昨年に続き、世界最高峰のトレイルランニングシリーズである「GTWS」(Golden Trail World Series)の2025年のシーズンが神戸で開催される「Kobe Trail」(神戸トレイル)で幕を開けます。レース前日の4月18日に神戸市内で記者会見が行われ、大会関係者や国内外の有力選手が登壇し、レースへの意気込みを語りました。
神戸の自然と文化を舞台とするレースにトップアスリートが集結
記者会見の冒頭、神戸トレイルのレースディレクター、後藤哲也氏は、歴史ある摩耶山を舞台に世界のトップランナーが競うレースへの期待を述べました。
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続いて、GTWSのマネージャーであるグレゴリー・ヴォレ Gregory Vollet氏は、2年連続で神戸でシーズン開幕を迎えられる喜びを語りました。「歴史と海と山に囲まれた素晴らしい環境を持つここ日本で新シーズンを開幕できることを光栄に思います。神戸トレイルは、ワイルドで美しい自然、豊かで敬意に満ちた文化、そして世界クラスのアスリートが集う、GTWSが目指すものを完璧に体現しています」と述べ、レースを支える神戸市やサロモンジャパンをはじめとする関係者、ボランティアへの深い感謝を示しました。
神戸市からは、経済観光局観光企画課担当課長の村上里佳氏が登壇。古くから登山文化が根付く神戸の魅力を語り、安全で快適な登山環境整備を進める「神戸登山プロジェクト」を紹介しました。また、「明日のレースでは多くのハイカーも同じトレイルを楽しんでいます。ランナーの皆様にはハイカーへの配慮をお願いし、皆にとって安全で楽しい経験となるようご協力ください」と呼びかけました。さらに、レースに加えて開催される摩耶山での「トレイルマルシェ」や、北野町の「SOLA KOBE」で開催の「トレイルディスコ」といった関連イベントにも触れ、選手たちに神戸の街と食を満喫してほしいと語りました。
有力選手が語る「昨年からの進化」と「コース攻略」
会見にはレースを翌日に控えた有力選手も登壇し会場からの質問に答えました。
「昨年よりも良いパフォーマンスを出すために、何をしてきましたか?」という質問に対し、女子選手たちはそれぞれの取り組みを語りました。スペインのサラ・アロンソ Sara Alonso (ESP) 選手(Team Asics)は「レベルは年々上がっているので、昨年より強くならなければなりません。この冬は初めてロードレースのシーズンを経験し、ハーフマラソンにも挑戦しました。平地でのインターバル走が山での走りにも役立つことを期待しています」とスピード強化について述べました。昨年のGTWS年間チャンピオンのジョイス・ニェルJoyce Njeru (KEN) 選手(Team Run2gether)は「毎年、トレーニング戦術を見直し、自分の弱点を見つけて改善しています」と語りました。昨年の神戸トレイル9位の高村貴子 Takako Takamura (JPN) 選手は「昨年は怪我が多かったので、ジムで体幹を強化するためのウェイトトレーニングに多く取り組みました」とフィジカル面の強化を挙げました。スペイン・バスク地方出身のマレン・オサ Malen Osa (ESP) 選手(Team Salomon)は「自分の弱点を見つけて改善することが鍵だと思います。特にスキーモ(スキーマウンテニアリング)に力を入れ、多くの標高差を獲得するトレーニングを積みました。このレースは登りが多いので、それが役立つと思います」と、登坂力強化に重点を置いたことを明かしました。

左からオサ、ニェル、アロンソ、高村の各選手
「昨年もコースを経験していますが、攻略の鍵は何だと考えますか?」という質問には、各選手が戦略の一端を覗かせました。アロンソ選手は「街に近いから簡単なレースだと思うかもしれませんが、実際に走ってみるとシリーズ屈指の難コースです。コースを知っているアドバンテージはありますが、重要なのは選手間の動きを読むこと。駆け引きが必要になるでしょう」とレース展開を予想しました。ニェル選手は「コースの全体像が掴めているのは大きいです。安全策を取りつつ、力強くフィニッシュし、昨年以上の結果を出したい」と自信を見せました。高村選手は「昨年は3周目で足が終わってしまったので、最後まで自分のレースを走り切れるようにしたい」とリベンジを誓いました。オサ選手は「ペース配分が非常に重要です。短いレースですが、精神的にも肉体的にも消耗が激しい。最後の登りで力を発揮できるよう、下りでは少し脚を温存し、登りでプッシュするつもりです」と具体的な戦略を語りました。
男子選手への質疑応答も行われました。昨年のこのレースで5位のダニエル・パティス Daniel Pattis (ITA) 選手(Team Brooks)は、冬季のロード練習でハーフマラソン1時間5分台を記録したことに触れられると、「トレイルランニングは単純な計算通りにはいきませんが、ロードで得たスピードをトレイルシーズンに活かしたい。昨年出場していなかった強力なランナーもいるので、気を引き締めたい」と語りました。ジョーイ・ハドーン Joey Hadorn (SUI) 選手(Team Salomon)は昨年2位と好成績であったことについて、「昨年と同じ走りでは勝てないでしょう。コースは自分に合っていると思いますが、シーズン初戦で自分の調子がどれくらいか分かりません。ベストを尽くします」とコメントしました。昨年より速いタイムが必要か問われると、「正直、速く走らなければならないとは思いたくないですね。昨年もかなり限界でした。最後のループまで脚が持つように走りたい」と、コースの厳しさを語りました。

左からキプンゲノ、上田、ハドーン、パティスの各選手
日本のエース、上田瑠偉 Ruy Ueda (JPN) 選手(Team RedBull)は、昨年のその力を出しきれなかった悔しさをバネに表彰台を目指します。「昨シーズン後半から調子が上向き、国内レースもいくつかこなしてきたので、昨年より良い走りができる自信があります。もちろん、トップ3を目指して全力を尽くします」と力強く語りました。また、「なぜ日本人は(トレイルの)階段が好きなのか?」というユニークな質問に対しては、「好きというわけではありません。日本は台風や大雨が多いので、階段がないとトレイルが崩れてしまうのです。維持管理のために階段が作られています」と、日本のトレイル事情を解説しました。

上田瑠偉 Ruy UEDA
昨年の神戸トレイルを制したパトリック・キプンゲノ Patrick Kipngeno (KEN) 選手(Team Run2gether)も登壇し、連覇への期待がかかります。

パトリック・キプンゲノ Patrick Kipngeno (KEN)
GTWS 2025シーズンの開幕戦となるKobe Trail。神戸の「Unexpected」(予想外)なテクニカルコースを舞台に、世界のトップアスリートたちがどのようなドラマを見せてくれるのか、期待が高まります。
DogsorCaravanでは4月19日土曜日のGTWS開幕戦、神戸トレイル21kのレースの模様を大会会場からレポートします。XやInstagramのアカウントをフォローしてお楽しみください。