比叡山インターナショナルトレイルラン 2016 プレビュー #Hiei50k

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滋賀と京都を隔てる比叡山で比叡山インターナショナルトレイルラン(比叡山50k)が今週末の5月28日土曜日に開催されます。日本における密教の始まりの地である延暦寺の神秘、修行のイメージに加えて、京都、大津の街から近い京阪神ではなじみの山で開催されるこの50km / 3,700mD+のトレイルランニングレースは、昨年の第一回大会から人気を集めています。今年は10月にポルトガルで開催されるIAUトレイルランニング世界選手権日本代表選考レースの一つともなっています。この記事では今年の比叡山50kに集まる有力選手をご紹介します。

当サイトでは、大会当日に比叡山50kの途中経過やリザルト、上位選手の表情を現地からライブ速報でお伝えする予定です。DogsorCaravanのツイッターアカウント(@DogsorCaravan)をフォローしてお楽しみください。Facebookページでも数時間おきに情報をダイジェスト版でお伝えする予定です。

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(Photo courtesy of Mt. Hiei Trailrunning Comittee)

琵琶湖の眺めは美しいが、激登りが修行のイメージを裏切らない挑戦しがいのあるコース

Hiei-logo比叡山50kは延暦寺根本中堂をスタート・フィニッシュ地点とし、根本中堂を中心に8の字のコースとなっています。スタートは午前9時と午前9時20分の二つに分かれてのウェーブスタート。

根本中堂から比叡山山頂(大比叡、848.3m)に向かい、修学院方面へ下ります。水飲対陣跡を経て石鳥居に登り返して、北白川方面へ。7km地点手前(標高250m付近)で登り返し、第一エイドのロテル・ド・比叡前(9.8km地点、標高560m)へ。ここからは東の大津側へ向かい、無動寺明王堂の前を通り、日吉東照宮(16km地点、140m)までの下り。境内に上がって坂本ケーブルの南側の急な上り返しで根本中堂に。ここが第二エイド(19.5km地点、670m)となります。

残る30kmが8の字の上半分のループとなり、根本中堂を北上して釈迦堂、瑠璃堂の前をとってから黒谷越で八瀬方面に降ります。24.3km地点(標高300m)でせりあい地蔵への急坂の登り返しはコース最大の難所です。せりあい地蔵前に給水ポイント(26.2km地点、750m)です。ここからは横高山、水井山、仰木峠、小野山、大尾山と稜線上を進んでから、滝寺へと降りると給水ポイント(33.4km地点、460m)があります。

ここからは舗装林道の登りとなって第3エイド・仰木(37.3km)。仰木峠からはロードの下りで41.5km地点付近、標高240mあたりまで下りて比叡山ドライブウェイの下をくぐると登りに転じます。横川中堂(標高600m)を経て、比叡山ドライブウェイに面した横川駐車場が第四エイド(44.7km、640m)です。ここからは谷に3kmほどを林道で下り、最後に登り返して根本中堂にフィニッシュします。この第4エイドから最後の根本中堂への登り返しに入るまでの約4kmは昨年のコースからは変更されています(変更前後のコースの比較図はこちら<PDFへのリンク>)。

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大会ウェブサイトに掲載されている変更後のコースマップ。

昨年の第一回の優勝タイムは男子が6時間10分36秒(土井陵)、女子が7時間7分21秒(丹羽薫)でした。今年は上記の通りコースが一部変更されていることもあり、優勝タイムはより短縮されるでしょう。一方、コースに含まれる急坂の登りを考えると制限時間の11時間は多くの参加者にとってややハードルが高く、完走に向けて挑戦のしがいがあるレースだといえそうです。

男女優勝者はIAUトレイル世界選手権の代表内定に

JUA-logo今回の比叡山インターナショナルトレイルランは2016年のIAUトレイルランニング世界選手権の代表選考レースの一つとなっています。今年の世界選手権は10月29日(土)にポルトガル北部・ブラガを拠点に開催される85kmのトランス・ペネダジェレス / Trans Peneda-Gerêsで行われます。

日本ウルトラランナーズ協会(JUA)の選考基準によれば、今回の奥三河の男女優勝者は日本代表に内定となります。その他、2位、3位の選手についても他の代表選考レースの結果を受けて日本代表に選考される可能性があります。詳細はJUAのウェブサイトに掲載されている代表内定基準をご覧ください。

