Suunto Race 2 は最高のディスプレイとGPSが魅力、ソフトウェアの改善に期待【ハンズオンレビュー】

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Suuntoが8月27日に発表したGPSランニングウォッチ「Suunto Race 2」は最高精度のGPSモードで55時間というバッテリー持続時間と、ダウンロードしたマップ上でのナビゲーション機能を備えます。トレイルランナーにとっては待望のこの新製品をSuuntoからレビューのためにお借りし、約1ヶ月にわたって試してみました。

結論からいえば、「Suunto Race 2」は鮮明なAMOLEDディスプレイと、高層ビルの谷間や狭い渓谷でも正確に位置を捕捉してくれる最高クラスのGPS精度を備えており、この点ではトレイルランニングのためのウォッチとして他の追随を許さない製品です。一方で、ソフトウェアの点ではさらに最高を追い求める余地があるとも感じました。GPSスマートウォッチをもっぱらトレイルランニングのようなアウトドアアクティビティのために使う人にとってはベストの選択肢になり得る製品です。

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SUUNTO、次世代GPSウォッチ「RACE 2」と骨伝導ヘッドホン「WING 2」を発表。アンバサダーのレビューも。

2025.08.27

Suuntoから満を持して登場したプレミアムGPSウォッチ

今回の新製品の前モデルとなる「Suunto RACE」が発売されたのは、Suuntoの経営体制の変更とそれに伴う日本国内での展開の見直しが進む間のことでした。このため国内ではやや話題になる機会が少なかったですが、海外ではアウトドアアクティビティ向けのフラッグシップモデルでありながら、競合製品よりも価格を抑えた戦略的な製品として前モデルは話題になりました。

今回の新製品「Suunto Race 2」は発売時の価格では前モデルから約1万円の値上げとなっており、他社の競合製品と並ぶ価格帯での発売となります。GarminやCOROSと並ぶプレミアムGPSウォッチのブランドであるという、Suuntoの覚悟が感じられます。

シンプルで美しいデザインと最高レベルのハードウェアの組み合わせは、他の追随を許さない

まず、このSuunto Race 2を手にとって感じるのは、デザインがシンプルで美しいこと。それだけでなく、北欧のブランドらしいデザインの中に収まっているSuunto Race 2のハードウェアもハイスペックなものです。トレイルランニングの最中であっても、その合間のリラックスした時間であっても、上質な経験をもたらしてくれるのは次の二つのハードウェアの進化です。

視認性の高い2000nitsのAMOLEDディスプレイがもたらす楽しさ

Suunto Race 2の最大の進化は、サファイアクリスタルガラスを採用し、1.5インチへと拡大されたLTPO AMOLEDディスプレイでしょう。しかし、重要なのはサイズではなく最大輝度2000nitsという、その驚異的な明るさです。スマートフォンに匹敵するこの明るさは従来のGPSウォッチの常識を覆すレベルだといえます。

9月末のスペイン、ピレネー山脈の快晴の下でもウォッチの画面表示は鮮明で、細かい文字やナビゲーションの地図の細部まで読み取ることができました。これまでなら手でディスプレイを覆って覗き込んでいたような場面でも、Race 2は紙地図を見るのと同じようにマップの等高線一本一本、データフィールドの数字の一つ一つを鮮明に映し出していました。これならば、レース中の足元に神経を集中させる下りのセクションであっても、ストレスなしに瞬時に心拍数や下りが終わるまでの残り距離といった情報を把握できます。この視認性の高さは快適なのはもちろんのこと、トップレベルのパフォーマンスを追求するアスリートにとってレースでの成績とハードな環境下での安全に直結するでしょう。

最高の精度を誇るデュアルバンドGPSの安心感

トレイルランニングのファンにとって自分の位置を確認し記録できるGPS機能は、アクティビティ中の安全とアクティビティを終えた後に自分のたどったルートを確認する楽しさのための大事な機能です。Suunto RACE 2は現在の最高レベルの技術であるデュアルバンドGPS機能を搭載しているので、正確に自分の位置を確認、記録できます。

