石川県加賀市で6月19-22日に開催される「加賀スパトレイルエンデュランス100 by UTMB」(Kaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB)は日本で初めて開催されるUTMBワールドシリーズの大会として注目を集めています。
開湯から1,300年の歴史を持つ山中温泉を拠点として開催されるこの大会のコースは、山中温泉の背後に広がる富士写ヶ岳、大日山、鞍掛山などの里山とその麓にある集落をつなぎます。コースは走りやすい林道や舗装路がある一方で、岩場や木の根でテクニカルなところやロープがつけられている滑りやすいセクションもあるという具合に、メリハリが利いているのが特徴です。しかし、山頂に向かう稜線上のトレイルからは開けた眺望が楽しめるといいます。
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日本初のUTMBワールドシリーズの大会となる今回の加賀スパには日本国内から多くの有力選手が集まるほか、世界各地の大会で活躍する選手も海外から集まります。この記事ではそうした有力選手を紹介します。
三つのレースはいずれも6月21日土曜日の朝にスタートします。完走者にはシャモニーで行われるUTMBワールドシーズファイナルのUTMB、CCC、OCCへの抽選チケットとなる「ランニングストーン」が付与されます。100Kカテゴリーの「KagaSpa 100」ではランニングストーンが3個、50Kカテゴリーの「KagaSpa 50」では2個、そして20Kカテゴリーの「KagaSpa 20」では1個、それぞれ付与されます。また、「KagaSpa 100」と「KagaSpa 50」の男女それぞれの総合トップ3に入った選手にはそれぞれCCCとOCCへの抽選免除のダイレクトエントリー権が付与されます。
さらに加賀スパは毎年12月にタイ・チェンマイで開催される「HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB」とパートナーシップを結びました。その取り組みとして、加賀スパの上位入賞選手には今年のチェンマイ大会への無償エントリー権が贈られます。対象は、KagaSpa 100とKagaSpa 50の男女総合の4位、5位、および三つの年代別カテゴリーの男女それぞれの優勝者となります。
KagaSpa 100 – 海外勢と日本のトップ選手が日本の里山で激突
KagaSpa 100は山中温泉・山中座をスタート、フィニッシュとし、距離95.8km、累積獲得高度6,158mD+のコースを走ります。スタートは午前7時の第一ウェーブから10分おきに三つのウェーブに分かれてスタート。火燈山(ひともしやま)、高倉山、大日山などへの登り、下りで斜度の大きい区間があらわれるチャレンジングなコースである一方、レースとしては林道や舗装路の走れる区間をどのように走るかが結果を分けることになりそうです。

女子選手
ヴェロニカ・レング Veronika LENG (SVK) は香港を拠点にアジア各地のトレイルランニングイベントで活躍していますが、結婚の2023年の出産を経て、レースに復帰したのちもランナーとして強さを増したようです。最近では昨年のCCCに参加して11となったのち、11月のTransLantau by UTMB 50kで優勝、今年1月のHong Kong 100では3位。今回の加賀スパの100kmでは女子のレースの優勝候補といえます。日本には2019年のIzu Trail Journeyで優勝して以来のレース参戦です。【ヴェロニカ・レング Veronika LENG は体調不良のため、今回の加賀スパに参加しません。2025.06.17】
迎える日本勢では吉住友里 Yuri YOSHIZUMI (JPN) に注目です。富士登山競走で六連覇中でミドルディスタンスのトレイルレースで強みを持ちますが、最近には100kmや100マイルにも挑戦の場を広げており、昨年は比叡山50マイル、奥信濃100km、ハセツネCUPなどで優勝。加賀スパの2週前には奥信濃50kmで優勝しており、好調な様子です。秋山穂乃果 Honoka AKIYAMA は昨年はスペインでのスカイランニング世界選手権・スカイウルトラで銀メダル、APTRC選手権・ショートで銅メダルと国際大会で強さを発揮しています。UTMBワールドシリーズには初登場となります。今シーズンはMt. FUJI 100のKAI70kで5位でした。さらに、2024年にMt. FUJI 100の100マイルで準優勝、信越五岳100マイルで優勝の清宮由香里 Yukari SEIMIYA (JPN)、同じく昨年のTokyo Grand Trail、FTR秩父奥武蔵の二つの100マイルレースを制した徳本順子 Junko TOKUMOTOも (JPN) も表彰台を狙います。
このほか、次の選手がKagaSpa 100のスタートラインに立ちます。
