカニア/Transvulcania レースレポート

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【編者より・モロッコ沖のカナリア諸島ラ・パルマ島(スペイン)で開催されるトランスバルカニア/Transvulcaniaは近年はスカイランニング世界シリーズのシーズン開始を告げるイベントとして定着し、73.3kmのレースには世界から有力選手が集まります。今年は5月9日に開催されたUTMBに匹敵するともいえるこの注目のレースで、日本の丹羽薫/さんが9位に入りました。日本の女性ランナーがこのような世界的なビッグイベントでトップ10入りを果たすのは大変な快挙です。丹羽薫さんから、今回の快挙をレース展開やコースの様子を中心に振り返ったレポートを寄稿していただきました。】

スタート・砂礫に足を取られながらの登り

Kaori-Niwa-2015-Transvulcania2レース当日は朝3時に宿泊先からシャトルバスでスタート地点Fuencaliente の灯台に向かいます。スタート地点に到着が4時過ぎで、スタート(午前6時)まで結構時間があるのですが、島の南端の吹きさらしなので、風が強くてひどく寒いです。

みんな灯台の周りの石の壁を風よけにして、上着を着込んだり、エマージェンシーブランケットにくるまって4時から5時ぐらいまで準備をしたり時間をつぶしています。エマージェンシーブランケットがレギュレーションにありますが、ここで使うのかと驚きました。準備がいい人はダウンジャケットなどを持ってきています。私の隣にいた人は寝袋を持ってくればよかったとぼやいていました。私も4時半ぐらいまで準備をしたり、ウロウロしていましたが、スタートゲートの方に行きました。

Kaori-Niwa-2015-Transvulcania3しばらくして何か動きがおかしいと思い、スタートゲートに近寄ってみましたが、アナウンスはすべてスペイン語だし、何が起きているのかわからないので、とりあえず手当たり次第「誰か英語がわかる人いますか?」 って叫んでいました。そうしたらどうやら再度計測チップのアクティベイトをしなければいけないことがわかり、流れに乗ってスタートゲートの右側の通路を通って、チップのチェックを受けました。

そんなこんなでバタバタしているうちにすでにゲート近くはもう並ばれてしまい、みんな速そうに見えるし気後れして、前方から三分の一ぐらいの位置からのスタートに甘んじました。これがやはり大失敗です。ふたを開ければ自分の前の女子と2分差だったので、もっと前から出れば十分順位を上げられたのにと思いますが、初めての海外レースだし、結果論なので仕方ありません。上位を狙う方は、気後れせずに是非前に並んでください。

スタートしてからしばらくは走れず、ぎゅうぎゅうな感じです。舗装路が少しだけあるのでそこで走って前に出たかったのですが、渋滞でほとんど走れず、すぐに砂礫の登り道になります。これが登山道で、このあと17キロほど延々砂礫のなかを登り続けます。途中一瞬だけエイドのある町で舗装路に出ますが、ここもずっと登りです。富士山の下山用の砂礫とか、御殿場ルートの道を17キロ登り続ける感じに近いと思います。

速く登りたい気持ちと、遅い人をどんどん交わしたい気持ちが強くなるのですが、蹴るように走ると絶対に細かいふくらはぎの筋肉がやられると思い、足を置くように登ることを心がけ、なるべく前の方を見て体を倒さないことを心がけました。

Kaori-Niwa-2015-Transvulcania4

このあたりはトレイルの境に一応石が並べてあるのですが、その外もほぼ砂礫でどこを歩いても問題ないようで、みんなトレイルの脇のちょっとでも溶岩があって足がかりになるところや、ちょっとでも砂礫が締まっていそうな所を探して進んでいる感じでした。私もそうやって無理の無い範囲で、上手に遅い人を交わしている人についていったりしながら、少しでも前に出られるようにしました。砂礫のなかを登り続けるのには流石にうんざりしましたが、2日前に山頂辺りには下見に行っていたので、上の方は溶岩がゴロゴロしている感じで、少なくとも足を取られずに走れるのがわかっていました。そこまで我慢だと自分に言い聞かせて、無理に足を使わないようにしました。

