【編者より・UTMBウィーク最終日の8月31日日曜日、シャモニー Chamonix の空は快晴に恵まれました。レースの興奮が冷めやらぬ中、恒例の「チャンピオンズウォーク Champions Walk」が開催されました。ライブ配信のMCの一人として今年のHOKA UTMB Mont-Blancを見届けたマルタン・ガフリ Martin Gaffuri 氏が聞き手となって、UTMBワールドシリーズファイナルの三つのレースのチャンピオンたちとともに、ここまでの歩みと今回の経験を振り返りました。そのチャンピオンたちとの会話を紹介します。】
UTMB最終日の日曜日のシャモニーの朝10時、UTMBのフィニッシュライン付近は世界中から集まったランナーとその家族、友人たちの熱気に包まれていました。OCC男子チャンピオンとなったフランチェスコ・プッピ Francesco Puppi (ITA)は最後の400mを走る選手への応援の声に包まれながらインタビューに応じました。
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(Photo © UTMB® / Marta Baccardit)
世界のトレイルランニングコミュニティが集うUTMB、そのフィニッシュラインの特別な意味
UTMBのフィニッシュラインは、すべてのランナーが目指す場所。南アフリカやオランダ、ポルトガル、チリ、そしてカリフォルニアからもランナーが集い、シャモニーの街はトレイルランニングの祭典そのものです。プッピは「この場所に来ることは、エリートランナーとしてほぼ義務のように感じる」と語りますが、単なる義務感だけでなく、競技への情熱、山やコースの美しさ、地形からの挑戦、そしてシャモニーの文化、トレイルランニングやアウトドアスポーツ全般の文化が彼を惹きつけていると話します。世界中からあらゆる立場の人が集まるこの場所のエネルギーは信じられないほど素晴らしいと述べています。
UTMBワールドシリーズの進化と競技者の挑戦
UTMBワールドシリーズ現在55レースに拡大し、世界中のランナーがより身近な場所で予選に挑戦できるようになりました。プッピは「UTMBのファイナルに出場するのは年々難しくなっているが、それがこのスポーツの成長を示している」と語ります。UTMBワールドシリーズの出場枠への高い需要により、予選システムが確立されたのは当然のことだといいます。かつては誰でもエントリーできたUTMBですが、今や厳しい予選を勝ち抜いた者だけがシャモニーのフィニッシュラインに立てるのです。
プロフェッショナル化とトレイルランニングの精神
近年、トレイルランニング界ではプロフェッショナル化が進み、トップアスリートには認知やブランド、経済的なメリットも生まれています。しかし、プッピは「競技者同士の友情やリスペクトは変わらない」と強調します。ジム・ウォルムズレーがクリスチャン・ミノッジョに自らの最高のパフォーマンスを引き出され、フィニッシュ後に感謝のハグを交わしたように、勝利を争うライバル同士でも、互いに最高のパフォーマンスを引き出し合い、フィニッシュ後には感謝のハグを交わす――このスポーツならではの温かさが今も息づいています。
チャンピオンとしての責任と素顔
「自分が誰かのインスピレーションになれることにはまだ慣れていない」と語るプッピ。しかし、彼は自身の行動や結果を通じて、若いアスリートや次世代に良い影響を与えたいと考えています。「自分のためだけでなく、スポーツ全体を高め、他のアスリートにより良い機会を提供することが大きなモチベーション」と話し、競技への情熱と誠実さが伝わってきます。
彼は自身を「チャンピオン」と呼ぶことに違和感があるとし、8歳でクロスカントリーレースの最後尾を走っていた頃の自分を思い出すと語ります。他の才能ある子供たちの2倍の努力が必要だったが、ただ走ることが好きだったと振り返り、25年以上にわたるキャリアは多くの挫折や問題があったものの、一貫して走り続けてきた結果だと述べています。
完璧なレースと心の成長
今回のOCCでの勝利について、プッピは「自分のエネルギーとレース戦略をコントロールできた、キャリアの中でも最高のレースの一つ」と振り返ります。ヴァロルシーヌやコル・デ・モンテへの登りでは非常に疲労を感じる「ロー・ポイント」もあったが、それに対処する準備ができていたと語ります。キャニオンズ(アメリカ・カリフォルニアでのUTMBワールドシリーズのレース)で初めて走った100kmレースが「徐々に消えゆく炎」のようだったのに対し、今回のレースは「波のように、良い時と悪い時を繰り返しながらも、ほとんどが高い状態」で進んだと表現しています。
また、以前は結果に満足できず苦しんだ時期もあったものの、スポーツ心理学の専門家との長期的な取り組みや、他のアスリートの経験を知ることで「自分らしく、何も証明する必要がなく、結果に縛られず走る」ことの大切さに気づいたと明かします。アスリートが直面する摂食障害のような問題も、以前は語られなかったが、今では多くの人が経験を共有し、助けを求めるようになったことで、孤独を感じずに済むようになったと感謝しています。
ポール使用の戦略と個性
今回のOCCでは、プッピ自身はポールを使わずに走り切りました。しかし、CCCの優勝者の中にはポールを使用しない選手もいれば、ペッター・エングダールのようにポールを使用して10時間台のコースレコードを樹立した選手もおり、上位入賞者の中でもポール使用の有無は分かれ、「コースに合わせるだけでなく、ランナー自身の特性やトレーニング背景によって最適な戦略は異なる」と語ります。
ポールの有無は単なるテクニック以上に、個々のランナーのスタイルや強みを反映するものです。また、どのようなコースを走るかという環境的な要素も重要だが、最終的には個人の背景やトレーニング方法に依存すると付け加えています。
心のケアとアスリートへのメッセージ
最後に、プッピは「自分だけで抱え込まず、必要なら誰かに助けを求める勇気を持ってほしい」と読者にメッセージを送りました。スポーツ心理学者に相談するなど「最初の第一歩を踏み出すことが最も難しいが、一度踏み出せば、その決断に感謝するだろう」と語ります。
スポーツ心理学の専門家との対話や、他のアスリートの経験を知ることで孤独や悩みを乗り越えられると語り、「弱さを見せることは決して恥ではない」と力強く伝えます。
まとめ
フランチェスコ・プッピ Francesco Puppi のインタビューからは、UTMBという舞台の特別さ、トレイルランニングの進化、そして競技者としての葛藤や成長が鮮やかに浮かび上がります。勝利の裏にある努力や心の葛藤、そしてスポーツへの愛。DogsorCaravanは、これからもこうしたアスリートの素顔とトレイルランニングの魅力を伝えていきます。
https://www.youtube.com/live/tmqTlOaSkkg














