【プレビュー】HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB 2025、「CHIANG DAO 160」はアジアメジャーで迎える2025年シーズンのクライマックス、100マイルの頂上決戦(第一回)

2025年のUTMBワールドシリーズを締めくくる最後の大舞台が、タイ北部の古都チェンマイにやってきます。

11月29日から12月7日にかけて開催される「HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB」は、アジア・パシフィック地域における「UTMBワールドシリーズ・メジャー(Asia Major)」として開催される特別なイベントです。今年は過去最大規模となる7,200名以上のランナーが世界中から集結。その半数以上がアジア地域からの参加者となっており、まさにアジアのトレイルランニングの祭典と呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せています。

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今年で6回目を迎える本大会は、フォーマットを大きく刷新しました。開催期間を2週間に拡大し、前半の11月29日・30日は「タイの屋根」と称されるドイ・インタノン国立公園(Doi Inthanon National Park)の高山地帯を舞台に、後半の12月4日から7日はチェンマイ市内のPAOパークを拠点に、熱気あふれる街と自然が融合したコースを巡ります。

アジアメジャーである今大会の完走者には、通常の2倍となる「ランニングストーン」が付与されます。さらに、各カテゴリーの年代別優勝者および男女トップ10には、2026年のHOKA UTMB Mont-Blanc(UTMBワールドシリーズ・ファイナル)への自動出場権が与えられるため、エリート選手たちにとっては来シーズンのシャモニーへの切符をかけた最終決戦の場でもあります。

本プレビュー連載の第1回では、この大会のフラッグシップレースであり、最も過酷で美しい旅路となる100マイルカテゴリー、「CHIANG DAO 160」に焦点を当てます。

(Photo © UTMB)

神聖なる山々を巡る旅「CHIANG DAO 160」

今大会からコースが改良された「CHIANG DAO 160」(約160km、累積標高約8,900m)は、ユネスコ生物圏保存地域(UNESCO Biosphere Reserve)に指定されているドイ・ルアン・チェン・ダオ(Doi Luang Chiang Dao)の周辺エリアを巡る壮大なルートへと進化しました。

タイ北部の手つかずの自然、険しい急登、そして熱帯の湿度が選手たちの行く手を阻みますが、それ以上に、夜明けとともに浮かび上がる雲海や、地元山岳民族の集落を抜ける際の温かな声援が、ランナーの背中を押してくれるはずです。制限時間は48時間。昼夜を徹して走り続けるこの旅は、単なるレースを超えた、自己との対話と発見の物語となるでしょう。

この過酷な100マイルの旅に、世界中からトップアスリートが名乗りを上げました。アジアの頂点を決める戦いに挑む、注目の有力選手たちを紹介します。

ライブ配信で応援しよう、DogsorCaravanも現地からレポート

今回の HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB の模様は、UTMB Liveなどで生中継される予定です。

DogsorCaravanでも12月3日からチェンマイに入り、今年の大会を現地からレポートします。現地からのレポートはDogsorCaravanのInstagramアカウントYouTubeチャンネルのショートや投稿でご覧いただけます。さらに、DogsorCaravanのウェブサイトでは大会中のイベントのレポートや、各レースのリザルト紹介記事をタイムリーにお届けする予定です。

2025年シーズンの締めくくりとして、アジアのトレイルが世界の中でどのような存在感を示しつつあるのか。その現在地を、ぜひその目でお確かめください。

大会スケジュール(レーススタート時刻)

  • 12月5日(金) 09:00(日本時間 11:00): ELEPHANT 100 (96km, 4600mD+)*
  • 12月5日(金) 11:00(日本時間 13:00): CHIANG DAO 160 (168km, 8100mD+)*
  • 12月6日(土) 07:00(日本時間 09:00): HMONG 50 – DAY (56km, 2400mD+)*

CHIANG DAO 160の舞台設定

CHIANG DAO 160は、168km・累積8,100mD+という今大会最長のコースにアジアと世界の有力選手が集結し、日本勢の上位進出も十分に狙えるフィールドとなっています。

