イタリア・アオスタ Aosta の壮大な山々を舞台に繰り広げられる世界最高峰の山岳エンデュランスレース、TORX with Kailas(トル・デ・ジアン)が、いよいよ来週9月12日金曜日に開幕します。16回目を迎える今年は、コースの一部変更やライブ配信の刷新など、新たなアップデートが加わりました。メインイベントである330kmのTOR330 – Tor des Géantsには、過去4度の優勝を誇る絶対王者フランコ・コッレ Franco Collé (ITA)が参戦し、5度目の栄冠を目指します。日本からも、このTOR330に中谷亮太 Ryota Nakatani (JPN)と南圭介 Keisuke Minami (JPN)、徳本順子 Junko Tokumoto (JPN)が、そして450kmのTOR450 – Tor des Glaciersには丹羽薫 Kaori Niwa (JPN)が挑戦します。アオスタの谷を舞台に繰り広げられる10日間の壮大なドラマの、注目の選手たちを紹介します。
(写真 2024年のTOR330のスタート。Photo © Stefano Coletta, Zzam! Agency)
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TOR330 – Tor des Géants:絶対王者コッレは5度目の王座につくか
TOR330 – Tor des Géants は、距離330km、累積獲得標高24,000mという壮大なコースを、150時間の制限時間内に走破するノンストップの山岳レースです。選手たちは6ヶ所のライフベースをはじめとするエイドステーションで休息や補給を取りながら、クールマイユールをスタートしてアオスタの谷を一周します。このレースで最大の注目は、やはり「ミスターTOR」ことフランコ・コッレ Franco Collé (ITA)の走りでしょう。2014年、2018年、2021年、2023年と4度にわたり「巨人」の名をほしいままにしてきた彼が、前人未到の5度目の優勝を狙います。
そのコッレの最大のライバルと目されるのが、2022年大会で2位に入ったシモーネ・コルシーニ Simone Corsini (ITA)です。今シーズンはいずれもアオスタで開催されたGTC55や今年開催のモンテ・ローザ・ヴァルザーヴェーク Monte Rosa Walserwaeg by UTMB 120k で優勝するなど、好調をキープしていて、コッレと優勝を争う一番手に挙げられます。さらに、昨年のTOR130で2位のジュリオ・オルナーティ Giulio Ornati (ITA)や、2017年大会3位のアンドレア・マッキ Andrea Macchi (ITA)など、イタリアの強豪が虎視眈々と王座を狙います。
外国勢では、昨年の大会で優勝したフランソワ・デンヌ François D’Haene (FRA) と激闘を演じて3位のマルティン・ペリエ Martin Perrier (FRA) と6位のルイ・カレ Louis Calais (FRA) が揃って今年もスタートラインに立ちます。
そして日本からは、中谷亮太 Ryota Nakatani (JPN)と南圭介 Keisuke Minami (JPN) がTOR330に挑戦します。中谷は昨年のTOR130で5位に入賞しており、その実力はアオスタで証明済みです。欧州の超長距離トレイルで経験を重ねている南も有力選手として名前が挙がっています。330kmの「巨人の旅」で、二人が世界のトップ選手相手にどのような走りを見せるか、大きな期待が寄せられます。

2024年のマラトラ Malatrà 峠。Photo © Nicola Biagett
女子のレースは、昨年の大会で3位に入ったクレア・バンワース Claire Bannwarth (FRA)、2016年と2017年に連覇を達成した女王、リサ・ボルザニ Lisa Borzani (ITA)、そして2015年の覇者であるデニス・ツィンマーマン Denise Zimmermann (SUI) の三つ巴の戦いが予想され、目が離せません。ここに、アメリカのトップ選手であるケイトリン・ガービン Kaytlyn Gerbin (USA) や、昨年のスイスピークス360で2位と好走した日本の徳本順子 Junko Tokumoto (JPN) がどう絡んでくるか、見どころの多いレースとなりそうです。
TOR450 – Tor des Glaciers:絶対王者ライションが自身の記録に挑む。丹羽薫も参戦
TOR450 – Tor des Glaciersは、アオスタの忘れられたトレイルを辿る距離450km、累積獲得標高32,000m、制限時間190時間という、TORXの中で最も過酷で野性味あふれるレースです。TOR330が整備されたコースを辿るのに対し、TOR450はマーキングのないルートをGPSを頼りに自らナビゲーションしながら進む完全なセルフサポートが求められ、より冒険的な要素が強いのが特徴です。
