「大西洋の真珠」でスーパーテクニカルな50km。星野由香理のウルトラスカイマラソン・マデイラ / Ultra SkyMarathon® Madeira 2016 レースレポート

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【編者より・星野(福田)由香理 / , née Fukuda さんから6月4日に出場したウルトラスカイマラソン・マデイラ / Ultra SkyMarathon® Madeira(USM)のレースレポートを寄稿していただきました。北大西洋・マデイラ島(ポルトガル)で開催されたこの55kmのレースはスカイランナー・世界シリーズ / Skyrunner® World SeriesのULTRAカテゴリーのひとつとなっており、星野由香理さんは女子9位の好成績をあげました。昨年はスカイランニング日本選手権(美ヶ原80k)で優勝、UTMFで6位、ハセツネCUPで2位、海外でもハワイの100マイルレース・HURT100で5位など活躍する星野由香理さんの今年の大きな目標は来月7月22–24日にスペイン・カタルーニャで開催されるスカイランニング世界選手権(Buff Epic Run)です。スカイランニングの本場といえる欧州でのレースで世界選手権に向けてどんな手応えをつかんだか?星野さんのレポートをご覧ください。】

(写真はいずれも星野(福田)由香理さん提供)

スカイランナー・世界シリーズ / Skyrunner® World Series (SWS)はVertical、Sky、Ultra、Extremeの4つのカテゴリーに分かれ、ポイントランキング形式で年間チャンピオンを決めるスカイランニングのシリーズ戦です。各カテゴリーごとに年間を通して世界各地で3〜8戦開催され、私は今回Ultraのカテゴリーであるウルトラスカイマラソン・マデイラ / Ultra SkyMarathon® Madeira(USM)に参加してきました。

7月にスペインで開催されるSkyrunning World Championship(スカイランニング世界選手権)に出場する前に一度ヨーロッパの山を走ってみたいと考えていました。世界選手権に向けたタイミングを考え、そして少しでもトップランナーの集まる大会の雰囲気を感じておきたかったことから、この大会に参加することを決めました。

「大西洋の真珠」マデイラ島へ、予想外のハプニングも

ポルトガルのリゾート地であるマデイラ島。エメラルドグリーンに輝く海から、瑞々しい森を持つ山々が連なり、白とオレンジを基調とした家がその山肌に立ち並ぶ、「大西洋の真珠」と表されることもあるとても美しい島です。このマデイラ島のサンタナ / Santanaという小さな町で、USMは開催されます。3回目の開催となる今年、初めてSWSの一戦となり、世界各国から年間ランキング上位を目指すトップランナーも集結しました。

年間を通して温暖な気候のマデイラ島。USMが開催される6月初旬も日中太陽に照らされると陽射しの強さを感じます。しかし、湿度が低いのでとても過ごしやすい気候です。

私はエミレーツ航空を利用し、成田からドバイでのトランジットを経てリスボンへ。リスボンからは国内線でマデイラ島のFunchalへ移動しました。成田を出発してから現地到着まで、トランジットの時間も含め約30時間。かなりの長旅で体が固まってるかんじがしたので、ホテルに着いてからすぐに街を散策がてらランニングに出かけました。初めての場所の地理感覚をつかむには、その街を走るのが一番です!

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マデイラ島の街は坂の上から見渡せる。

私がマデイラ島で滞在したのは、島で一番大きな街のフンシャル / Funchal。観光客も多く、ホテルやショッピングセンターなどもたくさんあります。マデイラ島は島全体がひとつの大きな山といった感じで、街の中は急坂だらけです。ここなら街中のジョギングだけでもかなり良いトレーニングができそうなほど。この坂の多い街に鉄道などはないですが、無数の路線バスがあります。日本と比べるとクルマの運転は荒い感じのこの島ですが、バスもものすごい急な下り坂をおかまいなしに勢いよく下りていきます。まるでジェットコースターに乗っているようで、私はバスに乗るときは必死に手すりにしがみついていました。

このフンシャルの街からUSMが開催されるサンタナまではクルマで50分ぐらいかかります。レンタカーで移動するには問題ないのですが、私はクルマを借りずに、レース当日の早朝はタクシーでサンタナへ、そしてレースが終わってからと次の日の表彰式へのサンタナとフンシャルの往復にはバスを使おうと考えていました。

ところがレースが開催される土日はフンシャルーサンタナ間のバスは運休!完全に調査不足でした!タクシーだと片道100ユーロ近く。そんなお金はもったいないので、レース後にサンタナでホテルを探すことに。でもサンタナは小さな町でホテルも少ないので、当日に空いているホテルが見つかるかすごく不安でした。

