[DC] レポート・2月15日開催の環境省の「国立公園におけるトレイルランニング大会等の取扱い」説明会

トレイルランニングと登山道や自然環境の保護、他の利用者の安全確保の関係が昨年来話題に上ることが増えています。本日2月15日に環境省国立公園課は「国立公園におけるトレイルランニング大会等の取扱いに関する説明会」を東京都内で開催しました。以下、その概要をご紹介します。

なお、同じ内容の説明会が2月17日にも予定されています。

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【注・以下の記事は説明会に出席した当サイトがまとめたもので、主催者の環境省の見解や質問の内容についての文責は当サイトにあります。】

Mitsuyuki Okamoto of MOE

説明会で「一つ一つの大会の現場で合意形成を進めることが大切ではないか」とあいさつする環境省国立公園課長の岡本光之氏。Photo by Koichi Iwasa of DogsorCaravan.com

「取扱い」の主な内容

この日、説明のあった「国立公園におけるトレイルランニング大会等の取扱い(概要)」の主なポイントは次の通りです。資料はこちらのリンクからダウンロードできます(注・会場で配布された資料を当サイトがスキャンしたPDFファイルです)。

  1. 国立公園内でも厳正な保護を図っている特別保護地区、第1種特別地域は原則としてコースにしない
  2. 上記以外でも保全対象として重要な自然環境があるところ、トレイルの複線化や拡幅が懸念されるところ、脆くて崩壊の恐れがあるところ、がれ場や傾斜地の狭いトレイルはコースにすることを避ける。
  3. 開催にあたっては、他の利用者が多い場所や時期を避け、地域に開催日時を広く周知する、参加者が守るルールを周知する。
  4. 自然環境について専門家の意見を聞くほか、管理者や自治体と十分に事前協議をする。
  5. 大会主催者は大会の前後で自然環境に異変が起こっていないかモニタリングする。
  6. 主催者、参加者、応援者は一般的なマナーを守る。

また、この「取扱い」は環境省が地方の出先機関に運用通知として発出し、実際にトレイルランニングが開催される場合に細部解釈の指針として活用するほか、各都道府県とも共有して国立公園以外でのトレイルランニング大会の取扱いの参考にしてもらうことを想定しているとのことです。

会場とのQ&Aから

  • 「取扱い」の目的はトレイルランニングの規制ではない:今回の「取扱い」の趣旨について、トレイルランニング大会について否定的に捉えているわけではなく、国立公園の利用と保護のバランスをとることで、よりよい形でトレイルランニング大会が開催されることを期待しているとの考えが示されました。国立公園では自転車用のコースを設けている例もあり、走ることを想定したコースを登山道と分けるのも一案という考えが示されました。
  • 「取扱い」に基づく実際の判断は地域の実情と調整に応じて:会場からはコース設定の可否やモニタリングすべき箇所の選び方など「取扱い」に示された考え方について具体的にどのような基準で判断するか、という質問がありました。これについては各地の実情により判断基準は多様なのであえて具体的な基準は示していない、という考えが示されました。こうした考え方に沿って、現段階ではトレイルランニング大会の実施計画書の書式や様式を行政が定めることは考えていないとのこと。
  • レースだけを対象としているわけではない:会場からはもっぱらトレイルランニングのレースだけを想定したルールとなっているように見える、との質問がありました。これに対しては、スピードを競い多くの人が一度に走るレースが一番対応すべき課題と考えて取扱いをまとめたが、レース以外のトレイルランニングでも配慮すべき点があるはず、トレイルランニングの競技団体を作る動きがあるので連携して考えていきたい、との考えが示されました。
  • 動植物の保護は重要な課題で、様々な事例を集めたい:地域の自然保護に携わるNPOの出席者からは、地域の公園でトレイルランニング大会が開催されるが車道を走るべきと反対している、国立公園以外にも豊かな自然がありそこに棲む小さな生き物に配慮すべきとの意見。これについては、公園の管理形態に違いはあるだろうが今回の「取扱い」が共有されることを期待している、様々な動植物への配慮が必要なのはもっともで、今後も情報を収集していきたい、との考えが示されました。

当サイトの感想:次はトレイルランニングのコミュニティ自身がアクションを起こす順番

本日の説明会で環境省から示された「取扱い」の内容は、ここ数年トレイルランニングのコミュニティの中で問題意識が高まり、守るべきルールやマナーとして意識されてきたことが大半だといえるように思います。環境省の側でトレイルランニングというスポーツをよく調べ、関係者から幅広く意見の聞き取りをされた様子がうかがえます。

ただ、トレイルランニングにともなって、環境保護のためにすべきことや他の利用者の皆さんとの間で配慮すべきことはトレイルランニングのコミュニティが一番知っているはずで、それぞれの地域やトレイルの利用者との合意形成や自然保護のためのルール作りも各地でトレイルランニングのコミュニティが中心になるべきと思います。決して行政が代わりに解決してくれることではないでしょう。

昨年来、動きが出ているトレイルランニングの競技団体作りの動きはこの点でもトレイルランニングのコミュニティにとって重要だといえそうです。

また、一方ではトレイルランニング大会の主催者からはレースのためのトレイルの利用の可否について地域によって行政側の判断に差が大きいとの声もあり、行政側の判断の基準について当局間で共有が進むことも期待できそうです。

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