ウルトラランナー、カミーユ・ヘロンの夫が著名ランナーのウィキペディア改ざんを認める

アメリカのウルトラランナー、カミーユ・ヘロン Camille Herron の夫でありコーチでもある コナー・ホルト Coner Holt が、ウィキペディアで自らの妻や他の著名なランナーの記事を不適切に編集していたことが明らかになりました。数々のウルトラマラソンのレースでの優勝や世界記録といった業績を築き、ウルトラマラソンにおける健康的なトレーニングや女性アスリートの地位向上についても積極的に発言してきたカミーユ・ヘロンの身近で起きたこの出来事は、世界のランニングコミュニティに衝撃を与えています。

(画像は今回の事件を最初に明らかにした「Canadian Running」の記事のスクリーンショット。Image (c) Canadian Running)

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カナダのランニングメディアからの告発

ヘロンは米国のウルトラランニングのアスリート。48時間走、24時間走、100マイルなどの世界記録を更新したほか、IAUのウルトラマラソンの世界選手権での優勝経験や、コムラッズ・マラソンやスパルタスロンのような国際的なウルトラマラソンでも優勝を重ねてきました。

そのヘロンについての疑念を公にしたのは9月23日に公開されたウェブメディア「Canadian Running」の記事でした。この記事ではキリアン・ジョルネ Kilian Jornet やコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter をはじめとするウルトラランナーのウィキペディアの記事についてその功績を減じるような編集を行う一方で、ヘロンの記事には主観的な賛辞が追加されていたこと、こうした編集がカミーユ・ヘロンと夫のコナー・ホルトのIPアドレスから行われていたこと、を明らかにしました。

具体的にはジョルネやドウォルターの記事から「史上最高のトレイルランナーの一人と広く認められている」といった記述を繰り返し削除する一方で、ヘロンの記事にこれに類似した文言を追加。このほか、デンマークのウルトラランナー、スティーネ・レックス Stine Rex が48時間走と6日間走の記録でヘロンの持つ世界記録を上回る成績をあげ、その記録について国際ウルトラランナー協会(IAU)による公認審査手続きがすすめられていることについて、その旨の記述をウィキペディアの「ウルトラマラソン」の記事から削除していたといいます。

これら以外にも、2017年以降にヘロンのウィキペディアのアカウントは300以上の編集を行い、その半数以上は自らの記事を編集するもので、一部は他のアスリートについての肯定的な記述を削除するものでした。こうした編集行為についてウィキペディアの管理者は中立性や利益相反に関するポリシーに反するという警告を発しており、今年2月にはアカウントを一時停止する措置をとっています。しかしアカウントが停止されたその日のうちに新しいアカウントを作って同様の編集行為を続けました。

夫による告白と弁解

「Canadian Running」が一連の経緯を報じた翌日、ヘロンの夫でコーチでもあるコナー・ホルトは複数のメディアにメールを送信。そのメールの中で、ホルトが疑惑のウィキペディアのアカウントを管理し、編集行為を行なっていたことを認めました。一方で、それは過去にヘロンがインターネット上のいじめに遭っていたため、彼女を守るためだったと釈明し、編集行為にヘロンは加担していない、と説明しました。

ランニングコミュニティへの波紋とスポンサー契約の解除

他のアスリートの功績を貶め、自らの功績を賛美するという、スポーツマンシップに反する行為が行われていたことが明らかとなり、ランニングコミュニティには大きな波紋が広がりました。ヘロンは長年にわたりアスリートとして活躍しているだけでなく、積極的にメディアの取材やインタビューにも応じ、アンチ・ドーピング運動や女性ランナーの地位向上を提唱してきただけに、そのショックは大きなものでした。

そして9月26日木曜日にはヘロンのスポンサーだったルルレモンが彼女とのパートナー契約を解消したことを明らかにしました。

ウィキペディアでの行為がアスリートが窮地に立たされる事態に発展

アスリートが競技に関する不正行為や、インタビューやソーシャルメディアでの不適切な発言で批判される例はこれまでにもありましたが、匿名で行われたウィキペディアの記事の編集行為を追及されるのは珍しいことです。

この出来事について報じるメディアの記事には、ヘロンが最近自閉症やADHDを診断されたことを自らインタビューで明かしたことを伝えるものもあります。アスリートとしての活動を通じたコミュニケーションを嫌がらせや非難と感じた背景があったのかもしれません。しかしスポーツの公平と正義の精神に反する行為は、妻を守るという目的があったとしても夫に認められることはないでしょう。この出来事が、アスリートのコンプライアンスとメンタルヘルスについて深い理解を広げる機会となることが望まれます。

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