結局、レース後に町中を歩き回り、会場からすぐ近くのホテルにチェックインできました。ヨーロッパではお店などと同様、土日も運休になる交通機関もあったりするので(特に田舎は)、その辺りは行く前によく調べていく必要があるなと痛感しました。

レースがスタート、真っ赤な朝焼けに感激

レース当日は午前4時にフンシャルからタクシーに乗って会場に向かいました。6時にスタートで、5時ちょっと前に会場に到着。おそらく会場には一番乗りだったと思います。5時半から開会式が始まる予定で、5時を過ぎたあたりからポツポツ選手が集まり始めました。日本からは私を含め3名が参加。この大会に参加する日本人は、私たちが初めてだったと思います。

スタート前には装備チェックがあります。このレースには必携装備がいくつかあって、そのうちの3点ほどをスタートラインに並ぶ前に見せて、OKが出れば中に入れてもらえます。そして、トップ選手などの紹介を聞きながら、刻々と迫ってくるスタート時間を待ちます。気温はどれぐらいか分かりませんが、私はスタートから半袖短パンのスタイル。まだ夜明け前でちょっとだけ肌寒さを感じました。シェルなどを着ている選手も多かったです。

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午前6時のスタート前。笑顔でスタートを待つ。

そして午前6時、いよいよスタートです!まずはサンタナの町中を行くのですが、本当に急坂が多く、斜度15%以上はあるような坂道を越えながら、登山口へ進みます。登山道に入ってからのほうが、傾斜は緩かったのではないでしょうか(笑)。登山口から最初は砂利も混ざった緩やかな登り。ただ、周りのペースが本当に速く、私はこの登りで走っているのに、歩いている外国人ランナーにバンバン抜かれます。もちろん女性ランナーにも。欧州のランナーたちのパワーを感じる瞬間でした。

午前6時半頃、少しずつ空が白みはじめ、森を抜けて稜線に出たのは7時過ぎ。雲海から真っ赤に光り輝く素晴らしい朝陽を見ることができました。レースじゃなかったら10分でも20分でも立ち止まって、太陽が昇りきるまで見ていたいと思うぐらい、本当に美しい朝陽でした。でも、これはレースなので立ち止まらずに走り続けます。ただ、こんな光り輝く中を走れることも本当に幸せなこと!今ここにいられること、ここを走れていることに感謝せずにはいられませんでした。

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スタートからしばらくすると目の前に朝焼けが広がった。

眼下に広がるエメラルドグリーンの海に向かって駆け下りる

このレースのコースプロフィールは、標高425mのサンタナをスタートして前半にピコ・ルイヴォ / Pico Ruivoというマデイラ島最高峰(1,862m)に登り、そこから海抜10mまで海を目指して一気に下り。後半は里山を巡りながらアップダウンを繰り返し、またサンタナに戻ってくるというコース。前半がまさにスカイランニング、後半は里山レースといった感じです。

陽が昇って稜線に出てからは、気持ちのいいトレイルもあれば、激しい岩場のセクションもあります。本当に崖のようなところでは、山岳レスキューの人たちに見守られながらロープにつかまって進みました。「スーパーテクニカル」。後でみたISF(国際スカイランニング協会)のホームページでこのように紹介されていました。もちろんすごくキツい。でもワクワク感満載かつ絶景のトレイルを登っていくと、スタートから約13kmでピコ・ルイヴォに到着します。

この島で一番高い場所。山頂にはUSMののぼり旗と、声援を送ってくれるたくさんの観客。あの盛り上がりは、この大会がワールドシリーズであることを強く感じた瞬間だったかもしれません。

そしてここからは、標高差約1,850mのダウンヒル!一番高い場所から、海に向かって駆け下りていきます。下りにはそれほどテクニカルな場所はなく、走りやすい森のトレイルから、林道になり、町に入ります。やっぱり町の坂の方が急!ここに来てのこのロードの下りは、脚へのダメージがかなり大きい。それでも、だんだん近づいてくるエメラルドグリーンに透きとおる海には、テンションが上がらずにはいられません。このまま海に飛び込みたい!天気が良く日差しが強かったこの日。ここでレースが終わっていたら、絶対飛び込んでました。

後半は霧雨の中、神秘的な森を走る

と、ここまでがいわゆる「スカイランニング」らしいコース。残りの20kmは標高1,000m以下の山に登ったり下りたりを繰り返します。キツい登りが続いたり、川の中をじゃぶじゃぶ進むような場所もありました。普通に川の真ん中に、コースの目印となるポールが立っていて、時には腰まで水に浸かりながら、コースマーキングの示すままに進んでいきます。でも、これが本当にいいアイシングになったみたいで、疲れていた脚もここからまた復活したように思います。

