2024年のHOKA UTMB Mont-Blancは大会のクライマックスとなるUTMBワールドシリーズファイナルの100マイルのレース、「UTMB」が開催されました。
(写真・フィニッシュゲートに向かうケイティ・シャイド Katie Schide。All Photo © UTMB)
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女子のレースはこれまでのUTMBで印象的な結果を残している選手たちが勢揃いするハイレベルなレースとなりました。そうしたアスリートの中で、この日はきっと誰の期待も裏切ることはなかったのは、ケイティ・シャイド Katie Schide(USA)でした。2022年に23時間15分で優勝しているシャイドにとって今回のUTMBの目標は22時間以内でのフィニッシュだったといいます。結果は22時間9分での女子優勝。2021年のコートニー・ドウォルターによる22時間30分54秒を上回り、女子選手による22時間切りが視界に入る歴史的な結果を残しました。今シーズンは6月のウェスタンステイツでも歴代2位の15時間46分で優勝しており、世界の代表的な100マイルレースを制する快挙になりました。
加えて、これまでのUTMBで活躍してきたルース・クロフト Ruth Croft (NZL)、マリアン・ホーガン Marianne Hogan (CAN) がトップ3に続き、今日のトレイルランニングの女性選手の競技レベルの高まりを象徴するレースとなりました。
UTMBの男子のリザルトについては別の記事ですでに紹介しています。
20時間切りの野心を秘めたケイティ・シャイドが一日を通じてレースをリード
ケイティ・シャイドはレース後に、今回は22時間でのフィニッシュを目標に予定通りにUTMBを走った、とさらりと話しました。その言葉通り、今回のUTMBは他の選手との駆け引きはなく、序盤から一人積極的に前に出て自分のレースを走りました。
コースのほぼ中間となるクールマイユール Courmayeur では2022年に自らが優勝した際のラップタイムを25分上回っていました。シャンペ Champex-Lac(129.6km)ではこのマージンは1時間近くまで拡大していました。最終盤のフレジエール La Flégère(169.6km)からの下では足に痛みをうかがわせる走り方も見せましたが、シャモニーに22時間9分31秒でフィニッシュしました。
シャモニーで興奮に包まれた観衆の前でケイティ・シャイドは語りました。「22時間の壁を破るのが目標で、序盤は速いペースでしたが、計画通りのレースペースでした。2022年より速く走っている感覚はなかったので、スタート直後に男子選手と一緒に走っているのは驚きでした。22時間以内には届きませんでしたが、自分のパフォーマンスを誇りに思います。終盤はきつかったので、フランス、イタリア、スイスの山道に詰めかけた信じられないほどの観客の皆さんに感謝したいです。最初から最後まで、みなさんのエネルギーに後押ししてもらいました。」
UTMBでの女子選手の最速記録ではローリー・ボジオによる2013年の22時間37分26秒や、コートニー・ドウォルターによる2021年の22時間30分54秒で23時間の壁が破られています。2022年に23時間15分12秒でUTMB優勝を果たしているシャイドにとっては、22時間切りは将来の課題となりましたが、先行する記録を上回ったことは歴史的な成果となりました。
国際的な顔ぶれがトップ10に揃う
シャイドに続いて、後半まで2番手を走ったのはマリアン・ホーガン Marianne Hogan (CAN)でした。シャイドを追うホーガンという展開は2022年のUTMBを思い出させる展開でした。クールマイユールまでで二人の差は30分まで開きましたが、その後に土曜日の朝を迎えてからは一方的に差を広げられることはありませんでした。
前半戦は積極的に前を走らなかったルース・クロフト Ruth Croft (NZL)は中盤から一人また一人と先行する選手を追い越し始め、ヴァルローシン Vallorcine (158.3km)では14分差でホーガンに次ぐ3位になっていました。ホーガンはレース中に右手の指を骨折した様子で、そのことも何か影響したかもしれません。フレジエール La Flégère(169.6km)に登るまでにクロフトの先行を許すことになり、触れ次エールでは6分差がついていました。結局、2位にはクロフトが22時間48分37秒、3位がホーガンで23時間11分15秒となりました。女子上位三選手が24時間以内というハイレベルなレースでした。
4位のチェン・リン Lin CHEN (CHN) は昨年のDoi Inthanon by UTMB 100マイルのチャンピオンで今回はUTMBに初挑戦でした。中盤では3位を走ったブランディーヌ・リロンデル Blandine L’HIRONDEL (FRA) は5位で完走。6位にエミリー・ホーグッド Emily HAWGOOD (ZWE)が続きました。
7位はサブリナ・スタンレー Sabrina STANLEY (USA)、8位はクラウディア・トレンプス Claudia TREMPS (ESP)、9位にマルティナ・ヴァルマッソイ Martina VALMASSOI (ITA)、10位にルーシー・バーソロミュー Lucy BARTHOLOMEW (AUS)という結果になりました。
UTMBはトレイルランニング界では他に先駆けて女性のランナーの活躍に目を向け、男女それぞれがトレイルランニングというスポーツを楽しみ、レースで競い合う状況を作ることにコミットし、行動を起こしてきました。UTMBの女子のレースでは上位選手のタイムは着実に向上しており、今回は大会の取り組みが着実に身を結んでいることを示したといえます。
2024年 UTMB 女子 リザルト
全体のリザルトはこちら。(追って追記します)
- ケイティ・シャイド Katie SCHIDE (USA) – 22:09:31 (The North Face)
- ルース・クロフト Ruth CROFT (NZL) – 22:48:37 (adidas TERREX)
- マリアンヌ・ホーガン Marianne HOGAN (CAN) – 23:11:15 (Salomon)
- リン・チェン Lin CHEN (CHN) – 24:16:33 (adidas TERREX)
- ブランディーヌ・リロンデル Blandine L’HIRONDEL (FRA) – 24:35:54 (Kiprun Women team)
- エミリー・ホーグッド Emily HAWGOOD (ZWE) – 24:58:19 (adidas Terrex / Gauge 20 Running / Idaho aFoot)
- サブリナ・スタンリー Sabrina STANLEY (USA) – 25:32:10 (AdidasTERREX)
- クラウディア・トレンプス Claudia TREMPS (ESP) – 25:39:37 (ON RUNNING)
- マルティナ・ヴァルマッソイ Martina VALMASSOI (ITA) – 25:42:02 (team Salomon)
- ルーシー・バーソロミュー Lucy BARTHOLOMEW (AUS) – 25:55:31 (salomon)
- アリッサ・クラーク Alyssa CLARK (USA) – 26:25:13 (On Trail)
- マイテ・マイオラ・エリゾンド Maite MAIORA ELIZONDO (ESP) – 26:50:35 (TEAM VIBRAM)
- エスター・チラグ Eszter CSILLAG (HUN) – 27:01:09 (HOKA – T8)
- マリ・クラケグ・フェンレ Mari Klakegg FENRE (NOR) – 27:05:54 (Hoka)
- アレクシス・クレリン Alexis CRELLIN (USA) – 27:12:25
- マリリーヌ・ナカシュ Maryline NAKACHE (FRA) – 27:16:18 (Courir en pays de Grasse)
- ヨハンナ・アンティラ Johanna ANTILA (FIN) – 27:33:13 (Salomon)
- クレア・バンワース Claire BANNWARTH (FRA) – 27:47:58 (Lapin Duduracell)
- ノール・ファン・デル・フェーン Noor VAN DER VEEN (NLD) – 27:57:13 (RAB)
- マノン・ボアール・カイエ Manon BOHARD CAILLER (FRA) – 28:07:06 (Grand Besançon Trail Academie)