レミ・ボネとニナ・エンゲルハードが2025年WMTRC世界選手権、アップヒル競技で新王者に輝く、ボネはコースレコードでキプンゲノの3連覇を阻む

スペインのピレネー山脈に抱かれた町、カンフランク Canfranc-Pirineos で開催されている2025年マウンテン&トレイルランニング世界選手権(WMTRC Canfranc-Pirineos)は9月25日木曜日に開幕しました。その初日を飾るアップヒル Uphill 種目で、男子はスイスのレミ・ボネ Remi Bonnet (SUI)、女子はドイツのニナ・エンゲルハード Nina Engelhard (GER) がそれぞれ世界チャンピオンの座に輝きました。

(写真・アップヒルで世界チャンピオンとなったレミ・ボネ Remi Bonnet。Photo @josemiguelmunoze / WMTRC2025 Canfranc Pirineos)

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男子はレミ・ボネが絶対王者のキプンゲノを破り、新記録で金メダルを獲得

男子レースの最大の焦点は、この種目で3連覇を目指すパトリック・キプンゲノ Patrick Kipngeno (KEN) の圧倒的な強さに、誰が挑むのかという点でした。その筆頭と目されていたのが、バーティカル種目での実力に定評のあるスイスのレミ・ボネ Remi Bonnet (SUI) です。

レースが動いたのは序盤からでした。自信に満ちたボネは、中間地点のチェックポイントをすでにトップで通過。後方からはキプンゲノと、そのチームメイトであるリチャード・オマハ Richard Omaha (KEN) が追う展開となりました。しかし、ボネの勢いは最後まで衰えることなく、フィニッシュ地点のララカ Larraca (2,278m) の頂上へ一番乗り。37分50秒という驚異的なタイムで、コースレコードを更新しての圧勝でした。

銀メダルは39分04秒でリチャード・オマハ (KEN)、そして3連覇が期待されたパトリック・キプンゲノ (KEN) は39分20秒で銅メダルとなりました。

優勝したボネは、「ここで勝てて本当に嬉しい。スキーツーリングとトレイルを組み合わせたトレーニングのおかげで、自信を持って臨めた。ケニアの偉大なランナーたちを上り坂で打ち負かすのは決して簡単ではないが、今日はそれができた」と喜びを語りました。

王座を明け渡したキプンゲノは、「2km地点で、3連覇の夢は今日不可能だと悟った。レミもリチャードもとてつもなく強かった。コースはとても気に入ったし、この景色と周りの雰囲気は大好きだ」と、勝者を称えました。

男子Uphill 結果

  1. レミ・ボネ Rémi BONNET (CHE) 0:37:50
  2. リチャード・オマヤ・アツヤ Richard Omaya ATUYA (KEN) 0:39:04
  3. パトリック・キプンゲノ Patrick KIPNGENO (KEN) 0:39:20
  4. クリスチャン・アレン Christian ALLEN (USA) 0:39:28
  5. ジェイコブ・アドキン Jacob ADKIN (GBR) 0:39:34
  6. エリウド・チェロップ Eliud CHEROP (UGA) 0:40:09
  7. ホナタ・カミロ・カスティーリョ Jonatha Camilo CASTILLO (COL) 0:40:16
  8. アンドレア・エリア Andrea ELIA (ITA) 0:40:20
  9. カンタン・メイル Quentin MEYLEU (FRA) 0:40:20
  10. テオドール・クライン Theodore KLEIN (FRA) 0:40:24
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男子団体

  • 金メダル: ケニア (22点)
  • 銀メダル: スイス (34点)
  • 銅メダル: アメリカ (41点)

女子では欧州選手権の女王、エンゲルハードが圧倒的な力で世界を制す

女子のレースでは、2024年のオフロード欧州選手権でアップヒルとクラシックの二冠を達成した若きドイツの女王、ニナ・エンゲルハード Nina Engelhard (GER) が、その実力を遺憾なく発揮しました。

エンゲルハードは、フィニッシュタイム45分33秒という、こちらも男子同様、コースレコードを大幅に更新する圧巻の走りで世界チャンピオンに輝きました。

ニナ・エンゲルハード Nina Engelhard Photo © @josemiguelmunoze / WMTRC2025 Canfranc Pirineos

ニナ・エンゲルハード Nina Engelhard Photo © @josemiguelmunoze / WMTRC2025 Canfranc Pirineos

レース後、エンゲルハードは「持てる力のすべてを出し切りました。まだ脚が壊れている感じがします。コースと景色は素晴らしかったけれど、この努力から回復するには数日必要でしょう。最後の稜線は息をつく暇もなかった」と、レースの厳しさを振り返りました。

銀メダルには、最後まで食らいついたフィンランドのスサンナ・サープンキ Susana Saapunki (FIN) が45分59秒で入りました。銅メダルは、アメリカのアンナ・ギブソン Anna Gibson (USA) が46分07秒で獲得しました。

女子Uphill 結果

  1. ニナ・エンゲルハルト Nina ENGELHARD (DEU) 0:45:33
  2. スサンナ・サーアプンキ Susanna SAAPUNKI (FIN) 0:45:59
  3. アナ・ギブソン Anna GIBSON (USA) 0:46:07
  4. マーサ・チェムタイ Martha CHEMUTAI (UGA) 0:46:44
  5. フランチェスカ・ゲルフィ Francesca GHELFI (ITA) 0:47:13
  6. クリステル・ドゥワル Christel DEWALLE (FRA) 0:47:16
  7. ルチア・アルノルド Lucia ARNOLDO (ITA) 0:47:32
  8. ネリー・クレマン Nélie CLÉMENT (FRA) 0:47:40
  9. ラウラ・ホッテンロット Laura HOTTENROTT (DEU) 0:47:43
  10. エマ・クック・クラーク Emma COOK-CLARKE (CAN) 0:48:07

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女子団体

  • 金メダル: イタリア (31点)
  • 銀メダル: フランス (36点)
  • 銅メダル: カナダ (41点)
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アップヒル種目は息つく間もない急登、ララカ山頂への6km

今大会のアップヒル種目のコースは、サンティアゴ巡礼路のすぐそばにあるサンタ・クリスティーナ Santa Cristina のホテル前をスタートし、ララカ Larraca の山頂 (2,278m) まで、わずか6kmの距離で978mを駆け上がるという、まさに垂直の限界に挑むレイアウトです。

Photo © YHABRIL / WMTRC2025 Canfranc Pirineos

Photo © YHABRIL / WMTRC2025 Canfranc Pirineos

序盤は林道を、中盤は岩がちなトレイルを進み、終盤は隣接するアストゥン Astún スキー場の象徴的な山頂へと続くつづら折りの急登が待ち受けます。特に、フィニッシュ前の最後の1kmは、芝と岩がミックスしたアルパイン地形で、走るというよりはリズミカルに登るという表現がふさわしい、容赦のない壁のようなセクションでした。

アップヒル種目で開幕した世界選手権は始まったばかり。週末にかけて、ショートトレイル、ロングトレイル、そしてクラシックとU20のレースが続きます。ピレネーの雄大な自然を舞台にした、世界最高峰の戦いから目が離せません。

(Text (c) Sergio Mayayo, WMTRC2025 Canfranc Pirineos)

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