この川を越えたところからひとつ山を登ると、そこからはほぼフラットな森の中をひたすら走る走る!脚が復活してすごく気持ちよく走れました。この辺りからは雲がかかり、霧雨の中、山は神秘的な雰囲気を醸し出す森になりました。

マデイラ島の山の中には用水路がたくさん通っていて、その用水路の脇がコースとなっています。時には道が狭くなって用水路に落ちそうになりながらも、スピードを落とすのはもったいないほどの走れるセクションです。ここを終えると最後のエイドとなり、ゴールへ向かって下っていきます。

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用水路の脇がコースとなっていた。

最後は畑の中だったり、人の家の庭(?)みたいな場所だったり、とにかくなるべくロードを通さないように試行錯誤、工夫した様子がうかがえます(笑)。町に戻ってからもやっぱり平坦な場所はなく、最後の最後までアップダウンを繰り返し、ゴールへの直線も緩やかな登り!この登りが本当にキツく感じたけど、最後だから歩くわけにもいかず、大音量の音楽と歓声が響くゴールゲートまで走り切りました。

世界シリーズ戦で9位に入る快挙

55km、累積標高4000m、8時間3分28秒という長いようで短く感じた旅でした。自然の中も町の中も、山も川も海も、テクニカルな岩場も走りやすいトレイルも、真っ青な空と太陽の稜線も霧がかった潤いの森も、全てを55kmにギュッと凝縮したような、全てを味わいつくせるような、そんな旅になりました。

ゴール後には、もう一度装備チェックがありました。その後のゴールの様子を見ていると、おそらく表彰対象の選手にチェックをしていたようです。私はこの大会で9位入賞をすることができました。ただタイムや順位はともかく、自分のレースの内容には満足はしていません。スカイランニングの本場で最初からグイグイ攻める周りの選手たちに圧倒されてしまい、「出し切った」という気持ちがゴール後に持てませんでした。

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9位となった星野由香理が女子の表彰台に立った(右端)。

でもこの経験ができて本当によかった。今回の経験で改めて自分の弱い部分、足りないものが分かりました。そしてこの雰囲気を世界選手権の前に体験できたのは大きな収穫でした。

運営には工夫の余地も、でも大会を盛り上げようという熱意を感じた

大会翌日の表彰式は真っ青な空の下で行われました。男子の優勝選手を含め、表彰対象の選手が数人いなかったのが少し残念。フィニッシュから随分時間が空いてしまったためのようです。今年はスカイランナー世界シリーズになったことから、参加者が増え、海外からも多くの選手がやってきたこともあってか、預けた荷物の受け渡しがスムーズにいかないなど、ちょっとした運営面での滞りもあったようです。

ただ、レース当日は十分なスタッフと十分なエイド、そしてコースマーキングがすばらしく丁寧でした。こんなふうにしっかりマーキングしてあれば、迷うことは絶対にないと感じました。スタッフの方々もみんなとても親切で、明るくて、みんなでこの大会を盛り上げようという雰囲気が伝わりました。これから、ますます人気の大会になっていくと思います。

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フィニッシュラインで多くの人がランナーを迎える。

スカイランニングをやっていなかったら、おそらく一生来ることがなかったかもしれないマデイラ島。すてきな街並みとすばらしい自然。ポルトガル料理は日本人の口にも合うと思います。レース後に、サンタナの市長さんから「来年は日本人を10人連れてきてね」といわれました(笑)。「大西洋の真珠」で行われるこの大会に興味を持った方はぜひ一度走ってみてもらえたら、と思います!

星野(福田)由香理
プロフィール:星野(福田)由香理 / Yukari Hoshino , née Fukuda トレーニング&コンディショニングコーチとして初心者からトップアスリートまでの指導や助言にあたりながら、自身もスカイランニング、トレイルランニングで活躍。2012年ハセツネ・カップ5位、OSJおんたけウルトラ100Kで3位、2014年スリーピークス八ヶ岳2位。昨年2015年はITJ、美ヶ原80kで優勝、ハセツネ・カップ2位、UTMFで6位と活躍。2014年と2015年に日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー特別賞を受賞、2015年スカイランナー・ジャパンシリーズ年間ランキング3位。今年も上田VKと経ヶ岳バーティカルリミットで3位、Korea 50k優勝。現在、RunFieldコーチングスタッフ、獨協大学アメリカンフットボール部トレーナー。中京大学体育学部卒。
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