キリアン・ジョルネとスペインのフットウェアメーカー、Camper(カンペール)が立ち上げた「NNormal(ノーマル)」が今年の秋、日本での販売を開始しました。トレイルランニングにおいて世界の頂点に立つキリアンが手がけるNNORMALが目指すのは、耐久性が高く過剰消費を避けられる製品、素材やデザインを通じて環境への影響を最小限に抑えた製品だといいます。
DogsorCaravanでは、NNORMALのランニングシューズの二つのモデル、KJERAG(ジェーラグ)とTOMIR(トミール)をご提供いただき、テストしています。
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二つのシューズを一言で言い表せば、軽量かつミニマルなアッパーと走る足の動きに素早く反応するソールが気持ちよい KJERAG と、足入れが快適でミッドソールに安定感を感じる TOMIR ということになります。
用途でいえば、KJERAG はレース仕様のガチのランニングシューズで、TOMIR はトレーニングやハイキングにも適したトレイルランニングシューズ、といえるのですがそれでは言い尽くせない気もします。どちらのモデルにも共通するのは、ランニングシューズとしてはシンプルでクラシックなデザインでありながら、先端的な素材を惜しみなく採用していること、ソールやアッパーの耐久性が高いことです。
動画版のレビューはこちらからご覧いただけます。
KJERAG:高いクッション性と足の自然の動きを妨げないランニングシューズ
キリアンの住むノルウェーの海岸部にある標高1,100mの山からその名をとった KJERAG はミッドソールに「EExpureミッドソール」というテクノロジーを採用。低密度のフォームであるため軽量でありながら反発力が高いのが特徴です。この特徴はランニングでは走る動作を無駄なく推進力に変える、すなわち高いエナジーリターンにつながります。ドロップは前足部17.5mmに後足部23.5mmの6mmとなっています。
アウトソールはVibram社のVIBRAM LITEBASEとMEGAGRIPとなっています。前者はアウトソールのトラクションや耐久性を保ちつつソールの厚みを半分にして3割軽量化するテクノロジー。後者は路面のコンディションにかかわらず高いグリップ力を発揮するラバーコンパウンド素材です。
なお、KJERAG はユニセックス仕様でサイズは 22.5-28.5cm(Pale greenカラーのみ 23.5-28.5cm)となっていますが、足形は小さいサイズには幅が狭めの女性専用ラスト、大きいサイズには幅広めの男性専用ラスト、その間のサイズには中間のトランジションラストが用いられています。
アッパーはシンプルなメッシュで、クッションの入った履き口に靴ひもを使ったクラシックなデザインです。しかし、アッパーにはポリアミド繊維とケブラー繊維を混合したジャガード織である MATRYX EVO が用いられています。これはMATRYXの素材の中でも最も耐久性が高く軽量な素材です。
シューズの内側をみるとシュータンはクッションを設けず、インソールも付属しません。クラシックな外見に対して、内側はミッドソールやアッパーの性能を引き出すためにミニマルな構成となっているのが特徴です。
- KJERAG(ジェーラグ) Unisex
- 価格: ¥35,200(税込)
- カラー:Black / Grey / Pale green
- サイズ:22.5-28.5cm (Pale green のみ 23.5-28.5cm)
- 重さ:200g(26.0cm)
TOMIR:高いクッション性とプロテクションで長距離のトレーニングやテクニカルなトレイルの走破にも安心なアウトドアシューズ
NNormalのデザインの拠点であるマヨルカ島の山から名付けられた TOMIR はVibram社のVIBRAM LITEBASEとMEGAGRIPをアウトソールに用いているのと、ユニセックスの足形は KJERAG と共通しています。ミッドソールにはドロップ8mm(23mm-31mm)のLIGHT EVAを使用。KJERAGとの比較では反発性やクッション性は低い反面、接地時の安定性やコントロール性は高くなっています。
アッパーはモノフィラメントポリエステルとTPEのブレンドで密に編まれた張りのある耐久性の高い素材です。ミッドソールとは糸でしっかりと縫い込まれているのですが、これは頑丈さにつながるのはもちろんクラシックなマウンテンシューズを思い起こさせるデザインともなっています。シューレースは足の前方が内側に向かう非対称な形状でフィット感を高めています。
シューズの内側をみると、シュータンの一部にはクッションがあり、インソールも入っています。この辺りは KJERAG と比べて一般的なランニングシューズに近いディテールです。
- TOMIR (トミール) Unisex
- 価格:¥27,500(税込)
- カラー:Beige / Grey / White
- サイズ:22.5-28.5cm
- 重さ:240g(26.0cm)
履いてみた・足の動きに追従するようなレスポンスが気持ちいい KJERAG、接地の安定感とプロテクションが安心の TOMIR
二つのシューズを履いて、近くのトレイルを走ってみたので、その印象をご紹介しましょう。
KJERAG はやはり足が着地するとソールが反発して足を押し返してくる動きを感じます。脚の筋肉と重心移動が生み出す着地の衝撃を効率的に推進力に変えるエナジーリターンの良さは、レースでベストの結果を求めるアスリートには頼りになることでしょう。一般レベルのランナーであっても、KJERAGを履くと走る動作のダイナミズム、弾むような身体の動きが楽しめます。ソールはMEGAGRIPのラバー素材がアウトソール全体を覆っているものの、固すぎず足の動きによく追従する感覚があります。
一方、TOMIR は着地した時に足がブレずに安定している印象です。アウトソールのラグが5mmと高めであるのも、着地時のグリップ感につながっているのでしょう。ミッドソールのボリュームやアッパーと接合するステッチは岩や木の根に踏み込んでも足をケガから守ってくれそうな頼もしさがあります。長距離、長時間をトレイルで前に進み続けるならこの TOMIR で、数時間くらいを身軽な装備で駆け抜けるなら KJERAG がよさそうだと感じました。