[DC] 「世界のトップ5を目指す」欧州遠征を振り返って・松本大選手インタビュー

海外のトレイルランニングレースに日本から参加するランナーが増え、そして日本のトレイルランニングレースで活躍する海外からのランナーの話題が増えてきた今年。そうした動きの中で、松本大選手の決意と活躍も話題を呼びました。


学生の頃から、国体山岳競技や富士登山駅伝、山田昇杯(現 上州武尊山スカイビュートレイル)などの山岳レースで活躍してこられた松本さんは、今年の夏、小学校の教師の職を辞して世界のトレイルランニングの世界に挑戦することを決意。欧州で盛んな本格的な山岳地帯での20-30kmのランニングレース、スカイレースに参戦。今年は初参戦ながら世界ランキング14位(Skyrunner World Series 2012)に。

シーズンを終えた松本大選手に今年の欧州遠征の感想、学び、今後の課題、来年に向けた目標を聞きました。さらに、子供達に故郷の野山を駆け巡る体験をさせてあげたいという普及活動についても聞きました。

Sponsored link


松本大選手インタビュー・欧州遠征の振り返りと今後の課題

DogsorCaravan.com: トレイル・マスターの岩佐です(笑)。今日は松本大さんをお迎えしてお話しを伺いたいと思います。松本さんはスカイランナーとして、今年は小学校の先生を辞めてプロとして活動を始められました。特に夏はヨーロッパのスカイランニングのレースを連戦されて、世界ランキングで14位という実績を残されました。今年を振り返ってお話しを伺います。ところで、松本さんはご自身について「スカイランナー」と名乗っておられます。トレイルランナーではなくスカイランナーと名乗るその訳は何でしょうか。

松本大さん:自分は走るのは実はそんなに好きじゃないんですね。山が好きなんです。自分は標高1100mのところで生まれ育ったので、周りは2000m級の山です。そういう山に登るのが好きなんです。トレイルランニングというと砂浜でも、近所の裏山でも走ればトレイルランニングになると思うんですが、それとは自分のスタイルはちょっと違うな、と思うんです。自分もトレイルランナーだとは思っているんですが、自分が好きな山にこだわってスカイランナーと名乗っています。

DC: 今年のアスリートとしてのレースについて振り返りますと、国内ではおんたけスカイレース、上州武尊スカイビュートレイルでそれぞれ3連覇、2連覇でした。そして夏の海外遠征ですね。7月のスペインでのSky GamesのSky Raceで2位、ドロミテスカイレース(Dolomites Skyrace / イタリア)で22位、ジルディモント(Giir di Mont / イタリア)で16位、シエール・ツィナール(Sierre-Zinal / スイス)で45位。10月のキナバル・クライマソン(Mt. Kinabalu International Climathon / マレーシア)で10位に入賞されました。一番印象に残ったレースはどれでしょうか。

松本:どのレースもレベルが高く、どのレースも印象に残りました。山好きとして一番燃えたレースはイタリアのドロミテスカイレースですね。標高3100mのPiz. Boeという山頂を目指して標高差1700mを登って下る、距離でいえばたった22kmなんですけども、本当にテクニカルなコースでした。ちょっと油断すると捻挫しそうな岩場がずっと続くコースです。

DC: ドロミテスカイレースで優勝したキリアン選手をはじめ、たくさんのランナーと交流されたかと思います。そうした交流を通じてご自身と比べて共通している点、違っている点についてどのようにお感じになりましたか。

松本: やっぱり山が好きということは共通してますね。一方、日本だとウルトラ(42kmを超える距離のレース)が頂点で皆そこを目指すという雰囲気があると思いますが、ヨーロッパのトップクラスの選手、例えばルイス(ルイス・アルベルト・エルナンド<スペイン>)と話すとウルトラは意識していないといいますね。自分は(20〜30kmを中心とする)スカイレースをやりたいと。このあたりは自分とも共通していると思いました。一方、生活環境の違いは感じました。キリアンはプロですけれども、トム(トム・オーウェンス<イギリス>)もルイスも仕事を持っています。トムはインテリな仕事をしていて、ルイスは山岳救助隊員です。そうした仕事を持っていながら世界のレースを転戦できる、そんな環境にいるんですね。日本では不可能なことですよね。それが非常にうらやましいなと思いました。

