[DC] 9日土曜日深夜12時スタート・トランスジャパンアルプスレース / Trans Japan Alps Race #TJAR2014

日本海から太平洋へ、日本アルプスをトレイルランニングのスタイルで一気に縦走。スケールの大きさとタフなスタイルでトレイルランニングのファンに限らず多くの人の注目を集めるトランスジャパンアルプスレース / Trans Japan Alps Race(TJAR)が8月9日土曜日深夜12時にいよいよ富山湾に面した早月川河口のミラージュランドをスタートします。

TJAR-logo2002年に4人のランナーが参加(完走は一名)してスタートしたTJARは2年に一度開催され、今年2014年が7回目。

富山県の早月川河口から静岡県の大浜海岸までの約415km、累積獲得高度27,000mD+というコースのスケールの大きさは日本には類をみないほか、これほど大きなコースを単一ステージで、エイドすら設置されないセルフサポートで、自らの足だけで踏破するレースという形をとっているのも世界に類をみません。

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そしてその自らの限界に挑戦することが許されるのは厳しい参加資格を満たし、選考を経て、さらに今年からは抽選で幸運を得たわずかなランナーのみ。 前回2012年大会の模様はテレビで特集番組として放送され、その番組を元に「激走! 日本アルプス大縦断」という本も出版され、TJARは多くの人に知られる存在となり、TJARに出場することを目標とするトレイルランナーも増えています。

TJARのここがスゴい

山を走るトレイルランニングのレース、といってもTJARは国内外で開催されているレースとは少々様子が異なります。その実態としては、アメリカで行われている、ロングトレイルのルートを使って個人や二人組で完走したタイムを競うFKT(Fastest Known Time、最速記録)のトライアルを集団で行っているのに近いといえます。 TJARの詳細は大会ウェブサイトでご覧いただくとして、当サイトの考えるTJARの他には特徴をご紹介します。

1. コースが壮大・テクニカル・忍耐と多様

TJARのコースは日本海と太平洋の海岸をつなぐ約415km。しかもそのコースは日本でも最も魅力的で有名な日本アルプスの縦走路を含んでいます。北アルプスの劒岳槍ヶ岳。中央アルプスの木曽駒ヶ岳空木岳。南アルプスは仙丈ヶ岳から聖岳までを一気に縦走。標高3000mに達する日本の屋根をつなぐトレイル、そこからの眺めは日本の登山愛好家なら誰もが憧れる壮大なものに違いありません。

しかし、そのルートは同時に下界の常識が通用しないハードなもの。険しい岩場、転落すれば命はない危険箇所は数多く、森林限界を超えた標高ではひとたび風雨が強まれば自分の命が危険にさらされます。

一方、小さな国土に急峻な山岳地帯を持つ日本らしく、それぞれの山岳エリアは長い舗装路や林道でつながれています。スタートから劒岳の登山口(馬場島)までは約30km。上高地に下りてから木曽駒ヶ岳の登山口までは70km弱。そして南アルプスを下りて畑薙からフィニッシュまでは80km以上。森の眺めで癒されるとしてもあまりに長い舗装路は忍耐強さが求められることでしょう。

2. セルフサポートにこだわったルール

山の中のトレイルで必要になるものは自分で用意して携行するのはトレイルランニングの特徴ではありますが、TJARではこのセルフサポートの要素に強くこだわったルールが設けられています。

エイドステーションは設けられず、225km付近の市野瀬のチェックポイントをのぞいては家族や友人からのサポートも認められません。食料や装備のデポバッグが置けるのも市野瀬のみ。補給について他に認められているのは山小屋や食堂での食事や商店での買い物のみ。

さらにレース中の宿泊はテントやツエルトを使った露営のみで、山小屋等での宿泊や仮眠は禁止。このためランナーは露営のための装備(ツエルトやマット、シュラフなど)を携行する必要があります。 また、コースのマーキングは一切なされていないため、ランナーは指定されたチェックポイントをつなぐルートを自ら判断して進む必要があります。

3. 参加するまでの長く険しいプロセス

そしてTJARで最も特異なのが、タフなレースの参加者を選ぶまでのプロセスです。これほど綿密な選考プロセスがあるトレイルランニングレースは世界に類をみません。TJARを目標とすることで山岳で必要とされる体力や経験、知識を次第に身に付けることになることもこの大会の大きな特徴といえるでしょう。

