ITRAが回答を公表、「UTMBのポイントのためにカネは払わない」というハードロック100などの見解に対して

【編者より・アメリカのハードロック100()がから、資格ポイントを認められるためにITRA(国際協会)による有料の審査を受けるよう求められた、としてハードロック100など9つのアメリカのトレイルランニング大会が「UTMBの側で資格レースにするのは構わないが、そのために自分たちがカネを払うつもりはない」とアメリカの代表的な雑誌のウェブサイト(Ultrarunning誌Trailrunner誌)で表明しました(当サイトの紹介記事はこちら)。これに対して、7月3日にITRAは2誌に掲載された見解に対しての回答をプレスリリースにより公開しました。この記事ではそのプレスリリース全文の日本語訳を掲載します。この日本語訳は当サイトが独自に行ったもので、ITRAによる公式の日本語訳ではありません。ITRAのプレスリリースの原文は以下のリンクからご覧ください(フランス語英語スペイン語)。なお、当サイトはUTMB®︎の公式メディアパートナーであり、当サイト編集人の岩佐はITRAのランナー枠の日本代表を務めています。】

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プレスリリース、2017年7月3日

ultrarunning.comおよびtrailrunnermag.comに掲載されたアメリカの9大会主催者の見解に対する回答

ITRAではultrarunning.com(6月27日掲載)およびtrailrunnermag.com(6月29日掲載)の記事について主催者各位のご意見をお待ちします。

1.「カトリーヌ・ポレッティとその夫であるミシェルがUTMBとITRAのオーナーである」との記述について

記述は事実に反します。カトリーヌ、ミシェルの夫妻はITRA、UTMB®︎のいずれのオーナーでもありません。ITRAは協会(association)であって運営委員会(Steering Committee)と役員会(Executive Board)によって運営されています。ミシェル・ポレッティは現在、協会の会長に選任されています。カトリーヌ・ポレッティはITRAの創立メンバーの一人ですが、協会内部での意思決定に関与する立場にはありません。

UTMB®︎は「Autour du Mont Blanc」有限責任会社とモンブラン・トレイルランナーズ協会が共同で主催しています。カトリーヌとミシェルは「Autour du Mont Blanc」有限責任会社の共同マネージャーであり、UTMB®︎の共同レースディレクターを務めています。

2. 「UTMBとITRAは明らかに営利企業であり、その売り上げは数百万ユーロに達するとみられる」との記述について

ITRAはスイス法に基づく非営利の協会です。その財務報告書は2017年6月11日に行われた総会において全出席者に提示されました。(財務報告書を含むITRAについての情報は総会での説明資料に詳しく説明されています。こちらをクリックしてご覧いただけます。)

UTMB®︎の運営組織の予算は「Autour du Mont Blanc」有限責任会社によって管理されており、その年次財務報告はフランス当局に提出しています。

3. 「UTMBはトレイルランニング大会に対して、資格ポイントを得たいならITRAに年会費を支払うよう要求している」との記述について

事実に反した記述です。ITRAは個々のランナーや大会主催者に各種のサービスを提供しており、レース審査システムはそのサービスの一つです。これらのサービスは会員資格を維持していることを条件に提供していますが、会員となっていない主催者にも希望する場合には提供しています。

自らの大会にエントリーするために資格を設けるかどうか、大会主催者は自分で判断します。どのレースを走れば自分の大会のエントリー資格を満たすことにするのかどうか、自分の大会がITRAの審査を受けるかどうか、は主催者の判断することです。UTMB®︎の資格レースとなるためには何の費用も必要としません。

4. 「キリアンはUTMBに必要な資格ポイントを満たしていない」との記述について

UTMB®︎ではキリアン・ジョネット選手が必要な資格ポイントを獲得していることを確認しています。キリアンの競技における成績とハードロック100の完走者が少数(110人から125人)であることを考慮して、UTMB®︎はハードロック100について特別の措置としてすでに開催済みのハードロック100について資格レース(6ポイント)とすることを決定しました。このUTMB®︎の決定については、ハードロック100のレース・ディレクターであるデール・ガーランド氏の了解を得ています。これにより、キリアン・ジョネット選手が2017年のUTMB®︎に参加するために必要な資格ポイントを満たしていることになります。

当該記事(訳注・ultrarunning.comおよびtrailrunnermag.comに掲載された記事)によって提起された議論に関連して、疑問に対して正確に答えるためにITRAの組織と業務について以下説明いたします。

事実関係について

2017年3月19日にITRAではUTMB®︎からの電子メールを受信しました。そこにはハードロック100をUTMB®︎の資格レースとするというUTMB®︎の提案をハードロック100が受諾した、と記されていました。それと同時に、UTMB®︎からハードロック100のレース・ディレクターに対して、ITRAからその組織や業務についての説明を聞いてみてほしい、と提案し、その提案は受け入れられました。

