【リザルト】Hmong 50:中国のモン・グァンフーとスイスのモード・マティスが優勝。上田瑠偉は2位、ヘイデン・ホークスは3位に・HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB

タイ・チェンマイで開催されたUTMBワールドシリーズ・メジャー「HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB」。UTMBワールドシリーズファイナルへの出場権がかかる三つのメインレースの残る一つである、50Kカテゴリーの「Hmong 50」(約56km、累積獲得標高2400m)が12月6日(土)に行われました。

このレースは、アジア太平洋地域のメジャー大会として、男女上位10名にOCC(UTMB Mont-Blancの50Kカテゴリー)の出場権が与えられる重要な一戦です。こうした背景も手伝ってか、今回のチェンマイでは最もエリート選手の層が厚いレースとなりました。

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スタート地点となったチェンマイPAOパークには、早朝から熱気が満ちていました。午前7時のスタート時には比較的穏やかだった気候も、日が高くなるにつれて気温が急上昇し、30度近くに達する東南アジア特有の蒸し暑さが選手たちを苦しめました。そして世界各地から集結したスピードランナーたちが繰り広げる高速レースは、最後まで目が離せないドラマチックな展開となりました。

Hmong 50のスタート

Hmong 50のスタート

(All photo by HOKA Chiang Mai Thailand by UTMB)

男子:モン・グァンフーが上田瑠偉との激闘を制し、昨年の雪辱を晴らす

男子のレースは、スタート直後の平坦なロード区間を経て、序盤の急登セクションから動き出します。日本の誇るトップランナー上田瑠偉 Ruy Ueda (JPN) が積極的にレースを引っ張り、最初の大きな登り(約9km地点までに1000m近く上昇する防火帯のトレイル)で主導権を握ります。上田のアグレッシブな走りに、上位集団はすぐに縦長に伸びていきました。しかし、その背後には昨年のこのレースで2位に甘んじた中国のモン・グァンフー Guangfu Meng (CHN) がぴたりとつけ、虎視眈々とチャンスをうかがっていました。

モン・グァンフー Guangfu Meng

モン・グァンフー Guangfu Meng

レース中盤、上田とモンの差はわずか数十秒から1分程度という、息詰まるような緊迫した状態が続きます。二人は付かず離れずの距離を保ちながら、モン族の村や熱帯雨林のトレイルを駆け抜けていきます。

転機となったのは36km地点付近、W4エイドステーション(Wat Doi Pui)前後の急峻な階段セクションでした。ここでモンが上田を捉え、ついに逆転します。エイドステーションを出た直後、モンは一気にペースアップを図り、勝負を仕掛けました。

テクニカルな下りを得意とするメンは、終盤のダウンヒルセクションでその真価を遺憾なく発揮しました。雨季の影響で深くえぐれ、木の根が露出した走りにくいトレイルですが、モンは軽快に、アグレッシブに駆け下ります。モンの上田へのリードは徐々に広がり、そのままチェンマイPAOパークのフィニッシュラインへと飛び込みました。4時間31分58秒というタイムで優勝を果たし、昨年の雪辱を見事に晴らしました。

モン・ガンフーはレースを振り返り、「前半は上田選手が非常にアグレッシブで、彼についていくのに必死でした。昨年はそこで離されてしまいましたが、今年は視界に捉え続けることができました。」と話しました。自身の勝利については「後半、自分の体力がまだ残っていると感じたので、W4エイド後の下りで勝負をかけました。日中の暑さは厳しかったですが、昨年の2位から順位を上げ、優勝できて本当に嬉しいです」と笑顔を見せました。

一方の上田瑠偉はモンの猛追とスパートに屈したものの、最後まで粘り強く走り切り、4分足らずの差で準優勝となりました。アジアにおけるトップ選手としての実力を改めて証明するとともに、UTMBワールドシリーズファイナルへのチケットを確実にしました。

上田瑠偉 Ruy Ueda

上田瑠偉 Ruy Ueda

3位争いは米国のランナーの間で争われました。チームメイトであり親友、そしてトレーニングパートナーでもあるというアメリカのヘイデン・ホークス Hayden Hawksコールマン・クラガン Coleman Cragun がその二人です。二人はレースの大半を共に走り、互いにプッシュし合います。昨年のCCCの覇者であり、10月にはUTMBワールドシリーズのアメリカ・メジャーの大会であるKodiakで100マイルを走り優勝したところからのリカバリー期間中だったホークスですが、終盤のロード区間で底力を見せ、最後はクラガンを振り切って3位に入賞。クラガンも4位と健闘し、アメリカ勢の存在感を示しました。

