ケニアのトレイルランナー、 ジョイリーン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno に2年間の資格停止処分、シエル・ジナールでのドーピング検査陽性

ワールドアスレチック World Athletics 傘下のアンチドーピング機関である Athletics Integrity Unit(AIU)はケニアのアスリート、ジョイリーン・チェプンゲノ Joyline Chepngeno (KEN) に対し、アンチ・ドーピング規則違反があったとして、2年間の資格停止処分を科したと発表しました

(写真・2025年のOCCでのジョイリーン・チェプンゲノ。Photo © UTMB / Quentin Iglesis)

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チェプンゲノ選手は2025年8月9日、スイスで開催されたシエル・ジナール Sierre-Zinal(WMRAワールドカップの一戦)において、AIUの権限によるドーピング検査を受けました。その検体から8月29日、ドイツ・ケルンのWADA認定研究所によって、トリアムシノロンアセトニド(Triamcinolone acetonide)という禁止物質が検出されました。

AIUによれば、この物質はWADAの2025年禁止リストにおいて、「S9. 糖質コルチコイド」カテゴリーに該当し、注射、経口(口腔粘膜含む)、直腸投与で競技会期間中は禁止されています。調査の結果、チェプンゲノ選手に当該物質の治療使用特例(TUE)は認められておらず、その他の規定に違反する可能性も否定されました。

選手は9月8日、7月に膝の痛み治療のために受けた注射について「禁止物質だと知らず、誤りを犯した」とAIUに書面で申し出た上で、違反事実を認め、処分を受け入れる意思を正式に表明しました。

事案はチェプンゲノにとって初めてのアンチ・ドーピング規則違反であり、AIUは意図的な違反を示す証拠はないとし、ルールに従って2年間の資格停止処分とすることを決定しました。資格停止期間は2025年9月8日から開始され、2025年8月9日以降のすべての競技成績・受賞・ポイント・賞金等も失効となります。

今回の決定についてAIUは公式ウェブサイトで公表しました。また、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)およびケニア・アンチ・ドーピング機構(ADAK)にはスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ上訴する権利も与えられています。

チェプンゲノのドーピング規則違反を受け、シエール・ジナルの主催者はチェプンゲノの失格を正式に発表し、カロライン・キムタイ Caroline Kimutai (KEN)を2025年大会の優勝者に、アメリカのケイティ・シャイド Katie Schide (USA)を2位、スイスのモード・マティス Maude Mathys (SUI)を3位に繰り上げました。

また、シエール・ジナルののち、8月末に開催されたUTMBワールドシリーズファイナルのOCCにおいてチェプンゲノは優勝しており、こちらも取り消しとなる見込みです。その結果、繰り上げで中国のヤオ・ミャオ Miao Yao (CHN)が優勝となります。【追記・その後、UTMBワールドシリーズはチェプンゲノのOCC優勝を取り消すことを発表しました。優勝はヤオ・ミャオとなり、2位はユーディット・ウィダー Judith Wyder (SUI)、3位はモード・マティス Maude Mathys (SUI)となりました。】

メインスポンサーのサロモン(Salomon)は、本件発覚直後に「コアバリューに反する」としてチェプンゲノ選手とのスポンサー関係を即時解除することを発表しました

シエル・ジナールの運営は、チェプンゲノのコーチであるジュリアン・リヨン Julien Lyon (SUI)にも制裁を科し、彼および彼が指導するMilimani Runners(ミリマニ・ランナーズ)の選手がシエル・ジナールへ参加することを将来にわたって禁止。加えて、リヨンにはチームの滞在・移動・登録等の経費や大会への営業損害賠償の支払いを要求するとしています。

シエール・ジナルでは2022年大会でも女子優勝のケニアのエスター・チェサン Esther Chesang (KEN)が同じ薬物で優勝後に失格しています。

チェプンゲノ選手は昨年以降、国際大会で存在感を高めていただけに、今回の処分はトレイルおよびマウンテンランニング界にとっても大きなニュースとなります。

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