2月28日にミレーからリリースされた防水ウェア「ティフォン」シリーズはアウトドアコミュニティの中で今シーズンの注目の新製品です。その中でもトレイルランニング向けに設計された「ティフォンファントムファストジャケット」は、耐水圧50,000mm、透湿性60,000g/㎡/24hという驚異的なスペックを誇ります。
このジャケットを筆者が晴天の暑い日から冷たい雨の日まで、 2週間にわたって実際に使用しました。
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10周年を迎えた人気の防水透湿ジャケットの究極モデルが「ファントム」
「すべての登山者が安全に下山できる製品を提供する」というミレーの理念を受け継いで、2016年に「ティフォン」という名前で販売されるようになって以来、防水透湿ウェアの定番として愛されてきました。
10周年となる今年、リニューアルして登場した製品は高い透湿性、快適な着心地、そして優れた伸縮性をキーワードにして新たに進化し、三つの製品がラインナップされました。中でも、スタンダードモデルとなる「ティフォン ストレッチ ジャケット」と並んで登場した、圧倒的な軽さと防水透湿性を誇る「ティフォン ファントム」の二つのジャケットが話題を呼んでいます。
今回筆者がテストした「ティフォン ファントム ファスト ジャケット」は特に軽量性とパッカビリティを追求したモデルで、トレイルランニングやファストハイキングといったアクティビティに最適化されています。

ティフォン ファントム ファスト ジャケット
ティフォン ファントム ファスト ジャケット
- 価格:42,900円(税込)
- 重量:132g(Mサイズ)
- 耐水圧:50,000mm
- 透湿性:60,000g/㎡/24h
- 素材:ティフォン ファントム®3L(ナイロン100%)

革新的な技術が高性能と動きやすさを実現
「ティフォン ファントム ファスト ジャケット」の最大の特徴は、わずか7デニールという極薄ナイロン生地を使用した3層構造を実現していること。通常であれば耐水性と耐久性の両立が難しい薄さですが、「ティフォン ファントム」では高密度に編み込まれた表地を採用することで防水性を高めることに成功しました。

さらに素材としては数パーセントの伸縮性しかないナイロンに、糸の段階から特殊な加工を施すことでナイロン100%ながら優れた伸縮性を実現しています。
さらに注目すべきはこの3層構造の裏地です。7デニールの非常に目の細かい丸編みのニット構造を採用し、素材のしなやかさと肌触りの良さを格段に向上させています。この裏地を編める機械は国内にわずか数台しかなく、ミレー独自の唯一無二の着心地を実現しています。
防水ウェアの弱点となりやすい縫い目部分には、特別に開発された9mm幅の極細シームテープを使用し、職人技によって精密に接着。防水性能を損なうことなく軽量化に貢献しています。
カットにおいても、肩回りの動きやすさを実現するラグランスリーブを採用することで、トレイルランニングの腕振りなどの動作を妨げないデザインとなっています。

試してみた・防水ジャケットとは思えないしなやかさ、トレイルランニングに適したデザインで快適に走れる
ミレーから提供していただいたティフォン ファントム ファスト ジャケットを普段のロードでのランニングや近くのフィールドでのトレイルランニングで試してみました。
2月下旬の某日はよく晴れて最高気温が20℃に達する陽気でした。Tシャツの上にジャケットを着て、さらに8Lのベストを身につけて走ります。

腕を通してみて、サラサラとした肌触りを感じます。さらに表地も薄手ながらしなやかで、防水ジャケットの常識を打ち破る質感です。

走り始めると汗をかき始めますが、素肌と触れる腕の部分もジャケットの生地が張り付くことなく不快さとは無縁です。これなら変わりやすい山の天気でも、トレイルを走っている途中はずっと着続けることができますね。
生地が非常に柔らかいので、腕振りや肩回りの動作がスムーズでストレスがありません。長い急登が続く場面では腕を上げて身体を支えたり、トレッキングポールを前後に振ったり、あるいは両手で膝を押して登りのパワーをサポートすることがあります。そういう場面でもジャケットが引きつれることがなく快適さがキープされていた点が印象的です。

もちろん胸ポケットを裏返しにしてジャケット全体をしまうこともできます。無理に押し込む必要はなく、コンパクトに収まります。ベストのポケットに押し込んでおくこともできるサイズ感です。
改めてティフォン ファントム ファスト ジャケットを試したのは3月の初め。気温が急に下がって冷たい雨が降る日の午前です。気温は6℃くらいで、保温性のあるロングスリーブのファーストレイヤーのシャツの上にジャケットを着て出発です。

雨が降っていたのでランニングキャップの上からこのジャケットのフードを被りました。おでこからあごまでジャストフィットで、雨が侵入せず、体温も逃さないので快適です。今回発売されたファントムシリーズでもフードの形はそれぞれ異なるのですが、「ファストジャケット」は薄手のキャップか何も被らないことを想定した形状になっています。

1時間半の間、雨に降られてランニングパンツやシューズは濡れてしまいましたが、耐水圧50,000mmのこのジャケットは雨を弾き続けます。ジャケットの中は汗で湿り気を帯びてきましたが、雨は入ってこないので体温を保った状態です。60,000g/㎡/24hという最強レベルの透湿性のおかげか、動き続けている間は寒さは感じず快適に走れました。

ランニングを終えた後、軽く水洗いをしてハンガーにかけ、乾いたタオルで軽く拭いてから室内に置いておくと、2、3時間で大体乾きました。一日中走り続けるようなレース中や、トレラン旅の二日目の朝も気持ちよく着ることができそうです。
まとめ・高い防水透湿性能としなやかな着心地でトレイルランニングのための防水ジャケットのレベルを一段引き上げた
ミレーの「ティフォン ファントム ファスト ジャケット」は、驚異的な軽量性と防水透湿性能、そしてミニマルデザインによってトレイルランナーにとっては理想的な防水ジャケットです。耐久性と機能性を両立しながらも132gという超軽量設計と、伸縮性があって肌触りのよい記事は、防水ジャケットについて私たちが持つ先入観を打ち破ってくれます。
日本の高度な繊維技術と、ミレーの10年にわたる「ティフォン」シリーズの進化が生み出した新製品は、トレイルランニングのための防水ウェアの新たな基準となる存在です。
2週間試した筆者にもこのジャケットはもう手放せない存在です。悪天候の時はもちろん、どんな天気の時でもお守りとしてだけでなく、ちょっと肌寒い時に気軽にはおりたい、そんなアイテムです。

ミレー「ティフォン ファントム ファスト ジャケット」のメリット
- 圧倒的な軽量性とコンパクトさで携行時の負担が少ない
- 高い防水性と透湿性によって、多様な天候条件下でも快適
- デザインが走行中の煩わしさを軽減
- 日本の高度な繊維技術による優れた伸縮性と肌触り
ミレー「ティフォン ファントム ファスト ジャケット」のデメリット
- ドローコードや調整機能がないため、フィット感の調整には限界あり
- ポケットが1つだけなので、小物収納にはベルトやベストとの併用が必要
- 極薄素材のため、極端に荒れた岩場や藪漕ぎでの耐久性は未知数