[DC] レースレポート・原良和/Yoshikazu Hara ウエスタンステイツ/Western States Endurance Run 2014

【編者より・2013年ウルトラトレイル・マウントフジ/UTMF優勝など、世界でもトップレベルのウルトラ/トレイルランナーとして知られる原良和/Yoshikazu Haraさんが、6月28日にアメリカで開催された伝統の100マイルトレイルランニングレース、ウエスタンステイツ/Western States Endurance Runに出場しました。その原さんご自身から当サイトにレースレポートを寄稿していただきました。「来年もリベンジしたい」と語る原さんの今後に期待です。】

成績は総合38位、19時間49分03秒。カリフォルニア州のスコバレーからオーバーンまでの100マイルを走るウエスタンステイツ/Western States Endurance Runに出場してきました。

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レース当日まで

実は3週前から2週前までの高地練習で頑張りすぎ、右臀部に張りを残していました。せっかく早く現地入りしましたが、マッサージ、低周波、鍼治療等、治療に時間をとられました。当初の計画では日曜日~月曜日で40km程度はコースを試走するつもりが、痛みでほとんど走れず休養していた有様です。

最悪DNSも覚悟しましたが、水曜日木曜日とようやく走れるようになりました。 金曜日に登録、ドロップバック預け、プレスカンファレンスなど。Red Star Ridge(16マイル)にジェルを3個、川渡りの直後にシューズ(HOKA ONEONE / RapaNui)を預けました。

当日の装備

*リンク先は商品の一例でカラー、サイズなどは実際に原さんが使用したものとは違う可能性があります。

レースの前半

土曜日朝5時ちょうどにレースはスタート。400人しかいませんのでレース直前に整列する感じでした。標高1900m近い高地ですので気温10度位と寒かったです。 予想通り15人くらいが集団となりスキー場を登って行きます。私も足には不安を感じつつも、心肺機能は問題なく余裕をもって登ります。その登りで一時先頭に立ちかけましたが、自重!先頭がすぐ近くに見える位置で最高地点を47分台で通過します。

そこからは気持ちの良いシングルトラックです。集団が大きく実力者揃いなので、無理にペースアップする人もおらず、牽制?しながら経過しました。私は最後方からじっくり集団を観察しました。みなさん下りが上手くスムーズでした。そんななか私はLyon Ridge(10.5マイル)までに下りで転倒し膝を擦りむき、突き指してしまいますが、気を取り直して前を追いました。

Red Star Ridge(16マイル)でジェルを受け取り、防寒で使っていたアームカバーと手袋を預けます。Duncun Canyon(23.8マイル)まではスイッチバックの下りが多くあります。そこでも浮いた石に脚をとられ転倒。次第に下りが怖くなりブレーキを掛ける走りになってしまいます。

サポートを受けるRobinson Flat(29.7マイル)には少し気落ちした状態で入ります。冷たいうどんを2杯かけ込み出発。そこからの20kmはなだらかな下りです。前も後ろも離れて単独走が続きます。まずまずのペースで走れましたが、快調というには程遠く、上位争いは難しいことを覚悟します。暑さが気になってくる所ですが、日本の蒸し暑さ(北海道マラソンや信越五岳等)に比べると湿度が低く、日陰ではさほど暑さを感じませんでした。

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Robinson Flat(29.7マイル)での原良和さん。Photo courtesy of iRunFar

サポートのいるMichigan Bluff(55.7マイル)までには険しい谷(El Dorado Creek)を下って登り返さなければなりません。何とかたどり着いたものの、そこまでの下りでついに大腿四頭筋が終わってしまいました。ただ、食欲はあり麺類を多めに摂取します。

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レース後半

Foresthill(62マイル)からはペーサーをつけられる区間です。現地入りした当初はペーサーなしの予定でしたが、サクラメント在住の山下・John夫妻、Bryon Powell氏のご高配にてシアトル在住の藤岡さん、現地在住のLaMontさんの2人が決まりました。それぞれ20マイルほどを担当頂きます。

