日本を代表する国際的なマウンテントレイルランニングレース「Mt. FUJI 100」が2026年大会(4月24日〜26日開催)の大会概要を発表し、トレイルランニングコミュニティの注目が集まっています。今回の発表の核心はフラッグシップ種目である「FUJI100mi」では、選手のレース体験の質を最優先し、あえて参加定員を削減するという大きな決断が下されたこと。そして、他方で昨年から始まった「ASUMI40k」の定員を大幅に拡大したこと。さらにWorld Trail Majorsの対象レースとなる両レースは、優勝選手への30万円をはじめ入賞選手に総額332万円の賞金が提供されます。加えて12kmの新種目も加わり、エリート選手からトレイルランニング初心者まで、より幅広い層が楽しめる大会へと進化を遂げようとしています。
FUJI100mi:定員を2,000名に削減し、より質の高いレース体験へ
2026年大会の最も大きな変更点として、「FUJI100mi」(約167.0km、累積標高+6,613m)の参加定員が、従来の2,400名から2,000名へと400名削減されることが発表されました。これは、スタート直後の渋滞やエイドステーションの混雑を緩和し、選手一人ひとりにより質の高いレース体験を提供することを目的とした、主催者の決断です。
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またコースについては、昨年のコースから主に3つの変更が加えられます。
- F2麓〜F3精進湖間:2025年大会で採用された竜ヶ岳を越えるルートから、以前の本栖湖湖周辺のトレイル(端足峠、パノラマ台、烏帽子岳を経由)に戻ります。これは、竜ヶ岳の登山道の脆弱性を考慮した結果です。
- F4エイドの変更:2025年大会では富士北麓公園におかれたF4エイドが、よりアクセスしやすい「富士急ハイランド」に変更されます。これにより、選手は精神的な負担が大きかった公園への登りを回避でき、応援者もアクセスしやすくなります。ここは私的サポートやドロップバッグは利用できませんが、代わりにこれまでコース上には設定されていなかった『誰でも選手を応援できる一大応援拠点』としての役割が期待されており、レース中盤の大きな盛り上がりの場となりそうです。
- 私的サポート可能なエイドの変更:4が変更されたことに伴い、私的サポートおよびドロップバッグの拠点は、F5の「忍野」エイド(忍野中学校)に移動します。これにより、一般の応援拠点(富士急ハイランド)と、選手が集中して補給や準備を行うサポート拠点(忍野)が明確に分離され、双方の混雑緩和とスムーズな運営が図られます。
これらの変更により、距離や累積標高は2025年大会とほぼ同等を維持する見込みです。
KAI70k:コース・定員ともに変更なし
「KAI70k」(約70.2km、累積標高+3,052m)については、コース、募集人数(1,000名)ともに2025年大会からの変更はありません。富士の後半部分を凝縮したテクニカルで美しいコースが、来年もランナーを待ち受けます。
ASUMI40k:主要レースへと飛躍、定員1,000名へ大幅拡大
昨年新設され、「100マイルはまだ早いけれど、Mt. FUJI 100の雰囲気を味わいたい」という層から絶大な支持を得た「ASUMI40k」(約38.5km、累積標高+1,481m)。その好評を受け、2026年大会では募集人数が前回の200名から1,000名へと5倍に拡大されます。さらに、制限時間も7時間から9時間30分へと大幅に延長。これにより、トレイルランニングのレース経験が浅いランナーにとっても完走を目指しやすい設定となり、より多くのチャレンジャーを受け入れる体制が整いました。ただし、制限時間が延びたことで、後方のランナーは日没後の走行が必須となるため、安全確保のためにライトが必携装備品に追加されています。
既存の三つのレースの参加資格は前回から変更はなし
2026年大会の参加資格は、前回2025年大会から変更ありません。発表当初、SNSで一時的に古い情報が流れる場面がありましたが、現在は公式サイトで正しい情報が公開されています。
- FUJI100mi:ITRAポイント4以上のレースを1つ、またはITRAポイント3のレースを2つ完走。
- KAI70k:ITRAポイント2以上のレースを1つ完走。
- ASUMI40k:ITRAポイント1以上のレースを1つ完走。
(※いずれもエントリー開始日の2年前から前日までの間に取得したポイントが有効)
初めて賞金を提供、トップ選手にとって魅力に
「FUJI100mi」と「ASUMI40k」は、World Trail Majors加盟レースとして、新たに賞金が設定されることも発表されました。優勝者には男女それぞれ30万円が贈られるなど、国内外のトップアスリートにとってさらに魅力的な大会となります。両レースの男女を合わせると、賞金総額は332万円となります。
- 賞金(FUJI100miとASUMI40kの男女それぞれの総合1位から5位まで)
- 1位:30万円
- 2位:20万円
- 3位:15万円
- 4位:10万円
- 5位:8万円
新種目「SAKUYA」はマウンテンランニングの日本版
さらに、より短い距離のレースとして「SAKUYA12k」と「SAKUYA6k(U20)」が新設されます。これは、ヨーロッパで人気の「マウンテンランニング」のスタイルを取り入れた、いわば「日本版マウンテンランニング」ともいえるレースです。急峻なシングルトラックではなく、林道やなだらかなトレイルを中心としたコース設定で、上りも下りも「ほぼ全て走れる」のが特徴。危険な箇所が少なく、スピードを出せるため、普段ロードやトラックを専門とする陸上選手なども挑戦しやすい、新たな才能の入り口となることが期待されます。 レースは富士北麓公園をスタート・フィニッシュとし、コース全体が富士山のエリア内で完結することから、富士山の女神である木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)にちなんで「SAKUYA」と名付けられました。この新設レースの参加資格やエントリーに関する詳細は後日発表される見込みです。
必携装備品にも変更点
安全管理の観点から、必携装備品にもいくつかの変更が加えられました。
- 地図とスマートフォン:紙地図の代わりに、「コースを詳細に確認できるGPXデータをダウンロードしたスマートフォン等」が必須となります。緊急連絡はEメールで行われるため、確実に受信できるスマートフォンが必要です。
- ライト:「80ルーメン以上で4時間以上照射できること」という性能基準が新たに設けられました。
エントリーは11月1日から
FUJI100mi、KAI70k、ASUMI40kの一般エントリーは、2025年11月1日(金)から11月16日(土)まで。例年通り抽選となることが予想されます。FUJI100miについては前回の総合100位以内や大会が定めるエリート資格を満たす選手については、優先エントリーが先行して始まります。
- 優先エントリー(FUJI100mi 2025年大会 総合100位以内):10月20日〜11月16日
- 一般エントリー・寄付エントリー:11月1日〜11月16日
- 抽選発表:12月2日
『規模』から『質』へと舵を切り、トップアスリートにはより厳しい競争の場を、そして次世代のランナーには新たな挑戦の扉を開く。これらの変更は、Mt. FUJI 100が次のステージへと向かう明確な意思表示と言えるでしょう。2026年の春、富士山の麓で繰り広げられる新たなドラマに期待が高まります。
(Source: Mt. FUJI 100)