DC:参加されたレースの中には伝統とレベルの高さを誇るものもありますね。例えばシエール・ツィナールは今年が39回目でコースレコードは今年の富士登山競走でも優勝したジョナサン・ワイアット(ニュージーランド)が持っています。こうした伝統あるレースの雰囲気というのはどのような感じだったんでしょうか。

松本: そうしたレースも地元のお祭りとして行われていると感じました。ジルディモントが開催されたのはプレマナという小さな村なんですが、人口2000人くらいの村に800人のランナーが集まるんですね。前日のブリーフィングから大きな音で音楽を鳴らして大盛り上がりでした。レース当日もゴールの演出がすごくて、優勝した選手がフィニッシュすると花火がなったり。盛り上げ方が洗練されているなと感じました。また、歴史ある大会だけあって、そのレベルは恐ろしく高いですね。ヨーロッパのレースで感じたのは、自分が少しでも調子を崩したり、気を緩めたりすると、一気に順位が20も30も下がってしまう、ということです。シエール・ツィナールは遠征の最後でかなり疲れがあったんですが、そんな調子だとどんどん遅れてしまって順位も45位にとどまってしまいました。ヨーロッパのレベルを見せつけられて、いい勉強になりました。

DC: そうした今年一年の経験を振り返って自分自身の課題、それを踏まえた来年のレースなどの計画について聞かせていただけますか。

松本: 今年は教員という職を辞めて、練習する期間がないままいきなりシーズン入りした感じでした。正直あまり自分の力を出せていないなと思っていました。今年は世界を知るための下見の年だったなと思っています。来年は世界で戦いたいと思っていて、具体的にはSkyrunner World Seriesの年間ポイントランキングを狙って行きます。今年は14位という数字が出たので来年は悪くても10位以内、できればトップ5。そうなれると思うんですね。そのくらいの力はあると自分でも思ってるので目指していきたいですね。

DC:最後に大さんのトレイルランニングの普及活動についてうかがいたいと思います。大さんは既にアルパイン鹿沢や浅間スカイマラソンといったイベントも手がけておられ、子供達も参加できる今までになかった試みをされています。こうした取り組みの今後の予定についてお聞かせください。

松本:多くのトレイルランナー、レースの主催者の皆さんは、トレイルランニングを日本に根付かせていきたいという気持ちを持っておられると思います。自分もその一人で、文化として定着させるためにはどうしたらいいかと考えた時に、競技をピラミッドに例えるならその頂点となるもの(レースやアスリート)を確立して行く必要があります。日本にもいろいろなレースがありますが、強い選手が全て集まる日本選手権のようなレースはまだありませんよね。おいおいはそういうレースを企画してみたいですね。ただ、まず今、アスリートとしての自分にできることを考えると、アスリート仲間で合宿をして、お互いの情報交換をしたりしてレベルを高め合っていこう、そういうアスリートをサポートしてくれる仲間を集めていこう、ということですね。来年は宮原(徹)さん、近藤(敬仁)くんなんかと一緒に練習会をやりたいなと思っています。その一方でピラミッドの土台となる活動もやって行いきたいですね。ビギナー向けの講習会もそうですが、自分は教員をやっていた経験もあって、子供達に故郷の野山を走る、駆け巡るような体験ができる機会を作っていきたいですね。

DC: 今日はシーズンを終えられた松本大さんにお話しを伺いました。ありがとうございました。

(追記:松本大さんが昨年参加した欧州のレースをまとめたビデオを下のように公開しておられます。雰囲気が伝わる動画を是非ご覧ください。2012/12/03 11:56)

Sponsored link