昨日5月15日は道志村トレイルレースに参戦。3月に東日本大震災が起きて以来、トレイルレースが相次いで中止となる中で、いち早く予定通りの開催を決めたイベントだった。
実測44キロ弱、累積高度2967m(いずれも当方のGPSによる計測値)というコースは日本のトレイルレースで最も激しいといえる。当方はいくつかのチャレンジと工夫をして挑んだが、いずれも裏目に出る形で苦しい展開となり、完走こそしたものの昨年とほぼ同じ7時間25分という結果に終わった。反省は多々あるが、様々な工夫を重ねていくことはこれからも続け、そしてそこから得られた教訓を生かしていきたい。
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以下はレースの振り返りの備忘録。
(写真 前日の受付会場。かなり早く着いたのでまだ人は少ない)
(前日の受付会場。佐藤スポーツさんなどがブースを出していた。当方もネイサンのボトルなどをお手頃にゲット)
(前日のコース解説。レースディレクターの野崎さん、昨年の入賞者のチームスポルティバ小川さん)
(スタート前)
当日は朝4時起床。同宿の毎度毎度のメンバーの皆様とともにそれぞれ思い思いに用意した朝食をとる。外は雲一つない快晴。この日は日差しは強かったが、木陰や風が吹き抜けるところではひんやりとする程度のランニングにはベストといえる天候。
給水について考えていた前夜、結局バックパックとハイドレーションバッグを使うことに決めて用意してみると、チューブとバッグのジョイント部分から漏水。先週掃除のために分解したときにジョイント部分のパッキンのゴムが勢いで外れたのをそのままにしていたことに気づいた。しかしここで考えを切り替え、ならばウェストポーチにボトルで行こうと決めた。具体的にはネイサンのX mutationと650mlのボトル。
ボトルで40キロを越えるトレイルを走るなど非常識といわれそうだが、アメリカのウルトラマラソン、トレイルレースではごく普通。無論、それはエイドが充実しているから可能なことに違いない。しかし今回の道志村トレイルレースも10キロ、20キロ、30キロのそれぞれ近辺で給水を受けられる。それらをうまく使えば、うまくいくかもしれない。それにうまくいくなら非常に身軽に走れることになり、得られる恩恵も大きい。
うまくいくかどうかわからないが試してみる価値はあるはず。前日の受付会場でお目にかかった、セミナー等でよくご一緒する強いランナーTさんもボトルで行くつもりとおっしゃっていたのも思い出した。
その他の状況。正直いって、少し緊張や焦りがあったかもしれない。自分が勝手に思っているだけの話しではあるが、今年は2月以降は波はあったがそれなりに持久力強化に成功したという思いがあり、道志村はその成果を試すとき、と思っていた。ボトルを使うという賭けもそうした気負いから来ている。普段はしない軽いウォームアップを5−6分してからスタート地点へ。
(スタート)
午前7時スタート。比較的前の方に並び、全体の流れについていく。スタートから2キロちょっとの地点で林道が終わりトレイルに入るのだが、いきなり狭いシングルトラックになるので渋滞しがちなのだが、そのことを前日のコース解説で野崎さんがお話しされたせいか、周囲は相当速い。周りのペースにあわせるかたちでトレイル入口に到着。その先も渋滞というほど待つ時間はなく、順調に流れていった。
しかし、しばらくするとお腹に異変が。木陰に入ってひんやりとして冷えたせいか。いや、今思えば、今日のレースに妙に気負いすぎて胃腸に影響が出たのかもしれない。思い切って立ち止まるなど。ブドウ岩の頭まで上り詰め、菜畑山を過ぎてからしばらくのところでもまた異変を感じ立ち止まる。このことによる時間のロスは実際にはあわせても数分だと思うのだが、トラブルがあったという心理的な負い目と、それまで前後していいペースで走っていた仲間の皆さんに先に行かれてしまったというあきらめもあってちょっと気が抜けた思いでしばらく走る。
今倉山を経て、急坂をおりて道坂峠。給水はあったが量は限られるので紙コップに一杯だけ。ここから御正体山への登りがスタートするが、きつい登りではついついドリンクを多めに飲んでしまう。さらに空腹感まで感じてジェルをとりはじめる。登りのペースは思うように上がらない。御正体山山頂でドリンクは既に残り少なくなってしまっている。
第一関門20.2キロ地点の山伏峠には3時間45分弱で到着。福田六花先生からボトルに水を注いでもらう。空腹を抑えるためバナナに塩をつけたものを意識して多めに食べてから出発。
(第一関門山伏峠から)