ヘイデン・ホークス Hayden Hawks とコールマン・クラガン Coleman Cragun は一緒にトレーニングをすることもあるという。

ヘイデン・ホークス Hayden Hawks とコールマン・クラガン Coleman Cragun は一緒にトレーニングをすることもあるという。

日本勢では小笠原光研 Koken OGASAWARA (JPN) が4時間47分で6位に入っています。

女子:モード・マティスが圧巻の独走劇、ロビン・レッシュは薄氷の2位

女子レースは、スイスの女王、モード・マティス Maude Mathys (SUI) が序盤から格の違いを見せつけました。
スタート直後の最初の登りから後続を大きく引き離し、9km地点の計測ポイントではすでに2位以下に4分以上のリードを築いていました。マティスは「暑い天気が好き」と語る通り、上昇する気温をものともせず、登りでも下りでも攻めの姿勢を崩しません。最後まで安定したハイペースで独走し、5時間03分33秒でフィニッシュ。先週行われたIntanon 50(39km)での優勝に続き、2週連続でチェンマイのタイトルを手にしました。

モード・マティス Maude Mathys

モード・マティス Maude Mathys

モード・マティスはフィニッシュ後のコメントで「少し早く入りすぎたかもしれませんが、登りでも下りでもアグレッシブな走りをしたいと思っていました。暑い太陽の下で走るのは大好きなので、タフなコンディションも楽しめました。来年もまた戻ってきたいですね」と話しました。

2位争いは、フィニッシュライン直前まで波乱の展開となりました。アメリカのロビン・レッシュ Robin Lesh (USA) と中国のヤン・レイ Yan Lei (CHN) が激しく競り合い、最後のエイドステーションをほぼ同時に通過する接戦となりました。

フィニッシュを目前に足がもつれるロビン・レッシュ Robin Lesh

フィニッシュを目前に足がもつれるロビン・レッシュ Robin Lesh

最終盤、レッシュがわずかにリードしてフィニッシュエリアに入ってきましたが、そこでドラマが待っていました。極度のハンガーノック(低血糖状態)に陥ったレッシュは、フィニッシュライン手前数メートルのところで足がもつれ、倒れそうになります。彼女は意識が朦朧とする中で最後の気力を振り絞り、這うようにしてフィニッシュラインを越えました。倒れ込んだ彼女にはすぐに救護スタッフの手当てを受けるほどでしたが、5時間26分55秒でフィニッシュ。モードに23分差で2位を死守しました。

ヤン・レイ Yan Lei

ヤン・レイ Yan Lei

3位には中国のヤン・レイが入り、4位にはスカイランニング界の実力者、スペインの ナイアラ・イリゴイエン Naiara IRIGOYEN (ESP) が続きました。また、5位にはアパラチアン・トレイルのFKT(最速記録)保持者として知られるアメリカのタラ・ダワー Tara Dower(USA) が入り、レースを超えた強さを発揮しました。

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HMONG 50-DAY 男子 総合

  1. グアンフー・モン Guangfu MENG (CHN) 04:31:58
  2. 上田瑠偉 Ruy UEDA (JPN) 04:35:46
  3. ヘイデン・ホークス Hayden HAWKS (USA) 04:38:18
  4. コールマン・クレイガン Coleman CRAGUN (USA) 04:38:23
  5. アーチン・ウー Erqing WU (CHN) 04:43:59
  6. 小笠原光研 Koken OGASAWARA (JPN) 04:47:50
  7. パベル・タラソフ Pavel TARASOV (AIN) 04:50:12
  8. フジュン・ホー Fujun HE (CHN) 04:51:34
  9. アライン・サンタマリア・ブランコ Alain SANTAMARIA BLANCO (ESP) 04:52:17
  10. ロレンツォ・ベルトラーミ Lorenzo BELTRAMI (ITA) 04:53:24

HMONG 50-DAY 女子 総合

  1. モード・マティス Maude MATHYS (SUI) 05:03:33
  2. ロビン・レッシュ Robyn LESH (USA) 05:26:55
  3. ヤン・レイ Yan LEI (CHN) 05:31:21
  4. ナイアラ・イリゴイエン Naiara IRIGOYEN (ESP) 05:42:14
  5. タラ・ダワー Tara DOWER (USA) 05:43:02
  6. プリヤ・ライ Priya RAI (NEP) 05:46:49
  7. ラム・マヤ・ブダ Ram Maya BUdha (NEP) 05:52:04
  8. ヤン・ヤン Yan YANG (CHN) 05:59:07
  9. チオン・ルオ Qiong LUO (CHN) 06:04:14
  10. ヤスミン・ニュニジ Jasmin NUNIGE (SUI) 06:08:49
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