【レース前インタビュー】小笠原光研、苦しんだシーズンを越えてチェンマイで再起を誓う。「OCCへの切符をこの手で掴みたい」 / HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB 2025

タイ北部の古都、チェンマイ。12月のこの時期でも日中の気温は高く、強い日差しが照りつけるこの地で、アジア・パシフィック地域で唯一の「UTMBワールドシリーズ・メジャー」である「HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB」が開催されています。

世界中から強豪選手が集まるこの大舞台で、一人の日本人アスリートが再起をかけたレースに挑みます。昨年の伊豆トレイルジャーニー(ITJ)で鮮烈な優勝を飾り、日本のトレイルランニングシーンを牽引する存在である 小笠原 光研 Koken Ogasawara (JPN) です。

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レースを目前に控えたチェンマイで、彼に今の心境と今シーズンの振り返り、そしてこのレースにかける想いを聞きました。

栄光からの試練、そして気づき

「随分日焼けしましたね」と声をかけると、小笠原は苦笑いしながら「昨日は大丈夫かと思ったんですが、今日の日中にかけてだいぶ暑さを感じるようになりました」と、日本の冬とは別世界のチェンマイの酷暑について語り始めました。

彼にとって、この1年は決して平坦な道のりではありませんでした。
昨年の12月、伊豆トレイルジャーニーでの見事な優勝。最高の形でシーズンを締めくくり、大きな飛躍が期待された2025年シーズンでしたが、春先の好調さとは裏腹に、その後は苦しい時期が続きました。
「そこから下降気味で途中棄権(DNF)したり、世界選手権でも思うようなパフォーマンスを発揮できず、悔しい結果が続いていました」

自身の言葉通り、期待された世界選手権での失速やレースでの途中棄権など、思うように走れない日々。その原因について小笠原は冷静に自己分析しています。「少しオーバートレーニング気味だったり、気合が入りすぎていた点もあった」と振り返り、身体のケア不足を含め、競技への取り組み方を見つめ直す必要があると語りました。

しかし、長いトンネルにも出口の光は見え始めています。この冬にかけて調子は上向いており、足の状態に一抹の不安を残しつつも、「それを差し引いても楽しみではあります」と、その表情には以前のような明るさが戻ってきています。

「最初の10km」が勝負の分かれ目

今回、小笠原が挑むのは初めてとなるチェンマイのトレイルです。
未知のコースに対する戦略を尋ねると、彼は明確なプランを持っていました。
「トレイルの状況は分からないですが、最初の10kmで1000mアップがあるので、そこでいい位置につけないと勝負が決まってしまう」

スタート直後に待ち受ける急峻な登り。ここでのポジショニングがレース全体の流れを左右すると分析しています。世界の強豪やスカイランニングのトップ選手、中国勢がひしめく中で、いかに先頭集団に食らいつき、勝負権のある位置をキープできるか。

「ある程度いい順位につけながら、後半勝負で徐々に上げていきたい」

前半の登りを耐え、後半に勝負をかける。冷静かつアグレッシブなレース展開を想定しています。

目指すは「OCC」へのダイレクトチケット

今大会は「UTMBワールドシリーズ・メジャー」であり、各カテゴリーのトップ10に入った選手には、来年シャモニーで開催されるUTMBワールドシリーズ・ファイナル(UTMB、CCC、OCC)への出場権(ダイレクトエントリー)が付与されます。

小笠原が見据えているのは、50kmカテゴリーのファイナルである「OCC」です。

「来年のOCCに出たいので、ここでしっかりダイレクトエントリーを取りたいです」

海外レースでの結果に飢えている今の彼にとって、このチェンマイは単なる一戦ではありません。来シーズン、世界最高峰の舞台で戦うための切符を掴み取るための重要なステップであり、自身が語るように「もう一歩の飛躍を目指すチャンス」なのです。

「ぜひ『チェンマイ・ドリーム』を掴んでください」という言葉に、彼は力強く頷きました。

苦しみ抜いたシーズンの最後に、チェンマイの山々でどのような走りを見せてくれるのか。復活を期する日本の若きエース、小笠原 光研 Koken Ogasawara (JPN) の挑戦に注目です。

DogsorCaravanでは、現地からレースの模様をお届けします。

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