【プレビュー】HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB 2025、「ELEPHANT 100」はスピードとスタミナが交錯する100kmの激戦区(第二回)

タイ・チェンマイで開催されるアジア最高峰のトレイルランニングイベント「 HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB」。連載第2回となる今回は、100マイルレースと並ぶ大会の看板カテゴリー、「ELEPHANT 100」の展望をお届けします。

アジア・パシフィック地域のメジャー大会(Asia Major)として開催される本大会は、世界中から集まるランナーたちの熱気で包まれています。完走者に与えられる「ランニングストーン」は通常の2倍。そして、男女トップ10に入れば、トレイルランナーの聖地シャモニーで開催されるUTMBワールドシリーズ・ファイナル(OCC, CCC, UTMB)への出場権が約束されます。

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特にこの「ELEPHANT 100」は、100kmという距離設定ゆえに、100マイルを得意とするスタミナ型ランナーと、50kmクラスを主戦場とするスピード型ランナーが真っ向からぶつかり合う、非常にスリリングな展開が予想されるカテゴリーです。

(Photo © UTMB)

神秘の森を駆け抜ける「ELEPHANT 100」

「ELEPHANT 100」は、その名の通りタイの象徴である象に敬意を表したカテゴリーです。距離約93km、累積標高約4,400mのコースは、今年から一部が刷新され、ユネスコ生物圏保存地域(UNESCO Biosphere Reserve)であるドイ・ルアン・チェン・ダオ(Doi Luang Chiang Dao)の裾野エリアを巡るルートが含まれるようになりました。

チェンマイ特有の蒸し暑さ、ジャングルのテクニカルなトレイル、そして容赦ない急登。これらを攻略するには、純粋な走力だけでなく、暑熱順化や緻密な補給戦略が不可欠です。夜明け前の静寂から始まり、日中の酷暑を経て、再び夕闇の中へ。ランナーたちは自身の限界を試しつつ、タイ北部の豊かな自然と一体になる感覚を味わうことでしょう。

今年のこのカテゴリーには、ITRAパフォーマンスインデックス900点台の選手を含む、世界トップレベルのエリートが集結しました。表彰台の頂点を巡る争いは、最後の最後まで目が離せないものになりそうです。

ライブ配信で応援しよう、DogsorCaravanも現地からレポート

今回の HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB の模様は、UTMB Liveなどで生中継される予定です。

DogsorCaravanでも12月3日からチェンマイに入り、今年の大会を現地からレポートします。現地からのレポートはDogsorCaravanのInstagramアカウントYouTubeチャンネルのショートや投稿でご覧いただけます。さらに、DogsorCaravanのウェブサイトでは大会中のイベントのレポートや、各レースのリザルト紹介記事をタイムリーにお届けする予定です。

2025年シーズンの締めくくりとして、アジアのトレイルが世界の中でどのような存在感を示しつつあるのか。その現在地を、ぜひその目でお確かめください。

大会スケジュール(レーススタート時刻)

  • 12月5日(金) 09:00(日本時間 11:00): ELEPHANT 100 (96km, 4600mD+)*
  • 12月5日(金) 11:00(日本時間 13:00): CHIANG DAO 160 (168km, 8100mD+)*
  • 12月6日(土) 07:00(日本時間 09:00): HMONG 50 – DAY (56km, 2400mD+)*

ELEPHANT 100の舞台設定

「ELEPHANT 100」は距離96km・累積標高4,600mD+で、メーテーン地区からドーイ・ステープ=プイ、メーサー・エレファントキャンプなどを経てチェンマイPAOパークへと走り抜けるポイント・トゥ・ポイントのコースです。スタートは12月5日金曜日の9:00(日本時間 11:00)で制限時間は28時間。最初のフィニッシャーは11時間以内にPAOパークに到着する見込みです。