- ジョウ・ルイファン Ruifang ZHOU 周瑞芳 (CHN): 2025年Hong Kong 100 Half 57kで4位、Chianti by UTMB 46kで7位、Mt. Yun by UTMB 50kで2位、Dajinmen Great Wall by UTMB 50Kで2位。
- ナタリア・マストロタ Natalia MASTROTA (ITA): 2024年MUT by UTMB 100kで優勝、Chiang Mai by UTMB 100kで3位、2025年Amazean by UTMB 50kで2位。
- 枝元香菜子 Kanako EDAMOTO (JPN): 2024年Chiang Mai by UTMB 100kで4位、2025年Mt. FUJI 100の100マイルで4位。
- 岩井絵美 Emi IWAI (JPN): 2024年KAI70kで2位、阿蘇ボルケーノ115kで優勝、ハセツネCUPで2位。
- 井筒智子 Tomoko Izutsu (JPN): 2022年OSJ山中温泉80k優勝、2024年信越五岳100マイルで3位。
- キム・ジンヒ Jinhee KIM (KOR): 2023年Amazean by UTMB 100kで2位、2024年TransJeju by UTMB 100kで4位。
- 寺田未奈 Mina TERADA (JPN): 2024年Korea 50k優勝、2025年KAI70kで7位。
- ウェン・ファンユエン Fangyuan WEN (CHN): 2024年Val d’Aran by UTMB 100Kで8位、2025年Mt. FUJI 100の100マイルで5位。
- ダーリカ・スワンモンコン Darika SUWANMONGKOL , (THA): 2024年The North Face 100 Hong Kong – 55Kmで9位。
- 黒田清美 Kiyomi KURODA (JPN): 2024年OSJオンタケ50kで3位、FTR秩父奥武蔵100マイルで2位。
男子選手
男子のKagaSpa 100は、中国、ヨーロッパ、日本のトップ選手の間のレース展開が見どころとなる、激しい上位争いが予想されます。
ルオ・タオ Tao Luo 骆滔 (CHN) はトレイルランニングにデビューしてまもない2019年に、21歳でOCCで3位に入りました。序盤を果敢に攻めて先頭を走るアグレッシブな走りが世界に強い印象を残しました。マラソンのPRが2時間22分の俊足の持ち主で「チャイニーズロケット」の異名を持ちます。昨年はMt. Yun by UTMB 50kやAmazean by UTMB 50kで優勝しており、今回の優勝候補の最右翼といえます。同じく中国の選手で新疆出身のモンゴル族のアスリートであるバーテ・モンカイ Mengkai BATE 巴特孟开 (CHN) は粘り強いレース展開と安定したパフォーマンスが持ち味で、トレイルランニングの他にもマウンテンバイクやアドベンチャーレースでも活躍しています。最近は昨年のCCCを9位で完走したほか、12月のChiang Mai by UTMB 100kで準優勝、今年5月のDajingmen by UTMB 100kで3位となっています。
欧州勢では2015年のUTMFチャンピオンで、2016年にUTMB準優勝、UTWT年間王者のレジェンド、ゲディミナス・グリニウス Gediminas GRINIUS (LTU)がKaga Spaに参戦します。近年も世界各地の大会で活躍しており、アジアでも昨年のChiang Mai 100マイルで5位、Amazean 100マイルでは今年5月に三連覇を達成しました。毎年来日しており、昨年はDeep Japan Ultra 100の80kで優勝しています。シャモニーの有名レストランのシェフという顔も持つグレゴワール・キュルメール Gregoire CURMER (FRA) も今回のKagaSpa 100の注目選手です。2019年のグランレイド・レユニオンの100マイルで優勝したほか、同年のTDSでは5位、2021年UTMBで7位となっています。テクニカルな山岳コースを得意としますが、Kaga Spaのコーストの相性は気になるところ。13位となった2018年のUTMF以来の来日です。
迎える日本勢では今年のMt. FUJI 100で海外選手を相手に3位に入った川崎雄哉 Yuya KAWASAKI (JPN) がこの日本初の「by UTMB」でどんなパフォーマンスを見せるか注目が集まります。2016年と2023年のハセツネCUPチャンピオンであり、トレイルランニング世界選手権では5回連続の日本代表選手であり、世界のトップ選手を相手にしたレースについては経験豊富です。そして、2022年のUTMF王者の西村広和 Hirokazu NISHIMURA (JPN) も表彰台を狙います。最近は昨年末のITJ70kで2位ののち、今年4月のスペインで開催のPenyagolosa Trails CSP 106kでは3回目の参戦で最高位の2位になり、好調ぶりがうかがえます。近年、急速に力をつけている若手、小笠原光研 Koken Ogasawara (JPN) にとっては自国開催のこの大会は大きなタイトルを手にするチャンスです。昨年12月のITJ70kでは国内のライバルを相手に鮮やかなレースを展開して優勝。今年4月のMt. FUJI 100のASUMI40kではトップに僅差の準優勝となっています。
