2026年8月24日から30日にかけて開催されるトレイルランニングの世界最高峰「HOKA UTMB Mont-Blanc」の抽選結果が、2月17日に発表されました。
主催者の発表によると、今年のエントリー総数は過去最多の29,000人に達しました。一方で、自然環境とレース体験の質を守るため、各カテゴリーの定員数は2006年以来の数値を据え置いています。これにより、シャモニーへの切符は例年以上に「狭き門」となりました。
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特筆すべきは、今年から本格導入された環境対策へのランナーの反応です。多くの参加者が当選確率を高めるために、環境負荷の低い移動手段を選択するという新たな傾向が見られました。
2026年大会の主要データと傾向
今年の抽選結果における主な統計データは以下の通りです。
- エントリー総数: 29,000人(プレエントリー)。
- 倍率の上昇: 2025年大会と比較して、UTMB(171km)は16%増、CCC(100km)は14%増、OCC(55km)は16%増と、主要3カテゴリーすべてで希望者が増加。
- ランニングストーン保有数の平均:
- UTMB当選者平均: 11個
- CCC当選者平均: 7個
- OCC当選者平均: 5.5個
- 「脱クルマ」の誓約: 抽選参加者の 3分の2(約66%) が、シャモニーへの移動に車を使わない(鉄道やバスなどを利用する)ことを誓約し、当選確率がアップする「ブースト」制度を利用。
- 参加者の国別内訳・属性: 参加者の76%が欧州出身(フランス、イタリア、スイスで53%)。女性比率は26%で着実に増加傾向。
- チャリティ: チャリティビブを通じて63万100ユーロ(約1億円)が寄付され、15の団体を支援。
環境配慮が「スタンダード」に
主催者は、2030年までに大会のカーボンフットプリントを20%削減する目標を掲げています。今回、参加者の過半数が「モビリティ・ブースト(低炭素な移動手段を選ぶことで抽選確率が30%増加する仕組み)」を選択したことは、コミュニティがこの方針を支持し、行動に移していることを示しています。
また、参加者からの炭素貢献金(Carbon Contribution)として25万ユーロが集まり、環境保全プロジェクトに充てられることも発表されました。これは、参加者が自宅から会場までの移動手段(飛行機、車、電車など)を申告し、その移動に伴う二酸化炭素排出量に応じた金額をエントリーフィーに上乗せして支払う仕組みです。例えば、飛行機で移動する遠方の参加者は、近隣から電車で来る参加者よりも多くの貢献金を支払うことになります。
「定員を増やさない」というUTMBの方針は、オーバーツーリズムや環境負荷への懸念に対する回答として正当なものですが、ランナーにとっては年々、物理的にも確率的にも『狭き門』となっていることを今年の数字が改めて証明しました。UTMBカテゴリーで平均11個のランニングストーンが必要という事実は、もはや「運」だけでは挑めない、継続的なシリーズ戦への参加が前提の大会になったことを意味します。
しかし今回、最も注目すべき数字は「3分の2」です。参加者の大半が『車を使わない』という誓約をして当選確率アップ(ブースト)を狙いました。UTMBチームが温暖化に対して真剣に闘い、これまでの常識を変えようとしていることには敬意を表します。一方で、その意図に賛成するにせよ反対するにせよ、参加者はある意味でその大きな潮流に巻き込まれているのかもしれません。これからのメジャーレースは、ただ走るだけでなく、どう移動し、どう振る舞うかが問われる時代に入ったと言えるでしょう。













