CCC女子は残り10kmの競り合いの末にマルティナ・ムリナルチクが勝利、男子はフランチェスコ・プッピが圧勝。UTMBはシャモニーをスタート【 #UTMB 2025 Day 5】

HOKA UTMB Mont-Blancは大会5日目の8月29日金曜日は、UTMBワールドシリーズ・ファイナルの100KカテゴリーのレースとなるCCCのスターとともに始まりました。女子レースは最後の最後まで勝者がわからないドラマチックな展開の末に、バレリーナのキャリアを持つポーランドのマルティナ・ムリナルチク Martyna MLYNARCZYKが勝利をつかみました。男子ではイタリアのフランチェスコ・プッピ Francesco Puppi が圧倒的な力を見せてタイトルを獲得。そして夕方には100MカテゴリーのUTMBがシャモニーの街をスタート。その後、雨が降る中で選手たちは174km・累積獲得高度10,000mD+の完走を目指してコースを進んでいます。

(写真はCCC女子トップ3、左から2位のノルドスカル、優勝のムリナルチク、3位のタラソワ。Photo © UTMB / Marta Baccardit)

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最後の10kmで決まったCCC女子の激闘

金曜日の午前9時、イタリアのクールマイユール Courmayeurを2,127人のランナーがCCCをスタートしました。距離101km、累積獲得標高6,050mD+のコースで行われるこのレースは、「UTMBのシスターレース」として2006年に始まり、今日では100kmカテゴリーのトレイルランニングレースにおいて、世界最高峰のレースの一つとして知られています。今年は特に女子のレースにおいて、息をのむような劇的な優勝争いが繰り広げられました。

CCCのスタート。Photo © UTMB® Paul Brechu

CCCのスタート。Photo © UTMB® Paul Brechu

この日の女子のレースの大半は、ポーランドのランナーで、プロのバレリーナという異色の経験を持つマルティナ・ムリナルチク Martina Mlynarczyk (POL)がリードしました。しかし、レース終盤にシルビア・ノルドスカル Sylvia Nordskar (NOR)が猛烈な追い上げを見せます。最後のチェックポイントであるラ・フレジェール La Flégèreからの下りでは、両選手による激しい首位争いとなり、勝負の行方はシャモニーのフィニッシュラインまでわからないという展開になりました。最後はムリナルチクがノルドスカルをわずか18秒差で振り切り、11時間41分55秒でフィニッシュテープを切り、優勝しました。ムリナルチクのタイムはCCCの女子のレース史上2番目に速いタイムでした。2位にはノルドスカルが11時間42分13秒で、3位にはアンナ・タラソワ Anna Tarasova (ESP)が11時間44分18秒で入り、ヨーロッパ勢が表彰台を独占しました。この日のレースの大部分で2位を走っていたブランディーヌ・リロンデル Blandine L’Hirondel (FRA)は4位でフィニッシュしました。

日本から参加の吉住友里 Yuri Yoshizumi は14時間16分でフィニッシュ、女子37位でした。

CCCを制したマルティナ・ムリナルチク Martina Mlynarczyk (POL) Photo © UTMB® Gabriele Facciotti

CCCを制したマルティナ・ムリナルチク Martina Mlynarczyk (POL) Photo © UTMB® Gabriele Facciotti

一方で、優勝候補と目されていたトップ選手たちが次々とDNFとなる波乱もありました。2023年のOCC、2024年のCCCを制し、今大会でもトップ3の表彰台圏内を走っていたトニ・マッキャン Toni McCann (RSA)は、40km地点のラ・フーリー La Foulyのエイドを出た直後に激しく転倒。膝と右腰を負傷し、54km地点のシャンペ・ラック Champex-Lacで無念のリタイアとなりました。また、2023年のCCCのチャンピオンであるイングビルド・カスペルセン Yngvild Kaspersen (NOR)も、レース序盤に足首を捻挫。トップで40km地点のラ・フーリーに到着したものの、そこでレースを終えることとなりました。

プッピが圧巻の走りでイタリア人初のCCC王者に

男子のレースは、大会前のプレビューでも評価が高かったフランチェスコ・プッピ Francesco Puppi (ITA)がその実力を遺憾なく発揮する展開となりました。スタート地点のクールマイユールを力強く飛び出すと、先頭集団を牽引するようにコースを進みます。後半に入って単独でレースをリードをリードするようになり、その後は一度も後続に付け入る隙を与えませんでした。最終的に10時間6分2秒という、CCCの歴史で2番目に速いタイムでシャモニーのフィニッシュゲートを駆け抜けました。さらに、イタリア人として初めてCCCの頂点に立つという快挙も成し遂げました。