ELEPHANT 100 女子はアジア勢のレベルの高さを印象付ける展開に

ELEPHANT 100の女子はハイレベルな顔ぶれが揃い、特にアジアを代表するトップランナーがタイトルを争う熾烈なレースになりそうです。上位10人にはUTMBワールドシリーズ・ファイナル(100K=CCC)へのダイレクトエントリーが与えられるだけに、優勝はもちろんトップ10争いまで一歩も譲れない展開が予想されます。

二強・スンマヤとハウ・ハーティ

スンマヤ・ブダ Sunmaya BUDHA(NEP)は今年9月にスペインで開催された世界選手権(WMTRC, Canfranc Pirineos)のロングトレイル種目で銀メダルを獲得したことが記憶に新しく、今最も勢いのあるランナーの一人です。今月はUltra-Trail Cape Town 100kmでは女子優勝、総合8位となり、今年のワールドトレイルメジャーズのシーズン総合女王にも輝きました。2025年シーズンはこのほかにも、Hong Kong 100の100kmで女子優勝、Chengdu Trail 60kmとMount Yun by UTMB 30Kでいずれも女子1位と、50〜100kmの国際レースで立て続けに勝利を重ねています。チェンマイでは2021年のこの大会の100kmで優勝、昨年はHMONG 50で女子4位と、この大会の雰囲気と気候もよく知っています。

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ハウ・ハ・ティ Hau HA THI(VIE)はベトナム北部サパを拠点に近年頭角を現したランナーです。小柄な体格からは想像できないパワフルな登りと、テクニカルな下りでのスピードを武器に、数々のタイトルを獲得してきました。スンマヤ・ブダとは過去にも名勝負を繰り広げており、今回のチェンマイでも優勝争いの中心となることは間違いありません。昨年のこの大会のHMONG 50で優勝したのち、Hong Kong 100で3位、Penang Skyrace 50kmで優勝、ウェスタンステイツで6位。先月にはUltra-Trail Ninghai by UTMB 2025・CNH60で女子2位でした。ブダとの直接対決は、ELEPHANT 100女子の優勝争いの軸となるでしょう。

タイトルを狙う3人の有力候補

メアリー・デンホルム Mary DENHOLM(USA)は、2度の米国オリンピックマラソン代表選考会出場歴を持つロード出身ランナーで、2024年のLeadville Trail 100では女子優勝・大会史上2番目に速いタイムでフィニッシュし、一気にトレイルウルトラシーンの注目を集めました。初のアジアでのトレイルレースとなる今回も後半のロングクライムで前を追い上げる展開が期待されます。

エカテリーナ・ミチャエワ Ekaterina MITYAEVA(AIN)は近年ではUTMBやTransvulcania、モンブラン90kmといったビッグレースで上位争いを繰り広げてきた世界的なランナーとして知られます。昨年のELEPHANT 100の女子優勝者でもあります。2025年シーズンは欧州のテクニカルなレースで苦戦が続きましたが、このアジアの山岳レースで巻き返しを狙います。

吉住友里 Yuri YOSHIZUMI(JPN)は日本のトレイルランニング/スカイランニングを代表するランナーで、日本のトップ選手として長く君臨しています。近年はウルトラディスタンスにも挑戦の幅を広げており、ハセツネCUPでは昨年に続いて連覇しました。近年はアジア各地のUTMBワールドシリーズにも積極的に参戦し、50〜80kmのレースで優勝・表彰台を重ねています。今回はブダやハウ・ハーティにどこまで食い込めるかが注目されます。