次の選手にもKagaSpa 100での活躍が期待されます。
- 黒河輝信 Terunobu KUROKAWA (JPN): 2024年TransLantau by UTMB 126kで優勝。上州武尊山スカイビュートレイルでは2019年、2023年、2024年(80k)で優勝。
- 判田誠太 Seita HANDA (JPN): 2024年阿蘇ボルケーノ115kで2位、広島湾岸107kで優勝。
- 大瀬和文 Kazufumi OSE (JPN): 2024年奥信濃100 50kで3位、信越五岳100マイルで2位。
- コ・ミンチョル Minchul KO (KOR): 2024年TransJeju by UTMB 100kで3位、2025年比叡山50kで2位。
- 西方勇人 Hayato NISHIKATA (JPN): 2023年OSJ山中温泉80k優勝、トレニックワールド彩の国100マイルで2位。2024年Mt. FUJI 100で4位。
- ヤン・チ・シン Chi Shing YEUNG 楊志成 (HKG): 2022HK4TUC 298kで3位。2023年TransLantau by UTMB 140kで9位。
- キム・ジズ Jisu KIM 김지수 (KOR): 2024年Korea 50k優勝、TransLantau by UTMB 50kで8位。
- 高島宏希 Hiroki TAKASHIMA (JPN): 2022年奥三河70kで2位、比叡山50マイルで3位。
- 竹村直太 Naota TAKEMURA (JPN): 2022年信越五岳100マイル2位、2025年Mt. FUJI 100で7位、同年のRinjani 100で4位。
- 三浦裕一 Yuichi MIURA (JPN): 2018年ハセツネCUP優勝、2023年球磨川リバイバル100マイルで2位、2025年比叡山50マイルで2位。
KagaSpa 50 – 走れるレースを制するのはロードのスピードの持ち主か
距離55.9km、累積獲得高度2,717mD+のコースを走るKagaSpa 50も、100kと同じく山中温泉・山中座がスタート、フィニッシュとなります。スタートは午前8時30分の第一ウェーブと10分後スタートの第二ウェーブに分かれてスタートします。コースは前半が比較的林道や舗装路が多い走れるスピード勝負のセクションであるのに対して、後半では鞍掛山に向けて南からと北からの2度の登りが含まれます。前半のスピード勝負を制してもトレイルのセクションで順位が入れ替わるような、ドラマティックな展開があるかもしれません。

女子選手
女子はミドルディスタンスのトレイルランニングやスカイランニングの日本の第一人者である髙村貴子 Takako TAKAMURA (JPN) に注目です。ハセツネCUPでび五連覇と大会新記録という歴史的な活躍で知られます。国際的な大会でも昨年はAPTRC選手権・ショートで金メダルを獲得し、アジアの覇者というタイトルを手にしました。その後もChiang Mai by UTMB 50kでは3位、今年はGTWS開幕戦の神戸トレイルで4位、スカイランナーワールドシリーズの上田スカイレースで優勝と好調です。石川県出身で、加賀スパの前身となるOSJ山中温泉では2015年、2017年に優勝しています。
宮﨑喜美乃 Kimino MIYAZAKI (JPN) は日本初開催の「by UTMB」のレースでは50kを選びました。近年は100マイルのトレイルランニングレースに焦点を合わせており、 2022年のUTMF優勝をはじめ、同年のPirin Ultra 160kで優勝、2023年のTarawera by UTMB 100マイル準優勝、同年のIstria by UTMB 100マイル優勝、Hardrock100で4位、今年のTarawera 100マイルで優勝と海外レースで実績を重ねています。
ジン・ユエン Yuan JIN 金源 (CHN) は陸上競技のトラック種目で中国を代表するアスリートとして知られ、2008年北京五輪をはじめ世界陸上やアジア選手権に出場した経験を持ちます。昨年からトレイルランニングをはじめ、Hong Kong 100 Third 33kで2位、Trans Jeju by UTMB 50kで3位、Ninghai by UTMB 25kで優勝といった記録を残しています。舗装路や林道のセクションでそのスピードを発揮すれば、KagaSpa50でタイトルを掴む可能性は高そうです。
「浮遊ガール」として人気の石原菜美 Nami ISHIHARA (JPN) は石川県に住んだ経験を持ち、加賀スパへの参加には人一倍の思いがあるでしょう。昨年は比叡山50kで2位、奥信濃100 50kで3位、今年のASUMI40kで6位。先月は二上山トレイルラン20kで2位となり、北陸に足跡を残しています。