UTMBワールドシリーズ・メジャーの100マイル種目として、ここでの上位入賞はUTMB本戦へのダイレクトエントリーにも直結するだけに、優勝争いからトップ10ラインまで一切妥協のないレースになりそうです。

コースはチェンマイの北に位置するドーイ・ルアン・チェンダオの麓、ワット・タム・チェンダオをスタートし、チェンダオ山塊からステープ=プイ国立公園の稜線を経てチェンマイPAOパークへとフィニッシュする168km/累積8,100mD+のポイント・トゥ・ポイントのコースです。

標高800〜1,600m帯のアップダウンが48時間の制限時間いっぱいまで続くレイアウトで、耐久力とレースマネジメントが問われます。

スタートは12月5日金曜日の11:00(日本時間 13:00)。最初のフィニッシャーは20時間半程度でフィニッシュすると見込まれています。

CHIANG DAO 160の女子では徳本順子の活躍に注目

アジア・パシフィックメジャーの100マイルカテゴリーとして、完走者にはランニングストーン8つが付与され、女子トップ10にはUTMBワールドシリーズ・ファイナル(UTMB本戦)へのダイレクトエントリー権も用意されています。

本命・リン・チェンを中心とする三強

チェン・リン Lin CHEN(CHN)は中国のウルトラディスタンスのトレイルランナーとしてはトップクラスのアスリートです。昨年のチェンマイではTRANS-INT 160(172km・8,980mD+)でアントニーナ・ユシナに続く女子2位・総合13位でした。今シーズンもCanyons by UTMB 100M(161km・5,550mD+)で女子優勝・総合6位、Kodiak by UTMB 100M(162km)で女子優勝・総合9位と、北米のタフな100マイルを相次いて制しました。チェンマイのコースも熟知しており、女子のレースで主導権を握る最有力候補となるでしょう。

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ディフェンディングチャンピオンとなるアントニーナ・ユシナ Antonina IUSHINA(AIN)は昨年はチェンに30分以上の差をつけての圧勝でした。2025年11月のUltra-Trail Cape Town 100kmでも2位に入るなど、直近のコンディションも良好です。ケープタウンからのリカバリーが十分であれば、再びチェンの挑戦を退けて勝利を手にするかもしれません。

キャレス・アーノルド Careth ARNOLD(USA)は昨年のチェンマイで100kmカテゴリー(Elephant 100)に出場し2位となっている選手です。今年のUTMB Mont-Blancの「TDS」で(148km)で女子優勝を果たしたことで注目を集めました。再びの挑戦となるチェンマイでは100マイルを選びました。スピードタイプの選手が失速する展開になれば、一気に上位に浮上してくる可能性があります。

日本勢に期待

徳本順子 Junko TOKUMOTO(JPN)は、ここ数年で一気に100マイル超のトレイルレースでその才能を開花させたランナーです。今年はTokyo Grand Trail 160kで三連覇のほか、Kaga Spa Trail by UTMBの100kで女子7位・総合34位。9月にはイタリアの200マイルのレース、TORX Tor des Geants 330kを7位で完走。11月にはFTR100で女子優勝と、勢いに乗っています。チェンマイを走るのは初めてですが、多様な環境で磨いた粘り強さが今回も強みとなるでしょう。

デン・ロンファ Ronghua DENG(CHN)は中国のトップランナーで、50km〜100kmクラスの山岳レースで多くの表彰台を経験してきました。2025年シーズンだけ見ても、JiangZhe ZhiDian QianBa 100km(約97km・7,189mD+)で女子優勝、Grand Wuyi Trail 100kmで女子2位、TsaiGu Trail 105kmでも女子9位と、中国国内のタフな山岳ウルトラで好成績を連発しています。

同じく中国のフー・ファロン Hua Rong FU(CHN)もロングディスタンスのトレイルレースに精力的にとりくむ選手で、初挑戦のチェンマイで上位を目指します。

木下久美 Kumi KINOSHITA(JPN)はタイトな制限時間で知られる比叡山50マイルを今年、女子トップで完走したほか、10月のLAKE BIWA 100では162km・8,500mD+を34時間台でフィニッシュし女子4位でした。CHIANG DAO 160でも後半の追い上げに期待がかかります。