中国・香港勢の伏兵

次の選手にも注目です。

  • リー・イン Ying LI(CHN): 中国国内のトレイルレースで実績を積んできたランナーで、テクニカルな山岳マラソンの完走経験を背景に、初のUTMBメジャー100Kでの飛躍を狙います。
  • ワン・リーピン Liping WANG(CHN): 50K〜100Kのレースを中心に走ってきたオールラウンダー。今年のTransJeju by UTMB (70km) で3位でした。
  • チョウ・ルイファン Ruifang ZHOU(CHN): 2025年シーズンはMount Yun by UTMB、Ultra-Trail Great Wall、Kaga Spa by UTMBなど、アジアのUTMBワールドシリーズで50〜100Kの完走とトップ10入りを重ねています。
  • ウォン・キーチュン Ki Chun WONG(HKG): 香港を拠点にAnta Hong Kong 100、TransLantau by UTMB、Victoria 162などを完走し、今年はTransLantau 80kmで女子優勝と好調です。
  • チン・ルー Lu QIN(CHN): 2024年 TNF 100 Hong Kong で女子優勝、2025年 TNF 100 Beijing (100km) で5位でした。。今季もTsaiGu Trail 105KやTNF北京100Kで女子上位に食い込んでいます。5

日本勢のチャレンジ

日本からも有力選手がエントリーしています。

  • 板橋黎華 Reika ITABASHI(JPN): 2025年のMt. FUJI 100の100マイルでは10位でフィニッシュ、ハセツネCUPでは2位に入りました。昨年のELEPHANT 100も完走しておりチェンマイの暑さと長い登りに再び挑みます。
  • 寺田未奈 Mina TERADA(JPN): 2025年のMt.FUJI 100 (KAI 70k) で女子7位に入賞。韓国で開催されたMungyeong Legend Trail (34km) でも2位に入りました。
  • 相原千尋 Chihiro AIBARA(JPN): ASO VOLCANO TRAIL 112kmをはじめとする国内100Kレースで表彰台争いを経験しており、後半に順位を押し上げる走りが期待されます。
  • 岩井絵美 Emi IWAI(JPN): 2025年のKaga Spa Trail 100 by UTMB で女子3位、Mt.FUJI 100 (Asumi 40k) でも3位に入るなど、距離を問わず結果を残しています。今回は初のチェンマイでのレースとなります。
  • 井筒智子 Tomoko IZUTSU(JPN): 今シーズンはKagaSpa Trail Endurance 100 by UTMBやLake Biwa 100といったタフなレースで完走を重ねています。
  • 林楓 Kaede HAYASHI(JPN): スカイランニングのレースで活躍し、今年はMt.FUJI 100 (KAI 70k) で女子9位という結果を残しました。アジア・メジャーの大舞台で一段階上のパフォーマンスを引き出せるかがポイントとなります。
  • 原智美 Tomomi HARA(JPN): 2025年の奥武蔵ウルトラマラソン (78km) では6時間10分台の好タイムで女子優勝。走れるセクションでの総力に強みを持ちます。
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このようにELEPHANT 100女子は、アジア発の世界女王候補であるスンマヤ・ブダとハウ・ハ・ティに、アメリカやヨーロッパの強豪、日本勢、そして中国・香港の実力者が挑む多国籍フィールドとなり、序盤からフィニッシュまで目が離せないレースとなりそうです。

ELEPHANT 100男子はアジア勢と欧米勢が激突

男子の「ELEPHANT 100」には、ITRAパフォーマンスインデックスで900点前後のスコアを持つ世界トップレベルのアスリートが名を連ねています。中国、ヨーロッパ、そしてロシアからの強豪に加え、日本からも実力者が参戦し、表彰台を巡る激しいレースが予想されます。

最有力4選手

ドー・ジ Ji DUO (CHN)は中国を代表するウルトラディスタンスのトレイルランナーです。昨年のこの大会の100マイル(TRANS-INT 160)では、20時間47分という好タイムで準優勝を果たしました。2024年6月のWestern States 100では15時間35分で総合12位に入るなど、アメリカの高速レースでもその実力を証明しています。今年の100kmでも優勝候補となる存在です。

ミゲル・アルセニオ Miguel ARSENIO(POR)は100km前後の山岳レースで世界トップレベルの安定感を見せています。2025年シーズンはスイスのSWISS CANYON TRAIL 111kmで優勝し、その直後のWMTRC世界選手権ロングトレイルでも上位に食い込みました。アジアのレースの経験も重ねており、ELEPHANT 100でも終盤まで主導権争いに絡んでくるでしょう。

