2025年4月に発売予定のTeva「Aventrail Shoe」は、昨年6月に同社が発売した「Aventrail Sandal」に続く新製品で、「最も革新的な長距離シューズ」と位置づけられています。世界初のストラップ付きスポーツサンダルを発売してから40年の間に培われた技術を発展させ、トレイルランニング市場にさらに踏み込むことになる意欲作といえます。
発売に先立って「Aventrail Shoe」をレビューすることができました。履いてトレイルを走る感覚はトレンドを捉えた完全なトレイルランニングシューズなのですが、サンダルに由来する自由な使い心地も備えたこの製品は、前作「Aventrail Sandal」とともにトレイルランニングの楽しさを拡張するアイテムだと感じました。
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話題になったトレイルランニング・サンダル「Aventrail Sandal」が進化したらトレイルランニングシューズになった
昨年登場して好評を博した「Aventrail Sandal」は HOKA の創業メンバー、ジャン・リュック・ディアード氏が開発に加わった、新しいタイプのランニングサンダルでした。今回登場した「Aventrail Shoe」のはその進化版で、フルカバータイプのトレイルランニングシューズとして登場します。

Aventrail Shoe(左)とAventrail Sandal
参考までに、Aventrail Sandalと製品概要を比較してみました。
製品名 | Aventrail Sandal | Aventrail Shoe |
---|---|---|
発売時期 | 2024年夏 | 2025年春 |
価格(税込) | ¥20,900 | ¥26,400 |
サイズ | メンズ:サイズ 25.0cm – 29.0cmウィメンズ:サイズ 22.0cm – 25.0cm | メンズ:サイズ 25.0cm – 30.0cmウィメンズ:サイズ 22.0cm – 26.0cm |
カラー | メンズ: Total Eclipse/Green Flash, Pesto/Young Wheat, Black/Charcoal、ウィメンズ: Burnt Olive/Vivid Violet, Larkspur/Scarlet, Marshmallow/Marigold | メンズ: Total Eclipse/Green Flash, Black/Charcoal、ウィメンズ: Burnt Olive/Vivid Violet, Marshmallow/Marigold |
重量 | メンズ 約337g(27cm) | メンズ 約306g(27cm) |
ソールスペック | ドロップ6mm/ヒール33.5mm/フォアフット27.5mm | ドロップ6mm/ヒール33.5mm/フォアフット27.5mm |
前作のAventrail Sandalの技術により、長距離のランニングに適応したストラップ仕様のシューズに
Aventrail Shoeの最大の特徴は、Teva独自の「Wストラッピングシステム」を採用している点です。このシステムにより、シューレースレスでありながら個々のニーズに合わせたフィット感の調整が可能になっています。靴紐がほどける心配がなく、トレイルランニング中のストレスを軽減します。もちろん、デザイン面でもこのストラップはTevaらしさが感じられるポイントとなります。

足の甲を覆うWストラッピングシステムのウェビングはひと繋がりになっているので、締め具合の調整がしやすい。
ミッドソールには「HYPER-COMFテクノロジー」を採用。反発性に優れたスーパークリティカルフォームとサポート力のあるEVAの組み合わせにより、特に下り坂で優れたクッション性を発揮します。ソールスペックはフォアフット27.5mm、ヒール33.5mm、ドロップ6mmとなっています。
このミッドソールにはAventrail Sandalと同じくナイロンプレートが内蔵されています。このプレートにより推進力が生み出されて加速感を高める、とされています。
アウトソールには「Spider Rubber」を採用し、滑りやすいトレイルでも優れたグリップ力を発揮します。ラグは段階が設けられているので不整地でのトラクションも高めています。Aventrail Sandalと比べると軽くなっていますが、それはこのアウトソールのラバー分量を調整することで実現されているそうです。

Aventrail Sandal Shoeのアウトソール。Spider Rubberが使用されている。

左のAventrail SandalとAventrail Shoeのアウトソールを見比べると後者はSpider Rubberのパーツが小さくなっており、軽量化に貢献している。
アッパーは100%再生エンジニアードメッシュで通気性と前足部の安定性を両立しています。