CCCを制したプッピ。Photo © UTMB® Gabriele Facciotti

CCCを制したプッピ。Photo © UTMB® Gabriele Facciotti

プッピが独走態勢を築く中、表彰台の残り2つの席を巡る争いは熾烈を極めました。激戦の末、アメリカのデビッド・シンクレア David Sinclair (USA)が安定した走りで2位の座を確保し、10時間13分42秒でフィニッシュ。3位には同じくアメリカのドリュー・ホルメン Drew Holmen (USA)が10時間16分15秒で入り、アメリカ勢が表彰台の2席を占める強さを見せました。一時は3番手を走っていたアルノー・ボナン Arnaud Bonin (FRA)は、10時間26分3秒で4位となりました。

CCC男子トップ3、左から2位のシンクレア、優勝のプッピ、3位のホルメン。Photo© UTMB® Marta Baccardit

CCC男子トップ3、左から2位のシンクレア、優勝のプッピ、3位のホルメン。Photo© UTMB® Marta Baccardit

UTMBがスタート、レジェンドと強豪が集結

CCCのレースが進行中の8月29日金曜日の夕方17時45分(日本時間同日深夜24時45分)、ヴァンゲリスの「コンクエスト・オブ・パラダイス」のメロディに包まれて、2,492人の選手がUTMBをスタートしました。シャモニーをスタート、フィニッシュとし、モンブランの山麓を一周する174km、累積獲得標高10,000mの壮大な旅の始まりです。

UTMBのスタート。Photo © UTMB® Franck Oddoux

UTMBのスタート。Photo © UTMB® Franck Oddoux

スタート後にモンブランは冷たい雨が強まり、大会はコースの一部変更をアナウンスしました。ピラミッド・カルカール Pyramides Calcaires(63.2kmのセーニュ峠 Col de La Seigneの先にあるテクニカルな山岳セクション)の天候悪化(冷たい風、雹の降る雨)のため、この区間を迂回するという変更です。ランナーは直接ラク・コンバル Lac Combal へ向かいます。天候は午前2時までに回復すると見込まれています。この変更により、上位選手のクールマイユール Courmayeur (81.5km)への到着時刻が約45分短縮される見込みです。これに伴う制限時間の変更は無しとされています。

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今年のUTMBには、4度の優勝を誇るフランソワ・デンヌ François D’Haene (FRA)、女子ウルトラトレイル界のアイコンであり3度の優勝経験を持つコートニー・ドウォルター Courtney Dauwalter (USA)、そして50歳にして今なおトップで戦い続ける2016年チャンピオンのルドビック・ポムレ Ludovic Pommeret (FRA)といったレジェンドたちが顔を揃えました。

彼らに挑むのは、ジョナサン・アルボン Jonathan Albon (GBR)、トム・エバンス Tom Evans (GBR)、ベン・ディマン Ben Dhiman (USA)、ドゥオ・ジ Ji Duo (CHN)、ヘイデン・ホークス Hayden Hawks (USA)といった男子の強豪たち。女子も、ルース・クロフト Ruth Croft (NZL)、アビー・ホール Abby Hall (USA)、エミリー・ホーグッド Emily Hawgood (ZWE)、カミーユ・ブリュヤス Camille Bruyas (FRA)、ヘザー・ジャクソン Heather Jackson (USA)、カタリナ・ハートムート Katharina Hartmuth (GER)など、錚々たるメンバーが集結しています。

特に、ルース・クロフトとジョナサン・アルボンは、今大会で優勝すればOCC、CCC、UTMBの三冠達成という偉業を成し遂げる可能性があり、その走りにも注目が集まります。

本稿執筆時点ではコースを先頭で進む選手がクールマイユールに到着し始めています。男子ではクールマイユール到着は、今年の90km du Mont-Blancで優勝でUTMBのレースには初参戦のテオ・デティエンヌ Théo DETIENNE (FRA) が8:20:54でトップ。1分差でトム・エヴァンズ Tom EVANS (GBR) が8:21:56、ベン・ディマン Ben DHIMAN (USA) が8:21:58で続いています。女子はラク・コンバル Lac Combal(68.1km)をコートニー・ドウォルター Courtney DAUWALTER (USA) が7:47:49で首位で通過、追うルース・クロフト Ruth CROFT (NZL)が7分半の差である7:55:27で通過。3番手はカタジナ・ドンブロフスカ Katarzyna DOMBROWSKA (POL) となっています。

一方、フランソワ・デンヌ François D’Haene (FRA)、ヘイデン・ホークス Hayden Hawks (USA)がすでにリタイアしています。

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UTMBのレースのライブトラッキング、コース上からのライブ配信はUTMB LIVEで見ることができます。

