【インタビュー】「誰もが自分の人生のチャンピオンに」ANTA Guanjunが語る、ロードの革新をトレイルへ繋ぐビジョン、日本進出は「2年後に」

先週、香港で開催された Hong Kong 100 には世界中から数千人のトレイルランナーが集結し、選手受付が行われたエキスポ会場は熱気に包まれていました。その中心で、一際スタイリッシュで未来的な輝きを放っていたのが、大会のメインスポンサーを務める「ANTA Guanjun(安踏冠军、アンタグァンジュン)」の特設ブースです。

日本のランナーには、まだ馴染みの薄いブランドかもしれませんが、ANTA(安踏 / アンタ)は1991年に中国で設立され、現在では世界トップ3の一角を占めるスポーツウェア界の巨大企業です。中国オリンピック委員会の公式パートナーを8大会連続で務め、1,400以上の特許を保有するなど、その技術力は折り紙付きです。

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HK100のエキスポ会場のブースには発表されたばかりの「AG Speed RC」の大きなパネルが展示されていた。

HK100のエキスポ会場のブースには発表されたばかりの「AG Speed RC」の大きなパネルが展示されていた。

ANTAの強みは、自社ブランドの成長だけでなく、世界のプレミアムブランドを中国市場で成功させる卓越した「ブランド育成力」にもあります。例えば、日本のデサント DESCENTE との合弁事業を通じて、同ブランドを中国における高級スポーツウェアの象徴として根付かせた実績は有名です。また、サロモン Salomon やアークテリクス Arc’teryx を擁するアメアスポーツの筆頭株主であることも、同グループが世界のスポーツアパレル市場を熟知していることの証左と言えるでしょう。

そのANTAが、グループの研究開発の粋を集め、トップアスリートとの共同開発を軸に立ち上げたのが、アウトドアカテゴリーのプレミアムライン「ANTA Guanjun」です。ブランドとしての歴史はまだ浅いものの、妥協のないクオリティと革新的なテクノロジーを武器に、瞬く間に世界のトレイルランニング界で注目を集める存在となっています。

DogsorCaravanでは、同ブランドが満を持して発売したばかりの最新鋭トレイルシューズ「Saker 3RC」と「AG Saker Speed RC」のレビューを先行して公開し、大きな反響がありました。ロードのスーパーシューズで培われた異次元のエナジーリターンを、どのようにして過酷なトレイルへと適応させたのか。この「白い翼」が世界のトレイルシーンにどのようなインパクトをもたらそうとしているのか。ブランドのグローバル戦略を指揮するゼネラルマネージャー、メリー・リン Merry Lin 氏に、その哲学と未来へのロードマップを伺いました。

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「Guanjun(グァンジュン)」という名に込められた精神

DogsorCaravanの岩佐とのツーショットに応じてくれた、ANTA GuanjunのGM、メリー・リンさん(右)。

DogsorCaravanの岩佐とのツーショットに応じてくれた、ANTA GuanjunのGM、メリー・リンさん(右)。

ブランド名に冠された「Guanjun(安踏冠军)」という言葉。日本語では「優勝」や「チャンピオン」を意味しますが、リン氏はこの名前に込められた想いを、単なる競技の勝敗を超えた視点で次のように語りました。

「『グァンジュン』という言葉は、決して表彰台の頂点に立つ一人のためだけにあるのではありません。それは、自分自身の人生という果てしないレースにおいて、誰もがヒーローになれるという信念を象徴しています。たとえ順位がどうあれ、昨日の自分を一歩でも超えていくこと。日々のトレーニングや、レースの苦しい局面で一歩を刻み続けること。そのプロセスのすべてにおいて、あなたは自身の『チャンピオン』なのです。私たちはプロダクトを通じて、その揺るぎない精神をランナーの皆様に届けたいと考えています」

この「一歩一歩の積み重ねが自分をチャンピオンにする」という哲学は、完走を目指す市民ランナーから記録に挑むエリートまで、すべてのランナーの背中を後押しするエールとなっています。

ロードの技術を「山」へ翻訳する、秘められた革新

ANTAはロードランニングの世界において、年間2,000万〜3,000万足という驚異的な販売実績を誇るスポーツ界の巨星です。その膨大なランニングに関するデータと、オリンピック代表選手を支えてきた技術力を惜しみなくトレイルへと転用したのが、今回の2つのフラッグシップモデルです。

その二つのフラッグシップモデルである「AG Saker Speed RC」と「Saker 3RC」はどのように異なるのか。リン氏はこれらのモデルの戦略的な役割をこう説明してくれました。

Speed RCはトップ選手のレース本番のためのレーシングシューズ。その構造を示す分解モデルをみると、2層構造のミッドソールにかかとからつま先まで延びるカーボンプレートが搭載されている。

Speed RCはトップ選手のレース本番のためのレーシングシューズ。その構造を示す分解モデルをみると、2層構造のミッドソールにかかとからつま先まで延びるカーボンプレートが搭載されている。

「Speed RCは、その名の通り『1秒』を削り出すトップランナーのために研ぎ澄まされました。260gという驚異的な軽さと、ロードのトップレーシングシューズの心臓部をそのまま移植したような反発力を持ち、山の中を文字通り『飛ぶ』ような体験を提供します。一方でSaker 3RCは、第3世代としての進化を遂げた、信頼の『オールインワン』モデルです。不安定なガレ場や濡れた岩場でもバランスを崩さず、なおかつ厚底のバウンス感を最大限に享受できる設計です。トレイル特有の過酷な環境下でも、安定性と推進力の究極のバランスを求めるランナーにとっての最適解となるでしょう」