川名亜実 Tsugumi KAWANA(JPN)は今年の彩の国100kmで女子優勝。今回のチェンマイが海外での初めての100マイルとなりますが、トップ10に食い込むのポテンシャルは秘めていると言えます。

その他にも、国際色豊かなランナーがスタートラインに立ちます。

  • シャン・シュエル Xueer SHANG(CHN): 2024年のTrans-INT 160で5位。
  • カルメン・マリア・モンターニョ・レサマ Carmen Maria MONTAÑO LEZAMA(VEN): 南米のChicamocha Canyon Race 100マイル(約166km・6,710mD+)で2025年に女子優勝。
  • ダリカ・スワンモンコン Darika SUWANMONGKOL(THA): タイを代表する女子トレイルランナーの一人で、2025年CM6(136km・8,665mD+)女子優勝。
  • パク・ソヨン So Young PARK(KOR): 2024年Chiangmai Thailand by UTMB・ELEPHANT 100で女子19位、TransLantau 50kmで女子5位。

CHIANG DAO 160 男子では日本勢が上位に並ぶ展開も

CHIANG DAO 160 の男子カテゴリーは、他の距離に比べて日本の有力選手のエントリーが集中しており、日本勢が上位に並ぶ展開もありそうです。来年のUTMBワールドシリーズにダイレクトエントリー権を得て参加する日本の選手が増えることになるかもしれません。

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絶対的エースはやはり、チョウ・ジアジュ

チョウ・ジアジュ Jiaju ZHAO(CHN)は今の中国を代表するウルトラトレイルランナーの一人です。2023年にはMt. FUJI 100で優勝したことで日本のトレイルランニングファンの記憶にもその名が残っているでしょう。チェンマイではいずれも100マイルに出場し、2021年、2022年に優勝、2023年はDNFだったものの昨年は3位と、この大会を象徴する活躍をしてきました。今年もUTMBワールドシリーズでは3月のXiamen 100Kで優勝、4月のMt. Yun 100マイルで優勝、8月のKAT100 50kで6位、モンブランのUTMBでは10位に入っています。自身にとってはホームといえるチェンマイで、きっとまた鮮やかな走りを見せることでしょう。

中谷亮太と世界の強豪が追う

チョウ・ジアジュを追う選手としては、まずゲディミナス・グリニウス Gediminas GRINIUS(LTU)が挙げられます。グリニウスもこのレースではお馴染みの顔で、いずれも100マイルで2022年に3位、2023年に2位、昨年は5位でした。2015年のUTMF優勝や2016年のUTMB準優勝で知られるグリニウスはチェンマイで並んで走る若きアジアの選手たちにとってはレジェンドと呼ぶべき存在です。2025年シーズンはValhöll 85Kで2位、Amazean 100M(118km・5,210mD+)で優勝、Kaga Spa 100kで3位と、アジアとヨーロッパのロングレースを転戦しながら再び上り調子のシーズンを過ごしており、今回もベテランらしい粘り強さでタイトル獲得を狙います。

日本から参戦する中谷亮太 Ryota NAKATANI(JPN)にとっては、今回のチェンマイは海外でその名を響かせるチャンスとなるかもしれません。100マイルを中心とするウルトラトレイルに取り組んでおり、今シーズンはDeep Japan Ultra 100で4位、Lake Biwa 100で優勝。Lake Biwaでは大会新記録で三度目の優勝を手にしたことも話題となりました。9月にはTor des Geantsを85時間5分で完走し、100マイルを超える距離まで自身の可能性を広げることになりました。今回もコース後半で順位を押し上げていく展開が期待されます。

ホー・ドン Dong HE(CHN)は、中国国内のミドル〜ロングの山岳トレイルで実績を重ねてきた新鋭で、昨年はNinghai by UTMBの59kmで6位となったのち、12月のこの大会の100マイルで4位となった経験を持っています。今シーズンは主に中国国内のレースで活躍していますが、再び走るチェンマイでは昨年以上の活躍となる可能性があるでしょう。