  • 参加希望者はまず参加要件を満たす必要があります。まず「参加資格」として70km以上のトレイルランニングレースを完走した経験と高山での10泊以上の露営経験。さらに「参加条件」としてTJARを想定したビバーク体験が4回以上あること、などが求められ、その定義なども詳しく説明されています。
  • さらにそれらの要件をみたした参加希望者からTJAR参加に向けた準備度合いなどの基準から選ばれた人が選手選考会(60人)に参加することができます。
  • 選手選考会ではロード、トレイルで走る他、夜間のビバークも行い、これらの実技のあとには筆記試験も行われ、走力以外の山岳での技術や知識も審査。その審査をパスした人について判定会議が行われます。
  • 判定会議で承認された参加希望者と前回大会完走者の人数の合計が本大会の定員(30人)を超えている場合はさらに抽選。 今回は7月5日に抽選会が行われ、選考会合格の26人と前回完走の11人の計37人から26人が本大会への参加権を得ました。
  • なお、参加要件を満たせば抽選なしで本大会に参加できるのは前回優勝者と選手マーシャルとして参加の実行委員3人の計4人だけ。

4. 「レース」を超えた、総力を尽くしての自分の可能性を試すランナーの姿

こうした他に類をみない独自の特徴をもつTJARは、「レース」を超えた存在だといえるでしょう。30人という参加ランナーの数の少なさもあって、TJARの様子を追っていると他のレース以上に先頭から最後まで全てのランナーの存在が際立つようにように思います。

特にランナーが長いと8日間にわたって繰り広げるレースの中でみせる生活感には心を動かされるものがあります。特に山小屋で山盛りのカレーを平らげる姿は欧州のレースでも北米のFKTでもみられない日本の山岳らしい、山を生き抜くたくましさを感じます。そして汗や夜露で濡れたシューズの中でできた足のマメの痛々しさ、後半のあまりの眠さに苦しむ姿には、それぞれのランナーが何を動機にしてフィニッシュを目指すのか、想像力をかき立てられます。

TJARのコース概要

TJARのコースの概要は大会ウェブサイトで紹介されています。以下では2012年大会のコースとしてルートラボ / LatLongLabに公開されているマップをご紹介します。

TJAR 2012 全ルート – ルートラボ – LatLongLab

上記のルートマップをもとに当サイトが作成した主要な通過ポイントと距離等をまとめた一覧は以下の通りです(地図上での通過ポイントの同定は当サイトが行ったほか、前回2012年大会のトップ通過タイムは大会ウェブサイトの速報をもとに当サイトがまとめたものです)。

TJAR-Table 一覧表が表示されない場合はこちら

今回の参加選手

厳しい選考プロセスを経て本大会に参加するのは女性3人を含む30人。全体に30代のランナーが増えて少し若返った印象。

普通のレースであれば上位を競う有力選手として前回、前々回と連覇の望月将悟さん、前回2位の阪田啓一郎さん、女子では長距離の山岳レースで活躍し、今回初出場の西田由香里さんといった名前を挙げるところですが、上にも書いたとおりTJARはちょっと特別なイベント。全ての選手の皆さんに注目です。

大会サイトの「選手紹介」のページに掲載されている各ランナーの名前をクリックすると30人の一人ずつについて自己紹介と顔写真をみることができます。

大会中の速報・レポートなど

前回大会と同様に、大会期間中は大会サイトの「選手紹介」のページで各ランナーのチェックポイントの通過状況、本人からの状況報告、応援されている方からの各選手の情報がアップデートされる模様です。

また同じく大会サイトのNOW HERE ! のページでは各ランナーが携帯しているGPS端末から発信される情報をもとに全選手の現在位置がリアルタイムで把握できるマップが掲載される見込みです(マップへの直接のリンク先はこちら)。

これも読む
DC Weekly 2023年9月4日 Vertical / Trofeo Nasego、OSJ安達太良山、水上マウンテンパーティ、多摩川源流

当サイトでも上記の大会サイトの情報をもとに毎日のレースのダイジェストをお届けする予定です。

参考

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