3日後、ITRAは約束通りにハードロック100に対して、ITRAの組織と使命について説明する電子メールを送信しました。そのメールに対してITRAへは何の返信もなかったため、ITRAではハードロック100はITRAに加わる意思がないと判断しました。やりとりはここまでで、その後は何も起こっていません。

現時点では、ハードロック100はITRAの会員ではなく、ITRAによる審査も受けていません。

ITRAの組織について

ITRAは国際的な非営利団体です。発生した剰余金は全てITRAの活動のために再投資されています。

ITRAのメンバーはランナー、大会主催者、各国の競技団体となっています。現時点では、創立メンバーが14名、各国競技団体のメンバーが14名、大会主催者のメンバーが874名、ランナーのメンバーが3,198名で、計84カ国にわたります。

大会主催者とランナーについては86人の各国代表が、各国の大会主催者とランナーのメンバーによる2年毎の選挙により選ばれています。

ITRAは民主的に選ばれたメンバーからなる運営委員会(Steering Committee)により業務方針を決めています。運営委員会は創立メンバーから2名、各国競技団体メンバーから8名、大会主催者メンバーから8名、ランナーのメンバーから4名の計22人から構成されています。

日常的な業務執行は役員会(Executive Committee)が行い、役員は会長、4名の副会長、事務局長、会計責任者から構成され、そのメンバーは運営委員会により選出されます。現時点ではミシェル・ポレッティが会長を務めています。

選任されて役職に就くITRAのメンバーは全てボランティアで、ITRAの中での役割に伴う報酬は受け取っていません。一方、4人の専従およびパートタイムの職員が業務にあたっています。

ITRAの会則についてはこちらをご覧ください

ITRAはどのように運営されているのか?

ITRAではメンバーに対して各種のサービスを提供していますが、全ての大会主催者とランナーに無償で提供しているサービスもあります。ITRAのサービスに関するアカウントは大会主催者が918、ランナー向けの無償のアカウントは29,474に達しています。

ITRAではトレイルランニングに関する各種の課題について多数の委員会を設立して活動しています。

健康管理委員会(The health commission)

医師と研究者によって構成され、トレイルランニングがランナーの健康にもたらす影響を調査し、ランナーのための健康管理プログラムを開発しています。

安全管理委員会(The security & safety commission)

大会を開催するにあたって主催者が準備すべき安全確保の手段を検討しています。この委員会が作成した安全管理ガイドラインはITRAのウェブサイトから6ヶ国語で全て無償でダウンロードすることができます

品質管理委員会(The quality commission)

大会主催者に自らの大会が国際的な品質基準に照らしてどのようなレベルにあるか評価するための手段を検討しています。まもなくその成果を公表する予定です。

ランキングおよび審査委員会(The ranking and evaluation commission)

ITRAの成績インデックス(Performance Index)やポイントの算出を行なっています。

  • 成績インデックスの算出方法を改善し、各種の要因を考慮して算出する方法を開発しており、まもなくその成果を公表する予定です。
  • 大会の審査はITRAのウェブサイトにアカウントを設け、そこから審査を申請することで行われます。アカウントの開設は無料で、主催者がITRAのメンバーになるかどうかを問いません。ITRAのメンバーとなる場合には年会費を支払うことにより当該年度の審査料は無料となります。メンバーとならない場合には審査料として100ユーロをお支払いただきます。審査は距離と累積獲得高度という定量化可能な要素のみに基づいて行います。
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委員会(The World Championships commission)
ITRAは世界選手権の開催にあたっての技術面、広報面での必要事項を取りまとめ、IAU(訳注・International Association of Ultrarunners、ウルトラマラソンの国際競技団体)および大会主催者と共有しています。世界選手権については大会主催者、IAUとともに主催者の一員となっています。

エリート選手委員会(The elite athletes commission)
運営委員会(Steering Committee)がエリート選手の活動に関連する戦略的な意思決定を行う際には、エリート選手からなる委員会に諮問し、その意見を求めています。

このほか、財務状況を含むITRAに関する情報は、2017年6月11日にバディーア・プラタリア(イタリア)で開催したばかりの総会におけるプレゼンテーション資料をご覧ください(リンク)。

ご注意いただきたい重要事項

ITRAでは審査を申請する大会主催者が提出するGPSのトラック・データに基づいて審査を行っています。ITRAが各大会に認めたポイントは、それをエントリー資格(一定基準以上のポイントを獲得していることを条件とする、など)としているレースにランナーがエントリーする場合に利用されます。ITRAのポイントを活用しているレースとしてはUTMF、®、Madeira Island Ultra-Trail®、UTMB、Trail Verbier Saint Bernard、Mauna to Mauna Ultraなどがあります。

ITRAは各大会の主催者が自らの大会へのエントリー資格となるレースを選ぶ自由を妨害する意図は一切持っていません。そうした選択はITRAの役割ではなく、各大会の主催者のみが持つ役割だと考えます。

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