ドミトリー・ミティヤエフ Dmitry MITYAEV(AIN)は昨年のマラソン・デュ・モンブラン90kmとサロモン・ウルトラ・ピリネウ100kmでの優勝で存在感を示しました。チェンマイでも昨年のELEPHANT 100(93km・4,410mD+の旧コース)で5位と表彰台に迫る走りを見せています。今月はウルトラトレイル・ケープタウン100kmで2位に入ってからのタイへの転戦となり、調整が順調に進んでいるかどうか。

ロー・カンファ Canhua LUO(CHN)は昨年の100マイル(TRANS-INT 160)のチャンピオンで、2位のドージに20分近い差をつけて優勝したことは、このチェンマイのコーストの相性の良さを窺わせます。東アジア特有の蒸し暑さと長い急登に慣れている点で、チェンマイの新コースとも相性が良く、先行するトップ選手を崩れるまでマークし続ける「待ち」のレースで終盤に順位を上げてくる展開が想定されます。

日本勢の注目4人

日本のトレイルランニングシーンを牽引する話題の人、甲斐大貴 Hiroki KAI(JPN)は今年はアメリカ西海岸のThe Canyons 100KやWestern States 100マイルに挑戦し、長時間のハイペースなレースに対する対応力を高めてきました。ウェスタンステイツでは10位に入り存在感を示しました。多くのレースに挑んできたシーズンの最後でどこまで粘り強い走りを見せるか注目です。

板垣渚 Nagisa ITAGAKI(JPN)は100km前後の国内レースで表彰台を重ねてきたランナーで、UTMBワールドシリーズのステージでも経験を積んでいます。積極的な走りを中盤以降も展開できれば、上位選手のレース展開に絡む展開となるでしょう。

水谷冠太 Kanta MIZUTANI(JPN)は国内の100K〜100マイルレースで着実に成績を伸ばしてきた実力派です。2024年10月のTransJeju by UTMB (100km) で総合4位に入り、アジアのUTMBシリーズで確かな結果を残しました。さらに11月のFTR100では2位。今年のFTR100では見事勝利を掴んでいます。この勢いでチェンマイでも活躍が期待されます。

河内陽介 Yosuke KAWAUCHI(JPN)は日本の山岳100マイル界を代表する一人で、近年はSkyView TrailやLake Biwa 100など国内のタフな山岳100マイルで安定して上位フィニッシュしている経験豊富なランナーです。全体のレース展開が荒れることになれば、粘り強い走りで後半に順位を上げることになるでしょう。

さらに続く有力選手

次の選手にも注目です。

  • マヌエル・アングイタ Manuel ANGUITA(ESP): 2025年のTransvulcania Ultramarathon 73kmで上位争いを演じ、スカイランニング寄りのテクニカルな長距離で実績を持つ。
  • ルーク・グレンフェルショー Luke GRENFELL-SHAW(GBR): 2025年 Ultra-Trail Snowdonia 50K で2位。
  • ホセ・アンヘル・フェルナンデス・ヒメネス Jose Angel FERNANDEZ JIMENEZ(ESP): 2025年のPenyagolosa Trails MiMで優勝。
  • ヨウ・ペイチャン Peiquan YOU(CHN): 中国国内の100Kレースで優勝・表彰台を重ねてきた実力者で、UTMB CCCなど国際レースにも積極的に参戦している。
  • バテ・メンカイ Mengkai BATE(CHN): 東南アジアや中国西部のレースで経験豊富なランナー。
  • チー・ミン Min QI(CHN): CCCで優勝した経験を持ち、最近もJade Dragon Snow Mountainや北京近郊の100Kレースで上位を重ねる中国のエリート選手。
  • ティボー・ルロワ Thibault LEROY(FRA): 2024年 Doi Inthanon Thailand by UTMB (Pagoda 50) で6位。
  • ミルトン・アマット Milton AMAT(MYS); マレーシアのThe Most Beautiful Thing 110kmなど東南アジアのレースで活躍するベテランランナー。
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