アッパーはエンジニアードメッシュ素材。ストラップは面ファスナーで固定する。
トレイルでの長時間にわたるランニングに対応
TevaによればAventrail Sandalはトレイルでのウォーキングやハイキングからランニングまで幅広く対応しながらも、比較的短時間のアクティビティを中心に想定されています。これに対してフルカバーのシューズタイプのAventrail Shoeはさらに長時間のウルトラディスタンスのトレイルランニングにも適している、とされています。
実際にアメリカのウルトラランニング界で活躍し、レースだけでなくFKTなど数々のクリエイティブなチャレンジに取り組んでいる、マイク・ウォーディアン Michael Wardian はAventrail Sandalに加えてこのAventrail Shoeをトレイルランニングで着用しているそうです。

Tevaの製品カタログにも米国ウルトラランニング界のレジェンドであるマイク・ウォーディアンがAventrail Sandalでトレイルを走る姿が挿入されている。
試してみた・ハイパフォーマンスなランニングシューズでありながら、サンダルの良さも備えているのが新鮮
手元に届いたAventrail Shoeを昨年から愛用しているAventrail Sandalと並べてみます。ミッドソールの高さやドロップはスペックによればどちらも同じなのですが、見比べてみるとAventrail Shoeの方が立体的なデザイン、Aventrail Sandalはよりロープロファイルで接地面が広い印象です。この辺りはシューズとサンダルの違いを反映しているようです。Aventrail Shoeに足を入れてみると、前足部はやや細めでHOKAのシューズに似た印象です。

今回発売されるAventrail Shoe(左)と昨年発売されて人気を集めた Aventrail Sandal。ミッドソールの厚みやドロップのスペックは同じだが、見た目の形状は異なる。
シューレースではなく、Tevaのサンダルらしさを感じるWストラッピングシステムでフィット感をコントロールします。ランニングシューズと同じ感覚でストラップを締めて面ファスナーで固定すると、緩みなどはなく、歩き始めてもまさにシューズの履き心地です。
走り始めると、ロッカー構造が重心の移動とともに身体を前に押し出す感覚、着地した時のミッドソールが足を受け止めて沈み込む感覚の繰り返しが快適です。少しペースを上げるとミッドソールに埋め込まれたナイロンプレートの生み出す反発力で蹴り出した時に弾むような感覚も出てきて、気持ちよくペースが上がるように促されているかのようです。上面のスーパークリティカルフォームの下にナイロンプレートを配置してEVAミッドソールが受け止めるというミッドソールの構造がこのようなライド感を生み出しているのでしょう。この履き心地は最近のハイパフォーマンス仕様のランニングシューズの最先端のトレンドをうまく取り込んでいます。
フィット感の調整がしやすいのはWストラッピングシステムの大きなメリットです。ストラップはつま先側と足首側の二箇所の面ファスナーで調整できますが、締め具合は途中の環状のパーツを介して連動するので、簡単にバランスよく調整できます。加えて、かかとにもストラップがついていて、こちらも面ファスナーでフィット感を調整することができます。
ウルトラディスタンスのレースだと後半に足がむくんだ時にシューズの締め具合を緩めたりします。このほかにも、ランニングやハイキングの途中で休憩を取るときや、アクティビティを終えた後の移動中にシューズを緩めてリラックスしやすいでしょう。自由に自然を楽しむためのフットウェアというTevaらしいコンセプトをAventrail Shoeがしっかり受け継いでいると感じました。
まとめ・Aventrail Shoe はもっと自由にトレイルランニングを楽しみたい人へのTevaからの提案
Tevaがトレイルランニングに真摯に取り組んでできた意欲作が Aventrail Shoeです。独自のWストラッピングシステム、高機能なソールテクノロジーに加えて、優れたグリップ力を備え、長距離トレイルランニングに最適化されています。シューレースレスという革新的なアプローチと、トレイルでの走破性を両立させた点が最大の魅力といえるでしょう。
正直にいえば、スポーツサンダルの代表的なブランドであるTevaが、トレイルランニングのためのサンダルを作った次にシューズを作ったと聞いて、最初は車輪の再発明のような不思議さを感じました。しかし実際に履いて走ってみると、先端的な技術トレンドを取り入れた完成度の高いランニングシューズと、Wストラッピングシステムで手軽にフィット感を調整できる自由さの組み合わせは、Tevaだからこそできることなんだと理解できました。もっと自由にトレイルランニングを楽しみたい人には、試していただきたい一品です。