パタゴニアは2025年春、木村大志 Hiroshi KIMURA さんを新たなトレイルランニング・アンバサダーに迎えることを発表しました。日本のトレイルランニング・カテゴリーでは石川弘樹さん以来となるパタゴニアのアンバサダーの就任は、トレイルランニングコミュニティにとって大きなニュースです。ハセツネCUP4位、信越五岳3位など国内レースでの活躍に加え、信越トレイルや上高地から親不知までの長距離冒険プロジェクトに挑戦してきた木村さんに、アンバサダー就任を機にインタビューしました。
この記事の元となるインタビューをDogsorCaravanのポッドキャスト、「Run the World」のエピソードとして公開しています。
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秋田・鹿角の自然に育まれた探究心
DogsorCaravan(以下DC):パタゴニアのトレイルランニング・アンバサダーへの就任、おめでとうございます。まずは木村さんがどういう人物なのか、少し聞かせていただけますか。
ありがとうございます。私は秋田県の鹿角市花輪の出身です。十和田湖と八幡平という自然を楽しむ観光地が近くにある場所で、青森、秋田、岩手の3県にまたがる内陸の地域になります。高い山は八幡平が1500mくらいという、穏やかな土地です。
「スキーと駅伝のまち」というのが鹿角の謳い文句なんです。陸上でいうとマラソンの浅利純子さん(世界陸上マラソン金メダリスト)が有名です。また鹿角のスキー場でトレーニングをして育ったスキーのオリンピック選手もいて、スポーツの盛んな町です。
子どもの頃は周りに遊ぶような施設が何もなかったので、外で遊ぶのが主でした。夏は陸上で走るトレーニングをし、冬場はスキーをするという流れで、それがきっかけで体を動かすのが好きになりました。
DC:子供の頃から自分の身の回りを探検するのが好きだったと聞きました。
よく、おじいちゃんの運転する軽トラに乗って裏の田んぼを見に行ったらクマの足跡があって、ちょっとワクワクしたとか、冒険をしているような気分になったりしました。ちょっと大きくなると、弟を連れてクマがいるかもしれない裏の山に自転車で行くとか、そういう男の子の冒険が今にもつながっているところがあるのかなと思います。
スキー競技から山岳スポーツへの道
DC:学生時代はスキー競技に打ち込まれていたそうですね。
中学校から高校を卒業するまで、スキージャンプを飛んでクロスカントリースキーで走るノルディック複合という競技を続けていました。大学でも続ける道はあったかもしれませんが、当時は人と競ったりするのに疲れてしまい、競技をやめる決断をして自衛隊に入りました。
アスリートは引退したつもりだったんですけども、だからといって街に出かけても楽しみを見出せずに悶々としていました。そこで山に行き始めて、それがきっかけで新潟県妙高市にある国際自然環境アウトドア専門学校(アイナック)に行ったんです。
DC:そこでトレイルランニングに出会ったんですね。
そこがトレイルランニングとの出会いであり、パタゴニアとの出会いでもありました。専門学校に入って授業の一環で信越五岳トレイルランニングレースに関わる機会がありました。コース整備をするとかコースマーキングを手伝うとか、大会の準備をする授業があって、そこでパタゴニアの方々に出会ったんです。

Photo © Sho Fujimaki
レースだけではない、独自の山岳の冒険に魅力を感じる
DC:木村さんは国内レースでの活躍に加えて、自分で設定した長距離コースを走るプロジェクトも行なっていますね。2023年に信越トレイルを中心にした100マイルを走り、昨年の夏には上高地から親不知まで自分で引いたコースを走破しました。こういうことをやってみようと思ったきっかけは何ですか?
誰かに影響を受けたというわけではないんですね。単純に山が好きで、そこに登ると見えない景色だとか、そこに行くとそこならではの植生だったりが見れて、純粋に楽しいからという気持ちで山に行ってるんですけれども、その延長でどんどんどんどん長くなってきて。長いコースって不確定要素が大きくて、その分ワクワクもするんです1。
そういうのが好きで、年に最低でも1回はそういったチャレンジをしようというか、したくなっちゃうというのが動機なんです。

