[report] ほろ苦い展開と100マイルレースの魅力・UTMF/Ultra-Trail Mt.Fuji 2012を完走(1/2)

What you leave behind is not what is engraved in stone monuments, but what is woven into the lives of others.

– ペリクレス(495BC-425BC)、アテネの指導者

頭の中で思い描けば描くほど、事前の準備が入念であればあるほど、ちょっとした想定外の展開が思いがけずひどい方向につながってしまう。

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先週末の5月18日(金)にスタートしたUTMFは、当方にとって昨年のUTMBに続く二回目の100マイルトレイルレースへの挑戦だった。そして、昨年のUTMBに味をしめ、さらに思いがけない幸運に恵まれたこともあり、来月6月23日にはアメリカ・カリフォルニア州で行われる100マイルトレイルレース、Western States Endurance Run(WS100)にも参加する。

昨年のUTMBを這々の体ながらも完走した経験、その経験を元に進めた準備は、今回のUTMFでそれがどんなコンディションで行われようとも、自分が出せる最高のパフォーマンスにつながると思っていた。

そんな思いに来月のWS100への参加が加わったとき、自分の中に多少の野心が芽生えた。UTMFをWS100の制限時間である30時間以内にフィニッシュできればWS100に向けて自信をつけることができる。あるいはあと1ー2時間早くフィニッシュできれば、WS100を24時間以内でフィニッシュすることも展望できるかもしれない。

今思えば、このあたりから歯車は狂いだしたのかもしれない。

(スタート前)

前日木曜日、急な日帰りでの大阪出張から戻る足でそのままいつもの男塾メンバーの皆様と合流。のりさんの運転で富士吉田へ向かい、11時過ぎに宿に到着。気もそぞろに準備を始める。夜の富士山麓は想像していたよりも寒く、レースに使うジャケットと膝下丈のタイツをやや厚手に代えて準備を終え、さっさと寝る。

当日は受付の始まる10時にスタート地点の大池公園に到着。受付を済ませ、入念な装備チェックを受ける。次々と見知った人たちがあらわれるので、次から次へと挨拶。おまけにうれしいことにこのブログを見ているという方もわざわざ当方に声をかけてくださる。さらには昨年夏に入院されて以来、お会いする機会がなかった野崎御大にも久しぶりにご挨拶することができた。当方にとっては名実ともに日本におけるトレイルランニングのお祭りのようなイベントとなり、気持ちは興奮するばかり。しかし、この時間は一部の方は賢明にもそうされていたように、木陰の涼しいところにシートでもひいて寝転がっているのが正解かもしれない。

結局落ち着いたウェアと荷物。

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(スタート、気分よく走り始めるがいきなり大きく落ち込む)

土曜日の15時、UTMB仕込みの演出を経てUTMFがスタート。当方も走り始め、いいテンションで気持ちよく走り始める。次第に先行するランナーを抜き始めるが、いずれも当方よりずっと力のあるランナーばかりだ。自分の感覚では先月の石川弘樹さんのセミナーで同じコースを走ったときよりもずっとゆっくりだったはずだが、思いがけずペースが上がっているのだ。今思えば調子に乗ってどんどん前に進んだ自分が恥ずかしい。

調子に乗って序盤をぶっ飛ばす当方(左端、#189)写真はSky High Mountain Works・タクさん

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1A富士吉田市工業団地に16:53に到着してしまった。40位。想定していたタイムよりも大幅に早い。エイドステーションにおられた福田六花さんからも「さきはまだまだ長いから抑えて」と声をかけれられて苦笑い。エイドの先も地元の皆さんが軒先で声援を送ってくださるのでついがんばってしまう。

(日が暮れて夜の寒さで一度目の撃沈)

急なシングルトラックの登りが始まる大ザス峠まででさすがにスピードは落ち、後ろからやってくるナンバー二桁の選手達(すなわち速い人たち)に先を越される。杓子山まで登り切ると稜線上に出て、吹く風が冷たい。日も落ちてきている。昼間の暑さを想定して薄手のランシャツ、ランパン姿だったのだが、あっという間に寒気におそわれ、空腹感が出てきて体がふらつき始める。やむなくコース上に立ち止まって用意しておいた長袖シャツとひざ下丈タイツを着込み、ヘッドライトをセット。着込む途中で女子の有力選手、小川比登美さんに会う。

気分がしっかりしないまま、さらに先へ進むと急な岩場が登場。ここでは滝が原駐屯地の太田監督がコース上で選手に危険個所に注意を促されていた。当方も応援の言葉を頂戴して先に進むがまだlowな状態が続く。

