「らーめん専門店小川」の株式会社オーファスがトレイルランニングの実業団チームを結成

トレイルランニングの世界で企業が選手を社員として雇用し、選手としての活動を支援する、いわゆる実業団チームが初めて誕生しました。チームを立ち上げたのは東京、神奈川で「らーめん専門店小川」、「しょうゆのおがわや」、「小川流」の計12店を展開する株式会社オーファス。先週末のハセツネ30Kで5位の名取将大 Masahiro Natoriさんや高校時代に世界ジュニア選手権10000mで7位となった経験を持ち、昨年の上州武尊山スカイビュートレイル30K女子優勝の峰村かな Kana Minemuraさんなど、4人がこのチームに加わりました。

「らーめん小川」の株式会社オーファスの実業団結成式。

「らーめん小川」の株式会社オーファスの実業団結成式。

4月1日に行われた実業団チームの結成式を取材しました。

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社員としてラーメン店で仕事をしながら競技活動に支援を受ける

今回結成された実業団チームでは、選手は株式会社オーファスの正社員となります。同社ではチームの発足とともに専属アスリートを迎える待遇制度を用意。基本的には選手は同社の各店舗のスタッフとして勤務しますが、勤務日にも1日2時間のアスリートとしての活動時間を保証。加えて大会参加のための遠征費の全額、メンテナンス・治療費として月額1万5千円の支給を受ける、といいます。ただし、勤務する店舗のシフトが埋まらない場合は勤務を優先する、会社からの人事評価で同ランクの上位50%以内となることを専属アスリート待遇の条件とするなど、あくまで仕事とアスリート活動の両立が求められます。専属アスリートである名取将大さんも2月に入社し「3月の勤務時間は250時間になりました」とのこと。

会場に展示されていた各選手の活躍を伝える数々のアイテム。

会場に展示されていた各選手の活躍を伝える数々のアイテム。

実業団の駅伝で上位に入るようなチームの選手が午後は練習に当てたり、出勤扱いで長期の遠征に出ることができることに比べると、オーファスの実業団チームの選手に対するサポートは現実的なところからスタートしているといえそうです。とはいえ、大会での優勝を重ねるなどの成績を挙げた選手にはアスリート活動へのボーナスを支給するといった形で報いることも想定されています。

株式会社オーファスでは実業団チームの選手による親子トレラン教室を開催したり学校や病院を訪問することで、アスリート活動から得られた経験を地元の地域社会に伝えていくことも計画。さらに2019年は4月7日の青梅高水山トレイルをはじめとする9大会についてスポンサーとして協賛する予定です。

らーめん小川の実業団4選手

チーム結成式では、オーファスの実業団チームに所属する4人のアスリートも出席して今後に向けた意気込みを語りました。

成瀬康夫 Yasuo Naruseさん

成瀬康夫 Yasuo Naruseさん

成瀬康夫 Yasuo Naruseさんは学生時代から陸上の長距離種目に取り組んできたアスリートで、2008年からトレイルランニングに取り組むように。2013年にオーファスに入社してからは2016年に信州戸隠トレイルランレース50Kで二連覇、2017年OSJ山中温泉80Kや甲州アルプスオートルートチャレンジ50Kで優勝。「しょうゆのおがわや橋本店」店長として勤務するほか、実業団チームの部長も兼務します。「実業団チーム結成からのこの一年目は重要、自分もメンバーも周囲が信じられないくらいの飛躍を遂げたい」といいます。現在38歳。

名取将大 Masahiro Natoriさん

名取将大 Masahiro Natoriさん

今年2月にオーファスに入社したのは、DogsorCaravanの記事でもたびたび紹介している名取将大 Masahiro Natoriさん。 2017年にはOSJ奥久慈50K、八重山トレイルレース、北丹沢で優勝を重ねて注目を集めました。昨年大学を卒業して社会人となりましたが、トレイルランニングでさらにアスリートとしての活動に打ち込める環境を求めてオーファスへ。「レースでいい成績を出すだけでなく、観ている人たちを楽しませるような選手を目指したい。」という23歳。「らーめん専門店小川日野駅前店」に勤務しています。

小林彰人 Akihito Kobayashiさん

小林彰人 Akihito Kobayashiさん

小林彰人 Akihito Kobayashiさんは学生時代に特に目立ったスポーツの経験がないという異色の30歳。24歳の時、大学院の授業で走ることの楽しさに目覚めました。2015年には富士登山競走五合目コースで8位、2017年の筑波山トレイルラン優勝、2018年にFunTrails50Kで6位に。製造業のエンジニアとして多忙な中でトレイルランニングに取り組んでいましたが、どこまでやれるか挑みたい、と今回の実業団チーム入りを決断。「自分は山の長い登りが好きで、登りの強さを極めたい。人生も同じように登りっぱなしになれば。」と抱負を話していました。「らーめん専門店小川日野駅前店」に勤務。

峰村かな Kana Minemuraさん

峰村かな Kana Minemuraさん

峰村かな Kana Minemuraさんは埼玉県出身で中学生の頃から長距離走で才能を発揮。高校生で始めた競歩では世界ジュニア選手権に日本代表選手として出場、10000mで7位となる実績を持ちます。しかし大学では体調を崩して入院、競技から離れることに。体調を取り戻してアスリートとして再起を目指す中で山を走る競技の存在を知りました。昨年は上州武尊山スカイビュートレイル30Kで優勝。今年度のスカイランニングユース強化指定選手ともなっています。「病気で挫折した経験をバネに、人を元気にして感動させるような選手になりたい」と話す22歳は「しょうゆのおがわや橋本店」に勤務します。

高い志で新しい挑戦へ

株式会社オーファス代表 小川厚志さん

株式会社オーファス代表 小川厚志さん

結団式であいさつした株式会社オーファスの小川厚志 代表は話します。「トレイルランニングで実業団を立ち上げるという試みに、競技の実力だけでなく高い志を持った選手が集まってくれました。選手はトレイルランニングの競技でも、店舗の仕事でも高い実績と評価が求められる厳しい立場に置かれることになります。トレイルランニングというスポーツと当社をともに盛り上げていこうという使命感を持つ選手たちと、一緒に仕事ができることを誇りに思います。」

「らーめん専門店小川」、「しょうゆのおがわや」、「小川流」の店舗の多くが位置するのはトレイルランナーにはおなじみの奥多摩や丹沢の山々に遠くないエリア。ここから4人のアスリートと株式会社オーファスの新しい挑戦が始まります。

取材の帰りにいただきました。煮干しの風味がしっかりしていながらもあっさりいただきました。

取材の帰りにいただきました。煮干しの風味がしっかりしていながらもあっさりとした味わいで箸がすすみました。

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