スコッティ・ホーカー Scotty HAWKER(NZL)は、2019年UTMBで3位となっているエリート選手です。2022年にはこの大会の100Kカテゴリーに出場して5位になった経験も持ちます。最近は長い距離のレースを完走していませんが、距離を絞ってスピード寄りのレースにも取り組んでおり、2024年のUltra-Trail Australia UTA50では男子5位、ニュージーランドのSkedaddle 42kmでは優勝しています。コンディション作りが順調であれば、上位進出の可能性は十分にあります。

日本勢の厚い布陣

今回のCHIANG DAO 160のエントリーリストには日本の有力選手の名前も並びます。

2019年UTMBで8位となって表彰台に立った小原将寿 Masatoshi OBARA(JPN)が再びチェンマイでスタートラインに立ちます。2023年のTrans-INT 160ではDNFとなっており、今回は久しぶりの海外レースでもあります。今シーズンは春にMt. FUJI 100で100マイルを走って8位、秋に信越五岳100マイルで2023年に続いて優勝しています。今回は華やかな海外レースでの活躍に期待するファンの声も高くなるでしょう。

さらに次の選手にも注目です。

  • 前田皓大 Akihiro MAEDA(JPN): 日本国内のロングトレイルで着実に経験を重ねてきたランナーで、今年はMt. FUJI 100 の100マイルでトップ10入りしたのに続いて、6月のDeep Japan Ultra 100 100マイルで優勝しています。2023年のTrans-INTで12位となったのに続く、チェンマイへの参戦となります。
  • 池畑拓哉 Takuya IKEHATA(JPN): 今年のMt. FUJI 100 の100マイルで5位に入る活躍ののち、6月の奥武蔵ロングトレイル105kで優勝。チェンマイではいずれも100マイルで2022年に14位、2023年に15位、2024年に12位で、今回は四度目になります。
  • 奥宮俊祐 Shunsuke OKUNOMIYA(JPN): 日本のトレイルランニング界を選手、そして大会主催者として牽引するレジェンドです。今シーズンは比叡山50Kで3位、彩の国100Kで3位、Kaga Spa by UTMB 50Kで2位など、アスリートとしても活躍。チェンマイには2022年、2023年に続いての参戦です。
  • 杉本愉 Satoshi SUGIMOTO(JPN): チェンマイではいずれも100マイルで2022年に10位、2024年に16位。今年はKaga Spa 100Kで4位、Lake Biwa 100マイルで5位。
  • 吉村健佑 Kensuke YOSHIMURA(JPN): 2022年のチェンマイの100Kカテゴリーで6位。今年はKaga Spa 100Kで8位、ハセツネCUPで9位に。
  • 佐口達也 Tatsuya SAGUCHI(JPN): Deep Japan Ultra 100マイルで2023年と2024年に2位、2025年に3位。Mt. FUJI 100 100マイルでは2024年に9位、今年は16位に。昨年はTrans-INT 160で23位となっています。
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さらに優勝争いをかき回す有力選手たち

アレクセイ・ベレスネフ Aleksei BERESNEV(AIN)やサンゲ・シェルパ Sangé SHERPA(NEP)、リウ・ザオイン Zhaoying LIU(CHN)、マン・クマール・ロカ・マガール Man Kumar Roka MAGAR(NEP)、アドマイア・ムゾパンバ Admire MUZOPAMBWA(ZIM)、バイ・シンジー Xingzhi BAI(CHN)といった選手たちも、それぞれ欧州やアジア、アフリカの山岳レースで経験を積んできたロングトレイルのスペシャリストであり、条件がかみ合えば一気に表彰台争いに加わるポテンシャルを秘めています。

さらに地元タイのジャンタラブーン・キアンチャイパイパーナ Jantaraboon KIANGCHAIPAIPHANA(THA)、マレーシアのダヴェド・シンパット Daved SIMPAT(MAS)、デンマークのクリスティアン・ヨルゲンセン Kristian JOERGENSEN(DEN)といった選手も、東南アジアの各地の大会での活躍でローカルのコミュニティーで知られている存在です。いわば地元勢として世界から集まる選手を迎えます。

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