登り切ったら第2エイドのLas Deseadas(16.5km)に到着ですがまだ涼しかったこともあり、あまり水も飲んでなかったのでコップで一杯だけ水を飲んでスルーします。コップが用意されていないとレギュレーションには書いてありましたが、紙コップに入ったドリンクが並んでいました。

ここから第3エイドEl Pilar(24.1km)までは下り基調で走りやすいトレイルで走れます。ここはハーフマラソンのゴールでもあり、マラソンのスタートでもあります。マラソンの人たちがスタートに並んできたので、渋滞を避けるために短時間で第3エイドを出発しました。フラスクに水を1本だけ補給しましたが、エイドスタッフの手際が非常によく、フラスクを渡すとすぐに水を入れてくれます。ここで初めてフードが出てくるので、スイカも2切れほど食べました。他にはパンにチーズやハムを挟んだロールや、アプリコットなどのドライフルーツやメロン、オレンジ、バナナ、ナッツ、グミ、ジェル、エナジーバーが並んでいて、ジェルやエナジーバーにこだわりが無ければ、ここまで来る分の食料だけ持っていれば走れる感じでした。ここから次のエイドEl Reventónまではフラットな感じで標高も高くなく走れます。逆に言うと、こういう所でしっかり走れないとすごく時間がかかってしまいます。

心拍ベルトの電池が切れかけていたのか、ずっと値がおかしくて、はじめはオーバーペースかと思ってちょっとペースを落としたりしていたのですが、あまりしんどくないしおかしいなぁと心拍ベルトをいじりながら走っていました。途中から心拍数でペースを管理することをあきらめて、体と相談しながら走りました。

乾燥した灼熱の登りが苦しかった中盤

第4エイドEl Reventón(27.6km)で再度フラスク1本に水を入れてもらい、足ツーRUNを溶かそうとしていたら、それもエイドスタッフが手伝ってくれました。本当に至れり尽くせりな感じです。この辺りから暑さもひどくなり、エイドごとに水をぶっかけてくれます。

またスイカを2切れほど食べてすぐに出発しました。これが大失敗。フラスク1本に水を入れてもらった時点で、合計700mlほどの水があったと思いますが、なんとこの次のエイド(Pico de la Cruz、43.8km地点)までの距離が事前の記載と大きな食い違いがあり、実際よりも5km弱距離が長かったのです。18キロ近くノーエイドで、2000メートルを超える乾燥したほこりっぽい灼熱地獄の登りを走ることになります。13キロちょっとで水が完全に切れて、残り5キロ弱を水なしで走る羽目に。口の中に一滴の水分も無くなり、やばいと思いながらも、口が渇いてジェルも塩熱サプリも口に入れることが出来ず、あの山頂がエイドかな?と何度も小ピークに騙されながら、筋肉へのダメージなども心配で、先を急ぎたいけど無理が出来ないジレンマに陥りながら、ひたすら耐えました。すると応援でリンゴを切ったのを配ってくれている人がいて、一切れもらってその水分で少し生き返りました。

それでも一向にエイドにたどり着かないので、もうヤバイと思っていると、今度は応援でブロックアイスを配ってくれている人がいました。結構大きめの氷を1個もらって、それに吸い付きながら本当に砂漠で一滴の水をありがたく思う気持ちを味わいました。首筋につけたりして溶かしながら、溶けたら水分をなめるということを繰り返して、口に入るぐらい小さくなったら口に入れてその冷たさと水分をゆっくり味わいました。あれがなかったらどうなっていたかと思います。地元のサポートは日本でも海外でもありがたいものです。

後で知ったことですが、昨年まではこの区間の途中にエイドがあったらしく、ただ山の中で車が入れないので、今年からエイドをカットしたらしいです。また事前の表示と実際の距離が違ったため、かなり問題になっていたようです。

