【Mt. FUJI 100 2025】大ケガからの復帰戦をトップ3で表彰台に立ちたい・小原将寿 Masatoshi OBARA 大会前インタビュー

まもなく2025年のマウントフジ100 Mt. FUJI 100が開催されます。この大会のメインレースである100マイルカテゴリー「FUJI100mi」に、小原将寿 Masatoshi OBARA 選手が選手として帰ってきます。

マウントフジ100 Mt. FUJI 100 2025 プレビュー

2025.04.04

小原選手は、2012年の第1回大会からほぼ毎年出場し、特に海外の強豪選手が集った2019年には4位という輝かしい成績を残しました。同年にはUTMBで8位に入賞するなど、日本のトップランナーの一人として知られています。しかし、昨年3月末にトレーニング中に木の枝が脚に刺さるという大怪我を負い、2024年シーズンは100マイルレースを走ることができませんでした。一時は歩行能力への影響も懸念されるほどの重傷でしたが、懸命なリハビリを経て、今回満を持してFUJI100miのスタートラインに立ちます。単なる復帰戦ではなく、過去最高の「トップ3」を目指し、再び世界の舞台へ挑戦するための覚悟を、レースを直前に控えた小原選手に聞きました。

Sponsored link


大怪我からの再起、厳しいリハビリを経て掴んだ手応え

DogsorCaravan(以下、DC): 今回は選手としての出場、本当に感慨深いです。昨年はレース直前に大変な怪我をされたとのことでしたが、現在のコンディションはいかがでしょうか。

小原将寿選手(以下、小原): ありがとうございます。昨年3月末に木の枝が脚に刺さる怪我をして、2024年は100マイルを走れませんでした。今回のFUJI100miが怪我からの復帰後、初の100マイルレースになります。怪我の影響自体は昨年末頃にはほとんど感じなくなっていましたが、そこに至るまでは大変でした。

怪我は、木の根っこが刺さって骨が陥没するという、医師からも「こんな症例は見たことがない」と言われるほど珍しいものでした。骨に1cm四方、深さ1cmほどの穴が開き、当初は体重をかけた際に骨が割れてしまう可能性も指摘され、歩ける状態に戻れるかどうかも分からないと言われました。2週間入院し、退院後も2、3週間は松葉杖が手放せず、1ヶ月ほど左足をほとんど動かせませんでした。膝も曲がらなくなり、関節の可動域を取り戻すリハビリに時間がかかりましたね。入院中は本当に絶望し、「もう走ることは叶わないかもしれない」と本気で思いました。

DC: そこまでの大怪我からの復帰、精神的にも大変だったと思います。どのように乗り越えられたのでしょうか。

小原: 最初の3日間くらいはベッドの上で「どうしよう」と考え続けました。でも、医師から「どうなるか分からない」と言われたということは、可能性は五分五分だと。それなら、「できるようになった時の準備だけしておこう」と気持ちを切り替えました。できない可能性を考えても仕方がないので、できる方に賭けて、入院3日目からベッドの上で筋トレを始めました。

結果的に、思ったより早く回復し、怪我から1ヶ月半ほどでジョギングができるようになりました。6月には奥信濃の50kmレースを走って5位に入賞でき、そこで「大丈夫だ」と思ったんです。しかし、10月のハセツネCUPを走った時、自分の感覚よりも全然走れていないことに気づかされました。筋力などが完全には戻っていなかったんですね。そこで改めて「一からやり直そう」と決意し、今回の富士に向けて、段階的に目標を設定してトレーニングを積んできました。3月に最後の目標ポイントをクリアできたことで、ようやく「これなら富士で戦える」という手応えを掴むことができました。

コーチング活動が選手としての自分を支える

DC: 最近はランニングコーチとしての活動にも力を入れていらっしゃいますね。指導者としての経験が、ご自身の競技に影響を与えることはありますか。

小原: めちゃくちゃありますね。まず、コーチとして「悪いところは見せられない」「良いところを見せたい」という気持ちが強いです。指導している生徒さんたちの目標に向かって頑張る姿を見ていると、「もっと頑張りましょう」と言うからには、自分自身も頑張らないとその言葉に重みがなくなってしまうと感じます。生徒さんたちの存在が、自分の背中を押してくれている感覚です。

早朝トレーニングで起きるのが辛い時も、「生徒さんたちは走っているんだから、自分もやらなきゃ」と思って布団から出ることがよくあります。自分の目標や夢に対する向き合い方も、コーチングを通じて襟を正される思いがしますね。

Mt. FUJI 100攻略の鍵は「メリハリ」と「後半への余力」

DC: コーチという視点から見て、Mt. FUJI 100のコースの魅力や難しさはどこにあると思われますか。攻略のポイントなどもあれば教えてください。

小原: まず楽しさで言えば、やはり国内最大級の盛り上がりを見せる大会であること。トレイルランニングの華やかさが凝縮されていて、富士山の周りを走れるのは素晴らしい経験だと思います。天子山塊や杓子山など、厳しいけれど走りごたえ、登りごたえのある山々も魅力です。

難しさとしては、山岳パートと走れるパートのメリハリが非常にはっきりしている点です。天子、杓子、霜山のような本格的な山岳セクションもあれば、ロードを含めて延々と走れるセクションもある。山岳が得意なだけ、走力があるだけでは攻略が難しく、総合力が問われます。山が得意な選手は走れる区間で苦戦し、走力のある選手は山岳区間で差をつけられる可能性がある。

攻略のポイントとしては、後半にどれだけ脚を残せるかです。特に山中湖きらら(エイドステーション)以降が核心部と言えます。感覚としては、きららまでに6割くらいの力で走り、残りの4割を最後の難所である杓子山などにぶつけられるように、後半を意識したレース運びが重要になると思います。

目標は「トップ3」、UTMB再挑戦への第一歩

DC: 今回のレースへの意気込みと、今後の目標について聞かせてください。

小原: 怪我からの復帰戦ではありますが、守りに入るつもりはありません。今回は「バチバチに全開で」行こうと思っています。過去、マウントフジでは4位、5位、9位という成績はありますが、トップ3に入ったことがないんです。だから今回の目標は明確に「トップ3」です。それ以外、4位でも100位でも自分の中では同じというくらいの覚悟で、とにかく3位以内だけを目指して攻めた走りをします。目標タイムとしては、昨年のトップ3レベルである19時間前半を目指したいと考えています。

このレースは、僕にとって再びUTMBのトップ10を目指すための重要なステップです。2019年に8位になった後、2022年のUTMBはコロナの影響もあり100位くらいと全くダメでした。もう一度、あの舞台で納得のいく走りをしたい。そのためにも、今回の富士でトップ3という結果が欲しいんです。

今年はこの後、9月の信越五岳100マイルで前回達成できなかった19時間切りに再挑戦し、12月にはタイのレース(チェンマイ・タイランド by UTMB)で前回リタイアしているので完走を目指します。この3つのレースをしっかり決めて、来年のUTMBに繋げたい。年齢的にも、何度もチャンスがあるわけではないと思っています。やれる時にしっかり結果を出せるよう、覚悟を決めて走ります。

DC: 力強いお言葉、ありがとうございます。怪我を乗り越え、さらに高い目標を掲げて臨む小原選手の走り、楽しみにしています。

Sponsored link