UTMB®︎は自分を試す最高の舞台・上宮逸子 Itsuko Uemiya 私とUTMB®︎第五回【PR】


Columbia Montrailアスリートの上宮逸子 Itsuko Uemiyaさんは今年のUTMB®︎で、145kmのTDS®︎を28時間12分、女子15位になりました。170kmのUTMB®︎とは異なる魅力と厳しさを持つレースとして注目度が高まっているTDS®︎で上宮さんは今回で3年連続の完走です。

上宮さんにとって、今年はトレイルランニングの世界に足を踏み入れてからちょうど10年。レースから1ヶ月を経て、今年のUTMB®︎と近況を一緒に振り返っていただきました。

(表題写真 © Nagi Murofushi)

実は苦しい展開だった今年のTDS®︎

上宮逸子(うえみやいつこ)さん:1978年京都市生まれ。小学生で始めたバドミントンに打ち込み、高校、大学を経て実業団の選手として活躍。競技から引退後にランニングを始め、2009年にトレイルランニングにデビュー、その年に初めて開催された信越五岳トレイルランニングレース100kmで8位に。以後、信越五岳では2013年、2014年に2位、2015年STYで3位、2016年OSJ新城32kmで優勝。今年はAso Round TrailやOSJ山中温泉で優勝。UTMB®︎では2017年のTDS®︎で11位となってから2018年に20位、2019年15位と上位での完走を続けている。(Photo © Sho Fujimaki)

ー(DC)今年のTDS®︎はコースに新しいセクションが加わって、距離は従来の120kmから145kmへと大きく延びました。そうした中で15位という結果は、さすがですね。

今回はレースの後半で足首が痛み出し、身体が重く感じるようになってペースは大きく落ちました。前回や前々回にTDS®︎を走った時と比べても厳しい一日になりました。

今まで100km前後のレースを走る経験を重ねてきました。一番長いレースは昨年までのTDS®︎、それから今年走ったAso Round Trailでどちらもだいたい120km。だから今年は今まで走ったことのない長い距離に挑戦したことになります。120kmと145kmではそれほど違いはないかも、と思っていましたが、やっぱり120kmの先には高いハードルがありました。

早朝の午前4時にスタートしてから夕方まで、新しく加わったセクションにあるボーフォールのエイドがある100km地点くらいまでは順調でした。足もよく動くし、景色を楽しみながら得意な下りで前の選手を追い抜きながら、だんだんペースが上がってきました。

ボーフォールを出ると夜になって次第に暗くなってきます。長い登りですが、これくらいなら走れるはずなのに身体が重くて走る気になれません。後ろから(星野)由香理ちゃん(今回女子13位でフィニッシュ)が走ってきたので、声をかけて見送りました。登りきった先にあるはずのコル・ド・ジョリ(114km)になかなかたどり着きません。

コル・ド・ジョリからは下りなんですが、今度は足首が痛くなってきました。去年のUTMB®︎が終わってしばらくして走っていた時に足首を傷めてしまい、それから長い距離を走ると途中で痛むことがあるんです。今まで何度も100kmのトレイルランニングレースを走ってきたツケが回ってきたのかもしれませんね。

得意なはずの下りなのに大失速です。TDS®︎では123kmになるコンタミンの手前ではしばらく林道を走りますが、深夜でひどく眠くなってきました。今までレース中に眠くなることなんてなかったので、これも辛かった。

Photo © Nagi Murofushi

なんとかゴールできましたが、ちょっと反省点の残るレースでしたね。昨年までの120kmのTDS®︎と同じようなペースではペースが速すぎたのか。でも足首が痛み出すまで心肺に負荷を感じることはありませんでした。ウルトラトレイルを走る難しさを改めて感じました。

TDS®︎は私と相性のいいレース

ー(DC)TDS®︎では2017年に11位。翌年は20位で年代別2位になっています。今年も含めて3回ともTDS®︎を走っていらっしゃいますが、170kmのUTMB®︎を選ばないのは、やはり何かこだわりがあるんですか?

初めてUTMB®︎に行くことになったとき、初めてなのに距離の長い170kmのUTMB®︎に出るのは無理かな、と遠慮したつもりで当時は120kmのTDS®︎を選びました。その時までで一番長く走ったのは信越五岳の110kmでしたから、TDS®︎なら少し頑張れば大丈夫だろう、というわけです。それにUTMB®︎といえばみんな170kmのUTMB®︎を走りたいといいますよね。だったら私は別のレースにしようかな、とも考えました。170kmのUTMB®︎は最初からみんなすごくペースが速いと聞いて、山岳コースの多いTDS®︎の方が自分に向いていると思ったのです。

2017年に初めてTDS®︎を走ってみると、深い山ですが走りにくいほどテクニカルなところは多くない。トップ10まであと一人というところでフィニッシュすることができて、もう一度TDS®︎を走ったらもっと上位に入るチャンスがあるかも、と思いました。それに、コースのアップダウンの激しさではUTMB®︎よりもTDS®︎のほうが厳しいコースかもしれないと知って、さらにやる気になりました。

私の仕事の関係で、水曜日にスタートするTDS®︎はレースを終えて週末に帰国すれば月曜日から出勤できるのも都合がいいんですよね。日本から参加される方には同じような事情の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

UTMB®︎の魅力

ー(DC)上宮さんは様々な海外の大会を経験していますよね。そうした目からみてUTMB®︎が他と違うのはどんなところでしょうか。

初めて自分がTDS®︎に出た時、スタート地点の人の多さ、賑やかさに圧倒されていると、あっという間に自分がスタートしていたのを覚えています。でも本当に感激したのは、自分のレースを終えてから観たUTMB®︎のスタートですね。名前を聞いたことがある世界各国のトップ選手が、一人一人名前を呼ばれてスタートラインに並ぶ様子を見ているとゾクゾクしました。すごい緊張感で選手は大変だと思います。170kmのUTMB®︎はレースに出るより観ている方が楽しいかもしれません。

あの雰囲気を知ってから、UTMB®︎のレースに出るならただ完走を目指すだけでなく、アスリートとしてベストを尽くす場にしたいと思うようになりました。

Photo © Sho Fujimaki

ー(DC)今後、170kmのUTMB®︎に挑戦してみようとは考えていますか?

もちろん。一番のメインレースですからね。まだ100マイルのレースに出たことがないので完走を目標に一度出てみてもいいのかな、と考えることがあります。一方で、170kmのUTMB®︎に出るのならばしっかり練習をしてベストの結果を残したい、とも思うんです。ただ、向き不向きということでいえば、私には100kmから120kmくらいの距離が一番向いているのかも、と思います。それならCCC®︎はどうだろう、と考えたりもします。

とはいえ、私もいつもレースの結果ばかり気にしているわけではありません。いつもは自分で面白そうなトレイルをつなぐコースを探して、帰りに温泉で汗を流して帰ってくる旅気分のトレイルランニングがお気に入りです。海外のレースに出てもレース以外のバカンスの方が実は楽しみだったりします。来年のことはまた地元のトレイルを楽しみながら考えることにしようと思います。

(協力:コロンビアスポーツウェアジャパン