さらに、石川県在住で市民ランナーとして活躍する三味美帆子 Mihoko SHAMI (JPN) や香港のウン・チンナム Chin Nam NG (HKG) 、チョン・チーマン Tsz Man CHUNG 鍾芷蔓 (HKG) 、日本の崎坂由香 Yuka SAKISAKA (JPN)がスタートラインに揃います。
男子選手
「スティングレイ Stingray」のニックネームを持つジョン・レイ・オニファ John Ray ONIFA (PHI)はアグレッシブな走りのスタイル、特にテクニカルなトレイルで見せる攻めたダウンヒルに定評があります。最近は昨年11月のAPTRC選手権ショートで金メダル、12月のTNF100 Hong Kong 100kmで優勝、今年1月のHong Kong 100で6位。日本では今年の神戸トレイルで13位、上田スカイレースで10位になっています。
今年春から日本に留学中のマルセル・ヘーヒェ Marcel HOECHE (GER) は精力的に日本のトレイルレースを走っており、4月にはKAI70kで2位、上田スカイレースで3位でした。来日前の昨年、Kaiserkrone 20Kで優勝しているようにスカイランニングのレースのようにテクニカルな山岳コースに強いランナーです。日本勢では青山学院大学陸上部出身でスピードと持久力が武器にトレイルに転向した田村健人 Kento TAMURA (JPN) がKagaSpa 50に挑みます。2023年のKAI69kのチャンピオンで、2024年にはハセツネCUPで準優勝。UTMBワールドシリーズのレースでは2023年にDoi Inthanon 100kで9位となっています。加えてミドルディスタンスのトレイルを強みとする岩井竜太 Ryuta IWAI (JPN) も上位争いに加わるでしょう。2023年の彩の国100kmのチャンピオンで昨年のOSJ新城ダブル64kで準優勝でした。
加えて香港からは昨年のTransLantau by UTMB 100k優勝のジャン・フォッチョン Fuk Cheung TSANG 曾福祥 (HKG)や同じTransLantauの120kで4位のジャン・ジャンギ Chun Kit TSANG 曾進傑 (HKG) がこのKagaSpa 50に参戦します。昨年の信越五岳100マイルチャンピオンで5月のUltra-Trail Australia by UTMB 100マイルで5位の長尾暁人 Akito NAGAO (JPN)、FunTrails代表で今年は比叡山50k、彩の国100kでいずれも3位と積極的にレースを走っている奥宮俊祐 Shunsuke OKUNOMIYA (JPN)と注目の選手が続きます。40代になってランニングを始め、競技歴5年で昨年春のマスターズスカイランニング世界選手権スカイウルトラで金メダルを獲得、同年のChiang Mai by UTMB 100kでは9位になる活躍で話題となった岡田裕也 Yuya OKADA (JPN) も参戦します。
KagaSpa 20 – 若手の有望株からレジェンドまで
KagaSpa 20は他の二つのレースのチェックポイントが設けられる石川県県民の森をスタートし、山中温泉のフィニッシュゲートを目指す距離21km、累積獲得高度706mD+のコースで行われます。スタートは午前10時の第一ウェーブと10分後にスタートの第二ウェーブに分かれます。走りやすいセクションが多いものの、中盤の鞍掛山に向けての登りは急登が続き、その後の下りにはテクニカルな箇所もある挑戦しがいのある21kmです。

女子のエントリーリストのエリートカテゴリーには、ジョアンナ・モックフォード Joanna MOCKFORD(GBR)、チョン・キットイー Kit Yee CHENG 鄭潔儀(HKG)、ジーナ・カシアン Gina CASIAN(USA)といった国際色豊かな選手の名前があります。
男子は昨年のスペインでのスカイランニング世界選手権に日本代表として出場して9位となった山口大河 Taiga YAMAGUCHI(JPN)がレースを主導しそうです。続くアスリートとしては昨年のTransLantau by UTMB 50k で5位の松永紘明 Hiroaki MATSUNAGA (JPN) や、宮本大資 Daisuke MIYAMOTO (JPN)、降矢信彦 Nobuhiko FURUYA (JPN) とが名を連ねています。
加賀スパの大会当日のアップデートはUTMB Liveや大会公式ソーシャルメディアから
加賀スパの三つのレースが開催される6月21日土曜日は、UTMBワールドシリーズの大会では恒例のUTMB Liveで参加選手の通過状況や順位をリアルタイムで見ることができます。
このほか、加賀スパの公式ソーシャルメディアでも大会について情報が発信される予定です。
- InstagramのKaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB 公式アカウント
- FacebookのKaga Spa Trail Endurance 100 by UTMB 公式ページ
DogsorCaravanも大会会場で取材し、現地からの話題をお届けする予定です。