多くのランナーに愛されたバスクの魂、Ehunmilak(エフンミラク)が15年の歴史に幕 — ボランティアの世代交代が課題に

スペイン北部のバスク自治州で開催されてきた著名なウルトラトレイルレース、エフンミラク Ehunmilak が、15回の開催を経てその歴史に幕を下ろすことが、10月1日に大会組織委員会から公式に発表されました。ボランティアの高齢化と後継者不足が主な理由とされています。

(写真 2016年のエフンミラク Ehunmilak のコースから。Photo © Sergio Mayayo)

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エフンミラク Ehunmilakは、毎年7月にスペイン・バスク地方のゴイエリ Goierri 郡で開催される山岳ウルトラトレイルレースです。そのコースはピレネー山脈の西端に位置するバスクの山々を巡るもので、ヨーロッパでも有数の厳しくも美しいコースで知られてきました。単に距離が長いだけでなく、急峻な登り下りを繰り返し、天候の変化も激しいことから、完走するにはタフな精神力と経験が求められるレースでした。DogsorCaravanでも2017年と2018年にこの大会にご招待いただき、現地で取材しています。

スペイン・バスクの100マイル、エフンミラク・ウルトラトレイル Ehunmilak Ultra-Trail 2017 リザルト #Ehunmilak17

2017.07.10

無念、雷雨のため100マイルと88kmのレースが中止に。エフンミラク・ウルトラトレイル Ehunmilak Ultra-Trail #Ehunmilak18

2018.07.15

15年にわたり多くのランナーを迎え入れてきたエフンミラク Ehunmilak。写真は過去の大会から。

エフンミラク Ehunmilakは、バスク語で「100マイル」を意味し、その名の通り168kmのウルトラトレイル「Ehunmilak Ultra Trail (ehm)」をメインイベントとして開催されてきました。加えて、88kmの「ゴイエリコ・2・ハウンディアク Goierriko 2 Haundiak (g2h)」、42kmの「マリムルメンディ・マラソン Marimurumendi Marathon (mmm)」も同時に開催され、毎年夏になると世界中から多くのトレイルランナーがベアサイン Beasainの街に集まりました。

この大会の最大の特徴は、テクニカルで厳しいコースプロファイルだけでなく、ゴイエリ地方のコミュニティ全体でランナーを支える、他に類を見ないほどの温かいサポートと応援でした。深夜の山中でさえ、カウベルを鳴らしながらランナー一人ひとりの名前を呼んで応援する地元の人々の姿は、この大会を象徴する光景として多くの参加者の心に刻まれています。それは単なるレースのサポートを超え、地域全体がランナーを家族のように迎え入れる文化そのものでした。

大会を主催する二つの山岳クラブ、アラサテ・モンドラゴン Arrasate-Mondragónを拠点とするメンディ・タルデアと、ベアサイン Beasainのゴイエリ・ガライア・クラブは、連名による公式声明の中で次のように述べています。

「私たちの魂の一部であったプロジェクトに終止符を打つという、非常に難しく、そして痛みを伴う決断でした。15年間、私たちは多くの情熱と努力をこのプロジェクトに注いできましたが、大会を支えるボランティアチームの高齢化という現実から目を背けることはできません。彼らの経験と献身は計り知れないものですが、山岳環境での厳しい活動を次世代へと引き継いでいくための後継者の確保が困難になりました。同時に、大会の規模拡大に伴い、安全管理、環境への配慮、行政手続きといった運営上の要求は年々複雑化・増大しています。現在のボランティア主体の体制では、これらすべての要求にこれまでと同じ高い水準で応え続けることは、もはや持続可能ではないと判断いたしました。」

声明では、これまで大会に関わってきたすべてのランナー、2,000人を超えるボランティア、スポンサー、そして開催地の各自治体に対して深い感謝の意が表されています。エフンミラクが直面した課題は、地域に根差した多くの歴史あるイベントが共有する、ボランティアへの依存と世代交代の難しさという現代的な問題を浮き彫りにしています。

エフンミラク Ehunmilakの終了は、一つの時代の終わりを告げる一方で、新たな始まりへの扉を開くものでもあります。この大会が15年間にわたって育んできた、困難に立ち向かうランナーの精神と、地域コミュニティの温かい絆は、バスク地方におけるトレイルランニング文化の確固たる礎となりました。この偉大な遺産と精神は、きっと形を変えて新たな世代のランナーやイベントに受け継がれることでしょう。エフンミラクが残した功績は、多くのランナーの記憶の中で生き続けるとともに、未来への希望の光となることを祈ります。

(Source: Ehunmilak、Carrerasdemontana.com)

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