このレースでは、2023年に圧倒的な強さで男子のコースレコードを樹立したセバスチャン・ライション Sébastien Raichon (FRA) が帰ってきます。「目標は自身の記録を更新すること」と公言しており、彼の異次元の走りに注目が集まります。
女子では、一昨年のスイスピークス360で3位に入賞した日本の丹羽薫 Kaori Niwa (JPN)がエントリー。昨年の覇者、サラ・ハンセル Sarah Hansel (USA)や2023年優勝のフローレンス・ゴレイ=ジェモン Florence Golay-Geymond (SUI) ら世界の強豪を相手に、表彰台の頂点を狙います。
スター選手が集う130km、100km、30kmレース
TORXの魅力は330km、450kmだけではありません。各カテゴリーにもスター選手が集結します。
- TOR130 – Tot Dret: 女子のレースには、2022年のTOR330女王であるサブリナ・ベルジェ Sabrina Verjee (GBR)が参戦。距離を短縮して臨む今大会で、どのようなスピードレースを見せるか注目です。
- TOR100 – Cervino-Monte Bianco: 昨年のTOR130でコースレコードを叩き出したファビオラ・コンティ Fabiola Conti (ITA)が、今年は100kmに登場。圧倒的な優勝候補として、その走りに期待がかかります。
- TOR30 – Passage au Malatrà: スキーマウンテニアリングのスター選手、ウィリアム・ボフェッリ William Boffelli (ITA) と、ウルトラトレイル界のレジェンド、ゲディミナス・グリニウス Gediminas Grinius (LTU) が30kmのレースで激突します。
ライブで観戦、応援するための情報発信
今大会では、レースの模様を伝えるコミュニケーション形式が全面的に刷新され、ファンにとってこれまで以上にエキサイティングな観戦体験が提供されます。期間中はライブストリーミングが配信され、スタジオやリモートでアスリート、コーチ、オーガナイザーといった豪華ゲストを招いてのトークセッションが毎日行われます。これに加えて、レースの展開をリアルタイムで伝えるライブブログも継続的に更新され、レースのストーリーを深く掘り下げて伝えます。リーダーボードを含むこれらの全てのコンテンツは、公式サイトのライブページ(https://live.torxtrail.com/)のほか、FacebookやInstagramの公式チャンネルで発信されます。現地の熱気を、ぜひライブで体感してください。
コースも一部が変更に
コースについては、選手が挑むルートにもいくつかの重要な変更が加えられています。最も大きな変更が加えられたTOR450では、ヴァルグリサンシュ Valgrisencheエリアにおいて、これまで立ち寄っていたアンジェリ小屋 Rifugio degli Angeli がコースから外れ、プラナヴァル Planavalへと向かいます。また、昨年追加されたヴァルノンテイ Valnonteyのウイユ峠 Col de l’Ouilleは安全上の理由からルートから外れ、選手たちはセッラ小屋 Rifugio Sellaへ向かった後、約2km戻ってルース峠 Col de la Rousseへの分岐を進むことになります。さらに、プラライエ小屋 Rifugio Prarayerをスキップする代わりに、プラス・ムーラン Place Moulin ダムの休憩ポイントが拡充されます。
TOR330、TOR130、TOR100、TOR30の4つのレースに共通する変更点として、これまで選手たちの貴重な休息場所であったフラッサーティ小屋 Rifugio Frassatiでの仮眠が利用できなくなります。これに伴い、手前のボス Bossesのエイドステーションにある休憩エリアが拡充され、選手たちの休息をサポートします。また、ファンには嬉しいニュースとして、ボナッティ小屋 Rifugio Bonattiとベルトーネ小屋 Rifugio Bertoneがエイドステーションとして復活します。
各レースのスタート日時
- TOR450: 9月12日(金) 午後8時(日本時間 9月13日(土) 午前3時)
- TOR330: 9月14日(日) 午前10時、正午(日本時間 同日午後5時、午後7時)の2ウェーブ
- TOR130: 9月16日(火) 午後9時(日本時間 9月17日(水) 午前4時)
- TOR100: 9月17日(水) 午後9時(日本時間 9月18日(木) 午前4時)
- TOR30: 9月20日(土) 午前10時(日本時間 同日午後5時)














