2024年のゴールデン・トレイル・ワールドシリーズ第5戦、シエール・ジナル Sierre-Zinal は8月10日にスイスで開催されました。1974年から続く欧州で最も伝統ある山岳ランニングイベントであり、WMRAのバルシール・ マウンテンランニングW杯の一戦でもあったレースは、今年も期待を裏切らない激戦となりました。コースは麓の町、シエールをスタートし、山間地のジナルでフィニッシュする距離31kmのコースで、登りの累積標高差は2,200mD+、下りの累積標高差は1,100mD-となっています。
男子ではキリアン・ジョルネ Kilian Jornet(ESP)が自身の持つ大会記録を1秒未満で更新してこの大会で10回目の優勝を成し遂げました。女子ではランニングに取り組み始めてわずか1年というジョイライン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno(KEN)が初めてのトレイルランニングレースで見事優勝しました。日本の髙村貴子 Takako Takamura は16位でフィニッシュしています。
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(Photo @GoldenTrailSeries | @SierreZinal | @ JustinGalant)
キリアン・ジョルネがシエール・ジナルで10回目の優勝
キリアン・ジョルネは序盤の登りから先頭集団を積極的にリード。中盤ではジョスファット・キプロティチ Josphat Kiprotich (KEN) に先頭を譲りましたが、終盤の下りセクションに入り、フィニッシュまで5km足らずとなったところでリードを奪い返します。そのキリアンの背後を昨年のこのレースの勝者であるフィレモン・キリアゴ Philemon Kiriago (KEN) が激しく追いかけます。フィニッシュラインまでの最終ストレッチまでもつれ込んだスプリント対決はキリアンが制して、2:25:34で優勝。キリアゴはわずか1.5秒差で2位という白熱したレースとなりました。3位にはパトリック・キプンゲノ Patrick Kipngeno (KEN) が2:26:59で続きました。
キリアンは2009年にこの大会で初優勝して以来、10回目の優勝となります。そして2019年に優勝した際の大会記録、2:25:35をわずか1秒上回って大会新記録を更新しました。「本当に厳しいレースでした。この10回目の勝利は本当に難しかった。でも、15年後に同じレースでさらに良い結果を出せたことが嬉しいです。非常に暑かったですが、準備はできていました。それでも、足がつってしまいましたが、フィレモンが追い上げてきたので、この勝利を手放すわけにはいかないと思いました」とレースを終えてキリアンはコメントしました。
昨年のチャンピオン、フィレモン・キリアゴは、レースの前半は抑えて後半にかけてキリアンを追い上げる戦略を取りました。レース後には「自分自身がとても誇らしいです。正直、今日は表彰台に立てるとは思っていませんでした。アジアでの開幕の2戦から続く足首のケガからの復帰でしたが、慎重な治療のおかげでこのレースに十分な状態で臨むことができました。今後もこの調子を維持できれば、ゴールデン・トレイル・シリーズで表彰台を狙えると思います」と話しました。
パトリック・キプンゲノはキリアゴにとってはチームメイトで、兄貴分でもあります。今日は3位でのフィニッシュ。「今年は表彰台に立つことを目標にしていました。キリアンが記録を破ったことも嬉しいです。このレースのレベルの高さを示しています。20キロから28キロまでの区間で勝負するつもりでした。下りが得意ではないので、フィレモンがペースを維持するのを助けてくれました」とキプンゲノは語りました。
ジョイライン・チェプンゲノは初レースで優勝というサプライズ
女子のレースではジョイライン・チェプンゲノ Jouline Chepngeno(KEN)がリードを守って2:54:06で優勝。チェプンゲノは10代の頃から陸上競技で活躍したのちに二人の子どもを出産して、競技からは離れていたといいます。しかし、かつてのライバルが活躍していることに刺激を受けて、18ヶ月前からランニングを再開。この間に体重を30キロ減量し、この日初めてトレイルランニングのレースに参加しました。
「初めてのレースで優勝できてとても嬉しいです。次のレースではさらに強くなれると思います。来週のポーランドでのレースにも準備中で、ゴールデン・トレイル・シリーズの総合ランキングでも良い成績を収めたいです。30キロの減量には1年半かかりましたが、この勝利を誇りに思います」とチェプンゲノは語りました。
チェプンゲノに8分差で2位となったのはスカウト・アドキン Scout Adkin(GBR)で、今回がシエール・ジナルへの初出場でした。この日は登りで強さを発揮して2番手を走り続けました。
「私にとっては非常に長いレースでした。登りで頑張ろうとしましたが、平坦な区間で苦しみました。22キロ地点で足首を捻り、下りで追いつかれるかと思いましたが、2位を守れて嬉しいです」とアドキンはコメント。
3位には昨年のシエール・ジナルで7位のマダリナ・フロレア Madalina Florea(ROU)が3:04:29で続き、表彰台に立ちました。フィニッシュ後、そのままメディカルチェックを受ける壮絶なレースとなりました。
日本から参戦した髙村貴子 Takako Takamuraはスタート直後に転倒し、膝から出血するアクシデントがありましたが、中盤は20位台前半で走った後に終盤の下りで順位を上げ、16位、3:19:37でフィニッシュ。高村は今シーズンのGTWSでは神戸トレイルで9位、モンブランマラソンで18位となっています。
ゴールデン・トレイル・シリーズは8月17日にポーランドで初開催となる第6戦、タトラ・スカイ・マラソン Tatra Skymarathonへと続きます。
リザルト シエール・ジナル Sierre-Zinal 2024
全体のリザルトはこちら。
男子
- キリアン・ジョルネ Kilian Jornet (ESP): 2:25:34 (+200 pts)
- フィレモン・キリアゴ Philemon Kiriago (KEN): 2:25:36 (+188 pts)
- パトリック・キプンゲノ Patrick Kipngeno (KEN): 2:26:59 (+176 pts)
- ジョスファット・キプロティチ Josphat Kiprotich (KEN): 2:31:35 (+166 pts)
- ロベルト・デロレンツィ Roberto Delorenzi (SUI): 2:32:26 (+156 pts)
- ポール・マチョカ Paul Machoka (KEN): 2:32:35 (+150 pts)
- シルヴァン・カシャール Sylvain Cachard (FRA): 2:32:45 (+144 pts)
- ジョナサン・カスティーヨ・サエンズ Jonathan Castillo Saenz (COL): 2:32:45 (+140 pts)
- レミ・ボネ Rémi Bonnet (SUI): 2:33:57 (+136 pts)
- エゼキエル・ルト Ezekiel Rutto (KEN): 2:35:21.3 (+133 pts)
女子
- ジョイライン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno (KEN): 2:54:06 (+200 pts)
- スカウト・アドキン Scout Adkin (GBR): 3:02:21 (+188 pts)
- マダリナ・フロレア Madalina Florea (ROU): 3:04:29 (+176 pts)
- フィラリーズ・キサン Philaries Kisang (KEN): 3:05:52 (+166 pts)
- クリスティナ・シミオン Cristina Simion (ROU): 3:07:51 (+156 pts)
- アンナ・ギブソン Anna Gibson (USA): 3:08:39 (+150 pts)
- ソフィア・ラウクリ Sophia Laukli (USA): 3:09:36 (+144 pts)
- オリア・リアチ Oria Liaci (SUI): 3:10:46 (+140 pts)
- ジュリー・ルロン Julie Lelong (FRA): 3:12:11 (+136 pts)
- ケイトリン・フィエルダー Caitlin Fielder (NZL): 3:12:54 (+133 pts)