しかし、このあたりで、おそらくはやや脱水気味で身体の動きが鈍くなっているのを感じた。山伏峠から大棚ノ頭までの登りは昨年は軽くいけた記憶があるが、今年は登りは大半を歩くことになってしまった。山伏峠でもらった水を取りながら進むが、甲相国境尾根を進むうちにどんどん飲んでしまう。それでも状況はあまり変わらず、昨年は楽しく駆け抜けた小さなアップダウンの連続も登りは歩いてしまっている。
必死の思いで菰釣山に到着したときは思わずベンチに座り込んでしまった。ボトルはほとんど空。ボトル一本では自分の体質、あるいは今日の気候、エイドの間隔では無理だったのだ。もう後は歩いて水があるはずの第二関門まで行くしかないか。
なお、この日は存じ上げている方だけでも上述のTさんのほか、同じく屈強な修行僧のごとき先輩ランナーNさん、さらにコース上で見かけた人の中にもボトルだけで走っている人はいた。また後で聞いた話でも、ハイドレーションバッグを持った人でも、思っていたほど飲まずにすんだという人もいた。体調や準備、あるいは体質によっては、ボトル一本でいけてしまう人もいたのだ。
そこへ塾生仲間であり、最近はトレランスイマーとして活躍中のわが畏友@n2n2noriさんがやってきた。当方がへとへとなのをみて見かねたのか、少しドリンクを分けてくれるというので遠慮なく頂戴することにした。まさに地獄で仏に会う気持ち。
菰釣山からの富士山の眺めはこの日は最高だったが、楽しむ余裕もなく、先をいく@n2n2noriさんやHさんの姿が見えなくなってからようやく再開。急な下りを経てガレた三ヶ瀬川ブナ沢を下りる足下はまだおぼつかないが、水分を補給するうちに少し調子が戻ってきた。林道とロードの下りはそれなりに走って、5時間44分ほどで31.65キロの第二関門の体験農場に到着。ここはふんだんに水道水があるので、ボトルを満たすほか、たっぷりと水を飲み、塩をなめ、チョコレートをかじる。トイレに行ったが、尿の色が濃く、多少の脱水状態だったことを確信。5分ほどいてから再開。
(第二関門体験農園から)
脱水から回復してきたのと、水をたっぷり飲んで水の心配がなくなった安心感からか、鳥の胸山への標高差400mの登りも足取りは悪くない。特にテクニカルなところもなく、単調な登りをセオリー通りに小さなステップでリズムをつけて登っていく。
悪くないペースで登っていたつもりだったが、後ろから追いついてきた人から声をかけられたので振り向くと、これまたお仲間のKTさん。さすが山で鍛えているせいか足取りが軽い。途中で場所を変えながら何度も応援されていた奥様の話など近況を話しながら山頂を目指す。少し気分が和らいだ。
山頂近くで前を進んでいた数人のグループを追い抜く。この中にこれまた上級セミナーでご一緒したHさんも。あら意外。今日のレースは疲労で集中を欠くせいか、石や木の根にぶつけたつま先が痛むが、鳥の胸山からの下りのトレイルをぐんぐん飛ばしていく@takuya220さんの背中をみながら、必死でついて行く。なんとか引っ張ってもらう形で、ようやく林道に到着。案の定、林道をしばらく走ったところで転んだものの軽傷で済んだ。
ここから先は5キロちょっとの室久保林道と舗装路の長い下り。脚を前に出せば前へと走ることはできるが、下りだけに一歩ごとに着地のショックが特に大腿四頭筋にかかってくる。鈍い衝撃に耐えながら重力にできるだけ逆らわないように駆け下りていく。14時25分頃、7時間25分でようやくフィニッシュ。昨年とほとんど同じタイムだった。
(まとめ)
序盤の腹の異変と中盤の水切れでの脱水で大いに調子を崩してしまったが、見方を変えればいい経験ができた。どのような工夫をすればより楽に、より速く、自然を楽しみながら走りきることができるか。お仕着せではない、自分なりの工夫を経験を通じて重ねていくこともトレイルラン、ウルトラマラソンの楽しみの一つのような気がしている。あまり大きなリスクを取るべきではないが、状況をみながら少しずつ工夫と経験値を積んでいこう。
そして今回もいつもと同じく多くのトレラン仲間の皆さんに応援していただいたり、声をかけていただいたりして力を得た。特に前述の@n2n2noriさんと@takuya220さんには多くの力をもらった。あきらめずに最後まで走れたのはお二人のおかげだ。ありがとうございました。
道志村トレイルレースはその距離に比べた上り下りの激しさという点で日本で最も厳しいトレイルレースの一つであることは間違いない。そこではトップ選手であってもちょっとしたバランスの崩れや些細な不注意で棄権を余儀なくされてしまう。そしてそんなレースだからこそ、ランナー仲間やスタッフの皆さんの応援や気遣いのありがたみが身にしみる。このレースが日本の初夏の季節を知らせ、トレイルレースの醍醐味を広げるイベントとして育っていくに違いないと確信した。