(追加・記事の最後にレースで本八合目で撮影した上位20人の模様をまとめたビデオを加えました。)
7月26日(金)に開催された第66回富士登山競走。五合目以上の吉田口登山道は天候に恵まれた中、山頂コースと五合目コースの二つのレースが開催されました。
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富士吉田市役所から吉田口登山道を経て富士山頂(久須志神社)に向かう距離21キロ・標高差3000mの山頂コースは4回目の出場の松本大が2:49:40で初優勝。女子は初出場で米国出身で山口県在住のリア・ダーティ/Leah Daughertyが3:23:47で優勝しました。
レースの展開
当日の天候は穏やか。登山道に入って雲を抜けた吉田口五合目以上の高さでは真っ青な空が広がった。風も比較的穏やかでランニングには絶好のコンディション。
序盤の富士吉田市役所(770m)から馬返し(10.8km, 1450m)までのロード区間は上位を狙う有力選手が集団となって進む。お互いの出方をみるような展開で、優勝した松本によれば「例年と比べてロードのペースが穏やかだった。ロードが苦手な自分にとってはこれはチャンスかもしれないと思った」とのこと。しかし優勝候補の一人だった近藤敬仁はこの日は体調を崩し、五合目でリタイア。
五合目(15km, 2230m)からは一昨年2位、昨年3位と上位常連の加藤聡、一昨年5位の江本卓、松本が抜け出し、六合目(16km, 2380m)では加藤と松本がピッタリと併走。本八合目(18.8km, 3400m)では松本、加藤が2時間29分でほぼ同時に通過。3分後に奥宮俊祐、さらに1分後に村井涼。その後に小川壮太が続いた。加藤と松本の接戦は九合目付近まで続いたが、最終盤に松本が一気にラストスパートをかけ、加藤に2分の差を付けて山頂にフィニッシュした。
女子は一昨年、昨年と優勝している小川ミーナ、昨年5合目コース優勝の荻原真紀に、初出場のリア・ダーティ/Leah Daughertyが加わって上位集団を形成。登山道に入るとリアがリードし始め、3時間23分で優勝。半年前から山口県に住むリアは日本でも積極的にトレイルレースに参加。今年5月には道志村トレイルレースのロングで優勝している。
- 山頂コース
(男子)
- 松本 大 2:49:10
- 加藤 聡 2:51:58
- 村井 涼 2:53:05
- 奥宮 俊祐 2:53:49
- 小川 壮太 2:56:05
- 内野 雅貴 2:57:05
- 貝瀬 淳 2:58:04
- ステファン・タサーニープレル/Stephan Tassani-Prell(ドイツ) 2:59:16
- 江本 卓 2:59:44
- 藤原 武志 3:00:12
(女子)
- リア・ダーティ/Leah Daugherty(アメリカ) 3:23:47
- 荻原 真紀 3:25:54
- 小川 ミーナ 3:27:41
- 澁谷 佳代 3:39:54
- 山口 季見子 3:40:25
- 大庭 知子 3:43:13
- 新倉 麻貴 3:44:16
- 小林 知美 3:49:55
- シャーロット・クロフトールース/Charlotte Croft Ruth(ニュージーランド) 3:52:05
- 長坂 恵子 3:55:58
- 五合目コース
(男子)
- 生田 直人 1:23:29
- 飯塚 淳司 1:24:09
- 大瀬 和文 1:25:45
- 加藤 淳一 1:26:27
- 牛田 美樹 1:26:35
- 竹中 泰知 1:27:05
- 青木 純 1:27:42
- 渡辺 良治 1:28:19
- 山田 琢也 1:28:37
- 星野 隆彦 1:31:13
(女子)
- 星野 芳美 1:38:16
- 内山 真由美 1:42:27
- 廣瀬 光子 1:44:14
- 刑部 朝実 1:47:35
- 長谷川 奈々 1:47:47
- 加瀬沢 好美 1:51:42
- 中川 恵美 1:52:12
- 原 朋子 1:52:43
- 石塚 弓子 1:54:06
- 天方 美和 1:56:29
観戦記・松本、リアの今後の活躍に注目
世界文化遺産に登録され、富士山に登る人はますます増えるに違いない。富士山に登るといえば、駐車場のある中腹までバスやマイカーで行き、そこから一日がかりで山頂まで登るのが普通だ。
ところが、登山口よりさらに下の富士吉田市役所からほとんど何も持たずに走って山頂にいく人たちがいる。それも何百人も。一番早い人は3時間足らずで山頂についてしまう。
普通のランナーにとって、富士登山競走とは独特なちょっと特殊なランニングレースに違いない。さらには普通の人たちにとっては想像を超えた不思議な人たちの集まりと映るかもしれない。しかし、富士登山競走のような山岳のピークを目指すランニングレースは海外では盛んであり、盛り上がりをみせている。その文脈の中で富士登山競走は海外からも注目されている。むろん、日本のトレイルランナーにとっては日本を代表する有力選手が集まる日本選手権だともいえる。五合目まで2時間半という参加資格、4時間半という制限時間はかなり厳しい基準であり、山頂コースの完走はランナーにとっての名誉だといっていい。
そんな富士登山競走を今年制したのは松本大。学生時代から国体や富士登山駅伝で活躍してきた松本はトレイルランナーの間では有名なランナーであり、最近は40キロくらいまでの高所の山岳地帯で行われるスカイランニングにフォーカスしており、昨年からはフルタイムのランナーとして海外のレースにも積極的に参戦している。
その松本が富士登山競走にはこれまでに三度出場していたもののまだ優勝していなかったことの方が、むしろ意外だった。今年は5月にスペインで行われた40キロのZegama-Aizkorriで50位と苦戦する中、今年の富士登山競走に期する思いもあったに違いない。しかし、レース後の松本に聞いてみると、今回はあまり気負わずに臨み、終盤の加藤との競り合いも冷静にラストパートに向けて力を残した結果だという。
とはいうものの、日本が世界に誇るスカイレースである富士登山競走での優勝は自信につながったに違いない。富士登山駅伝でのチームメンバーであった鏑木毅(55、56、58回大会優勝)、横山忠男(61回大会優勝)に続いたことの思いもひとしおだろう。日本でスカイランニングの普及活動にも取り組む松本の国内外にわたっての活躍に注目したい。
一方、女子で優勝したのはリア・ダーティ/Leah Daugherty。コロラド出身の彼女がウルトラ・トレイルランニングのレースに出始めたのは2010年の秋とのこと。昨年はアメリカ東海岸の50kmの複数のレースで入賞している。半年前から日本に住むようになり、日本でもレースに出場している。アップダウンが激しく、エイドステーションの少ない日本のトレイルレースについても「むしろやり遂げた達成感が大きくて好き」だという。28歳という若さであり、これから日本でトレイルランナーとしてのキャリアを開花させることに期待したい。
レースレポート
当サイトによる写真集、速報
- 当サイト、DogsorCaravan.comによるレースの写真集
(7) 2013 Fuji Mountain Race -Race Day
- 動画: 本八合目(18.8キロ、標高3420m)での上位20人のランナー