トレイルランニングと出会ってわかった走ることのすばらしさ・鬼塚智徳 Playback UTMF 2019 第一回【PR】

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4月26-28日に行われたウルトラ・トレイルマウントフジ Ultra-Trail Mt. Fuji(UTMF)は今年もたくさんのドラマを生みました。

THE NORTH FACEアスリートの鬼塚智徳 Tomonori Onitsukaさんは今回のUTMFを22時間27分、7位でフィニッシュ。100マイルをスタートからフィニッシュまで、大きく崩れることのない会心の走りを見せて表彰台に立ちました。

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2014年に92kmのSTYで3位となって以来、試行錯誤しながらUTMFに取り組んできた鬼塚さんにお話しを聞きました。

(写真・今年のUTMFでフィニッシュした鬼塚智徳さん。Photo by © Sho Fujimaki / UTMF)

実業団のエリート長距離ランナーがトレイルランニングと出会う

鬼塚智徳(おにつかとものり)さん

鬼塚智徳(おにつかとものり)さん:1980年福岡県生まれ。浮羽高を経て九電工陸上競技部へ。実業団ランナーとして1999年世界クロスカントリー日本代表、2000年全日本実業団ハーフマラソン3位(1:01:37)、2005年別府大分毎日マラソン(2:12:48)などの成績を挙げる。その後、2012年平尾台トレイルランニングレースで優勝して以来、2014年神流40k優勝、2015年OSJおんたけ100k準優勝、2017年Korea 50Kで3位、2018年信越五岳100マイルで4位など幅広く活躍している。(Photo by © Sho Fujimaki / UTMF)

鬼塚さんは福岡県生まれ。少年の頃から走る才能に恵まれ、中学、高校と順調に記録を伸ばし、高校三年の時にはインターハイに出場。「高校生のころは練習すればするほどいいタイムが出せました。このまま実業団に進んでどこまでいけるか自分を試したい、と思うようになりました。」

実業団の長距離アスリートとして地元・九州を中心に駅伝やマラソンで活躍、24歳で別府大分毎日マラソンで4位となった時には、2時間12分48秒の自己ベストを記録します。大きなケガや故障もなく、競技に全力で取り組むことができた12年間だったといいます。

実業団を引退してフルタイムで会社員として仕事に打ち込むようになりますが、新しい生活に慣れてくると再び鬼塚さんは走るようになります。「長い間、走るのが日課でしたから急に走らなくなると体調が悪くなるんですよね。それにそれまでは勝つこととかタイムが最優先だったんですが、市民マラソンを楽しく走るというのに憧れていたんです。」最近も3月のさが桜マラソンを2時間26分で完走していてそのスピードは健在です。

トレイルランニングについて知ったのも、モンゴル国際草原マラソンで知り合った仲間から。誘われて初めて走った2012年の平尾台トレイルランニングレースで優勝します。

「それまでレースといえばスタートからゴールまでとにかく全力で走ることだけに集中していました。でもこの時は天気がよくて景色が素晴らしかったのでそれを楽しみながら走りました。下りはちょっとおっかなびっくりでしたけど、トレイルにあわせてリズムよく駆け下りる、というのが新鮮な経験でした。同じ走るのでもこういう世界もあるんだな、と思いましたね。」

翌年の平尾台でも優勝すると、もっとトレイルランニングをやってみたいという気持ちは強くなります。そしてその頃「激走モンブラン」のDVDを観たことで、いつか100マイルを走りたいと考えるように。2014年にはSTYで3位となり、トレイルランニングの世界で日本のトップ選手として知られるようになりました。

UTMFに挑む

そして有力選手として注目される中で、2015年のUTMFで初めて100マイルのトレイルランニングレースを完走。秋の雨が降り続く中で11位と健闘します。「160kmを走るのがどんなことなのか想像もつかないままスタートしたんですが、大きなトラブルもなく全部走り切れたんです。11位という結果は期待されたほどじゃなかったかもしれないですが、自分としては『意外と100マイルに向いてるかもしれないな』と思いました。」

Photo by © Kaz Nagayasu / UTMF

翌年のUTMFは大雨で大幅に短縮される中で3位となったものの、春に時期を移した昨年2018年は24時間42分で20位に。この間、アメリカやフランスのトレイルランニングレースにも出場しています。ただ、ロードのスピードが100マイルで活かし切れていなかったようにも思えます。

「住んでいる佐賀は大きな山が近くにないので、山の練習が足りていなかったと思います。でも、自分としては特に結果が出なくて悩むなんてことは一度もなかったですよ。いつも新鮮な気持ちで自然の中を走るのが楽しかったです。」

それでも今年はUTMFを前に、山でトレーニングする機会を増やし、距離に加えて標高差をかせぐことを意識するように。同じTHE NORTH FACEアスリートの森本幸司さんと阿蘇や脊振山地で朝から夕方まで走ることもありました。

「今回のUTMFで活きたのは昨年秋の信越五岳100マイルで初めてペーサーと一緒に走った経験だったと思います。今までだったら歩いていたような後半の長い登りでも、ペーサーと一緒だと意外にも走れるんです。今まで自分で自分に限界を作っていたのかも、と思うようになりました。UTMFにはペーサーはいませんが、今年は後半のペースが落ちそうな時にもうひと頑張りすることができました。」

Photo by © Sho Fujimaki / UTMF

トレイルランニングは走ることそのものが楽しい

こうして鬼塚さんは実業団のエリート長距離選手から、国際的な100マイルのトレイルランニングレースで表彰台に立つトレイルランナーとなりました。しかし、実業団でどんどん記録を伸ばしていた20代の頃と30代後半の現在では、トレーニングをしても結果が出ないもどかしさもあるのではないでしょうか。そこに悩みを感じることもあるのではないでしょうか。

「実業団の選手の頃は結果が全てでしたから、楽しいのは努力が結果で報われた時だけです。でも、今の私にとってトレイルランニングは自然の中を走るだけで気分がよくて楽しいんです。それにトレイルランニングを通じていろんな人たちと知り合うことができました。これもレースの結果以上にうれしいことです。」

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Photo by © Sho Fujimaki / UTMF

「今回、私がUTMFを完走したのを見て『感動した』っていってくれる人がいたんです。今まで、おめでとうといわれることはあっても感動した、なんていわれたことはなかったから新鮮でした。走ることで人を感動させられるなんて、素晴らしいじゃないですか。また、そんなふうに言ってもらえるレースができたらいいですね。」

やはり、今回のUTMFは鬼塚さんにとって自分の限界を押し拡げる経験となったようです。

(協力:THE NORTH FACE