5月4日、HOKA ONE ONE(ホカ オネオネ) による100kmマラソンおよび50マイルの世界記録に挑戦するイベント「Project Carbon X(プロジェクト カーボンエックス)」がカリフォルニア州フォルサムのアメリカン・リバーに沿って設けられる特設コースで開催されました。
(写真・レース序盤の山内英昭。Photo by HOKA ONE ONE)
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後半は強い日差しで気温が上がる中、選りすぐりの8選手の中で日本の山内英昭 Hideaki Yamauchiが6時間19分55秒で優勝、高田由基 Yoshiki Takadaが6時間52分3秒で3位となりました。ウェスタン・ステイツの大会記録保持者のジム・ウォームズレー Jim Walmsleyは途中に設定された50マイルの世界記録を更新。しかしその直後に大きくペースを落として100kmでは4位のフィニッシュとなりました。
Hideaki Yamauchi wins the Project Carbon X 100K in 6:19:55. What an effort. #timetofly 📸: Noah Carroll pic.twitter.com/GZ5O1Qjq8B
— HOKA ONE ONE (@HOKAONEONE) May 4, 2019
このイベントは新世代のロードランニングシューズ 「Carbon X(カーボンエックス)」がHOKA ONE ONE(ホカ オネオネ)から発売されることにあわせて開催されました。Project Carbon Xに参加した各選手はHOKA ONE ONEの技術を結集したこのシューズを履いてレースに参加しました。Carbon Xは日本国内では5月15日にホカ オネオネ公式サイトで先行発売開始、6月1日から全国の取扱店にて発売予定です。
Project Carbon Xのレース展開
レースはカリフォルニア州の閑静なリゾート地、フォルサム市を午前6時にスタート。朝の気温は10℃ほどと100kmのウルトラマラソンには快適なスタートとなりました。しかしこの日の最高気温は28℃という予報で日が高くなるにつれて強い日差しで体感気温はぐんぐん上昇していきました。
8人の選手にはそれぞれ複数のペーサーが付く体制でスタートしたレースは、50マイルの世界記録(1984年にブルース・フォーダイス Bruce Fordyceが記録した4時間50分51秒)の更新をねらうとみられていたタイラー・アンドリュース Tyler Andrewsが先頭を走り、続いて今回の100km世界記録の更新の最有力候補とみられていたジム・ウォームズレー Jim Walmsleyが続きます。世界選手権で二度優勝している山内英昭 Hideaki Yamauchiは自分で設定したペースを守ることを優先したといい、3番手でアメリカン川に沿って設けられた舗装された自転車道を下っていきます。
約30km走ったところからはアメリカン川の左岸から右岸へと時計回りに周回するコースへ。50km地点ではウォームズレー が2時間57分28秒、アンドリュースが2時間57分49秒、山内が3時間0分34秒といずれも世界記録の6時間9分14秒を上回るには十分な通過タイムとなりました。ギャラリーでは世界記録更新への期待が高まります。
しかし日差しが強くなる中でアンドリュースはペースが落ち始めてウォームズレーに捉えられることに。結局アンドリュースは周回コースを4周した62km地点でリタイアすることになりました。ウォームズレーもややペースが落ち始めますが、まだ100kmの世界記録更新には望みがつながるペースを保って7.5kmの周回コースの7周目に入り、50マイル(約80km)地点を4時間50分8秒で通過。世界記録を43秒上回ることになりました。しかし、次のエイドまでたどり着くとウォームズレーは足をピタリと止め、エイドで首をふりながら立ち止まってしまいました。その後、ウォームズレーは再びゆっくりと走り始めますが100km世界記録更新の夢は実現しませんでした。
Set the bar to impossible. You never know how high you’ll get when you reach for it. 4:50:08. 5:48/mile. Your new 50-mile World Record Holder, @walmsleyruns #timetofly pic.twitter.com/pLKq5rriuw
— HOKA ONE ONE (@HOKAONEONE) May 4, 2019
一方、山内も気温が上がる中で後半はペースを落とすようになり、50マイルの通過は4時間57分44秒とウォームズレーから7分半遅れに。しかし、ウォームズレー がペースを大きく落とす一方で山内は粘り強く踏み止まり6時間19分54秒でフィニッシュ。世界記録には及ばなかったものの、厳しいコンディションとなったなかで自己ベスト(6時間18分22秒、2016年世界選手権)に1分半差という成績を残した山内には、会場から大きな賞賛が送られ、メディア関係者からは日本のウルトラマラソンのチャンピオンに矢継ぎ早に質問が浴びせられました。
2位でフィニッシュしたのは上に挙げた3人の後に続いて前半を走ったパトリック・レーガン Patrick Reagan。3時間9分で50kmを通過したのちも大きくペースを落とさない走りを見せました。6時間33分50秒というタイムで自己ベスト(6時間35分42秒)を2分近く縮めました。3位は高田由基 Yoshiki Takada。高田も上位選手が苦しんだ後半に踏みとどまることで順位を上げて6時間52分3秒でフィニッシュしました。
4位にはウォームズレー 、5位にはマイク・ウォーディアン Mike Wardianが続きました。
2人が参加した女子のレースはサブリナ・リトル Sabrina Littleが7時間49分28秒でフィニッシュ。兼松藍子 Aiko Kanematsuは後半の周回コース5周目を走った69.6kmでリタイアとなりました。
リザルトの速報はこちらから。
今回のProject Carbon Xは世界記録の更新を目標に掲げ、選りすぐりの選手8人のみが、記録が公認される条件を満たしたなかで走るという、他にはあまり例のないイベントでした。アメリカではロードのウルトラマラソンが少ないなかで、経験豊富な日本の山内英昭、高田由基が好成績を挙げたことは現地で大きな話題となりました。一方、今回の参加者の中でも呼び声の高かったジム・ウォームズレーにとっては、ウルトラランナーとしてのキャリアを開花させる前の2015年の100km世界選手権と同じような展開でレースを終えることとなりました。それでも50マイルの世界記録更新は大きな成果。レース後に本人も話していましたが、もし3回目の100kmロードマラソンを走る機会があれば、その時には大記録が生まれるかもしれません。
ライブ中継に当サイトの中の人が実況・解説で登場
今回の「Project Carbon X」の模様はYouTubeでライブ配信が行われ、英語での実況中継のほか、当サイトの岩佐が担当する日本語でのライブ配信も行われました。ライブ配信では岩佐のほか、解説者としてレースが開催されたカリフォルニア在住のウルトラランナー・山下麻貴子さんに会場で、前100km世界記録保持者で日本のウルトラマラソンのレジェンド、砂田貴裕さんに電話で、加わっていただきました。プレイバックを視聴することができます。