トレイルランニングやマラソンとは一線を画す、全く新しいスタイルのエンデュランス競技が日本に上陸しました。「HYROX(ハイロックス)」は、1kmのランニングと8つの「ファンクショナルムーブメント」を交互に繰り返すサーキット形式のフィットネスレースです。
この競技の特徴は、屋外の自然環境ではなく屋内の統一された環境で行われること、そして普段ジムで行っているトレーニング種目がそのまま競技に組み込まれていることにあります。スキーエルゴ、バーピー、ローイング、ウォールボールなど、ジムでのフィットネス愛好者にはおなじみの種目とランニングを組み合わせることで、純粋な持久力だけでなく、筋力、瞬発力、そして総合的な身体能力が試されます。
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2025年8月9日土曜日に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された「HYROX YOKOHAMA」は、この革新的な競技の日本初上陸となる記念すべき大会でした。
世界から注目される新競技の誕生
HYROXを創設したのは、スポーツ経営者のクリスチャン・トエツケ Christian Toetzkeとオリンピック金メダリストのモリッツ・ファーステ Moritz Fuersteというドイツ人の二人。彼らが目指したのは「フィットネスを競技スポーツとして楽しむ」という新しい文化の創造でした。
この競技は、わずか数年で世界18か国・60都市以上に拡大し、1イベントで最大12,000人もの参加者を集める大規模フィットネスイベントへと急成長します。その背景には、現代社会における健康意識の高まりと、ワーク・ライフ・バランスを重視するライフスタイルの変化があります。
従来のマラソンやトレイルランニングが主に走る能力に特化しているのに対し、HYROXはさまざまなシーンで現代人が日常的に行っているクロストレーニングがそのまま競技に取り入れられています。これにより、特別な技術や長期間の専門練習を必要とせず、フィットネスジム愛好者なら誰でも挑戦できる敷居の低さを実現しています。
3,800人が挑んだ日本初の舞台
パシフィコ横浜の広大な展示ホールが、この日は巨大なフィットネスアリーナに変貌しました。午前8時から午後10時まで14時間にわたって開催された大会には、全国から約3,800人の参加者が集結。会場には2,244人の観客が詰めかけ、終日にわたり熱気と歓声が響き渡りました。
競技は以下の8つのステーションで構成されます。
- スキーエルゴ1000m – 上半身を使ったカーディオマシン
- スレッドプッシュ50m – 重いスレッドを押して進む筋力種目
- スレッドプル50m – ロープでスレッドを引き寄せる
- バーピーブロードジャンプ80m – バーピーと幅跳びの組み合わせ
- ローイング1000m – 全身を使うローイングマシン
- ファーマーズキャリー200m – 重いウェイトを持って歩行
- サンドバッグランジ100m – サンドバッグを担いでのランジ
- ウォールボール100回 – 壁に向かってボールを投げ上げる
これらのステーションの間に1kmのランニングが挟まれ、総距離8キロ+ファンクショナルトレーニングのタイムを競うことになります。

スキーエルゴ

スレッドプッシュ

スレッドプル

ローイング

ウォールボール
年齢を超えた挑戦者たち
今回の大会で感動を呼んだのは、70歳の本間美和子 Miwako Honma さんと57歳の池田みず恵 Mizue Ikeda さんのペアが女子ダブルス部門に挑戦した姿でした。
「本当に楽しかったし、達成感でいっぱいです」と語る本間さん。池田さんは「年齢に関係なく、全力で取り組めば誰でもできるものです。ほんの少し練習すればよく、フィニッシュラインを越えた後の達成感は本当にやみつきになります」と振り返りました。
大会には43か国から参加者が集まり、真の国際色豊かなイベントとなりました。スペシャルゲストとして、パリ2024夏季オリンピックのボクシング日本代表岡澤セオン Seon Okazawa 選手も出場しました。
今回の大会にはトレイルランニングのコミュニティではおなじみのパワースポーツが運営するOSJ湘南クラブハウスのコミュニティからも選手として参加されました。レース本番を想定して、ファンクショナルトレーニングとランの練習会も行ってきたそうです。パワースポーツ代表の滝川次郎さんは男子オープン部門の年齢別カテゴリーで男子優勝を勝ち取りました。「どんなスポーツをしている人であっても、HYROXに取り組むことで強いアスリートになれると思います。今月末のモンブランでCCCを走りますが、自信を持って走れそうです。」と話してくれました。

年代別カテゴリーで一位となった滝川次郎さん
10代の学生から70代のシニアまで、プロアスリートから週末フィットネス愛好者まで、あらゆる層が同じ舞台で競い合う姿は、HYROXが掲げる「インクルーシブなフィットネススポーツ」の理念を体現していました。
世界レベルの競技も展開
プロ部門では世界トップレベルの競技が繰り広げられました。女子プロ部門ではアメリカ出身のサリー・トンプソン Sally Thompson (USA)が優勝を飾り、日本の前川早紀 Saki Maekawa (JPN)が2位、吉田暁 Aki Yoshida (JPN)が3位に入賞。日本勢の健闘が会場を大いに沸かせました。
男子プロ部門はアメリカのライアン・シェデッグ Ryan Schadegg (USA)が制覇。2位にオーストラリアのベン・スミス Ben Smith (AUS)、3位にニュージーランドのアッバス・ナザリ Abbas Nazari (NZL)が入り、オセアニア勢の強さも印象的でした。
2026年大阪大会への展望
今回の成功を受け、HYROXは2026年に大阪での開催を決定しました。プーマ、マイプロテイン、レッドブル、アマズフィットなど世界的ブランドが公式パートナーとして参画していることも、この競技の将来性を物語っています。トレイルランニングやマラソンとは異なるアプローチで身体能力と精神力を試すこの競技は、多様化するスポーツニーズに応える新たな選択肢として定着しそうです。

HYROXに挑戦したOSJ湘南クラブハウスの皆さん
HYROX YOKOHAMA 大会概要
- 開催日:2025年8月9日(土)
- 会場:パシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)
- 時間:午前8時〜午後10時
- 参加者:約3,800名
- 観客数:2,244名
- 公式サイト:https://hyroxjapan.com/ja/