筆者がいつもGPSウォッチの性能評価で使うのは、山のそばの住宅地の片側に高い崖がある路地や、住宅地の間に通されたトンネルです。デュアルバンドに対応していないApple Watchでは実際に走ったところからずれて記録されたり、トンネルの区間だけ記録が漏れたりすることがよくあります。しかしSuunto Race 2は正確に筆者が走った実際のラインをトレースし続けました。トレーニングの質や量を記録しているアスリートにとって、距離やペースといったデータを正確に記録できるのは重要なことです。もっぱら楽しむことが目的のファンランナーやハイカーにとっても、Suunto Race 2のナビゲーション機能と組み合わせて正確なGPS測位が使えることでアウトドアでの道迷いを確実に防ぐことができます。

デュアルバンドGPS対応ではないApple Watch Series 9(左)に対し、デュアルバンドGPS対応のSuunto Race 2(右)は山に近いところでより正確な軌跡を記録できた。

GPSが正確というのは基本中の基本ではありますが、パフォーマンス志志向のアスリートからレジャー志向のカジュアルなアウトドア愛好家まで絶大な安心感を与えてくれます。

ソフトウェアには成熟に期待したいいくつかの課題も

これほど卓越したハードウェア体験の一方で、ソフトウェアには、特にシリアスなアスリートが見過ごせない『惜しい点』がいくつか存在するのも確かです。これらは将来のアップデートで改善される可能性を秘めているが、現時点での評価として正直に記しておきましょう。

一つ目は光学式心拍計の精度について。走り始めでまだ心拍が上がっている感覚はないのに、Race 2は心拍数が160に近いと記録していることが時々ありました。海外のレビューでも例えば心拍数を170以上に追い込むような高強度のインターバルをしているのに、Race 2のディスプレイでは140台を示しているという指摘も。全体を通して見れば概ね正確だと思いますが、トレーニングの効果を正確に記録したいならちょっと残念なところです。

二つ目はオフラインマップについて。1.5インチの鮮やかなディスプレイに表示される地図は道路もトレイルも等高線も見やすく、滑らかで感動しました。しかし、実際にナビゲーションのために使ってみると「おや」と思うことがありました。それは地図上に文字情報が何も表示されないこと。他社であればウォッチ上にダウンロードしたマップであっても山頂や山小屋、主な道路にはその名前が文字で表示されるのですが、Suunto Race 2のマップには文字表示がありません。Suuntoとしては、ウォッチの地図だけで全ての情報を得るわけではないのだから見やすさを優先すべきと考えているのかもしれませんが、文字情報があると安心できるのも確かです。もう一つ、細かい話ですがナビゲーション中に地図の縮尺を変更すると、それまで表示されていたトレイルの線が表示されなくなります。地図をズームインした時もズームアウトした時も表示されなくなるようです。現実的なナビゲーションに適した縮尺では表示されるのでそれで十分なのかもしれません。

こうしたソフトウェア面の違和感はスマホのSuuntoアプリを通じたウォッチのファームウェアアップデートで対応される可能性があるでしょうから、改善を期待したいところです。

強さと速さを追求するアスリートにはぴったりハマる

約1ヶ月、自宅の近くや海外取材で試してみてSuunto Race 2についてよく理解することができました。その結果としてSuuntoのこの新製品を最高の選択肢としてお勧めできるのは、レースでのパフォーマンスを追求するために、真摯にトレーニングに取り組んでいるアスリートだと感じました。具体的には次のポイントについて頷ける人であれば、Suunto Race 2は唯一無二の相棒となるでしょう。

  • 最高のディスプレイとGPS精度を何よりも優先する。 スマートウォッチにはまず第一に、正確なデータを瞬時に読み取るための計器であることを求めたい。
  • ナビゲーションは、事前に読み込んだルートをなぞることが主で、地図上の情報から即興でルートを判断することは少ない。
  • トレーニングでの心拍計測には他の手段も併用する。光学式心拍計の限界を理解しており、重要なトレーニングではチェストストラップを使うのが当然だと考えている。
  • ウォッチに音楽再生や決済機能といったスマート機能は求めない。 トレーニング中はトレーニングに集中したい。
  • プレミアムな素材と、洗練された美しいデザインに価値を感じる。 パフォーマンスだけでなく、日々の所有欲を満たすギアを求めている。

Suunto Race 2は優れたデザインとハードウェアのクオリティを追求したアスリートのためのギアだといえます。ただ、スマートウォッチとしての便利さや柔軟で使い勝手のいい地図機能を求めるなら、不足を感じることもあるでしょう。結局のところ、このウォッチを選ぶことは単なるスペック比較ではなく「GPSウォッチに何を求めるのか」を問う選択なのです。

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