限界を超えた挑戦:Team AdaptiveがCCCで歴史を刻む

今年のCCCでは、勝者の栄光と同じくらい、あるいはそれ以上に輝く、人間の回復力と連帯の力を示す感動的な物語が生まれました。

四肢麻痺のアスリートであるジョナサン・ナブレ Jonathan Nabouletが、交代で彼を支える35人もの献身的なサポートチームと共に、ジョーレット(joëlette)と呼ばれる一人乗りの車椅子で101kmの険しい山道に挑みました。急峻な登りやテクニカルな下りを乗り越えるには、チームの完璧な連携と想像を絶する体力が必要とされます。その困難を乗り越え、彼はCCCをジョーレットで完走した史上初のアスリートとして歴史にその名を刻みました。

さらに、下腿切断者であるジュリアン・ヴェシエール Julien Veysseyreトラビス・ワーウィック-オリバー Travis Warwick-Oliverも、並外れた勇気と決意でこの過酷なレースに挑み、見事に完走を果たしました。彼らのパフォーマンスは、障がいが限界ではなく、強い意志と仲間との絆があれば不可能はないことを証明し、世界中のランナーやファンに深い感動とインスピレーションを与えました。

2025年CCCリザルト

全体のリザルトはこちら

女子

  1. マルティナ・ムリナルチク Martyna MLYNARCZYK (POL) 11:41:55
  2. シルビア・ノルドスカル Sylvia NORDSKAR (NOR) 11:42:13
  3. アナ・タラソワ Anna TARASOVA (ESP) 11:44:18
  4. ブランディーヌ・リロンデル Blandine L HIRONDEL (FRA) 11:53:31
  5. ヴェロニカ・レング Veronika LENG (SVK) 12:00:27
  6. ロッティ・ブリンクス Lotti BRINKS (USA) 12:02:23
  7. ロビン・レッシュ Robyn LESH (USA) 12:16:10
  8. ジュリー・ルー Julie ROUX (FRA) 12:24:18
  9. タン・ジンイェン Jingyan TANG (CHN) 12:42:54
  10. アリソン・バカ Allison BACA (USA) 12:44:05
  11. ジュディッタ・トゥリーニ Giuditta TURINI (ITA) 12:46:07
  12. エレノア・デイビス Eleanor DAVIS (GBR) 12:49:56
  13. シャン・フージャオ Fuzhao XIANG (CHN) 12:53:01
  14. レア・デュエ Léa DUHET (FRA) 12:54:01
  15. フィオナ・パスカル Fiona PASCALL (GBR) 13:01:10
  16. ハウ・ハ・ティ Hau HA THI (VIE) 13:03:15
  17. カタジーナ・ヴィルク Katarzyna WILK (POL) 13:07:03
  18. チー・リンジエ Lingjie CHI (CHN) 13:14:34
  19. アナ・フィッシャー Anna FISHER (USA) 13:15:10
  20. エミリー・シュミッツ Emily SCHMITZ (USA) 13:19:08
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男子

  1. フランチェスコ・プッピ Francesco PUPPI (ITA) 10:06:02
  2. デイビッド・シンクレア David SINCLAIR (USA) 10:13:42
  3. ドリュー・ホルメン Drew HOLMEN (USA) 10:16:15
  4. アルノー・ボナン Arnaud BONIN (FRA) 10:26:03
  5. ジェシュラン・スモール Jeshurun SMALL (USA) 10:28:57
  6. メン・グアンフー Guangfu MENG (CHN) 10:31:36
  7. イーライ・ヘミング Eli HEMMING (USA) 10:34:36
  8. ロイック・ロラン Loïc ROLLAND (FRA) 10:36:41
  9. マリオ・オルメド・サンチャ Mario OLMEDO SANCHA (ESP) 10:40:19
  10. チン・グイドゥ Guidu QIN (CHN) 10:43:24
  11. アンドレアス・ライテラー Andreas REITERER (ITA) 10:51:24
  12. ルオ・カンファ Canhua LUO (CHN) 10:56:26
  13. ニコラス・ハンデル Nicholas HANDEL (USA) 10:57:06
  14. モルテン・アントンセン Morten ANTONSEN (NOR) 10:59:46
  15. アンソニー・コスタレス Anthony COSTALES (USA) 11:01:36
  16. アンドレアス・リーダー Andreas RIEDER (AUT) 11:03:16
  17. ダヴィデ・ケラズ Davide CHERAZ (ITA) 11:08:13
  18. スティアン・ダール・ソメルセス Stian DAHL SOMMERSETH (NOR) 11:09:13
  19. シモン・パッカール Simon PACCARD (FRA) 11:11:49
  20. アンドレウ・シモン・アイメリッチ Andreu SIMON AYMERICH (ESP) 11:15:25
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UTMBは現在進行中、ライブ配信も

両レースとも、ノンストップでUTMB LIVEでライブ配信を視聴することができます。

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