今回の比叡山を走る有力アスリート

日本代表選考レースとなったこともあって、先月の奥三河70kと同様に今回の比叡山50kにも有力選手の皆さんが集まります。

女子 / Women

女子のレースは、今の日本のトレイルランニング界で注目される4人がどんなレースを繰り広げるかに注目です。

5月3日の上田VKで圧倒的なタイムで優勝した吉住友里 / Yuri Yoshizumiは今回の比叡山50kで最注目のアスリートでしょう。大阪在住の市民ランナーでこれまでロードレースで活躍し、フルマラソンのPRは2時間37分。先日の上田VKや幻の記録となった今年のハセツネ30kのタイムをみても、その走力は今の日本の女子トレイルランニング界では並ぶ選手はいないといえます。最近はトレイルの下りにも慣れてきたといい、今回も何かのブレーキがかからなければ圧倒的なタイムでフィニッシュする可能性があります。フルマラソン以上の距離を走るのは今回が初めてとなります。高村貴子 / Takako Takamuraは昨年からトレイルを走り始めた大学生で、昨年はハセツネカップで3位、今年もハセツネ30kで2位、上田VKで2位に。50kmという距離になったことで吉住を上回れるかどうか。丹羽薫 / Kaori Niwaは昨年のUTMFで4位、Transvulcaniaで8位と国際的な大会で実績を上げて、当サイトの日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー(TROYJ)稲葉賞を受賞。長距離の山岳レースに強い選手で、昨年のこの大会では2位に1時間21分差で優勝。7月に控えたスカイランニング世界選手権に向けた仕上がりもきになるところです。そして、2013年、14年にTROYJ・稲葉賞を連続受賞した大石由美子 / Yumiko Ohishiは先月の奥三河70kで優勝してクイーンの存在を示しました。一昨年の膝のケガからの回復も順調ですが、IAUトレイル世界選手権の日本代表の座は奥三河70kで手にしたことを考えると、今回は無理なレースはしないと考えられます。

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吉住友里 / Yuri Yoshizumi

高村貴子 / Takako Takamura

高村貴子 / Takako Takamura

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丹羽薫 / Kaori Niwa

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大石由美子 / Yumiko Ohishi

この4人に続いて上位を目指すことになりそうなのは次の皆さんです。

  • 折戸小百合 / Sayuri Orito:昨年の比叡山50kで2位、峨山道で4位。先月の奥三河70kで10位。
  • 安田直子 / Naoko Yasuda:昨年はFAIRY TRAIL びわ湖高島40kmで4位、花背トレイルラン25km優勝、STYで10位。
  • 亀谷里紗 / Risa Kametani:昨年のスリーピークス八ヶ岳23kで4位、花背トレイルラン25kmで2位、TOGA天空トレイルランロング8位。
  • 上田愛 / Megumi Ueda:昨年Tokyo成木の森で優勝、トレニックワールド越生とき川50kで5位。今年の青梅高水山トレイルランで3位に。
  • 小笠原望 / Nozomi Ogasahara:今年の東丹沢宮ヶ瀬で7位、青梅高水山15kで7位。
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男子 / Men

男子のレースにも実力あるランナーが揃います。優勝候補を絞り込むのも難しい顔ぶれとなり、当日の展開はファンにとって楽しみなものとなりそうです。

優勝候補としてまず名前が挙がるのは近藤敬仁 / Yoshihito Kondoです。2013年ITJ優勝、2012年ハセツネ2位など国内で豊富な実績を持ち、昨年のスカイランニングアジア選手権・Sai Kung 26kでは2位、フランスのトンプリエで13位となっています。先月の奥三河70kではレース序盤をリードしましたが、途中でリタイア。トラブルがなければ今回もレースをリードするでしょう。対して大瀬和文 / Kazufumi Ooseは昨年のUTMFで6位、今年のHong Kong 100で7位。先月の奥三河70kでは3位でしたが、今回は優勝で日本代表内定を目指しているはずです。その奥三河70kの出場を仕事の関係で見送っていたのが大杉哲也 / Tetsuya Osugiでした。2013年ハセツネカップで2位、昨年のSTYで3位の大杉は大阪在住で地元では大阪府チャレンジ登山大会(ダイトレ)で六連覇中で有名な存在。滋賀に住んだこともある大杉にとってホームともいえる比叡山で勝利を勝ち取りたいという思いはあるに違いありません。同じ滋賀で開催のFARIYTRAILでは2014年・2015年と連勝しています。さらに優勝争いに食い込みそうなのが鬼塚智徳 / Tomonori Onitsukaです。九州の実業団で活躍した鬼塚は2014年STYで3位となり、昨年はスパトレイル優勝、OSJおんたけウルトラ100kで2位、UTMFで11位とトレイルでも持ち前のスピードを発揮しています。コース変更で走りやすくなった終盤に勝負がもつれ込めば鬼塚には有利といえるでしょう。

