スペインのアラゴン・ピレネー山脈に位置するカンフランク Canfranc Pirineos で開催中の2025年マウンテン&トレイルランニング世界選手権(WMTRC Canfranc-Pirineos)は、大会3日目の9月27日土曜日に、80kmのロングトレイル種目のレースが行われました。女子はアメリカのケイティ・シャイド Katie Schide (USA) 、男子も同じくアメリカのジム・ウォルムズレー Jim Walmsley (USA)がそれぞれ優勝し、世界チャンピオンの座に輝きました。日本勢では秋山穂乃果 Honoka Akiyamaが女子12位でフィニッシュしました。
(写真 ロング種目男子優勝のジム・ウォルムズレー Jim Walmsley。 Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos)
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女子:ケイティ・シャイドが盤石の独走で勝利
女子レースは、ケイティ・シャイド Katie Schide (USA) がスタート直後からレースの主導権を握り、一度もトップを譲ることなく圧勝しました。
40km地点のイボン・デ・トゥルチャス Ibón de Truchas を通過する時点で、すでに後続のスンマヤ・ブッダ Sunmaya Budha (NEP) とファビオラ・コンティ Fabiola Conti (ITA) に対して30分もの大差をつけていました。レース後半も上位3人の順位は変わらず、シャイドはリードを保ち続けました。

ロング種目女子優勝のケイティ・シャイド Katie Schide。 Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos
シャイドは9時間57分59秒でフィニッシュテープを切り、世界選手権での金メダルを獲得。銀メダルにはネパールのスンマヤ・ブッダ Sunmaya Budha (NEP) が10時間23分03秒で、3位にはイタリアのファビオラ・コンティ Fabiola Conti (ITA) が10時間35分51秒で続きました。カナダのジャズミン・ロウサー Jazmine Lowther (CAN) とスペインのロサ・マリア・ララ Rosa María Lara (ESP) がレース終盤に順位を上げ、トップ5に入りました。
優勝したシャイドは、「序盤に速いペースで入ったことで、テクニカルなセクションに到達した時には十分なリードを築けていると確信でき、下りでは守りの走りをすることができました。アメリカで育ち、隣国のフランスで長年暮らしてきた私にとって、カンフランクのようなテクニカルな地形を走ることはとても自然なことでした」とコメントしています。
日本勢では秋山穂乃果 Honoka AKIYAMA が女子の有力選手と共に順位を入れ替えながら10位前後を争うタイトなレースを序盤から続け、後半は12位をキープして11時間11分37秒でフィニッシュしました。吉住友里 Yuri YOSHIZUMI は序盤は慎重にペースを抑えてその後に順位を少しずつ上げ、女子60位で完走、タイムは13時間12分57秒でした。

女子12位の秋山穂乃果 Honoka AKIYAMA。Photo © DogsorCaravan
女子の団体戦では、イタリアが金メダル、フランスが銀メダルを獲得しました。
全体のリザルトはこちら。

