UTMB®︎が大会エントリーの改革を発表、抽選倍率の高騰と応募者への負担の高まりを受けてBy UTMB®︎、UTWTのレース完走者を優遇する仕組みへ2021年から移行。

当サイトでも毎年のUTMB®︎の抽選結果が発表されるたびにお伝えしていますが、世界のトレイルランニング界の頂点をなすこの大会への参加申込者数は増える一方で、過去3年間で68%も増加しています。このため、多大な時間と努力をもってエントリーに必要なポイントを揃えても最初の年にチケット一枚では当選の見込みは薄く、落選して再度ポイントを揃えてもチケットが二枚の2年目ではまだ当選の見込みはさほど高くなりません。2度抽選に外れて、三たびポイントを揃えて3度目のエントリーをして、やっと抽選なしでの出場権が得られるという状況でした。この状況は「UTMB®︎の現行のエントリーシステムは限界に直面している」(レースディレクターのミシェル・ポレッティさん)といわざるを得ません。

こうした状況を憂慮するUTMB®︎は、UTMB®︎ブランドで開催される「by UTMB®︎」のレースを開催するUTMB®︎ InternationalUltra-Trail World Tour(UTWT)と戦略的パートナーシップを締結。「by UTMB®︎」とUTWTのレースを完走したランナーが獲得できる「ランニングストーン Running Stone」を新たに創設することを発表しました。このランニングストーンを獲得したランナーにその数に応じて抽選免除あるいは抽選チケットの追加を認めるシステムを2021年から導入します。

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それまでの経過措置として、来年2020年のエントリーの仕組みは直前二度落選者への抽選免除は維持しつつ、必要な資格ポイントを軽減します。新しいエントリーの仕組みでは選ばれたレースを完走すれば、抽選なしでもエントリーできる他、1年間エントリーしない年があっても抽選に外れた場合の翌年の優遇は認めるなど、厳しかったこれまでのルールをフレキシブルな仕組みに改めています。

(写真・昨年のTDS®︎を15位でフィニッシュした杉本諭 Satoshi Sugimoto)

2020年は新プロセスへの移行のための変更

来年2020年のエントリーの仕組みは翌年2021年の改革に向けた移行のための変更が行われます。まず、直前二度落選者への抽選免除の特典はすでに約束されている通りに維持されます。

一方でエントリーに必要なポイント数は引き下げられ、これによりエントリーのハードルは2019年から下がることになります。

  • UTMB: 10ポイントを最大2レースの合算で獲得すること【2017年、2018年、2019年は15ポイントを最大3レースの合算で獲得すること】
  • TDS: 8ポイントを2つのレースの合算で獲得すること【2017年は7ポイント、2018年と2019年から変更なし】
  • CCC: 6ポイントを最大2つのレースの合算で獲得すること【2017年は7ポイント、2018年と2019年は8ポイントを2つのレースの合算で獲得すること】
  • OCC: 4ポイントを最大2つのレースの合算で獲得すること【2017年は3ポイント、2018年は4ポイント、2019年は6ポイントを1つまたは2つのレースの合算で獲得すること】

このほか、2019年のUshuaia by UTMB®のレースであるFMU、同じく2019年のOman by UTMB®の137kmおよび170kmの完走者については必要なポイントを得ていれば抽選が免除されます。

このほか詳細は今後発表される予定ですが、全般にエントリーの仕組みはフレキシブルなものになるとされています。例えば次の例が挙げられています。

  • 抽選で外れた人には何らかの形で翌年以降に優遇。落選回数に応じて当選率が変わる仕組みとする。
  • 落選した年にエントリーしていたのとは違うレースに翌年以降エントリーしていても優遇を認める(これまでは同じレースにエントリーした場合のみ優遇を認めていた)
  • 連続してエントリーしない場合でも優先権の持ち越しを認める(従来は落選した年の翌年にエントリーしないと2枚目のチケットや抽選免除の優遇は認められなかった)

2021年は大改革、「by UTMB®︎」とUTWTのレースで得られる「ランニングストーン」を導入するとともにフレキシブルな仕組みに

2020年1月から、UTMB®︎は翌年2021年大会のエントリーの仕組みを大きく変更します。従来のポイントによる資格を満たしたエントリーからの抽選に加え、新たに設ける「ランニングストーン」の保有数に応じて、場合によっては抽選なしでのエントリーが認められることになります。

「ランニングストーン」はUTMB®︎によって選ばれた少数の大会を完走した場合にランナーに認められる特典で、その個数はUTMB®︎が自身のデータベースで管理します。その数が一定数に達したランナーは、抽選なしでUTMB®︎の各レースの出場権を得ることができます。

抽選免除に必要な数に達していない場合でも、ストーン一個につき抽選におけるチケット(抽選券)が一枚追加で与えられます。これにより、ストーンの数が多いほど抽選で当選する確率は高くなります。

2020年1月から「ランニングストーン」が認められる大会とストーンの個数は次の通り。なおストーンは4年間有効です。

  • 「By UTMB®︎」のレース(現在のところGaoligong, Ushuaia, Omanの三つ)はITRAポイントの1ポイントにつき、ランニングストーンを3つ。
  • Ultra-Trail World Tour(UTWT) のレースはITRAポイントの1ポイントにつき、ランニングストーンを1つ。

以上を踏まえた上で、UTMB®︎の各レースのエントリーに必要なポイント数と、抽選免除に必要なランニングストーンの数は次の通り。

  • UTMB: 10 ITRAポイント(2年以内の最大2レースで)、ランニングストーン18個
  • TDS: 8 ITRAポイント(2年以内の最大2レースで)、ランニングストーン15個
  • CCC: 6 ITRAポイント(2年以内の最大2レースで)、ランニングストーン15個
  • OCC: 4 ITRAポイント(2年以内の最大2レースで)、ランニングストーン12個

なお、ランニングストーンが認められる大会やストーンの個数については、今後の状況に応じて変更される場合があるとされています。また、MCCやPTL®、ユース向けのYCCには基本的には従来のままのエントリーの仕組みが維持されます。

例えば、2021年3月に予定されるGaoligong byUTMB®の160km(MGU)を完走すると6ポイントが認められ、ランニングストーンはポイントの三倍の18ポイントが認められます。加えて、他のレースを完走して4ポイント以上を得られれば、UTMB®︎に抽選なしで出場権を獲得できます。

2021年に開催されるUTMFがUTWTのシリーズ戦に加わっている状態だとして、これを完走すると、6ポイントが認められ、ランニングストーンはポイントの1倍の6ポイントが得られます。ポイントが有効な4年間の間にもっとランニングストーンを獲得できるレースに出て18ストーンまで貯めてからエントリーするもよし。あるいはストーン一個を抽選チケットに交換して、当選の確率を高めることも可能。

以上が2021年に導入するというUTMB®︎の新しいエントリーの仕組みです。まだ具体的な発表が待たれるポイントも残されていますので、興味のある方は大会ウェブサイトで要チェックです。

ランニングストーンの導入で「By UTMB®︎」やUTWTのレースの人気が高まるかもしれません。しかし、その結果としてストーンなしでエントリーしても当たる可能性は限りなくゼロ、となればこれも大きな問題でしょう。仕組みを意図通りに運営するには、各種のパラメーターを細かく調整するような体制が必要になるのかもしれません。

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