石割山を越えるとすぐに林道に出る。走りやすいところで淡々とリズムを刻み初めてようやく調子が少し戻った気がした。今月、カリフォルニアのレースを連戦されたジローさんの背中が見えた。この後もしばらくジローさんとは前後しながらコースを進むことになる。20:30ごろ、A3山中湖きららに到着。チームぴれきちはピレーニーズのぴれ吉監督自らサポートに来ておられ、この後も各エイドでお見かけした。

(脚が重いナイトステージ)

あまり長居はせずに出発。しばらくはロードを東へ進む。今回はボランティアをされているErwanさんがおられた。須走までは16キロとやや長い。この区間はもう2年以上前に一度逆方向から走ったきりで、コースがどのようなものかイメージがはっきりしない。さほど大きなアップダウンはないのだが、序盤にオーバーペースの愚を犯したせいか特に登りで脚が重く、軽さを感じない。須走が近づくと富士山特有の黒い砂地のトレイルとなり、暗闇では少しコースもはっきりせず、マーキングが頼りだ。A4すばしりには23:07着。まずまず悪くないペースでたどり着けた。

エイドステーションは各選手のサポートをされる方もたくさんいて、当方も飲んだり食べたりしながらいろいろご挨拶したり上位選手の状況を聞いたり。OSJチームでSaekiさん、Takahashiさんもおられて、パワーバーのジェルブラストを頂戴する。ここまでのエイドでは飲み物の補給のほか、オレンジとバナナを中心に食べていたが、補給の核はやはりコース上でとるジェルだ。寒さが増してきた気がするので、防水ジャケットを取り出して着込んでから出発。

(初めて走る試走禁止区間、予想しないコースの様子に驚きつつ進む)

A4を出ると富士あざみラインの登りの車道を標高差で250mほど登る。暗闇で周囲には何も明るいものはない。無理に走らず、早歩きでリズムよく進むことに集中。

自衛隊の演習地のトラバースは緩いアップダウンを繰り返すのは予想通りだが砂地が多く足を取られる感じがする。また途中には枯れ沢のようなところを渡る箇所が何度かある。

ある程度進むと右への登りをスタッフの方から教えていただき、標高差200mほどの登りを進む。砂地で走りづらいところだが最後の太郎坊へ上り詰めるところでは上からたくさんの方の声援が聞こえてきて励まされた。

登ったところはA5富士山御殿場口太郎坊、00:52。もともと富士山に近い登山口で気候は安定しそうにないところだが、夜が深まってきたせいかとにかく寒い。食べ物も前までのエイドに比べるとあまり口に入らない。いろいろ特産の補給食もあったのだが、とりあえずそばを一口だけいただく。長居は不要とばかりに飛び出す。

しばらくまた暗闇の富士山スカイラインを走るとA6水ヶ塚に1:48に到着。ジローさんやアドベンチャー系ウルトラレースの先輩・Sekiさんに会う。補給するがあまりたくさん食べられない。ジェルもとっているのだが、糖分不足の状態がなかなか回復しない。長居せずに出発。

こどもの国へのトレイルはなかなか激しい。人が足を踏み入れる機会が少ないためかスキー場から先のコースはやや荒れた雰囲気。スピードも上がらない。林道に出てほっとしながら先を進むがエイドがなかなかあらわれない。富士山こどもの国の建物が見えてくるが、コースマーカーを追いながらたどるのだがなかなか付かない。

A7富士山こどもの国には3:23に到着。ドロップバッグの受け渡しもスムーズ。Sekiさんやジローさん、サポートでこられているバンビさんやKobaさんなどにぎやか。ドロップバッグにはいろいろ用意していたが、結局ジェルの補給とトレッキングポールをピックアップした程度。食欲は出ないままで吐き気まではしないが、補給しても効かないような感覚。しかし、次の水以外の補給が可能なA8西富士中学校までは26キロもあるので、オレンジやバナナを詰め込み、おにぎりも一個いただいてお茶で胃袋に流し込む。先が長いので水分をたっぷり持ってスタート。

ドロップバッグの中身。

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しばらく林道が続くが嫌いではない。淡々とリズムを刻みながら進めば、悪くないペースで安定してくるはず。(続く)

[report] ほろ苦い展開と100マイルレースの魅力・UTMF/Ultra-Trail Mt.Fuji 2012を完走(2/2) | Dogs or Caravan.com

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