信頼のオールインワン・モデル「Saker 3RC」にもカーボンプレートが搭載されており、ミッドソールの素材も加わって反発力はかなり感じられる。

信頼のオールインワン・モデル「Saker 3RC」にもカーボンプレートが搭載されており、ミッドソールの素材も加わって反発力はかなり感じられる。

多くのブランドが安定性を優先して「推進力」を犠牲にする中、ANTAはいかにしてこの相反する要素を両立させたのでしょうか。リン氏は「それは私たちのイノベーションチームが誇る秘密のレシピと、アスリートとの共創(Co-Creation)にあります」と微笑みます。

「秘密は、独自のミッドソール技術『n2Pro』にあります。窒素を注入した高反発フォームを二層構造にし、その間に航空宇宙グレードのカーボンプレートを配置しました。さらに、HK100で二度優勝したヨウ・ペイチュエン 遊培泉 Peiquan YOU のようなトップアスリートと数え切れないほどのフィールドテストを繰り返し、Vibram 社のアウトソールとの完璧なマッチングを追求しました。彼らプロ選手からのシビアなフィードバックが、単なるスペック上の数値を超えた『勝てるシューズ』を完成させたのです」

DogsorCaravanで紹介した二つのモデル以外にも、Saker 3シリーズとして製品が展開されている。写真はBOAによるレーシングシステムを備えたモデルで1109元。このほかにも776元のベーシックモデルが展示されていた。ちなみに、「3RC」は1442元、「Speed RC」は1559元となっている。

DogsorCaravanで紹介した二つのモデル以外にも、Saker 3シリーズとして製品が展開されている。写真はBOAによるレーシングシステムを備えたモデルで1109元。このほかにも776元のベーシックモデルが展示されていた。ちなみに、「3RC」は1442元、「Speed RC」は1559元となっている。

日本市場への深い敬意と、明言された「2年後」の約束

インタビューの話題が日本市場に及ぶと、リン氏の表情は一層真剣なものとなりました。日本にはアシックス ASICS やデサント DESCENTE をはじめとする、世界から尊敬を集めるブランドが多数存在し、緻密なランニング文化が根付いていることを、彼女は十分に承知しているといいます。

「私たちは『世界のANTA』を目指す過程で、日本を非常に重要な拠点と考えています。外国市場への本格的な進出初年度となった2025年には、中国国外での売上がすでに10億元規模に達しており、米国でのバスケットボール、アジアでのランニングと着実にプレゼンスを高めてきました。しかし、日本の消費者の皆様は世界で最も目が肥えており、品質に対して妥協がありません。そこに参入するためには、単に製品を持っていくのではなく、日本のランナーを心の底から驚かせ、納得させられる『最高の一足』を準備しなければならないのです」

シューズの他にもトレイルランニング用のジャケットやバックパックも展開されていた。

シューズの他にもトレイルランニング用のジャケットやバックパックも展開されていた。

具体的な日本展開の時期について尋ねると、リン氏は日本のコミュニティへの期待を込めながら、次のように明言しました。

「私たちは日本市場への強い志を持っていますが、参入のタイミングとしては『おそらく2年後(maybe two years later)』になるだろうと考えています。なぜなら、その時までにさらにプロダクトを磨き上げ、完璧な状態で日本のランナーに届けたいからです。まずは今回の DogsorCaravan のようなメディアを通じて、私たちの情熱を知ってもらうことが第一歩だと考えています。上海から東京まではわずか2時間の距離です。いずれはポップアップストアなどを展開し、日本の素晴らしい山々で、私たちの『白い翼』が軽やかに駆け抜ける姿が見られる日を、万全の準備を整えて待ちたいと思います」

リーダーが山を走って見つけた新しい自分

リン氏は17年以上にわたりANTAでキャリアを重ね、その成長を最前線で支えてきたといいます。彼女自身もまた、トレイルランニングというスポーツによって、リーダーとしての、転じて一人の人間としての新しい扉を開いた経験を持ちます。

「私はもともとバドミントンやスカッシュ、それにヨガといったインドアのスポーツを愛好していました。しかし、数年前にガオリゴン 高黎貢山 Gaoligong やこのHK100でトレイルランニングに出会い、人生の価値観が一変しました。険しい登りの先に広がる景色、そして自分自身の限界に直面したときに見えてくる本質。自然は、人生という長いトンネルの中で、常に光が差す方向を教えてくれるガイドのような存在です。山の中では肩書きは関係ありません。ただ自然と向き合い、内なる自分と対話する。私はまだ50kmを走り切る走力はありませんが、毎年少しずつ距離を伸ばし、成長していく過程を楽しんでいます。その喜びこそが、プロダクト開発の源泉なのです」

ブランドのリーダー自らがトレイルを走り、息を切らし、その魅力を肌で感じていること. それこそが、ANTA Guanjunのプロダクトが単なる競技のための道具を超え、ランナーの感情を揺さぶる「相棒」となり得る理由なのでしょう。

「今週末、HK100という試練に挑むすべての冒険者の皆さん、そして日本の情熱的なトレイルランニングコミュニティの皆さんの挑戦が、新しい自分との出会いになることを願っています。いつか日本のトレイルで、皆様と共に走れる日を心から楽しみにしています」

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ANTA Guanjunは、白いハヤブサ(Saker)のように翼を広げて、アジアの頂点から世界へと飛び立つのか。日本のトレイルランニングファンにとっても、これから注目のブランドとなるのは間違いないでしょう。

(協力・ANTA Guanjun)

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