大腿四頭筋が辛くなっていたのでシューズをHuakaからBondi3に変更します。エイドでは再び麺類と現地で入手頂いたあんパンを摂取。 本来ならキロ5分以内で軽快に走りたい区間ですがキロ6、7分が精一杯で特に下りが辛くなり、後続に抜かれることが増えます。1人だと棄権しようかと考える状況ですが、1人でないという心強さと次のペーサー、サポーターも待っているということで足の痛みに耐えます。

名物のRiver Crossing(78マイル)は水量も多く胸辺りまで、水に浸かります。しかも雪解け水なのでひんやりとします。ボランティアの方が1、2m置きに立って足を着く場所を指示して頂きます。身の危険は感じませんが、流れの速さに驚きます。川を渡って2つ目のドロップバッグでした。シューズを替えなくても大丈夫な状況でしたが、気分転換も兼ねてBondi3→RapaNuiへ変更。

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78マイル地点でAmerican Riverを渡る原良和さん。Photo courtesy of iRunFar

Green Gate(79.8マイル)まで3km弱登ってサポートエイドに着きます。予定よりペースダウンしていたので、ライトの準備が必要な状況でしたが、当初は次のHighway 49(93.5マイル)の予定だったので貰えず、不安を抱えてエイドを出ました。 小さなアップダウンがあるくらいで走りやすい区間なのですが、足は回復せず、さらに重くなり、膝まで痛くなってきます(大腿四頭筋→膝の良くあるパターン)。

Brown’s Bar(89.9マイル)手前で暗くなり、ペーサー・LaMontのヘッドライトを頼りに前を進みますが、シングルトラックの下りは怖くなり、走る気力も無くなり、歩いてHighway 49へ到着。ヘッドライト(ペツルNAO(PETZL(ペツル) NAO E36A)を受け取ります。普段なら歩いてゴールすることに意味を見いだせず棄権を考えますが、エイドのスタッフやサポーターにも最後まで行った方が良いと励まされ、LaMontも最後まで歩くことに賛同してくれたので10分程度の休憩の後出発。天気が良く、満天の星空に感動しながら歩いてゴールを目指します。

目標の16時間に遠く及ばず、来年のシード権をとれなかった悔しさを胸にサポーターの待つゴールへ。複雑な心境でしたが皆さんの笑顔を見て救われた気がしました。

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総合38位、19時間49分03秒で2014年のウェスタン・ステイツ/Western States Endurance Runを完走した原良和さん。Photo courtesy of iRunFar

謝辞

現地で大変お世話になった山下・John夫妻、藤岡夫妻、LaMont氏、サンウエストの川田氏、日本でこのレースについてアドバイス頂いた岩佐氏、遠く日本でレースを見守っていただいた全ての方々、妻、長く幼稚園を休ませた息子に感謝の気持ちを捧げたいと思います。ありがとうございました。

来年機会があればリベンジしたいと思います。

ウルトラランナー 原良和

プロフィール:原 良和(はらよしかず) 1972年8月生まれ。京都大学で陸上部に所属してランナーとしてのキャリアをスタート。卒業後も医師として働きながらトレーニングを重ね、最近ではフルマラソンの他、ウルトラマラソンやトレイルランニングでも活躍。トレイルレースに初挑戦の2010年ハセツネ30kでは28位。2012年サロマ湖100kmウルトラマラソン6時間33分32秒は同年世界ランキング3位。2013年はウルトラトレイル・マウントフジで優勝したほか、12月の台湾・東呉大学24時間走(Soochow International Ultramarathon)を273.65kmで優勝。妻の朋子さんも実力あるウルトラマラソンランナーで四万十川ウルトラマラソンでは2012年、2013年と連続で夫妻でそれぞれ男女の優勝を飾ったことで話題になった。1児の父。

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