「ナイキ ACG」が刻む新たな物語。甲斐大貴と髙村貴子が語る、世界に挑むための信頼と情熱

2026年3月4日、ナイキ ジャパン 本社で行われたメディアセッション。あらゆる環境下でアスリートを支え続けてきた「ACG(All Conditions Gear)」が、パフォーマンスに特化したブランドとして再始動しました。この大きな転換点に立ち会ったのは、日本のトレイルランニング界を牽引する二人のアスリート、甲斐大貴選手と髙村貴子選手です。彼らが語ったのは、単なるギアの性能ではなく、自らの限界を突破するためにナイキというパートナーを選んだ理由、そして共に描こうとしている未来のストーリーでした。

1978年のK2から、現代のトレイルへ続く道

ナイキと山の関わりには、48年前まで遡る象徴的なストーリーがあります。1978年、パキスタンの高峰K2。アメリカ人初の登頂を目指した遠征隊の足元を支えたのは、ナイキのランニングシューズ「LDV」でした。雪山には不釣り合いに見える黄色いスニーカーが、ベースキャンプまでの過酷な110マイルを歩き抜いたのです。

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今回のACGの刷新は、この「あらゆる環境でアスリートを支える」というナイキの原点に立ち返ることを意味しています。甲斐選手と髙村選手という二人のトップランナーの参画は、その歴史の新しい章の始まりと言えるでしょう。

甲斐大貴:ロードの強さを武器に、アメリカの頂きを目指す旅

順天堂大学、そして実業団と、一貫してロードレースの第一線で戦ってきた甲斐大貴 選手。2025年のウェスタン・ステイツ(WSER)で10位という快挙を成し遂げた彼が次に目指すのは、アジア人初の「優勝」という未踏の地です。

「僕のバックボーンはロードにあります。アメリカのトレイルは走れる区間が多く、自分の走力を最大限に発揮できる場所です。ナイキ オール コンディション レーシング デパートメント のチームがアメリカを拠点としていることは、僕がWSERで勝ちたいという目標に向かう上で、最高の環境だと感じています」

甲斐選手が「自分にとっての最適解」と語るのは、カーボンプレート搭載の『ナイキ ACG ウルトラフライ』です。ロード用のアルファフライに近い反発性を持ちながら、複雑な地形にも対応する安定感。それは、彼がアメリカのシングルトラックを駆け抜け、歴史を塗り替えるための強力な相棒となっています。

髙村貴子:ハセツネ女王であり、ドクターでもある彼女の眼差し

日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)5連覇という金字塔を打ち立てた髙村貴子 選手。彼女には、トップアスリートであると同時に医師という、もう一つのアイデンティティがあります。

「ナイキ オール コンディション レーシング デパートメント のプロジェクトに参加して、最も感銘を受けたのはナイキのアスリートに対する姿勢です。フィジカルテストのデータを詳細に分析し、私たちのシビアなフィードバックを即座にプロダクトへ反映させていく。ここまで一人の表現者として、そして科学的な視点を持つアスリートとして尊重される環境は初めてでした」

髙村選手は、レースごとにギアを使い分ける戦略家でもあります。 「『ナイキ ACG ウルトラフライ』の推進力はもちろん魅力ですが、テクニカルな下りでは自分の感覚を信じられる『ペガサス トレイル』を愛用しています。ロード練習からトレイルまで、同じ感覚で使い分けられるラインナップがあることが、怪我を防ぎ、パフォーマンスを支えてくれています」

「一着」が変える、100マイルのメンタリティ

トレイルランニングは、自然環境との戦いでもあります。特に気温差の激しい100マイルレースでは、装備の選択が勝敗を左右します。セッションで話題に上がったのは、最新の素材技術を投入した『ナイキ ラディカル エアフロー』でした。

「朝方の5度から、日中の40度まで。着替えのタイムロスさえ惜しい過酷な環境で、一着で対応できる通気性と保温性は、肉体的な助けだけでなく、精神的なゆとりを与えてくれます」と甲斐選手は語ります。

髙村選手も、直近のレースでの体験を笑顔で振り返りました。

「スタートの寒さに震えながら、ゴールでは30度を超える。そんな変動の中でも、常にウェアがドライで快適でいられる。その安心感があるからこそ、私たちは走ることだけに集中できるんです」

DogsorCaravan Analyst Note:テクノロジーと情熱が融合する、新しいアスリート像

今回のインタビューを通じて感じたのは、日本のトレイルランニングシーンが「新しいフェーズ」に入ったということです。

これまで、このスポーツはどこか「山を楽しむ人の趣味」という文脈が強かったように思います。しかし、甲斐選手のように2時間15分のフルマラソン走力をベースにテクノロジーを使いこなし、世界一を目指す。あるいは髙村選手のように医学的な知見を持ち、プロフェッショナルとしてプロダクト開発に深く関与する。そんな「ハイブリッド・アスリート」の姿が、ナイキというグローバルなブランドの参入によって可視化されました。

一方で、アスリートとしてより高いステージに立った二人のお披露目の場ではあったものの、会見の端々で見られた、彼らの飾らない等身大の姿も強く印象に残りました。

甲斐選手が「僕はあまりおしゃれじゃないので、ACGを着ていれば問題ないというのは嬉しいですね」と照れくさそうに笑いながら話す場面や、髙村選手がアメリカでのキャンプを振り返り「全編英語で、慣れるまで一度知恵熱が出たほどでした」と苦労話を披露して会場を和ませる姿。

世界に挑むトップアスリートとしての顔の裏にある、そうした温かな人間味に触れられたことが、今回の取材の何よりの収穫でした。かつてのK2遠征でイエローのスニーカーが示した「挑戦の精神」は、今、この親しみやすくも強い情熱を持った二人の若き選手に引き継がれたと感じます。彼らがナイキのギアと共に世界のトレイルでどのような物語を描いていくのか。その旅路を記録し、伝えていくことは、DogsorCaravanにとってこれからの楽しみでもあります。

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