5人がヘリで病院に搬送され、20人以上が熱中症や脱水のため車で収容されたそうです。
この区間は気温も高いし、水を1リットルちゃんと持って、手前のエイドでもしっかり飲んでから出発するべきでした。大会からのオフィシャルの発表がありましたが、この区間のエイドは増やす方向では考えていないそうで、問題はエイドの数ではなくて、距離表示が間違っていたことだという説明でしたので、来年出られる方はこの区間で持っておく水の量は気をつけた方がよいと思います。

そこからはいい感じで走れる場所が多いので、最高点のRoque de Los Muchachosまで気持ちよく景色を堪能しながら進みました。この途中で先行していたHanaをかわします。Hanaは登りが相当速かったので、抜いた後も後方が気になって仕方ありませんでした。

最高点に到着するのはあっという間でしたが、手前のエイドで死にそうにカラカラだったこともあり、その短い区間でもだいぶ水を飲んでいました。

エイド(Roque de Los Muchachos、50.9km)についたらすぐに英語をしゃべれるスタッフがよってきて、手取り足取りサポートをしてくれて、持ってきてくれたフルーツを食べている間にフラスクの水も満タンになって、ザックの胸ポケットに入れてくれていました。そのままトイレに行って、水をぶっかけてもらってスタートです。時間のロスはほとんど無かったと思います。また、このエイドではポールなどのもう必要ない物を預けることが出来ます。最後に400mの登りがあるので悩みましたが、最後は気合いでいこうと思って、長い下りに備えてポールを預けました。

終盤の下りは自分の力を出し切った

ここから長い長い下りの始まりです。最初は砂地の滑りやすい下りですが、テクニカルではないのでガンガン走りました。下りの途中900mぐらいの所にEl Timeのエイド(Torreta Forestal El Time、61.8km)がありますが、エイド以降はテクニカルな岩ゴロゴロのトレイルに変わるので、スピードが出しづらかったです。

外国人選手はトップ選手以外はそんなに下りが得意じゃ無いと聞いていましたが、確かにその通りでした。ただ私の後方にいるはずのHanaは登りが強いので、最後に追いつかれたら絶対いやだと思って、出来るだけ下りで貯金を作る作戦で頑張って下りました。足首はテーピングで固定していたので、強気で下れましたし、もうここで頑張るしかないと思って、死ぬ気で下りました。

ただ、前半ずっと砂礫の中を走って、細かい砂が靴下や靴の中に入っている状態で、何度も水をかけてもらって、靴も靴下もびしょ濡れ状態でここまで走ってきて、更にあらゆる方向から石に圧迫されて、足裏が傷だらけになっているのではないかと言うぐらい痛かったです。でもこれはみんな同じだと思って気にせずに走っていると、段々町に近づいてくる高揚感と真っ青な海を眺めながらどんどん高度を落としていく興奮で忘れてしまいました。

そして最後のエイドであり、マラソンカテゴリーのゴールでもあるPuerto de Tazacorte(68.4km)に到着!ここがゴールだったらいいのにと思う大歓声で迎えられ、水もかけてもらってシャワーブースを走り抜けます。気温は高いですが、海からの風が抜けて気持ちいいです。

Kaori-Niwa-2015-Transvulcania5

そして問題はここから。下りでかっ飛ばしてきた脚に追い打ちをかけるように、水の無い河川の砂利の道を1キロ以上走らされます。とんでもない所を走らせるなと思って驚きました。でもあと6キロほどだからと思って、最後の力を振り絞って細かいステップで走り続けます。途中で追い抜いた男性は呪いの言葉を吐きながら歩いていました。やっと両サイドが地層の壁のような所を抜けて、ロードに出たときは、こんなにロードが嬉しいと思ったことが無いぐらい嬉しかったです。

そこから走れると思ったのも束の間、最後の登りが始まります。石畳と舗装路ですが結構な傾斜です。それでも村の人たちの応援に励まされながら、上に見えている町を目指して黙々と走ったり歩いたりを繰り返し、やっと普通の道路に出ました。