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近藤敬仁 / Yoshihito Kondo

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大瀬和文 / Kazufumi Oose

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大杉哲也 / Tetsuya Osugi

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鬼塚智徳 / Tomonori Onitsuka

しかし優勝争いはこの4人だけで優勝争いは済まない、といえそうです。昨年のこの大会で優勝した土井陵 / Takashi Doiにとってはその後の上州武尊山120k優勝を経てUTMBで12位という結果につながった縁のある大会。今回の比叡山は今年の土井の活躍を占う場となります。須賀暁 / Satoru Sugaは昨年にITJで5位、蔵王温泉スカイレースで優勝、TNF100 Australiaで26位。先日の赤城山トレイルランで圧勝し、今シーズンは順調な様子。ここに加わるのが九州をベースにするスピードランナーです。小林誠治 / Seiji Kobayashiは実業団のマラソン選手としてフルマラソンで2時間10分38秒(2009年別府大分)という自己ベストの持ち主。昨年6月の菅平42kで7位になっています。同じく九州の実業団のランナーだった河野健一 / Kenichi Kawanoも今回の比叡山50kに参戦。こちらも昨年の菅平42kでは上田瑠偉に続く2位に入っています。さらに長崎県をベースとする川崎雄哉 / Yuya Kawasakiは地元の多良の森で昨年と今年連勝、昨年10月の西米良スカイランニングクエストで2位、昨年のRedBull白龍走で優勝。同郷の宮原徹がその素質に注目するという登りの実力の持ち主です。そして、この比叡山50kのためにアメリカ・コロラドからジョー・グラント / Joe Grantが来日します。レースでは2012年のHardrock 100で2位、2013年のJavelina Jundred 100で3位。世界各地のトレイル、極寒の雪上レース、FKTなどマルチな活躍で知られており、2013年に来日した際には比叡山のトレイルも走っているほか、2014年にはUTMFを28時間37分で完走。最近ではMTBで750マイルのトレイルを走るArizona Trail Raceを完走しています。日本のトレイルランナーとどんなレースを繰り広げるかに注目です。

UTMBを12位でフィニッシュした土井陵 / Takashi Doi。

土井陵 / Takashi Doi

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ジョー・グラント / Joe Grant

その他、注目のランナーは次の通りです。

  • 伊藤健太 / Kenta Ito: 昨年の比叡山50kで3位。昨年は奥三河で2位、峨山道3位、スパトレイル3位、OSJ山中温泉優勝、ハセツネカップ7位。
  • 新名健太郎 / Kentaro Shimmyo:昨年、OSJ奄美ジャングルトレイル50kで2位、峨山道トレイル74kで6位、びわ湖バレイスカイレースで5位。高島トレイル、大峰奥駈道、OTN(小浜TO那智)などのルートで最速記録(FKT)を保持。
  • 井上隆詞 / Takashi Inoue:OSJ新城ダブル64kで2015年11位、2016年3位。2015年奥三河で5位。
  • 今西泰彦 / Yasuhiko Imanishi:OSJおんたけウルトラで2013年に100kで2位、2014年に100マイルで優勝。
  • 谷北勇二 / Yuji Tanikita:OSJおんたけウルトラで2013年100マイル優勝。
  • 和田優一 / Yuichi Wada:今年の上田VKで7位。
  • 佐藤圭介 / Keisuke Sato:昨年のスカイランニング日本選手権・美ヶ原80kで7位。
  • 水越友洋 / Tomohiro Mizukoshi:2015年みなかみスカイビュー60kで4位、スパトレイル7位。今年のOSJ奄美で5位。
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(エントリーリストに名前があるが出場を見送る選手)

  • 三浦誠司 / Seiji Miura:昨年の比叡山50kで6位。
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