ロング女子優勝のシャイド(中)、2位のブッダ(右)、3位のコンティ。Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos
Long Trail 女子
- ケイティー・シャイド Katie SCHIDE (USA) 9:57:59
- スンマヤ・ブッダ Sunmaya BUDHA (NPL) 10:23:03
- ファビオラ・コンティ Fabiola CONTI (ITA) 10:35:51
- ジャズミン・ロウザー Jazmine LOWTHER (CAN) 10:45:18
- ロサ・マリア・ララ Rosa Maria LARA (ESP) 10:47:15
- アンヌ・リーズ・ルセ Anne Lise ROUSSET (FRA) 10:50:45
- マルティナ・ヴァルマッソイ Martina VALMASSOI (ITA) 10:55:07
- マリオン・ドゥレスピエール Marion DELESPIERRE (FRA) 11:03:01
- ジュディッタ・トゥリーニ Giuditta TURINI (ITA) 11:05:19
- イレール・ジェラルディ Hillary GERARDI (FRA) 11:05:20
12 秋山穂乃果 Honoka AKIYAMA (JPN) 11:11:37
60 吉住友里 Yuri YOSHIZUMI (JPN) 13:12:57
男子:ジム・ウォルムズレーがスタートから他を圧倒
男子レースは、スタートからゴールまでジム・ウォルムズレー Jim Walmsley (USA) が鉄壁の強さを見せつけました。2019年WMRAマウンテンランニング世界選手権・パタゴニア大会のショートトレイルで金メダルを獲得しているウォルムズレーですが、今回はよりテクニカルなピレネーのロングトレイルという舞台で、その万能の力を証明しました。
カンフランク Canfranc の国際駅をスタートすると同時に先頭に立ったウォルムズレーを、2023年の前大会チャンピオンであるベンジャミン・ルビオル Benjamin Roubiol (FRA) とルイゾン・コワフェ Louison Coiffet (FRA) のフランス勢が果敢に追走する展開となりました。60km地点のカンダンチュ Candanchu では、コワフェがわずか数秒差まで迫りましたが、ウォルムズレーは動じません。後方からはペーター・エングダール Peter Engdhal (SWE) やクリスティアン・ミノッジョ Cristian Minoggio (ITA)、ペテル・フラノ Peter Frano (SVK) といった強豪が15分差で追いましたが、トップ3の牙城を崩すことはできませんでした。
最終的にウォルムズレーは8時間35分11秒でフィニッシュし、金メダルを獲得。追走したフランスのルビオルとコワフェは、最後までお互いをプッシュし続け、8時間46分05秒で同時にフィニッシュラインを通過、銀メダルを分け合いました。
優勝したウォルムズレーはレース後、「自分が立てていたプランよりもずっと速い一日でした。最大で10時間くらいを想定していましたが、誰かが先行するのを防ぐために、序盤からアタックすることを選びました。実際には後半に仕掛けるつもりでしたが、最初からとても感触が良く、そのままゴールまで突き進むことができました」と語りました。
日本代表選手では、吉野大和 Yamato YOSHINO がチームメイトの間で首位となる10時間30分、51位でフィニッシュし、前回インスブルック大会でのDNFの雪辱を果たしました。川崎雄哉 Yuya KAWASAKI が10時間59分で67位、西村広和 Hirokazu NISHIMURA が11時間6分で78位と世界選手権の経験豊富なベテランが手堅く完走。甲斐大貴 Hiroki KAI は11時間49分で95位、世界選手権初出場の田村健人 Kento TAMURA は12時間11分で106位でした。

男子51位となった吉野大和 Yamato YOSHINO。Photo © DogsorCaravan
国別の団体戦は、各国上位3選手の合計タイムで競われ、フランスが金メダル、アメリカが銀メダル、イタリアが銅メダルを獲得しました。
全体のリザルトはこちら。

ロング男子優勝のウォルムズレー(中)、銀メダルを分け合ったルビオル(左)と3位のコワフェ。Photo © WMTRC2025 Canfranc Pirineos
Long Trail 男子
- ジム・ウォルムズレー Jim WALMSLEY (USA) 8:35:11
- ベンジャマン・ルビオル Benjamin ROUBIOL (FRA) 8:46:05
- ルイゾン・コワフェ Louison COIFFET (FRA) 8:46:05
- クリスティアン・ミノッジョ Cristian MINOGGIO (ITA) 8:57:16
- ペテル・フラニョ Peter FRAŇO (SVK) 9:01:37
- ペッテル・エングダール Petter ENGDAHL (SWE) 9:03:38
- アンジェイ・ヴィテク Andrzej WITEK (POL) 9:12:38
- アダム・ピーターマン Adam PETERMAN (USA) 9:18:36
- フランチェスコ・プッピ Francesco PUPPI (ITA) 9:20:22
- ヴィンサン・ブイヤール Vincent BOUILLARD (FRA) 9:22:10
51 吉野大和 Yamato YOSHINO (JPN) 10:30:22
67 川崎雄哉 Yuya KAWASAKI (JPN) 10:59:10
78 西村広和 Hirokazu NISHIMURA (JPN) 11:06:51
95 甲斐大貴 Hiroki KAI (JPN) 11:49:11
106 田村健人 Kento TAMURA (JPN) 12:11:05
スペインとフランスにまたがる壮大なピレネーのコース
今年のロングトレイルは、スペインとフランスの国境をまたぐ、ピレネー山脈の象徴的な名所を巡る81km、累積獲得標高5,400mの壮大で美しいコースが舞台となりました。
選手たちはラ・モレタ La Moleta へと駆け上がり、イサス Izas の谷へと下り、ピコ・ロヨ Pico Royo やフォルミガル Formigal を通過。ポルタレ Portalet の国境を越えてフランス領のピレネー・アトランティック国立公園 Parque Nacional de los Pirineos Atlánticos へと足を踏み入れました。コースのハイライトであるイボネス・デ・アヨウス Ibones de Ayous の壮大な景色を楽しんだ後、再びスペインのカンダンチュ Candanchu へと戻り、最後はコジャド・デ・エスティビージャス Collado de Estiviellas からカンフランク Canfranc のフィニッシュラインへと駆け下りました。
大会は明日28日日曜日に最終日を迎え、「クラシック Classic」種目と「U20」のレースが行われます。
(Text (c) Sergio Mayayo, WMTRC2025 Canfranc Pirineos)