そうしたら延々続く長いまっすぐな道の両脇に多くの人が待っていて、やった、ゴールまであと少し!とテンションも上がって呼吸も少し乱れました。自分を落ち着かせて呼吸を整えて、私の心肺機能が最後まで持ちますようにと祈りながら、最後のストレートを必死で走ります。なんとか10時間切りたい!その思いだけで一生懸命走るのですが、さすがにペースが上がりません。しかも最後の直線が長い。ゴール手前は長い赤いカーペットが続きます。

Kaori-Niwa-2015-Transvulcania8最後の最後まで走り切れましたが、ゴール手前で10時間になってしまい、あとは周囲の観客とタッチしながらフィナーレを楽しみました。こんな多くの歓声に包まれてゴールするのは初めてのことで、達成感と歓喜で涙があふれそうでした。あの感動は一生忘れられないと思います。

 

 

反省点としては、前の方からスタートすることと、El Reventón(27.6km)でしっかり給水することです。あとは登りの強化ですね。やはりトップ選手は登りがとんでもないです。

気候も過ごしやすく、景色も絶景が楽しめるし、島をあげてのお祭り騒ぎで非常に楽しいレースだと思います。海外レースは初参戦でしたが、この島は天体観測でも有名だし、ハワイのような島なので、バカンス込みで楽しめました。

日本ではあり得ない数の観客と歓声、レースの盛り上がり方、規模などを是非体感して欲しいです。ウルトラクラスのエントリーはすぐに定員になるので、来年参加したい方は早めのエントリーをオススメします。この感動を出来るだけ多くの方に味わっていただきたいと思います。

エイドステーション

  • Fuencaliente, スタート
  • Los Canarios, 6,1km ドリンクのみ
  • Las Deseadas, 16,5km ドリンクのみ
  • El Pilar, 24,1km ドリンク・フード
  • El Reventón, 27,6km ドリンク
  • Pico de la Cruz, 43,8km ドリンク・フード
  • Roque de Los Muchachos, 50.9km ドリンク・フード
  • Torreta Forestal El Time, 61.8km ドリンク・フード
  • Puerto de Tazacorte, 68.4km ドリンク・フード
  • Los Llanos, 73.3km <ゴール>ドリンク・フード

装備編

  • Kaori-Niwa-2015-Transvulcania1靴:Salomon Sense Pro
  • バッグ:Salomon S-lab Ultra 3L
  • 上:Salomon S-lab タンク
  • 下:Salomon S-lab スコート
  • アームカバー:Finetrack ラピッドトレイル
  • グローブ:Salomon XT wings glove wp
  • ソックス:Salomon EXO S-LAB
  • アンダーウェア:Finetrack フラッドラッシュスキンブラ
  • ヘッドギア:現地調達のヘッドバンド
  • シェル:Salomon ファーストウィング(スタートまで着用)
  • 時計:Suunto Ambit と心拍ベルト
  • ポール:Black Diamond ウルトラディスタンス(腰に装着するためにUltraAspineのベルトとショックコードを使用)
  • ☆ヘッドランプ:Silva Trail Runner2
  • ☆テールフラッシュライト:ラフウェアの犬用のフラッシュライト
  • ☆エマージェンシーブランケット:Salomonのザックに付属しているもの
  • ☆ハイドレーション:Salomon 500ml フラスク2本
  • ☆携帯:simフリー携帯に現地で購入したsimカードを入れたもの
  • ファーストエイドキットとポケットティッシュ
    (☆は必携装備でスタートではチェックが無いが、途中のエイドですべてチェックされる)

行動食、サプリメント

Kaori Niwa Square2プロフィール・丹羽薫(にわかおり):京都府在住。スキーのトレーニングのために始めたランニングで才能を発揮し、昨年はUTMFで8位、スリーピークス八ヶ岳3位、野沢温泉3位、FAIRY TRAIL びわ湖高島優勝。今年も各地のレースに参加するほか、サロモン神戸店やアドベンチャーディバズのイベントで女性に山の魅力を伝えていく予定。

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