四月の神戸での開幕からヨーロッパ、北米へと、世界各地で全8戦にわたってトップアスリートたちが熾烈な戦いを繰り広げてきた今年のGTWS(ゴールデントレイルワールドシリーズ)が今週末にクライマックスを迎えます。
今シーズンの集大成となる「レードロ・スカイ・トレンティーノ・グランドファイナル Ledro Sky Trentino Grand Finale」が、10月10日金曜日から12日日曜日にかけてイタリアのガルダ・トレンティーノ Garda Trentinoで開催され、ついに年間チャンピオンの栄冠が誰の手に渡るかが決まります。
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(Photo © GTWS)
シーズンの最終決戦にふさわしい舞台は、風光明媚なガルダ湖とキエーゼ渓谷に挟まれ、第一次世界大戦の塹壕跡が残る歴史的なロケーション。選手たちはまず10日金曜日の累積標高500m、距離6.9kmのタイムトライアル形式の「プロローグ」で個々の走力を試されます。
そして、シーズンのフィナーレを飾るのが、累積標高1,600m、距離21kmの「メインレース」です。このコースは、伝統あるレードロ・スカイのルートをさらにタフに拡張したもので、パリ峰 Cima Pari、スクラパ峰 Cima Sclapa、ドーロ峰 Cima d’Oroといった山々を結ぶ「グレステ」と呼ばれる壮観な尾根を縦走します。常にアップダウンが続くこのテクニカルな稜線は、選手たちの技術と精神力を極限まで試すことになるでしょう。このエリアはユネスコの人間と生物圏計画 Man and the Biosphere (MAB) program にも認定されたレードロ・アルプス自然保護区の一部であり、選手たちはその美しい景観の中を駆け抜けます。
グランドファイナルの勝敗を大きく左右するのが、一発逆転の可能性を秘めた独自のポイントシステムです。今回は通常のレースの2倍のポイントが付与され、優勝者はプロローグで100ポイント、メインレースで300ポイントの合計400ポイントを獲得できます。この最終戦の結果が、各選手が今シーズン積み上げてきた成績(上位3レース分のポイント)に加算され、2025年のGTWS年間チャンピオンが決定します。最後まで誰が勝つか分からない、スリリングな展開が期待されます。
男子はエルアザウイがタイトル防衛に挑む
男子の年間チャンピオン争いは、現GTWSチャンピオンであり、タイトル防衛がかかる最終戦に臨むエルハウシン・エルアザウイ Elhousine Elazzaoui (MAR) が600ポイントでランキング首位に立っています。エルアザウイは今シーズン、ゼガマ Zegama-Aizkorri(スペイン)、ブロークン・アロー・スカイレース Broken Arrow Skyrace(米国)、テペク・トレイル Tepec Trail(ポーランド)で圧倒的な強さを見せつけて3連勝を飾っており、シリーズ連覇に向けて万全の態勢です。

しかし、そのエルアザウイの背後には、わずか12ポイント差の588ポイントで、ケニアの強力な二選手が迫ります。パトリック・キプンゲノ Patrick Kipngeno (KEN)とフィレモン・キリアゴ Philemon Kiriago (KEN)です。キプンゲノは神戸トレイルと万里の長城トレイルレース(中国)で優勝し、先日のWMTRC世界選手権・カンフランク・ピレネー大会ではアップヒル種目で銅メダルを獲得し、スピードと登坂力の両方で高い実力を証明しています。一方、チームメイトのキリアゴはイル・ゴルフォ・デッリーゾラ・トレイル Il Golfo dell’Isola Trail(イタリア)と「女王」の異名を持つシエール・ジナール Sierre-Zinal(スイス)で優勝。さらにWMTRCのクラシック種目では見事金メダルを獲得し、勢いに乗っています。この二人がエルアザウイの連覇を阻む最有力候補となるでしょう。

このほか、地元イタリアの期待を背負うダニエル・パティス Daniel Pattis (ITA)や、スイスのテクニカルなコースを得意とするロベルト・デロレンツィ Roberto Delorenzi (SUI)といったヨーロッパの強豪選手たちも、虎視眈々と表彰台、そして年間ランキングのジャンプアップを狙っています。
日本からは現在年間ランキング18位の近江竜之介 Ryunosuke Omiに加え【追記・近江は出場を見送ります。2025.10.10】、GTWSのナショナルシリーズで上位に入った上正原真人 Masato Kamishohara、山口大河 Taiga Yamaguchi、牛田美樹 Miki Ushidaがこのレースに参戦します。
女子は混戦、5人が100ポイント差以内にひしめく
一方の女子のタイトル争いは、男子以上に熾烈です。ランキング上位5人が100ポイント差以内にひしめくという、まさに誰が勝ってもおかしくない大混戦模様となっています。
現在576ポイントで首位に立つのは、今シーズンを通して抜群の安定感を見せてきたマダリナ・フロレア Madalina Florea (ROU)です。イル・ゴルフォ・デッリーゾラ・トレイルでの優勝に加え、神戸とブロークン・アローで2位に入るなど、常に上位でフィニッシュする強さが彼女の武器です。

わずか10ポイント差の566ポイントで追うのが、スペインのサラ・アロンソ Sara Alonso (ESP)。シーズン序盤に神戸とゼガマで連勝し、圧倒的な強さを見せましたが、中盤に怪我で戦列を離れる不運に見舞われました。しかし、WMTRCのショートトレイル種目では銀メダルを獲得して完全復活をアピール。逆転劇を経てのチャンピオンを目指します。

ランキング4位には540ポイントで同じくスペインの若手、マレン・オサ Malen Osa (ESP)がつけており、虎視眈々と上位を狙います。そして、忘れてはならないのが昨年のGTWSチャンピオンのジョイス・ンジェル Joyce Njeru (KEN)です。シーズン序盤はスロースタートでしたが、ブロークン・アローで大会新記録を樹立して優勝。大舞台での勝負強さは折り紙付きで、昨年のグランドファイナルでも見せた逆転劇の再現を狙っています。
日本からは年間ランキングで現在11位の髙村貴子 Takako Takamuraがトップ10入りのチャンスを狙います。ナショナルシリーズ上位からは太田美紀子 Mikiko Ota、寺田未奈 Mina Terada、小谷奈穂 Naho Kotaniがエントリーしています。
残念ながら、万里の長城レースとシエール・ジナールで優勝し、ランキング上位につけていたキャロライン・キムタイ Caroline Kimutai (KEN)を含むサロモン・ミリマニ・ランナーズ Salomon Milimani Runnersのチームは、イタリアへの渡航ビザが取得できず、今回のグランドファイナルを欠場することになりました。彼女の不在が、熾烈なタイトル争いにどのような影響を与えるのかも注目されます。
レースの模様はライブ配信で
レースの模様は、ヨーロッパとアメリカではHBO Max、ヨーロッパとアジアではEurosportなどでライブ配信される予定です。日本からはこれらの有料配信プラットフォームでの視聴が難しいほか、今シーズンからはGTWSのシリーズ戦で有料配信プラットフォームのみの配信となる例があり、YouTubeでの無料配信が行われない可能性があります。この場合はGTWSのYouTubeで数日後にライブ配信の全編が視聴可能となることがあります。
配信スケジュール
- 女子メインレース: 10月11日(土)午後12時 現地時間(日本時間 午後7時)
- 男子メインレース: 10月12日(日)午後12時 現地時間(日本時間 午後7時)
世界トップレベルの選手たちが集い、年間チャンピオンの座をかけて繰り広げる今シーズン最後の戦い。その歴史的瞬間を、ぜひお見逃しなく。
(Source: GTWS)