Photo © Sho Fujimaki
DC:そういう長距離の山岳コースは危険も伴いそうですが、怖くないですか?
そうですね、怖いと思うということは、たぶんまだ準備不足な部分もあると思います。私も挑戦をするまでには重いテントを持って山の上に泊まったこともあって、その上でもっと軽くできるなという確信を持って軽くしていきました。だからある程度までは怖さはないです。確かに食べ物がなくなったらどうしようとかそういう不安はあるんですけども、そういう不安になる要素、怖い要素はできるだけ事前の準備で潰していくようにはしています。その上でチャレンジをするようにしています。
DC:そういう大きな挑戦を成し遂げてみて、自分自身や周囲の見方が変わったことはありますか?
まず自分自身については、身体の負担がすごく大きいなと思いました。自然に関しては、上高地は観光客の方も多いところから入って、白馬の五竜からちょっと岩場のクラシックなルートがあって、最後は日本海に下りるんですけれども、そこを歩いている人の違いを感じたりとか。最後ゴールに近くなっていくと岩稜帯から樹林帯に入っていって、その時の木がある安心感と岩場から土に変わった時の足裏から触ってくる安心感とか、あれぐらい長い距離をやると感じるところは多かったです。
DC:レースで勝負することと、こういう冒険的なプロジェクトと、どちらに興味がありますか?
もう一人自分がいるんだったらトレイルランニングを競技として極めてみたいんですけども、やっぱりトレイルランニングもかなりスピード化が進んできて、フラットなところがとにかく速くないと勝負にならない。スピードを高めるには今みたいな冒険をしていると非効率的で、午前中1時間半、午後2時間練習、しっかり休憩をとって、しっかりとエネルギーをとって、トレーニングした方が絶対的に早くなるとは思うんですね。
だけどやっぱり山が好きなので、私もサラリーマンで週3日の休みをトレーニングに費やすかって言われると、天気が良ければ3日間とも山に身を置きたい。そっちの自分の方がちょっと強いですね。
でもそんな山で長く動いたり早く動いたり、重いものを持って動いたりするそのためのトレーニングが、大会でもいいパフォーマンスに反映されれば、それはすごくいいかなと思っています。早く走るのも好きなので、普段時間がないとき1時間ロードを走ったりとかも好きなんです。
自然との関わりを大切にするライフスタイル
DC:現在の木村さんはどんな生活を送っていますか?
今、1歳になる子どもがいるんですけれども、子どもが生まれてからはガラッと生活も変わって、なかなか今まで通り長い時間自分の好き勝手には使えなくなっています。だから短い時間を積み重ねてトレーニングするようにしています。
私が住んでいるエリアは豪雪地帯で早ければ11月ぐらいから2000メートルぐらいのところは雪がついて、5月中旬くらいまでは高いところに行けば雪で滑れたりします。四季の境目が曖昧な部分があって、山の麓では春の花が咲いてそれを愛でながらトレイルランニングができて、でも標高を上げたらまだまだ雪があってスキーができて、そういういろんなアクティビティを楽しめるエリアなんです。
特にトレイルランニングは長い距離を走ると体に負担がかかります。いろんなアクティビティをしてパフォーマンスも上げながら、山に入ることで自然の変化に気づくということを大切にしています。山菜を採るのも好きなんですけども、山菜を採る時期が今年はこんなに早いとか遅いとか、ここでも生えているとか、そういったことに山に入っていると気づけるんです。
パタゴニアアンバサダーとして
DC:パタゴニアのアンバサダーというのは単なるスポンサーアスリートとは違い、ブランドの代弁者であり、このフィールド、トレイルランニングというスポーツ自体の代表でもあると思います。アンバサダーに就任された心境はいかがですか?
最初に声をかけていただいた時は率直に嬉しくて驚いたんですけれども、石川弘樹さんに続いて2人目のアンバサダーというところで緊張しましたね。とても光栄なことではあったんですけども、すごくプレッシャーに感じた部分は少しありました。
DC:アンバサダーとして今後どんな活動をしていきたいですか?
個人としては、いろんな山、行きたい山にいろいろチャレンジします。山に身を置くときにパタゴニアの製品は安心して身につけられるし、着ていて気持ちも安心します。これをタフに使っていろんなチャレンジをしていきたいです。
信越、北信地域で大会開催に関わる中で、登山道の整備だとか管理をしています。新しい道を作ることも大事なんですけども、今ある登山道をしっかりと維持管理して、それを持続的なものにしていくっていうのはすごく大切だなと感じているところです。
ただ、そういった使命感とは別に、登山道整備をするようになって土や木に触れることそのものが純粋に楽しいと感じています。
DC:具体的な今後の予定はありますか?
この夏もトレイルランニングで山にチャレンジしたいなと思っているので、できればその報告を8月にパタゴニア各店舗で行えたらなと思っています。
私は出身が東北ですが、山を始めたのがこっちの信越エリアだったので、東北の山に行く機会はあまりありませんでした。今は日本各地に、北海道、九州、四国いろいろありますけど、東北の山に興味が湧いているので、そこで楽しそうなコースを見つけたら行きたいなとは考えています。

Photo © Sho Fujimaki
パタゴニア製品との関わり
DC:パタゴニアの製品について、他とは違うと感じる点はありますか?
タフさ、でしょうか。専門学校に入った時に購入し始めましたが、アウトドアの用品はそんなに安いものじゃないですよね。だからいいものを長く使おうと思って選ぶうちに、私の中でパタゴニアがしっくりきました。そんな経験からパタゴニアにはいいものを長く、っていうイメージがあります。
DC:木村さんのお気に入りのパタゴニア製品を教えてください。
私の好きなのはベストで、まずナノエア・ライト・ベストです。なんでベストがいいかっていうと、特にトレイルランニングは腕の振りが激しいので、袖がない分アクティブに動かせるっていうのと、体温調節がしやすい、脱いでもかさばらない。だからベストを結構よく使ってるんです。生地が丈夫なナノ・パフ・ベストも愛用しています。
それからキャプリーン・サーマル・フーディも私が愛用しているウェアです。私はウェアは常にハンガーにかけておいてシーズンが変わるときに夏物と冬物を入れ替えるんですが、これは1年中ハンガーにかかっていて、いつでも着れるようにしているウェアです。使える温度帯が幅広くて、これ1枚でも十分暖かいですし、汗をかいても汗抜けがいい。風が吹いて寒い時はこれを上に着ると暖かくて、脱いだらさっと汗も抜けてくれる。夏のトレイルランニングだったり、冬のクロスカントリースキーでも着用しています。
他には、子どもが生まれた記念にキッズのザックを買いました。毎日それを背負って保育園に通っています。これから長く使えたらと思っています。
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